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王子の困惑:愛しのユリア嬢と詐欺師女
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学園に入学してきたユリア嬢は、抱きしめたくなるくらい愛らしかった。相変わらず気配消しの威力は凄く、私以外は彼女の魅力に気づいていなかったようだが。
あと少し、あと少しと自分に言い聞かす。外堀は完璧に埋めてきた。絶対ユリア嬢を逃がさない。
そんなある日、曾祖母様が懸念したようにエリシア・リッチモンド男爵令嬢が編入してきたのだ。
美しいと皆が褒めたたえたが、私にしてみたら平凡な只の女だった。しかも身分差があるのにも関わらず、馴れ馴れしくまとわりついてくる。側近候補達は短期間に全員この女に籠絡された。この胡散臭い女のどこにそんな魅力があると言うのだ。
〘嘘つき女は詐欺師。追い出す為の10ヶ条!〙を思い出す。その内の1つ〘嘘つき女は詐欺師。まず女の魔法を見極めろ!〙を実行してみる。
■鑑定結果:以下の魔法が発動中
〘魅了:上級〙、〘惑わし:上級〙
▼スキル
『乙女ゲームの強制力』
なんと、曾祖母様が書き残した鑑定結果と全く同一だったのだ。曾祖母様でも成敗に相当手こずった相手だ。私のユリア嬢に何かあったらと思うと下手なことが出来ない。
〘嘘つき女は詐欺師。追い出す為の10ヶ条!〙をさらに思い出す。その内の1つ〘嘘つき女は詐欺師。詐欺師女に惑わされない味方を作れ! 〙を次に実行した。
まず、父上に報告する。曾祖母様の日記をご覧頂きながら、今同じ状況であることを告げた。
父上は、日記の内容に非常に驚いた様子だった。最後には、お祖母様・・・。と溜息を付かれた。
「エディオン、今学園で同じ状況だというのだな。その卑しい女を退学にさせれば良いか?」
「それが・・・側近候補達が女に籠絡されていて、正当な理由が無いと王家への非難となりかねません。彼等は有力貴族の令息達なのでのちのちの火種は余り残したくないと・・・。」
父上はふむっと頷くと「では、始末しよう。」と簡単に仰った。
「それも考えましたが、曾祖母様の日記に始末しようとすると、必ず邪魔が入る。とありました。どうやら『乙女ゲームの強制力』という怪しいスキルが関係しているようです。それに・・・あの女が死のうとどうなろうとどうでも良いですが、ユリア嬢が知って軽蔑されたらと思うと・・・。まぁ、ユリア嬢に危害を加えたらサクッと殺しますけど。」
そういって笑った私の顔を見た父上の顔色が蒼白になっていた。
「わっ分かった。私が何か力になれることは無いか?」
「精神魔法に耐性がある者たちを数名お借りできますか?何があるかわからないので、そのもの達には精神魔法無効の魔法石も携帯させてください。その内の1人をユリア嬢の警護の為、同級生として編入させてください。他の者は詐欺師女の企みを暴く為に影で動いて貰います。」
「分かった。」
「あと、記録用の魔法石をお願いいたします。学園中に設置しますので15個ほどお願いいたします。私と先程依頼した者たちにも記録用の魔法石を持たせてください。」
「分かった。エディオン、余り無茶をするなよ。今日ほどお前がお祖母様に似ていると思ったことは無い。ユリア嬢に執着するのは分かるがお前は王子なのだ。冷静に行動するように。」
「分かりました。」
ユリア嬢に正式に婚約を申し込んだ際、拒否されたら攫って既成事実を先に作ってしまおうと企んでいたが・・・この様子では父上には事前に打ち明けない方が良いだろう。
ーーーーーーーーーーーーー
賢妃キャサリンの日記より引用
〘嘘つき女は詐欺師。追い出す為の10ヶ条!〙
①まず女の魔法を見極めろ!
②詐欺師女に惑わされない味方を作れ!
③必ず記録せよ!
