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Chapter10:秋の味覚をご一緒に

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「ええっ?! はな、知ってたの??
 俺が母さんに金振り込んで頭を抱えていたところ、見られてたの?!!」

 緑茶も飲み終えたところで、私は思い切って先日あおくんが銀行の入り口で思い詰めた様子でいたという話をしてみた。

「正確にはね、みどりちゃんが見かけたんだよ。みどりちゃん、たまたまあおくんの大学周辺を歩いてて、ATM行く用事があったみたいで」
「ああ……みどりさんか。そっかぁ」
「振り込んだ金額も結構大きかったんだよね? 実は……具体的な金額も、私知ってるっていうか、噂で聞いてて」
「それもみどりさんにバレてるの?!! みどりさん、俺が振り込みの操作してるそばにいたの??」

 「金額」の話を持ち出したらあおくん顔色は真っ青に変わる。

「ああ……! 違う違うっ! みどりちゃん、あおくんの振り込み操作を覗いたんじゃないよ! それは別の人の話からっ!! 今、コンビニで私がシフト入れない枠をあおくんと同じ大学の四年生の澤村って人が年末まで担当する事になってて」

 私もまた説明が下手くそだから、慌てて言い直したんだけど

「えっ……? 澤村って、澤村?!」

 やっぱりバイトの澤村くんはあおくんと顔見知りだったようだ。

……が、正しいのかどうか私も分からないけど……すごく噂好きであおくんの家族関係をペラペラ喋ってて」
「ああ……じゃあ間違いないよ。アイツ、他人の噂大好きで都合よく盛って拡散するんだ。
 ついこの前もゼミの中で俺の貯金が無くなったって噂が広まっててさ、俺よりもまさやんが火消しに動いてくれていたんだよ」

 あおくんは重苦しい溜め息をつきながら頭をめちゃくちゃに掻きむしっていたから

「そうだったんだね……」

 ワシワシと動く両手を、必死になでなでして宥めてあげた。

「うん、全財産を失ったわけではないんだよ。ほら元々はさ、まさやんと車のディーラー行って車買おうとしてただろ? 母さんに振り込んだ40万は車購入資金として貯めていた分であって、生活出来ないほどにまで困窮してるって意味じゃないんだよ」

 私のなでなでで、あおくんは落ち着いてそう話すことが出来たようで

「そうだったんだぁ……生活困ってるわけじゃなかったんだね」

 その点は私もホッとする。

「うん。貯金の一部が減ったってだけだから、はなとは今まで通りデート出来るし、来月もゴムのお金をはなに渡せるから」
「ゴムのお金はいいよぅ……ふふふ♪」
「いやいや、彼氏としてのケジメだから。これは」
「まぁ……嬉しいっちゃ嬉しいけどぉ」

 ホッとしたから、お互い「あの時のゴム」の話題をポロッと口から出せちゃったし

「今日もさ、そのゴム……減らしちゃう?」

 なんとなく甘い雰囲気になって……

「うん♪ 減らしちゃう♡」

 お互い、おでこをコツンとくっつけ……それから、チュッとキスをした。

「んっ……」
「んふぅ……」

 緑茶で口の中がサッパリ出来たはずなのに、今日のキスはとっても甘く感じるし

「フワッと、いい香りがするね♡」
「うん♡」

 ブランデーは入っていないものを開封したはずなのに、私もあおくんも、酔っ払ったみたいに目がトロトロだ。


「秋の味をお腹いっぱい楽しんだけど、はなをいっぱい食べたい気分だよ♡」
「ああぁん♡」
「はなったら、俺をモグモグしすぎだよ?」
「だあってぇ……別腹なんだもん♡」

 窓の向こうが真っ暗になって、秋月の光が私達を照らしても……

「んっ♡ はなぁ、おいし♡」
「私もぉ♡ あおくんのこと、もっともっと食べちゃうもん♡」

 私達の口は、まだまだお互いを味わいたくてたまらなくなっていて……

 気がつかない内に、翌朝になってしまったのでした♡



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