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Chapter10:秋の味覚をご一緒に

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「チャコ叔母さんは、大好きな啓吾さんと啓吾さんのご両親と家族になりたいって思ってた。啓吾さんが亡くなった後に栗山家の一員になりたいって強く願ったのも、一番の理由は『大好きだから』で……『大好きな人達が守っている栗を継いで頑張りたい』という気持ちもあったんだけど…………」
「…………けど…………?」

 事前に叔母さんから、過去の話をあおくんにしても良いって了承は得ている。だけどこの話は……端的に話すにしても、姪の私にとっては心が痛む。

「…………ほら、啓吾さんも……それからご両親も病気になってしまったでしょ? 因果関係なんてないのに、チャコ叔母さんは分家の人達に嫌われてしまって。
 啓吾さんと約束していた『一緒に栗ご飯を若い世代に振る舞う』って夢も、強制的に奪われてしまって」

「…………」

 叔母さんは栗山家に入って間もなく、ご病気のご両親の自宅介護を始めた。
 介護で忙しかったから、栗のお世話もお料理が出来なかった……とも言えるけど、逆を言えばという事にもなる。
 私が生まれるずっと前の話だけど……当時の叔母さんはとっても辛くて悲しい思いをしながら暮らしていたんだ。

「叔母さんはね、『自分には元々料理のセンスも才能もなかったし、農家もきっと向いてないから平気』って言うの……だけど絶対に辛かったと思う。ご両親を見送ってお父さんが栗を守る話が正式に決まった後、叔母さんは大学生になってコンビニに就職して……オーナーになって今があるんだ」

 私がそこまで話をすると、あおくんはとっても辛そうな表情をしながら

「そっか……そうだったんだ……」

 と、絞り出すような声で相槌を打った。

「お父さんは会社員続けながら栗の事も頑張っていて、お姉ちゃんもそれを良く知ってる。彼氏さんが栗農家だって知ったのはお付き合いしてしばらく経ってからだったらしいんだけどお姉ちゃんも彼氏さんも『運命的な出会いだ』って感じたみたい。
 だから今年実った栗はね、新しい世代に受け継がれる意味でも喜ばしいし、私も叔母さんも栗ごはんにして食べるのを楽しみにしていたんだ」

 でも、「今年の栗は特に楽しみにしていた」の意味合いで話した私の言葉に、あおくんはハッと驚いていて……

「えっ? そんな大事な栗なのに、久子さん抜きで……俺なんかに食べさせて良かったの?」

 炊き立てのご飯の場にチャコ叔母さんが居ない事を酷く心配している様子でいたから、私はフルフルと首を左右に振って

「チャコ叔母さんがね、今回はあおくんに炊き立てを食べさせてあげてって言ったの。自分は後でもらえばいいからって」

 あおくんの目をまっすぐに見ながらそう答える。

「でも…………久子さんだって、楽しみにしていたんだよね?」
「うん、そうだよ。だけどね、チャコ叔母さんは『炊き立ての栗ご飯を自分が食べる』よりも『若い世代の人に食べてもらいたい』って気持ちの方が強いんだよ」
「あっ……」

 次いで補足した「若い世代の人に食べてもらいたい」の意味を、あおくんはようやく理解してくれて

「…………そう、がチャコ叔母さんと栗山啓吾さんの、一番の望みで夢でもあるからね」

 私は彼に微笑みながら、今日この場にあおくんを誘って栗の皮剥きをして、栗ごはんを食べている意義を伝えたんだ。
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