④スケジュールを把握せよ!
⑤見張りを立てろ!
⑥企みを潰せ!
⑦詐欺師女の協力者は徹底的に潰せ!
⑧スキルに気をつけろ!
⑨女の魔の手から身内を守れ!
⑩成敗は徹底的に行え!
※王子はこの10ヶ条に従って暗躍しています。
ーーーーーーーー
閑話休題
公爵夫妻を呼び出し、事の仔細を説明する。今回は公爵家自体に影響がある可能性を考慮して、嫡男であるイスツィア殿も呼び出した。
私がユリア嬢を婚約者に希望していることや、今回のことをすぐには飲み込め無かった様子だった。パーティーには1度もエスコートしたこともなく、ユリア嬢への好意を表沙汰にしたことも無い。だが、私がユリア嬢への思いを語るとイスツィア殿は最期には青ざめて公爵家の警備を通常より倍に増やすことを約束してくれた。公爵夫人がいれば滅多なことでは心配は無いかと思ったが、これでより1層安心できる。ユリア嬢を守る為、必ず詐欺師女の尻尾を捕まえてやる!
魔法石を手に入れ、〘嘘つき女は詐欺師。必ず記録せよ!〙に記されていた設置場所を回っていく。だが、何故か同じ場所に真新しい魔法石が置いてあった。数も同じ15個。全て新しい魔法石に入れ変えて自室で再生してみる。何とユリア嬢の姿が映し出されていた。自分より高い場所に設置する為に、ヨットットと一生懸命手を伸ばしたり、よっこらせ!と訳の分からない掛け声と共に映し出されていた。
ああっその愛らしさといったら!
可愛らしさに身悶えしながら、間者に魔法石で記録を撮って貰えば良かった!と今更ながら後悔した。
愛らしく、可愛いユリア嬢をこの魔法石みたいに閉じ込められたら良いのに。と不埒なことを思いながら制服のブレザーの2箇所の内ポケットに入るだけの魔石を入れてみる。ポケットの魔石に触れると、ユリア嬢とどこかで繋がっているような気がした。
詐欺師女はなかなか尻尾を出さなかった。婚約者候補達と諍いをおこしてはベタベタと無遠慮に触ってくる。名を呼ぶなと何度も注意するが、改めようとしない。私が苛立つと側近候補達が取り成してくるのだ。全く使えない奴らだ。ある日、ユリア嬢不足に陥った私は、ユリア嬢がいつも昼食にやってくる裏庭のベンチ近くまでやって来た。詐欺師女と側近候補達をやっと巻いたのだ。ウキウキとユリア嬢が来るのを待っていると、突然背後からみーつけた!と声と共に詐欺師女が抱きついてきた。すぐに振り払ったが、気持ち悪くて鳥肌が立つ。思わず手打ちに仕掛けたが、詐欺師女の周りを側近候補達が囲んでしまう。舌打ちしたが仕方なく手打ちは止めた。
「あそこにベンチがあるわ。あそこで食べましょうよ。」
「そこはダメだ!やめろ!」
ユリア嬢の指定席であるベンチによりによって行こうとする。ユリア嬢がもうすぐ来るはずなのに!だが、側近候補達は私より詐欺師女の言葉が絶対なのか、半ば無理やりベンチに座らせた。すぐに立ち上がろうとした時に目線を感じて振り向くと・・・ユリア嬢と目が合った。
ユリア嬢は悲しげな瞳をしていた。子犬のようなアーモンド型の瞳が僅かに潤んで見える。悄然としてくるりと校舎の方に戻って行く姿が悲しげだった。私の全身がプルプルと震えた。もう、絶対に詐欺師女も愚かな側近候補達も許さない!
