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本編
過去の傷と、癒えていく心7
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優しいハグに癒されてホワホワとした優しい感覚に包まれていたのだが……ふと朝香は
「あっ、そうだ! 奥さんの出産……!!」
夕紀からの電話内容を思い出して亮輔のハグを抜け出す。
「奥さんの出産って、もしかして奥園さんの?!」
スマホのメッセージをチェックする朝香の背後で亮輔が心配そうな声を出す。
「そうなの。昨夜急に破水して病院行く事になって……
実は夕紀さんからの着信内容はその件で、しばらく臨時休業するから上原くんにバイトはこの前ので終わりって事を伝えてほしいって言われたの」
「ぇ……病院って、切迫早産で入院もこの前あったのに」
朝香の説明に亮輔は顔を青ざめる。
「ごめんね、説明しないままになっちゃって……夕紀さんからの着信そのもので大変な事態になっちゃってたから」
朝香は申し訳ない気持ちになったものの、亮輔は朝香の頭を優しく撫でて
「俺が悪いんだから。あーちゃんは謝らないで。それよりも奥園さんの方が心配だよ。赤ちゃんなかなか産まれないのかな……緊急手術になったりしてないかな」
奥さんの状況をとにかく心配している。
「夕紀さんからのメッセージは届いてないなぁ」
「そっかぁ……俺の方にも……田上さんからのバイト契約終了のメッセージ以降届いてないや」
「夜中の3時過ぎだもんね。私達に連絡するには遅いから送るの遠慮してるだけなのかも」
2人共、自分のスマホを持ち上げながらほぼ同時に溜め息を吐き顔を見合わせ
「そういえば、りょーくんは奥さんの事を奥園さんって呼ぶんだね」
今更ながらその質問を亮輔にしてみた。
「奥さん」と呼ぶ人が大半な中、彼女を旧姓呼びしている人はほぼ居ない。朝香が知る中では亮輔くらいではないだろうか。
「うん、俺が『フラワーショップ田上』に通うようになって3年くらいなんだけど、先生は健人さんと結婚する前から通ってて『奥園さんが見立てるお花は長持ちするし元気になれるから大好き』って俺によく話してくれたから……だから俺はつい旧姓の奥園さんって呼んでしまってて」
なので亮輔から理由を聞き「なるほど」と納得する。
「そうだったんだ……皐月さんの影響だったんだぁ」
田上夫妻が結婚したのは皐月の死後より数ヶ月後で、皐月が『フラワーショップ田上』の客だった頃の健人と奥さんはまだ恋人関係だったのだ。
「まぁ、『奥園さん呼び』でも違和感なかったみたいで未だに呼んでもそのまま受け答えしてくれるよ。代わりに俺は『サンフラワーのサンちゃん』って呼ばれてしまってるけどね」
そして亮輔の口からようやく「サンちゃん呼びの謎」が明かされた。
「美優ちゃんからもサンちゃんって呼ばれてるもんね」
「うん。『派手なヘアスタイルしてるのに辛気臭い顔してるのは良くない』『明るいニックネームつけてあげなきゃ!』って言われて」
「私の『向日葵さん』みたいな感覚で『サンちゃん』って名付けられたんだね」
理由はごく単純なものであったし、名付けの発想が朝香と同じ向日葵由来だったのが微笑ましく感じてしまう。
「そうだね……奥園さんはサバサバしててぶっちゃけた話もよくしてくれるけど、すごく良い人だよね」
「だからこそ、無事に産まれてほしいなぁ」
「そうだよね……母子共に健康であってほしい」
2人の願いが通じたのか、健人から「無事に産まれたよ」のメッセージが亮輔のスマホに届いたのはそれから間もなくの事であった。
「あっ、そうだ! 奥さんの出産……!!」
夕紀からの電話内容を思い出して亮輔のハグを抜け出す。
「奥さんの出産って、もしかして奥園さんの?!」
スマホのメッセージをチェックする朝香の背後で亮輔が心配そうな声を出す。
「そうなの。昨夜急に破水して病院行く事になって……
実は夕紀さんからの着信内容はその件で、しばらく臨時休業するから上原くんにバイトはこの前ので終わりって事を伝えてほしいって言われたの」
「ぇ……病院って、切迫早産で入院もこの前あったのに」
朝香の説明に亮輔は顔を青ざめる。
「ごめんね、説明しないままになっちゃって……夕紀さんからの着信そのもので大変な事態になっちゃってたから」
朝香は申し訳ない気持ちになったものの、亮輔は朝香の頭を優しく撫でて
「俺が悪いんだから。あーちゃんは謝らないで。それよりも奥園さんの方が心配だよ。赤ちゃんなかなか産まれないのかな……緊急手術になったりしてないかな」
奥さんの状況をとにかく心配している。
「夕紀さんからのメッセージは届いてないなぁ」
「そっかぁ……俺の方にも……田上さんからのバイト契約終了のメッセージ以降届いてないや」
「夜中の3時過ぎだもんね。私達に連絡するには遅いから送るの遠慮してるだけなのかも」
2人共、自分のスマホを持ち上げながらほぼ同時に溜め息を吐き顔を見合わせ
「そういえば、りょーくんは奥さんの事を奥園さんって呼ぶんだね」
今更ながらその質問を亮輔にしてみた。
「奥さん」と呼ぶ人が大半な中、彼女を旧姓呼びしている人はほぼ居ない。朝香が知る中では亮輔くらいではないだろうか。
「うん、俺が『フラワーショップ田上』に通うようになって3年くらいなんだけど、先生は健人さんと結婚する前から通ってて『奥園さんが見立てるお花は長持ちするし元気になれるから大好き』って俺によく話してくれたから……だから俺はつい旧姓の奥園さんって呼んでしまってて」
なので亮輔から理由を聞き「なるほど」と納得する。
「そうだったんだ……皐月さんの影響だったんだぁ」
田上夫妻が結婚したのは皐月の死後より数ヶ月後で、皐月が『フラワーショップ田上』の客だった頃の健人と奥さんはまだ恋人関係だったのだ。
「まぁ、『奥園さん呼び』でも違和感なかったみたいで未だに呼んでもそのまま受け答えしてくれるよ。代わりに俺は『サンフラワーのサンちゃん』って呼ばれてしまってるけどね」
そして亮輔の口からようやく「サンちゃん呼びの謎」が明かされた。
「美優ちゃんからもサンちゃんって呼ばれてるもんね」
「うん。『派手なヘアスタイルしてるのに辛気臭い顔してるのは良くない』『明るいニックネームつけてあげなきゃ!』って言われて」
「私の『向日葵さん』みたいな感覚で『サンちゃん』って名付けられたんだね」
理由はごく単純なものであったし、名付けの発想が朝香と同じ向日葵由来だったのが微笑ましく感じてしまう。
「そうだね……奥園さんはサバサバしててぶっちゃけた話もよくしてくれるけど、すごく良い人だよね」
「だからこそ、無事に産まれてほしいなぁ」
「そうだよね……母子共に健康であってほしい」
2人の願いが通じたのか、健人から「無事に産まれたよ」のメッセージが亮輔のスマホに届いたのはそれから間もなくの事であった。
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