朝のひだまりの中、君の隣で

有森崎あたる

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25時のバレンタイン・キス ③-1 〜バレンタイン当日〜

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バレンタイン当日。

本当なら、隣に寝ているはずの彼の横顔を思い浮かべながら、僕はベッドの中でゴロゴロする。

「早く起きてもなぁ…することないし…」

顔を枕に沈めてみても、彼のことが気になってしまう。

「何時に帰ってくるんだろ…」

気になり出したら、止まらない!

(そういや、帰ってくる時間聞くの、忘れた…新幹線乗るときには連絡くれるよね?きっと…仕事うまくいったのかな?余計トラブって?まさか?明日?…とか)

さらに気分が落ち込んでいく。

(いらないことは考えないでおこうー!)

僕は、頭から布団をかぶり、もう一度寝ようと試みる。

(……)

ぷはっと布団をめくり、体を起こす。

「ダメだ…全然寝れない…もう起きよう…」

布団から出ると、ブルっと震えるほど肌寒い気温に、僕はエアコンのスイッチを入れる。
そのまま、キッチンに立ち、ティーバックを取り出して、ポットでお湯をわかす。
大きなあくびをしながら、うううーん…と背伸びを1つ。
おもむろに、テレビのスイッチを入れると、ニュース番組が映し出された。
大して興味もないが、他の番組を見たいわけでもなく、静かすぎる時間を紛らわそうと、僕はボォーとしながらチャンネルを無意識に変えてみる。
少しして、ポットのお湯が沸いたので、僕はマグカップにお湯を入れ、紅茶を淹れる。
パジャマのまま、ソファに座り込むと、淹れたての紅茶をすすり、スマホをチラッと見た。
表に何も表示されない、真っ黒な画面を見つめると、僕はスマホを手にし、彼にメッセージを送ってみた。

《何時に帰るの?》

既読にならないメッセージをしばらく見つめる。

(やっぱ、忙しいのかな?…帰ってくるの、遅くなる…のかな)

キッチンカウンターに置いた、赤い箱を見つめる。

(せっかく作ったのに…渡せる…よね?)

そのとき、パッとメッセージが既読になる。

(なった!既読!!!今、スマホ見てるんだ!!!)

メッセージを通して、彼とつながった気がした僕は、嬉しくて一瞬で気分が舞い上がる。

ポン!と彼からメッセージが入る。

《お昼過ぎには、大阪出れると思うから、夕方には戻れる》

(…ゆ…夕方か…)

また一瞬で気分が落ちそうになるのを我慢して、僕はパンパンと頬を叩く。

「仕事なんだし、トラブったんだし、逆にねぎらってあげないと、だよな」

僕は、紅茶を一口飲むと、あ!と声をあげ、あることに気付いた。

「そういや…戻ってくるの、夕方か…」

じっと考え込んで、

(夕方ってことは、すぐに晩ごはん…か…大阪から疲れて帰ってくるわけだから、それから外食っていうのも、可哀そうだな…」

僕は、テーブルの上のタブレットPCをチラッと見る。

(…作ってみる?)

自分に問いかける。

(でも?できる???チョコ出来たから…できるよな?料理ぐらい…)

仕事で頑張っている彼の姿が脳裏に浮かぶ。

「よしっ!!!2人の初めてのバレンタインだし!!!この際頑張るかぁー僕も!!!」

と、タブレットの中の検索サイトを立ち上げた。

「初めての人でも簡単に出来る料理といえば…」

僕は、指でタブレットの画面を動かす。

「やっぱ…これだよな、切って煮込むだけだし…」

僕は、スクッと立ち上がり、急いで洋服を着がえると、ショルダーバッグを掴み、玄関の方へ駆け出した。

「買い出しにいかなくっちゃ!!」








「大丈夫です。間違いなく揃っています」

数え終わった大きな段ボールの箱を前に、俺は、片手に抱えたPCの画面の中の発注書の内容と数字と照らし合わせる。

「おっしゃー!そしたら超特急で中に運ぶで!」

その担当者の掛け声で、一斉に従業員たちが動き出す。

「ちょっと、君も運ぶの手伝って、展示会の時間には間に合わせたいから」

「はいっ!」

俺はスーツのジャケットを脱ぐと、大きな段ボールをうっしゃ!と声を上げながら、持ち上げる。

「おっ!1人で持てるんか?さすがやな~」

担当者は、台車に荷物を載せながら、俺の背中から声をかける。

「はいっ!俺、普段スポーツしてるんで、体力には自信あります!」

と、白い歯をのぞかせて、俺は笑った。

「頼もしいなぁ~!担当、君でよかったわぁ~、次回も頼むで!」

「はいっ!」





そして、全ての荷物を運ぶために、何度かの往復を終わらせると、その担当者は、俺の側に寄ってきて、

「どうぞ」

と、1本のお茶を差し出した。

「喉、乾いたでしょ」

「ありがとうございます」

俺は、展示会場の廊下の窓枠に腰かけると、その隣に同じように腰掛けた担当者が、申し訳なさげに手を頭の後ろに当てながら話し出した。

「昨日は、ついカッとなって、口調がキツなってしもて、本当に申し訳ないことをしました」

急に謝る担当者に驚いた俺は、思わず謙遜してしまう。

「いえ、とんでもないです、そもそも間違えたのはこちらですし…」

「でも、君は最後までちゃんと誠意をもって対応してくれた、ありがとう、どうですか?お昼、一緒に行きませんか?おいしいところ、ご案内しますよ」

一瞬躊躇して、俺は口を開いた。

「本当に申し訳ないんですが、実はこの後、約束がありまして…」

と、言いかけると、担当者は、ピンときた様子を見せた。

「あ…そうでしたね…そうですよね…はは…気が利かんですんません…今日はバレンタインでしたね」

すっと立ち上がった担当者は、俺の前に立つと、目の前に手を差し出した。

「今日は、ほんまにごくろうさんでした、助かりました、これからも頼みますね」

俺も立ち上がり、差し出された手を握る。

「はい!ほんとうにありがとうございました!」

と、お辞儀をした。

「もうちょっと待ってくれたら、駅まで送りますよ」

「いえ、急いでるんで、このままタクシーで帰ります」

担当者は、笑いながら俺を見ると、

「よっぽど、はよ帰りたいんやね、恋人に会いたいんや」

俺は照れながら、答えた。

「はい、大切な人なんで」

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