斯波良久BL短編集

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中

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ドワーフの鍛冶師(異世界)

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「頼もーーーー」

 鍛冶屋のドアを叩いたのは黒い髪の青年だった。アーノルドと名乗るその青年がイドラの鍛冶屋に通うようになったのは今から1ヶ月ほど前のこと。なんでも夏に王都で開かれる武闘会で優勝したいのだとか。ドワーフが打つ剣は逸品だとどこかから聞きつけてやって来たのだ。

 だがこの青年はてんでダメだ。

「お前に作る剣はない」
 イドラはシッシッと空で手を払い、さっさと出て行けとジェスチャーを送る。けれどアーノルドは一向に引き下がる様子はない。ズンズンと店の中へと進み、イドラの前で勢いよく下履きを降ろした。

「お願いします!」
 ボロンと晒されたそれは若さゆえか張りがあり、綺麗なものだ。けれどそれもすでに見慣れたもので、またこれか……と言わんばかりにイドラは大きなため息を吐く。

「お前は一体いつになったら諦めるんだ……」
「イドラさんが剣を作ってくれるまでです!」
「俺は俺が認めた相手にしか作らねぇって言ってんだろ」
「だから認めてもらえるよう、トレーニングしてきました!」

 ペニスを勃起させながら、アーノルドはよろしくお願いします!  と頭を下げる。こんな相手は初めてだ。

 一体どうしたら諦めてくれるのだろうか?
 厄介な男に目をつけられたものだと、イドラは重たい腰をあげる。

「そこのソファに腰かけろ」
「はい!」
 面倒だが、サッと済ませていつも通り突っ返してしまおう。イドラはソファに浅く腰掛けたアーノルドの足元にしゃがみ、反り立つ竿に手をかけた。




 鍛冶の腕の優れたドワーフは、大抵がドワーフの里で一生を過ごす。人里に降りてくる者はごく稀で、決まった相手からの仕事しか受けることはない。
 ドワーフは基本、頑固な性格なのだ。
 高級な酒をたらふく飲ませた所で懐柔されることはなく、言質を取るために酔い潰そうとすれば逆に潰される。酒好きでザルな彼らと一晩酒盛りに付き合うことが出来れば認められることもあるが、よほど肝臓に自信がなければ難しいだろう。だからドワーフの剣が欲しければ他の方法で気に入ってもらうしかないのだが、通った所で気に入られることはなく、その方法を見つけ出せずに諦める者も多い。

 けれどイドラは違った。
 とある条件さえ満たしてくれれば、誰からの依頼も受けると宣言したのだ。
 ドワーフが誰からの依頼も受けると聞きつけ、イドラの店には多くの冒険者が殺到した。けれどすぐに波は引いていった。『とある条件』の内容を聞き、楽にドワーフの武器が手に入るはずがないか……と諦めたのだ。

 イドラは『これを使って、一晩俺を満足させてくれ』と、やってきた冒険者達の股間を撫でた。
 イドラはドワーフ達との力任せの性行為に飽き、わざわざ里を離れ、多くの種族が入り混じる王都で鍛冶屋を開いたのだ。ここなら自分を満足させられる人材がいるだろうと、ドワーフの武器をエサにした。

 けれどイドラは女のように柔らかい体つきでなければ、エルフのような綺麗な顔立ちでもない。ドワーフ族の特徴である小さな背丈に、筋肉と脂肪がついたずんぐりむっくりとした体形。おまけに仏頂面にヒゲを立派に蓄えており、鉄の匂いが身体に染み込んでいる。歳だってもう30を越えていた。

