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本編
これからは一緒に……2
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「まぁ反省はそのくらいでいいよ。亮輔も分かっているだろうから」
俊哉は亮輔にポンッと肩を叩いてニコッと微笑み……それから
「亮輔の誕生日プレゼントを渡したくて。連れて行きたいところがあるから迎えにきたんだよ。勿論朝香さんも一緒に」
と言って2人を外へ連れ出そうとする。
「えっ? 私もですか?」
俊哉が「勿論」と言ったのも引っかかったがまさか自分も一緒だとは思わず朝香は素っ頓狂な声を出す。
けれど俊哉は動じる事なく微笑みの表情を保ったままで
「うん、亮輔への誕生日プレゼントは朝香さんと一緒に見せるのが最大の条件だからね」
と意味深な言葉を返してきたのだ。
「私と一緒……?」
「どういう事なんだろう?」
俊哉に言われるがまま例の高級車に乗せられ、俊哉の運転で出発する。
「車で移動っていっても、すぐだから」
目的地は近い場所だったようで、出発後5分弱でスピードを緩め建物の中へ入っていった。
「え、ちょっと」
停めたのは建物の契約駐車場のようなのだが、亮輔は何故か焦った様子でいる。
「えっ? りょーくんどうしたの?」
朝香もここの建物が何なのかくらいは知っていた。
いつも使う駅とは別路線上にある、商店街とは反対側にある住宅地だ。この建物はファミリー型マンションで駅近物件ともあって分譲開始するとすぐに全部屋埋まったと話に聞いている。
……というか梅雨時期に2人で行ったコインランドリーが入っているマンションなので、亮輔が何故にそこまで焦っているのか朝香は不思議でたまらない。
「だって……俊哉くんが『誕生日プレゼント』っていうし……もしかしてって思って」
車から降ろされ、マンションのエントランスに建ち……それからマンションを見上げる。
俊哉は相変わらずニコニコしたままで「早く、こっちこっち」と2人を手招きし慣れた手つきでセキュリティ解除をしている。
慌てて2人も自動ドアを潜り、俊哉についていく。
「このマンションも俊哉さんの管理物件……だったっけ?」
そういえば以前「このマンションに俊哉が住んでいる」という話を聞いた覚えがある。エレベーターを待つ間、朝香は亮輔にコソコソっと耳打ちして質問してみると
「うん……管理物件だし、実際住んでるし」
微妙な顔つきのまま亮輔は答え……それから
「中階層だけど、俺もここの一室もらってるんだよ」
と朝香の耳にコソッと教えてくれた。
「え?!!」
また大きな声が出てしまい、俊哉を振り向かせてしまう。
「さっ♪ どうぞこちらへ♪」
だが、朝香の大きな声は想定内であるかのように微笑みキープのまま俊哉は2人をエレベーターの中へと誘導し、階層ボタンを押したのだが
「ちょっ……! なんで最上階?!」
押されたボタンの数字に一番驚いたのが亮輔で
「うん、だって最上階にしたんだもん」
俊哉は動じる事なくサラリと返事する。
(最上階にした……とは??)
