幽霊じゃありません!足だってありますから‼

かな

文字の大きさ
6 / 44

花嫁は幽霊!?

しおりを挟む
気絶したメイド達を放っておけず、オロオロしているとバタバタバタと走り寄ってくる複数の足音が聞こえた。
駆けつけてきた男たちを見て、アーリスは驚いた。王宮の護衛兵の騎士服を着ていたからだ。
(王宮の護衛兵!じゃあここは王宮なの?)

普通なら屈強な男たちを前にしてアーリスが怖がるべきだが、男たちの顔は真っ青だった。中にはガタガタ震えている者もいる。

「ゆっ幽霊め!何故ここに居る!」
「早く神官を呼べ!」

幽霊?また言われた。とりあえず釈明しなければ!

「幽霊じゃありません!足だってありますから!」
「足がなんだ。幽霊にも足くらいあるだろう!」

幽霊に足がないってもしかして日本だけなの?これじゃダメなんだ!どうしよう!ああっそうだ

「さっき薔薇の棘を踏んでしまって血が出てるの。幽霊なら血なんて流さないでしょう。」

ほらっと淑女らしからぬ仕草で足の裏を護衛兵達に向ける。
「血っ血だと!」
「なんだと!一体どういうことだ!」
逆にそれがパニックを呼んでしまったらしく騒然となった。

えええっ!もうどうしたらいいの‼

「どうしたのだ。一体何を騒いでいる。」
聞き覚えのある声がした。一斉に騒然していた場がピタッと静まり返る。

「アッアレン様。実は幽霊が出まして」
「幽霊だと?・・・アーリス嬢・・・」

呆然としたような顔で一瞬固まったが、直ぐに立ち直り、護衛兵を押しのけるとアーリスの近くまでやって来た。

アレン様・・・確かにアレン様だけど
アーリスは困惑した。1週間前、学園でお会いした時はアーリスと変わらない背丈だったのに、今は見上げるほど背が高くなっている。背丈って1週間位でそんなに伸びたりしないはず。

「アーリス嬢、貴女は3年前に亡くなったはずだ。どうして此処にいるんだ・・・それにそのドレス・・・3年前から現れたようだ。」
「3年前?えっ3年?私死んでいませんし幽霊でもありません!怪我もすれば血も出ます。」
ホラッと足の裏の傷を見せると、アレン様は驚いて足の裏をしげしげと見つめ本当だと呟いた。

ドヤドヤと人が集まってくる気配がしてきた。どうやら騒ぎを聞きつけて、城の者たちが続々と集まって来たらしい。

アレン様は周囲を見回すと、従者に素早く指示を与えた。
「場所を変えよう。ハッサン、宰相と医者を直ぐに呼べ、私達は光条の間にいる。イソラ公爵に登城するよう使者を送れ、陛下に午後面会したいと申し入れよ。アーリス嬢、歩けますか?」
「はい。」
光条の間は、私が王妃教育を受ける時に使っていた客間だった。歩き出そうとするが、足の裏の傷が痛くて真っ直ぐ歩けずふらついてしまう。

「アーリス嬢、触れるのをお許しください。」
アレン様はそういうと私をお姫様抱っこして歩き出した。ビックリして降りようと身を攀じるがビクともしない。その時、ハッサンがアレン様を咎めた。

「殿下、そのように得体の知れない者にみだりに触れてはなりませぬ!」
「得体の知れないものでは無い。この方はアーリス嬢だ。私にはわかる。・・・ああっだが、なんてことだ・・・。」絞り出すような低い声でアレン様が呟いた。

「アレン様、私重いので!下ろしてください!」
「いや、大丈夫だ。少しこのままでいてください。」
アーリスを抱く右手に一瞬グッと力が込められた。アーリスは身を攀じるのを止め、体の力を抜いた。
アレン様は、以前より逞しくなっていた。3年たったのだと実感する。

抱きかかえられたまま、アレン様に連れられて光条の間に向かった。

ーーーーーーーーーーーーーー

アレン様に連れられて光条の間に向かう途中、メイドや護衛兵が真っ青になって震えたり悲鳴を上げた。
それを見て、やはり自分は既に故人と認識されているんだと思い知った。一体、私の身に何が起こったというのだろう。
アレン様は周りの様子には目もくれず、光条の間に着くと、ソファーへそっと下ろしてくれた。