 いくら優れた武器を手に入れるためとはいえ、そんなおっさんを抱く決心のつくものは少ないのだ。ニタリと笑ったイドラを前に、彼らは背中を丸めて帰っていった。

 イドラが王都に店を構えて10年が経ち、今では飲み仲間まで出来た。
 だが初めの1ヶ月以降、ほとんど店を訪ねる者はいない。年々減っていき、今では年に2~3人ほど。我こそは!と名乗りをあげてドアを叩くのだ。大抵が名をあげようと王都へ来たばかりの新人で、特に武闘会が半ヶ月後に控えた2月が多い。
 毎年恒例の勇者達に、王都ギルドの酒場ではあと何人ででイドラを満足させられるかの賭けが行われているほどだ。
 イドラの行きつけの酒場であり、その存在は知っているが本人が参加しては不平等だという理由で参加はできない。代わりに素晴らしい剣を持った勇者が現れた暁には三日三晩好きなだけ飲むといいとの約束を結んでいる。
 イドラとしてはさっさと優れた剣と出会い、他人の金で好きなだけ酒をかっくらいたい所だが、今のところまだ本当の勇者とは遭遇できていない。
 全員がイドラを満足させることなく中で果ててしまうのだ。
 精を吐き出した竿をイドラは肉壁でしごくのだが、彼らはピクピクと身体を震わせるだけでろくな快感も与えてはくれない。期待外れだと引き抜いて、下着だけ戻して店先に転がしておくのがお決まりとなっていた。
 そしてアーノルドもまたイドラに敗れた勇者である。
 今年になって初めてやって来た勇者に心踊らせてベットに引き込んだというのに、アーノルドは挿入する前に果ててしまった。まさか剣が欲しいとドアを叩いた者が、軽くしごいただけで果てるとはイドラ自身も想定していなかった。先走りもそこそこに、濁流のような白濁を吐き出し、顔を赤らめた。まるで自慰すらも知らぬ幼子のようだ。プルプルと震えたアーノルドは下着と下履きを思いきり引き上げ、ベルトをカチカチと鳴らしながら走り去ってしまった。
 ここまでの期待外れはいない。
 すぐにやって来た2~3人目の勇者も挿入まで到達せず、今年は不作だな……とため息を零した。

 人がやってくる気配もないため、スゴスゴと住居へと戻り、ベッドの上に寝転がる。ベッドサイドから取り出した自作の張り形で尻の穴を犯しながら、同時に大手商会で購入したスライム壺でペニスをしごく。どちらも逸品と呼ぶに相応しいがやはり人が与える刺激には到底叶いそうもない。
 王都に来てから受ける仕事といえば、城からの依頼のみ。破格の値段を一括で支払ってくれるため特例として請け負っている。だがそれも店の家賃と食費代、その他生活費諸々を稼ぐためであって、条件を満たさない相手からの仕事を他に受けるつもりはない。
 だがここまで不作が続くとなると、飽きたはずのドワーフ同士の性行為すら恋しく思えてくる。

 イドラも過去に一度だけ、獣人の集まる男娼館を利用したことがある。尻は犯してもらうように取っておくと決め、挿入する側を選んだ。だがたった1時間中を擦っただけで獣人は根を上げてしまった。イドラはまだ一度しか発していないというのに「勘弁してくれ」と泣きついてきたのだ。犬獣人は体力に自信があると聞いていたイドラはひどく落胆し、店の者が代わりにと連れて来た尻の濡れた猫獣人へと元気なブツを差し込んだ。今度は1時間と持たずヘロヘロに果て、大きく空いた穴からはイドラが吐き出した白濁をだらしなく垂れ流した。その次はトラ、ネズミ、ブタ、ヒツジと種族を変えたが結果は同じ。待ち時間に酒をサービスされたイドラの性行為に耐えられる者はおらず、もう来ないでくれと頭を下げられてしまった。その話は他の店の耳にも届き、男娼はどこも出禁になり、商会で売っているスライム壺だけが王都での相棒となった。
 誰かを抱き、抱いてもらえるなら、そろそろドワーフの里に帰ってしまおうかと頭をよぎる。
 けれどすぐに頭を振った。今ここで諦めてしまえば何のために10年も待ち続けたのか分かりはしない。

 今年はたまたま不作だっただけ。
 厄介なアーノルドは武闘会が始まる前には姿を消し、来年には尻の青い勇者がまたドアを叩くはず。運が良ければ人族以外の獣人やエルフ族が混ざるかもしれない。
 今年はこれで我慢だとイドラは引き出しから一層大きな張り形を取り出す。この品はドラゴン討伐を果たした飲み仲間から特別に譲り受けたドラゴンペニスの写真を元に作っている。対価は宝飾品。喧嘩した妻の機嫌取りに必要だったらしい。武器ではなく宝飾品ということで特別に承諾したが、あの時の判断に間違いはなかった。ドラゴンディルドで奥深くを突きながら、イドラは小さく身体を震わせる。快楽の波に乗るにはまだ弱いが、肉壁を圧迫しながら突き進む感覚はこれでしか堪能できない。