その場から素早く立ち上がると王宮に戻り、今までの証拠を吟味した。ここ数日の詐欺師女の行動から、あの女のある企みを知りニヤリと笑った。
影たちに指示を飛ばしながら、ユリア嬢を思った。悲しませて済まなかった。詐欺師女は絶対成敗してみせる。と心に誓ったのだった。
ーーーーーーーーー
次からユリアの視点に戻ります。
あと少し、あと少しと自分に言い聞かす。外堀は完璧に埋めてきた。絶対ユリア嬢を逃がさない。
そんなある日、曾祖母様が懸念したようにエリシア・リッチモンド男爵令嬢が編入してきたのだ。
美しいと皆が褒めたたえたが、私にしてみたら平凡な只の女だった。しかも身分差があるのにも関わらず、馴れ馴れしくまとわりついてくる。側近候補達は短期間に全員この女に籠絡された。この胡散臭い女のどこにそんな魅力があると言うのだ。
〘嘘つき女は詐欺師。追い出す為の10ヶ条!〙を思い出す。その内の1つ〘嘘つき女は詐欺師。まず女の魔法を見極めろ!〙を実行してみる。
■鑑定結果:以下の魔法が発動中
〘魅了:上級〙、〘惑わし:上級〙
▼スキル
『乙女ゲームの強制力』
なんと、曾祖母様が書き残した鑑定結果と全く同一だったのだ。曾祖母様でも成敗に相当手こずった相手だ。私のユリア嬢に何かあったらと思うと下手なことが出来ない。
〘嘘つき女は詐欺師。追い出す為の10ヶ条!〙をさらに思い出す。その内の1つ〘嘘つき女は詐欺師。詐欺師女に惑わされない味方を作れ! 〙を次に実行した。
まず、父上に報告する。曾祖母様の日記をご覧頂きながら、今同じ状況であることを告げた。
父上は、日記の内容に非常に驚いた様子だった。最後には、お祖母様・・・。と溜息を付かれた。
「エディオン、今学園で同じ状況だというのだな。その卑しい女を退学にさせれば良いか?」
「それが・・・側近候補達が女に籠絡されていて、正当な理由が無いと王家への非難となりかねません。彼等は有力貴族の令息達なのでのちのちの火種は余り残したくないと・・・。」
父上はふむっと頷くと「では、始末しよう。」と簡単に仰った。
「それも考えましたが、曾祖母様の日記に始末しようとすると、必ず邪魔が入る。とありました。どうやら『乙女ゲームの強制力』という怪しいスキルが関係しているようです。それに・・・あの女が死のうとどうなろうとどうでも良いですが、ユリア嬢が知って軽蔑されたらと思うと・・・。まぁ、ユリア嬢に危害を加えたらサクッと殺しますけど。」
そういって笑った私の顔を見た父上の顔色が蒼白になっていた。
「わっ分かった。私が何か力になれることは無いか?」
「精神魔法に耐性がある者たちを数名お借りできますか?何があるかわからないので、そのもの達には精神魔法無効の魔法石も携帯させてください。その内の1人をユリア嬢の警護の為、同級生として編入させてください。他の者は詐欺師女の企みを暴く為に影で動いて貰います。」
「分かった。」
「あと、記録用の魔法石をお願いいたします。学園中に設置しますので15個ほどお願いいたします。私と先程依頼した者たちにも記録用の魔法石を持たせてください。」
「分かった。エディオン、余り無茶をするなよ。今日ほどお前がお祖母様に似ていると思ったことは無い。ユリア嬢に執着するのは分かるがお前は王子なのだ。冷静に行動するように。」
「分かりました。」
ユリア嬢に正式に婚約を申し込んだ際、拒否されたら攫って既成事実を先に作ってしまおうと企んでいたが・・・この様子では父上には事前に打ち明けない方が良いだろう。
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賢妃キャサリンの日記より引用
〘嘘つき女は詐欺師。追い出す為の10ヶ条!〙
①まず女の魔法を見極めろ!
②詐欺師女に惑わされない味方を作れ!
③必ず記録せよ!
④スケジュールを把握せよ!
⑤見張りを立てろ!
⑥企みを潰せ!
⑦詐欺師女の協力者は徹底的に潰せ!