確か光条の間に最後に入ったのは、10日前だった。あの日がこの部屋に入る最後だと思った物だった。感慨深い気持ちで周囲を見渡すと、有り得ない物を見つけて凍りついた。

10日前まではなかった3枚の絵が飾られていた。
1枚は今着ている紫のドレスを着て花嫁のベールを被り幸せそうに微笑んでいるアーリスの絵だ。
もう1枚は同じドレスを着てクリス様と2人で腕を組んでいる絵だった。クリス様は婚礼式で着る王族の正装をしている。クリス様もアーリスも嬉しそうな表情をしている。

もう1枚は同じ衣装のクリス様がアーリスをお姫様抱っこしていて、私はクリス様の方を向いて微笑んでいる。

その絵を見て思い出した。今着ている紫のドレスは、15歳の時にクリス様が婚礼衣装としてデッサン画を見せてくれた物と同じだった。

『アーリー、 これは僕が描いた婚礼式のドレスのデッサンなんだ。今から作らないと間に合わないから、僕に任せてくれるかい。僕の色をまとった君はきっと美しいよ。』そう言って私を抱きしめたクリス様は幸せそうに笑っていた。絵の中の彼と同じ様に・・・

『大好きだよ。アーリー17歳になったら結婚しよう。』

叶えられなかった約束結婚だった。そのはずなのに・・・。

「アレン様、あの・・・あの絵は一体・・・10日前にこちらに伺った際にはなかったはずです。・・・それに今着ているこのドレスも自分で着た覚えがありません。」問いかけた声が震えていた。その声で知らぬ間に自分がブルブルと震えていたことがわかった。

「そのドレスは、兄上が貴女を仮の柩に納める時に着せた物だ。本当は17歳で婚礼式の時に送る予定の物だったそうだ。あの絵は・・・」
アレン様は立ち上がると、私とクリス様が2人で腕を組んでいる絵の前に立った。
「絵は兄上が全て描いたんだ。ここだけてはない、王宮中のあちこちにある。兄上は貴女が亡くなったことを受け入れられず、17歳で婚姻したと思い込んでしまったのだ。陛下や私は貴女が亡くなったことを兄上に繰り返し説明したが、その度に絵が増えて行った。兄上は貴女が亡き者となることが我慢出来なかった様だ。使用人達は兄上は幽霊を花嫁にしたと言っているらしい。。」

アーリスは驚愕のあまりとっさに声が出なかった。
幽霊の花嫁・・・王宮中にある私の絵・・・この絵と同じドレスを着た私が現れたから、皆に幽霊と呼ばれていたのだ。
(でも、どうして?どうしてなの?学園ではあんなに冷たかったクリス様がそんなことを・・・そういえばヒロインはどうしたのだろう。)
「あっあのナターシャヒロイン様はどうなされたのですか?クリス様の伴侶に・・・王子妃になられたのではないのですか?」
「馬鹿なあの毒婦ナターシャが、有り得ない!」吐き捨てるような激しい口調でナターシャを"毒婦"と呼んだ。アーリスはますます混乱した。ナターシャヒロインが毒婦ってどういうことなの?

「すまない、貴女に怒鳴ったりして。貴女はあの事件の顛末を、知らなかったな。実は・・・」

その時、
「アレン様、宰相様と医者が参りました。」
と従者が来訪を告げた。

「わかった通せ。アーリス嬢この話はまた後程。」

そうして、の話は後回しとなったのだった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【完】相手が宜しくないヤツだから、とりあえず婚約破棄したい(切実)

桜 鴬
恋愛
私は公爵家令嬢のエリザベート。弟と妹がおりますわ。嫡男の弟には隣国の姫君。妹には侯爵子息。私には皇太子様の婚約者がおります。勿論、政略結婚です。でもこればかりは仕方が有りません。貴族としての義務ですから。ですから私は私なりに、婚約者様の良い所を見つけようと努力をして参りました。尊敬し寄り添える様にと努力を重ねたのです。でも無理!ムリ!絶対に嫌!あからさまな変態加減。更には引きこもりの妹から明かされる真実?もう開いた口が塞がらない。 ヒロインに隠しキャラ?妹も私も悪役令嬢?ならそちらから婚約破棄して下さい。私だけなら国外追放喜んで!なのに何故か執着されてる。 ヒロイン!死ぬ気で攻略しろ! 勿論、やられたら倍返ししますけど。 (異世界転生者が登場しますが、主人公は異世界転生者では有りません。) 続編として【まだまだ宜しくないヤツだけど、とりあえず婚約破棄しない。】があります。

処刑された悪役令嬢、二周目は「ぼっち」を卒業して最強チームを作ります!