 いっそドラゴン探しに出た方が早いかもしれない。
 だがいくら身体が丈夫なイドラでも野生のドラゴンに抱かれるつもりはない。安全にドラゴンに穴を責めてもらうにはテイムし、命令を聞かせる必要がある。けれど魔法の才能がないイドラがドラゴンをテイムできるようになる確率はほぼ0に等しい。ドラゴンをテイムできる知り合いもいない。

「はぁ……」とため息と喘声が混ざったものを吐き出しつつ、擬似核が壊れ、溶け出したスライム壺をゴミ箱に放り投げた。


 翌日、やはりアーノルドは店へとやって来た。
 まだ諦めるつもりはないらしい。
 今日は天井に向かって勃ちあがった竿の根元にリングを装着している。誰かに入れ知恵をされたのだろうか。店に来る前から根本を押さえつけられたペニスは息苦しそうに筋を立てている。

「こんなもの慣れねぇ奴がつけるもんじゃねぇぞ」
「練習したから大丈夫……です」

 イドラが筋を撫でただけで、服を持ち上げる手を震えさせる。それの一体どこが大丈夫だというのか。顔はほのかに赤く染まっており、瞳は潤んでしまっている。まるでイドラがいじめているようだ。悪戯心で濡れた先端を爪で引っ掻けば、「ひゃぁうっ」と声と共に少しの精子を吐き出した。けれどリングのお陰で一気に吐き出すことはできず、アーノルド本人もまだペニスに残る違和感を抱えているのだろう。股をモジモジとすり合わせながら、どこか物欲しそうにイドラを見つめている。誘いに乗るのはシャクだが、アーノルドの濡れた青の瞳にはそそるものがある。そり立つ木の下にぷるんと実った果実に手を伸ばし、2つ同時に揉むように遊んでやれば耐えきれずに背中を大きく後ろへと逸らした。もちろん逃がしてやるつもりはない。空いた手で腰をガッチリとホールドすれば、逃げ場を失ったアーノルドは服から手を離し、代わりに声を漏らしそうになる口へとあてがった。

 いっそ嵌めるのが趣味のドワーフの元へと頭を下げた方が早そうなものだ。いじめ甲斐がありそうだと、喜んで仕事を引き受けてくれることだろう。だがその場合、武闘会に間に合うように王都へと帰って来られるかは不明だ。

 好きなように調教を施され、優勝するという夢さえも頭から抜け出すほどの快楽を与えられるかもしれないーーとそこまで考えたイドラの頭にとある名案が浮かんだ。

 名刀に出会えないのなら、自分で作ればいいのではないか?

 イドラはドワーフだ。
 鍛冶を得意とするドワーフに鍛えられない剣などない。
 それが例え雄に備わった剣だとしても、剣に違いはない。

 なぜそんな簡単なことにも気づかなかったのだろう。
 イドラは自分の無能さにため息を吐き、そして名刀の材料を持つ少年に耳打ちをする。

「俺専用の剣になると約束するなら、お前の武器を作ってやるよ」
「本当ですか!?」
「ああ。だが代わりに俺を満足させるまで解放してやるつもりはねぇ」
「剣を作ってもらえるならそれで構いません!」

 ペニスを元気よくおっ勃てながら、アーノルドは目を爛々と輝かせる。よだれの垂れた先端に舌を這わせて舐めとれば、小さく身体を震わせた。けれどよほど剣を作ってもらえることが嬉しいのだろう。達しながらも「俺の剣……」とうわごとを呟いていた。


 それからアーノルドの鍛錬は続いた。
 イドラと約束した通り、毎日決まった時間に鍛冶屋を訪れイチモツを晒す。少しずつ刺激に慣れさせ、口での扱きと素股にも慣れさせる。タマがヒゲに触れる度に頬を赤らめるので、仕方なく適当な紐で縛った。武器の仕上げに取り掛かる頃にようやく穴に入れられるくらいに育ち、ベッドに寝転がせたアーノルドのペニスめがけて腰を下げた。ここまでの苦労を晴らすようにスクワット形式でしごいてやろうかと画策していたのだが、穴の入り口に先端が触れただけで簡単に果ててしまった。

「まだダメなのか……」
 呆れた目を向ければ、アーノルドは両手で顔を抑え込んでいた。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
 赤くなって謝罪を繰り返す。
 今になって抱くのを戸惑い始めたのだろうか。
 折角ここまで育てたと言うのに逃げられては水の泡だ。苛立ちをグッと押さえ込み、アーノルドの髪を撫でた。