朝香にしてみたら何もかもちんぷんかんぷんである。
亮輔の住まいは中階層と先程聞いたから「最上階は管理者である俊哉の持ち物なのだろう」くらいにしか朝香は考えてなかった。なのに亮輔がここまで驚いているという事はその予想から外れているという証明になり……
「はい、新しい部屋の鍵。これが俺からお前に贈る誕生日プレゼントだ」
扉の前で俊哉は亮輔にカードキーを手渡した。
……だけでなく
「もう一枚は朝香さんも持ってね。なるべくなくさないようにね」
朝香にも一枚渡してきた。
「えっ……えっ??」
朝香と亮輔が焦っている様子が可笑しくてたまらない俊哉はクスクスと笑いながら
「も~! 大人なんだから察してくれなきゃ!」
と明るく言い、カードキーを持っている亮輔の手首を掴んで解錠させる。
「「えっ」」
慌てふためく中、鍵はあっさりと開いて……
「俺が管理してる自慢のお部屋だよ~! リフォームもこの日に合わせて計画して、必要な家具や家電もバッチリ揃えさえていただきました~!!」
2人を部屋の中へと押し込め後ろ手で玄関扉を閉める。
訳が分からず、亮輔も朝香も恐る恐る広いリビングへと足を踏み入れていったのだが……
「わあぁ!」
「すご……」
新築さながらの綺麗さに、2人ともリアクションが上手く返せていない。
「内装は口を出しちゃいけないかなーって思ってはいたんだけど、こっちがある程度揃えておかないと2人共遠慮しちゃうと思ったんだよ。家具や家電ってさ、部屋の統一感も重要になってくるから独断と偏見で選ばせてもらったんだ。
勿論朝香さんが気に入らないものあったり好みのものが欲しいってなったら買い替えてあげるよ?」
「いやいやいや……」
「いえいえ買い替えるだなんてそんなそんな」
俊哉の言葉に2人とも首をブンブン左右に振って同様の言葉を漏らす。
そしてようやく、俊哉の「誕生日プレゼント」の意味を朝香は理解する事が出来た。
(誕生日プレゼントは、りょーくんのお部屋の引っ越しって事だったのかぁ)
ずっとアパートに住んでいたのだから、中階層にあったという亮輔の部屋そのものも数年誰も住んでいない実質的な空き家状態にあったのだろう。それで俊哉は亮輔の部屋をこのタイミングで最上階の部屋へ丸ごと移す事を決めたのかもしれない。
「亮輔は今までの事情からずっと、高い建物を避けなければならない傾向にあった。4年前は中階層しか空いてなくてね。アパートに住まわせるしかなかったんだけど半年前に最上階のこの部屋の契約がなんとかなったから少しずつ準備を始めていたんだよ。まだ朝香さんと亮輔がお付き合いする前ではあったけどとりあえず20歳のプレゼントとしてここを見せてあげて『いつかここに住めるように気持ちを調えろよ』って言うつもりで。
でも、その心配もなくなってホッとしてるよ。朝香さんのおかげでここを亮輔に堂々と渡せる気になれたから」
俊哉は朝香に向き直り
「亮輔と一緒に、朝香さんも住んでもらえないかなって。
それが、俺の一番の希望なんだ。亮輔はもう無茶な真似はしないって心に決めてはいるんだろうけど万が一って事もあるからね。亮輔を支えてくれたら凄く嬉しいんだ」
朝香の目を見ながら真面目な口調で話し……それから
「よろしくお願いします」
深々と頭を下げる。
俊哉は亮輔にポンッと肩を叩いてニコッと微笑み……それから
「亮輔の誕生日プレゼントを渡したくて。連れて行きたいところがあるから迎えにきたんだよ。勿論朝香さんも一緒に」
と言って2人を外へ連れ出そうとする。
「えっ? 私もですか?」
俊哉が「勿論」と言ったのも引っかかったがまさか自分も一緒だとは思わず朝香は素っ頓狂な声を出す。
けれど俊哉は動じる事なく微笑みの表情を保ったままで
「うん、亮輔への誕生日プレゼントは朝香さんと一緒に見せるのが最大の条件だからね」
と意味深な言葉を返してきたのだ。
「私と一緒……?」
「どういう事なんだろう?」
俊哉に言われるがまま例の高級車に乗せられ、俊哉の運転で出発する。
「車で移動っていっても、すぐだから」
目的地は近い場所だったようで、出発後5分弱でスピードを緩め建物の中へ入っていった。
「え、ちょっと」
停めたのは建物の契約駐車場のようなのだが、亮輔は何故か焦った様子でいる。
「えっ? りょーくんどうしたの?」
朝香もここの建物が何なのかくらいは知っていた。
いつも使う駅とは別路線上にある、商店街とは反対側にある住宅地だ。この建物はファミリー型マンションで駅近物件ともあって分譲開始するとすぐに全部屋埋まったと話に聞いている。
……というか梅雨時期に2人で行ったコインランドリーが入っているマンションなので、亮輔が何故にそこまで焦っているのか朝香は不思議でたまらない。
「だって……俊哉くんが『誕生日プレゼント』っていうし……もしかしてって思って」
車から降ろされ、マンションのエントランスに建ち……それからマンションを見上げる。
俊哉は相変わらずニコニコしたままで「早く、こっちこっち」と2人を手招きし慣れた手つきでセキュリティ解除をしている。
慌てて2人も自動ドアを潜り、俊哉についていく。
「このマンションも俊哉さんの管理物件……だったっけ?」
そういえば以前「このマンションに俊哉が住んでいる」という話を聞いた覚えがある。エレベーターを待つ間、朝香は亮輔にコソコソっと耳打ちして質問してみると
「うん……管理物件だし、実際住んでるし」
微妙な顔つきのまま亮輔は答え……それから
「中階層だけど、俺もここの一室もらってるんだよ」
と朝香の耳にコソッと教えてくれた。
「え?!!」
また大きな声が出てしまい、俊哉を振り向かせてしまう。
「さっ♪ どうぞこちらへ♪」
だが、朝香の大きな声は想定内であるかのように微笑みキープのまま俊哉は2人をエレベーターの中へと誘導し、階層ボタンを押したのだが
「ちょっ……! なんで最上階?!」
押されたボタンの数字に一番驚いたのが亮輔で
「うん、だって最上階にしたんだもん」
俊哉は動じる事なくサラリと返事する。
(最上階にした……とは??)
