ChatGPTさんの短編小説 2025年5月

43件目 Zの先にあるキス

校舎裏のフェンスに、春の午後が影を落とす。

　

僕の横で背伸びをしているのは、幼馴染の七海だ。長身の彼女は、白く透けるような肌に、腰まで届く銀色の髪。

まるでアニメから飛び出してきたラブリー天使のようだと、よく言われている。

　

「遼、また体育サボったでしょ」

　

「いや、サボったっていうか……怪我予防？」

　

「それ言い訳になってないよ」

　

七海は呆れ顔をしつつも、笑っていた。
その表情を見るたび、心がチクリとする。
昔はただの友達だったはずなのに、気づけば彼女の笑顔が特別になっていた。

　

＊＊＊

　

「ねえ、覚えてる？　AからZのゲーム」

　

「……え？」

　

「小学校のときやってたやつ。アルファベットの文字から始まる単語で、お互いを褒め合うゲーム」

　

「あー、あったな。『Aは……明るい』『Bは……バカだけどいいやつ』って」

　

七海は頷いて、目を細めた。

　

「私、本当はあれで全部伝えようとしてたんだよ」

　

「全部って……なにを？」

　

「好きって気持ち。わかりやすくはなかったかもだけど」

　

僕は言葉を失った。

　

七海は続けた。

　

「Cは“Cuteなとこある”、Dは“誰よりも優しい”、Eは“永遠に一緒にいたい”」

　

「Zは……？」

　

「“ずっと、キスしたかった”」

　

七海は、視線をそらさずに言った。
僕の思考は数秒止まり、再起動をかける。

　

メタ的に考えるなら、これは告白の文法だ。
幼馴染という設定、長年の関係性、春という季節。まるで誰かが脚本を書いたように、完璧すぎる展開だ。

　

けれど、これはフィクションじゃない。
僕の目の前にいる七海の感情は、本物だ。

　

「……じゃあ、今」

　

「うん？」

　

「Zの続きをやってもいい？」

　

「いいよ」

　

僕は彼女に一歩近づいた。
七海の顔が近づく。目を閉じるタイミングを、自然と理解していた。

　

唇が触れ合う刹那、世界が止まった。

　

まるで“Z”で終わるはずの物語に、新しいアルファベットが生まれたようだった。

　

＊＊＊

　

キスのあと、七海が照れ隠しのように言う。

　

「……もしかして、やっとAに戻る？」

　

「うん、“愛してる”から始めよう」

　

フェンスの向こう、桜が風に舞っていた。

　

この春、僕たちはようやく「友達」から、「恋人」へと歩き出す。AからZまで言葉を尽くした七海と、ようやく言葉を返せた僕。その先に続く、物語の続きを――一緒に紡いでいこう。