「もう少し慣らすか」
 ご機嫌をとるようにそう告げたはいいものの、それからいくら鍛えても一向にアーノルドが剣として覚醒する兆しは見えなかった。

 すでにアーノルドへ対価として渡す品は調整を終え、完璧な状態に仕上がっていた。後は使い手が慣らすだけ。彼の実力のほどは知らぬイドラだが、この剣さえあればいい順位にのめり込むことが出来るだろうとの自信があった。

 けれどそれを渡せずにいた。
 剣を渡したら最後、アーノルドは二度とこの鍛冶屋に足を運ぶことはないだろうからだ。
 短い付き合いではあるものの、アーノルドは非常に真面目な青年であると言い切ることができる。通常の取引であれば不義理をするような男ではないだろう。けれど約束の内容が内容だ。最近では拒みこそしないが、イドラから目を逸らす事が増えてきた。
 武器のためにと頷いたはいいものの、何度もドワーフのおっさんと性行為を行う羽目になったことを後悔しているのだろう。

 一方、イドラの方はアーノルドへの愛おしさが徐々に芽生え始めていた。
 よく見れば綺麗な顔立ちに鍛えられた身体つき。手は顔に似合わず固く、よく剣を使い込んだ者のそれである。さぞかし女性にモテる事だろう。毎日イドラに呼びつけられる用事さえなければ、女としけこんでいたかもしれない。その上、武闘会で優勝すれば国中に名前を轟かせることとなる。そんなことになればイドラに用はないだろう。武器を作ってもらった恩など忘れて、さっさとどこかへと立ち去ってしまう。

 1人になった鍛冶場で鏡に映る自分を見つめながらボソリと呟く。

「こんなおっさん抱いてる場合じゃねぇよな……」

 選ぶ材料が悪かったか。
 はたまた鍛え方が悪いのか。

 大会を2週間前に控えた日、イドラはようやく完成した剣をアーノルドへと渡す決心をした。

「ほれ、お前のだ。受け取れ」
 鞘から抜き、刀身を光らせるそれにアーノルドは息を飲んだ。だが見た目だけで満足してもらっては困る。

「振ってみろ」
「は、はいっ!」
 スッスッと軽く振っただけで、空気をも切り裂いてしまう。ドワーフ一の腕と賞賛されたイドラの腕は未だ鈍っていない。

 間違いなく今までで最高の剣だ。

「試し切りしてきてもいいですか!」
 興奮気味に切り出したアーノルドの背中を押し、笑った。

 最高の剣と、未完成な剣を送り出し、イドラはドワーフの里に戻る決心をした。

 すでに荷物はまとめてある。
 品の引き渡しさえ済んでしまえばもう王都に用はない。

 僅かな荷物と王城への手紙を手に、最後に看板を回収する。10年付き合った店に頭を下げ、イドラは王都を後にした。



「おお、イドラ。ようやく帰ってきたのか!  人の里はどうだった?」
 村に戻れば、見慣れた顔が次々とイドラの周りに集まってくる。イドラは王都土産の酒を掲げながら、おどけたように答えた。

「酒は悪くねぇが刺激に欠ける。もう何年もご無沙汰だぜ」
「じゃあ今日は早速宴としけこむか!」
「ああ!」

 やはり同じドワーフ族は話が早い。
 イドラから受け取った酒を抱えて、村長の家へと駆け出した。それからすぐに宴は始まった。

 うまい飯とうまい酒。
 酒が回れば欲も回り、宴のすぐ側では欲に溺れたドワーフ達が乱れ合う。

 もちろんイドラも。
 手近なものに抱きつきながら、尻をガンガンと遠慮なく犯される。尻の上にはぼたぼたとビールが垂れ「きたねぇな」と罵るのも忘れない。

「お前もきたねぇよっと!」
 ガハハと笑い飛ばしながら、ジョッキを片手に腰を振る。よほど機嫌がいいのか、空になった木製ジョッキを投げ捨て、イドラの前へと手を伸ばす。

「こっちもご無沙汰か?」
「相手がすぐにへばっちまうもんでな!」
 首を捻れば、大口を開けて笑うドワーフと視線が合う。人族のアーノルドとは似ても似つかない、ドワーフの男。歳だってイドラと大して変わらない。彼はイドラの雄を掴むと遠慮なくしごいた。白濁は勢いよく漏れる。けれどもやはり快感は中途半端で止まってしまっている。イききれない気持ちの悪さを感じながらも、同時に絶え間なく動いてくれることへの安心感を覚えていた。