⑧スキルに気をつけろ!
⑨女の魔の手から身内を守れ!
⑩成敗は徹底的に行え!
※王子はこの10ヶ条に従って暗躍しています。
ーーーーーーーー
閑話休題
公爵夫妻を呼び出し、事の仔細を説明する。今回は公爵家自体に影響がある可能性を考慮して、嫡男であるイスツィア殿も呼び出した。
私がユリア嬢を婚約者に希望していることや、今回のことをすぐには飲み込め無かった様子だった。パーティーには1度もエスコートしたこともなく、ユリア嬢への好意を表沙汰にしたことも無い。だが、私がユリア嬢への思いを語るとイスツィア殿は最期には青ざめて公爵家の警備を通常より倍に増やすことを約束してくれた。公爵夫人がいれば滅多なことでは心配は無いかと思ったが、これでより1層安心できる。ユリア嬢を守る為、必ず詐欺師女の尻尾を捕まえてやる!
魔法石を手に入れ、〘嘘つき女は詐欺師。必ず記録せよ!〙に記されていた設置場所を回っていく。だが、何故か同じ場所に真新しい魔法石が置いてあった。数も同じ15個。全て新しい魔法石に入れ変えて自室で再生してみる。何とユリア嬢の姿が映し出されていた。自分より高い場所に設置する為に、ヨットットと一生懸命手を伸ばしたり、よっこらせ!と訳の分からない掛け声と共に映し出されていた。
ああっその愛らしさといったら!
可愛らしさに身悶えしながら、間者に魔法石で記録を撮って貰えば良かった!と今更ながら後悔した。
愛らしく、可愛いユリア嬢をこの魔法石みたいに閉じ込められたら良いのに。と不埒なことを思いながら制服のブレザーの2箇所の内ポケットに入るだけの魔石を入れてみる。ポケットの魔石に触れると、ユリア嬢とどこかで繋がっているような気がした。
詐欺師女はなかなか尻尾を出さなかった。婚約者候補達と諍いをおこしてはベタベタと無遠慮に触ってくる。名を呼ぶなと何度も注意するが、改めようとしない。私が苛立つと側近候補達が取り成してくるのだ。全く使えない奴らだ。ある日、ユリア嬢不足に陥った私は、ユリア嬢がいつも昼食にやってくる裏庭のベンチ近くまでやって来た。詐欺師女と側近候補達をやっと巻いたのだ。ウキウキとユリア嬢が来るのを待っていると、突然背後からみーつけた!と声と共に詐欺師女が抱きついてきた。すぐに振り払ったが、気持ち悪くて鳥肌が立つ。思わず手打ちに仕掛けたが、詐欺師女の周りを側近候補達が囲んでしまう。舌打ちしたが仕方なく手打ちは止めた。
「あそこにベンチがあるわ。あそこで食べましょうよ。」
「そこはダメだ!やめろ!」
ユリア嬢の指定席であるベンチによりによって行こうとする。ユリア嬢がもうすぐ来るはずなのに!だが、側近候補達は私より詐欺師女の言葉が絶対なのか、半ば無理やりベンチに座らせた。すぐに立ち上がろうとした時に目線を感じて振り向くと・・・ユリア嬢と目が合った。
ユリア嬢は悲しげな瞳をしていた。子犬のようなアーモンド型の瞳が僅かに潤んで見える。悄然としてくるりと校舎の方に戻って行く姿が悲しげだった。私の全身がプルプルと震えた。もう、絶対に詐欺師女も愚かな側近候補達も許さない!
その場から素早く立ち上がると王宮に戻り、今までの証拠を吟味した。ここ数日の詐欺師女の行動から、あの女のある企みを知りニヤリと笑った。
影たちに指示を飛ばしながら、ユリア嬢を思った。悲しませて済まなかった。詐欺師女は絶対成敗してみせる。と心に誓ったのだった。
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次からユリアの視点に戻ります。
応援ありがとうございます!
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