朝香にしてみたら何もかもちんぷんかんぷんである。
亮輔の住まいは中階層と先程聞いたから「最上階は管理者である俊哉の持ち物なのだろう」くらいにしか朝香は考えてなかった。なのに亮輔がここまで驚いているという事はその予想から外れているという証明になり……
「はい、新しい部屋の鍵。これが俺からお前に贈る誕生日プレゼントだ」
扉の前で俊哉は亮輔にカードキーを手渡した。
……だけでなく
「もう一枚は朝香さんも持ってね。なるべくなくさないようにね」
朝香にも一枚渡してきた。
「えっ……えっ??」
朝香と亮輔が焦っている様子が可笑しくてたまらない俊哉はクスクスと笑いながら
「も~! 大人なんだから察してくれなきゃ!」
と明るく言い、カードキーを持っている亮輔の手首を掴んで解錠させる。
「「えっ」」
慌てふためく中、鍵はあっさりと開いて……
「俺が管理してる自慢のお部屋だよ~! リフォームもこの日に合わせて計画して、必要な家具や家電もバッチリ揃えさえていただきました~!!」
2人を部屋の中へと押し込め後ろ手で玄関扉を閉める。
訳が分からず、亮輔も朝香も恐る恐る広いリビングへと足を踏み入れていったのだが……
「わあぁ!」
「すご……」
新築さながらの綺麗さに、2人ともリアクションが上手く返せていない。
「内装は口を出しちゃいけないかなーって思ってはいたんだけど、こっちがある程度揃えておかないと2人共遠慮しちゃうと思ったんだよ。家具や家電ってさ、部屋の統一感も重要になってくるから独断と偏見で選ばせてもらったんだ。
勿論朝香さんが気に入らないものあったり好みのものが欲しいってなったら買い替えてあげるよ?」
「いやいやいや……」
「いえいえ買い替えるだなんてそんなそんな」
俊哉の言葉に2人とも首をブンブン左右に振って同様の言葉を漏らす。
そしてようやく、俊哉の「誕生日プレゼント」の意味を朝香は理解する事が出来た。
(誕生日プレゼントは、りょーくんのお部屋の引っ越しって事だったのかぁ)
ずっとアパートに住んでいたのだから、中階層にあったという亮輔の部屋そのものも数年誰も住んでいない実質的な空き家状態にあったのだろう。それで俊哉は亮輔の部屋をこのタイミングで最上階の部屋へ丸ごと移す事を決めたのかもしれない。
「亮輔は今までの事情からずっと、高い建物を避けなければならない傾向にあった。4年前は中階層しか空いてなくてね。アパートに住まわせるしかなかったんだけど半年前に最上階のこの部屋の契約がなんとかなったから少しずつ準備を始めていたんだよ。まだ朝香さんと亮輔がお付き合いする前ではあったけどとりあえず20歳のプレゼントとしてここを見せてあげて『いつかここに住めるように気持ちを調えろよ』って言うつもりで。
でも、その心配もなくなってホッとしてるよ。朝香さんのおかげでここを亮輔に堂々と渡せる気になれたから」
俊哉は朝香に向き直り
「亮輔と一緒に、朝香さんも住んでもらえないかなって。
それが、俺の一番の希望なんだ。亮輔はもう無茶な真似はしないって心に決めてはいるんだろうけど万が一って事もあるからね。亮輔を支えてくれたら凄く嬉しいんだ」
朝香の目を見ながら真面目な口調で話し……それから
「よろしくお願いします」
深々と頭を下げる。
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