みかぼう。
恋愛
地方を救おうとして『反逆者』に仕立て上げられ、断頭台で散ったエリアナ・ヴァルドレイン。 彼女の失敗は、有能すぎるがゆえに「独りで背負いすぎたこと」だった。 ループから始まった二周目。 彼女はこれまで周囲との間に引いていた「線」を、踏み越えることを決意した。 「お父様、私に『線を引け』と教えた貴方に、処刑台から見た真実をお話しします」 「殿下、私が貴方の『目』となります。王国に張り巡らされた謀略の糸を、共に断ち切りましょう」 淑女の仮面を脱ぎ捨て、父と王太子を「共闘者」へと変貌させる政争の道。 未来知識という『目』を使い、一歩ずつ確実に、破滅への先手を取っていく。 これは、独りで戦い、独りで死んだ令嬢が、信頼と連帯によって王国の未来を塗り替える――緻密かつ大胆なリベンジ政争劇。 「私を神輿にするのなら、覚悟してくださいませ。……その行き先は、貴方の破滅ですわ」 (※カクヨムにも掲載中です。)

命がけの恋~13回目のデスループを回避する為、婚約者の『護衛騎士』を攻略する

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<死のループから抜け出す為、今から貴方を攻略させて頂きます。> 全く気乗りがしないのに王子の婚約者候補として城に招かれた私。気づけば鐘の音色と共に、花畑の中で彼の『護衛騎士』に剣で胸を貫かれていた。薄れゆく意識の中・・これが12回目の死であることに気づきながら死んでいく私。けれど次の瞬間何故かベッドの中で目が覚めた。そして時間が戻っている事を知る。そこで今度は殺されない為に、私は彼を『攻略』することを心に決めた―。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

せっかく双子で恋愛ゲームの主人公に転生したのに兄は男に妹は女にモテすぎる。

風和ふわ
恋愛
「なんでお前(貴女)が俺(私)に告白してくるんだ(のよ)!?」 二卵生の双子である山田蓮と山田桜がドハマりしている主人公性別選択可能な恋愛ゲーム「ときめき☆ファンタスティック」。 双子は通り魔に刺されて死亡後、そんな恋愛ゲームの主人公に転生し、エボルシオン魔法学園に入学する。 双子の兄、蓮は自分の推しである悪役令嬢リリスと結ばれる為、 対して妹、桜は同じく推しである俺様王子レックスと結ばれる為にそれぞれ奮闘した。 ──が。 何故か肝心のリリス断罪イベントでレックスが蓮に、リリスが桜に告白するというややこしい展開になってしまう!? さらには他の攻略対象男性キャラ達までも蓮に愛を囁き、攻略対象女性キャラ達は皆桜に頬を赤らめるという混沌オブ混沌へと双子は引きずり込まれるのだった──。 要約すると、「深く考えては負け」。 *** ※桜sideは百合注意。蓮sideはBL注意。お好きな方だけ読む方もいらっしゃるかもしれないので、タイトルの横にどちらサイドなのかつけることにしました※ BL、GLなど地雷がある人は回れ右でお願いします。 書き溜めとかしていないので、ゆっくり更新します。 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ、カクヨム、pixivで連載中。 表紙はへる様(@shin69_)に描いて頂きました!自作ではないです!

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「イザベラ、お前との婚約を破棄する!」「はい?」悪役令嬢のイザベラは、婚約者のエドワード王子から婚約の破棄を言い渡されてしまった。男爵家令嬢のアリシアとの真実の愛に目覚めたという理由でだ。さらには義弟のフレッド、騎士見習いのカイン、氷魔法士のオスカーまでもがエドワード王子に同調し、イザベラを責める。そして正義感が暴走した彼らにより、イザベラは殺害されてしまった。「……はっ! ここは……」イザベラが次に目覚めたとき、彼女は七歳に若返っていた。そして、この世界が乙女ゲームだということに気づく。予知夢で見た十年後のバッドエンドを回避するため、七歳の彼女は動き出すのであった。

処理中です...