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花から求められる犬と、主人との約束

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 帰宅ルーティンを済ませてダイニングテーブルに着くと既にホカホカの水餃子鍋が用意されていて、中華スープな香りに腹の虫が鳴る。

「春に入ってきたから小鍋はそろそろ終わりかなぁとは思ったんだけど、この時間はまだ寒いもんね」
「毎日僕の為に夜食作ってくれてありがとう花ちゃん♡ しかも今日は皮から作ってくれて幸せでたまらないよ♡」

 いただきますの仕草をしながら花ちゃんに笑顔を向けて感謝の言葉を言ってみるものの

(そういえばなんで花ちゃんは突然皮から餃子を作りたいなんて思ったんだろう?)

 いつもは冷凍麺や事前に炊いたご飯を使ったもので夜食を作るのに、わざわざ僕がバイトに出掛けた夕方から手作り餃子を仕込んだ花ちゃんの行動に少し引っ掛かってしまった。

(それに……餃子っていうチョイスがなんとなくスタミナ食を想像してしまうというか)

「そういえばこれって、ニンニク入ってるの?」

 もしかしたらこれは僕が過剰な期待をかけ過ぎているのかもしれなくて、ニンニクの有無を問うようなこの質問は自惚れ行動かもしれない。
 
「ニンニクは入ってなくてショウガを効かせてるタイプの餃子だよ。あー、でもニラは入ってるかな?」
「ショウガとニラなんだねすっごく美味しそう♪ いただきまーす!!」

 僕はとりあえず馬鹿みたいに元気良く両手を合わせて食べ始めたんだけど……

「熱いから気をつけて食べてね♪」

 花ちゃんも花ちゃんで普通に受け答えているようで、僕の心を読んでいる気がしたんだ。

(だって……僕は今日まで大学の定期試験があって帰宅して夜食食べるなり自室でテス勉していたし。
 しかもこのテスト期間と花ちゃんの生理期間が重なって早めに寝ていて……夜食は僕1人で食べるしかなくて……約1週間僕達は「何もしてない」わけで)

 それで今夜は1週間ぶりに僕の帰りを起きて待っているだけでなく公園まで迎えに来てくれていて、持ち帰ったラブグッズに怒りも呆れもせず今もニコニコした笑顔で僕が食べ終わるのを花ちゃんは待っている。

 ……当然、を僕同様花ちゃんも期待して待っているに違いなくて。

「花ちゃんはもうしんどくないの?」

 食事しながら花ちゃんのコンディション確認をした僕に、花ちゃんはコクンと頷く。

「うん、平気」
「僕……この後お風呂入るけど、花ちゃんはどうする?」

 もう一つ投げかけた質問に花ちゃんは

「私、まだ入ってなかったんだ。一緒に入ろうかなぁって思っていたから」

 なんて可愛い返事をしてきた。

「じゃあ、急いで食べる!」
「熱いからちゃんと冷ましながら食べた方がいいよ?」
「花ちゃんは明日も仕事あるし急がなくちゃ! 猫舌じゃないから食べれるよっ」

 花ちゃんと一緒にお風呂入るなんて嬉しいイベントを逃す筈がない。急いでレンゲを動かす僕を見て、花ちゃんはクスクス笑っていた。
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