 故郷に帰ってきたんだ。
 身体で里の空気を感じながら、夜中、イドラは10年の時を埋めるように様々な相手と交わった。



 里に帰ってもイドラの元には城からの依頼が定期的にやってくる。金には困っていないが、仲間達はすっかり人族の酒の味を覚えてしまった。イドラが土産に持ち帰った酒をどこで知ったのか、わざわざ手紙と共に運んできたせいでイドラは仕事を受けざるを得なかったのだ。

 近くの炭鉱で材料を集め、依頼をこなす。
 夜になったら酒を飲み、毎晩欲を満たしていく。

 そんな代わり映えのない日々は唐突に終わりを告げた。

「見つけましたよ、イドラさん」
 イドラの元に、アーノルドがやってきたのだ。
 汚れたフードを取れば、サラリと綺麗な髪が落ちる。以前よりもずっと美しさを増した青年に、イドラの喉はゴクリと鳴った。

「アーノルド、お前なんでこんなところに……」
「それは俺のセリフです!  勝手に居なくなって……。俺がどれだけ探したと思ってるんですか!」
「お前は欲しいものを手に入れたんだから、別に探す必要なんてないだろ」
「手に入れてませんよ」
「嘘つくな。腰に挿さってるのは確かに俺がお前に打った剣だ。それとも何か?  気に入らないから打ち直せとでも言いにきたのか?」
「違います!  俺はあなたが欲しい」
「は?」
「俺はあなた専用の剣でしょう?  なら剣である俺が鞘であるあなたを求めるのは当然です」

 こいつは一体何を言っているんだ。
 イドラは眉間を顰めたが、アーノルドはふわりと優しく笑った。

「あなたに認めてもらうために一人で鍛えたんですよ」
 耳元で呟き、そして細腕でイドラの身体を木へと叩きつけた。躊躇なくイドラの下履きを切り落とし、晒された下半身を愛おしそうに撫で回す。

「ああ、やっと入れられる」
 数年前からは想像もつかないほど慣れた手つきで、アーノルドはイドラの尻たぶを左右に割り、穴に舌をねじ込んだ。チュッと音を立ててキスを落としながら、甘い言葉を囁くのだ。

「イドラさん。あなたが認めてくれた剣です。受け入れてくださいね」
 指先で中の具合を確認したアーノルドは、鍛え抜かれた剣を取り出し、鞘へとあてがった。そしてイドラの腰を両手で固定し、押し込むように貫いた。

「っ…………ゔぁ」
 入り口で果てていた頃とは比べものにならないほど、それは躊躇なくイドラを突き刺す。奥までしっかりと届いたそれは硬度を保ったまま、ドワーフの行為さながら身体をぶつけ合うように抽送を繰り返す。侵入を許す度に肉壁はかき分けられ、アーノルドの剣の形が形成されていく。

 アーノルドはまぎれもない名刀だったのだ。
 手放した期間でこれだけ成長することが出来たとは、よほどいい相手に巡り会えたのだろう。
 自分の手で鍛え抜けなかったことに悔しさを覚えつつ、イドラは身をまかせる。

「っぐ……………ふぁっぐぁんん」
 押し寄せるような快楽にみっともなく上からも下からもよだれを垂らしながら野太い声を漏らす。

 気持ちが良ければなんでもいいか。
 どうせ満たし終えれば、アーノルドはドワーフの里を去るのだろうから。
 イドラはガクガクと身体を震わせながら、木の根っこに白く濁った栄養を与え続ける。

「ごめんなさい。俺一人だとここまでが限界で。だからイドラさん、もっと鍛えてください」

 ーーアーノルドが一生、側を離れる気がないことも知らずに。



 快楽に意識を委ねたイドラが目が覚ますと、アーノルドは幸せそうな笑みを浮かべてーーイドラの股間に顔を埋めてペニスをしゃぶっていた。
 美味そうに頬いっぱいに頬張って「イドラさんこれからずっと一緒にいましょうね」と笑うものだから、イドラはろくに働かない頭で「ああ」と短く答えた。

 それからピタリとイドラはドワーフの雄を咥えることはなくなった。酒を飲んでいる最中でさえ、嫉妬深いイドラの剣が彼を離さないからだ。時には人前で繋がりを披露する剣に、ドワーフ達は『さすがドワーフ一番の鍛冶師。まさか好みの剣を育てるとはな』とイドラを揶揄うのだった。
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