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第1章
第18.5話 刺身と焼きと煮魚(後編)
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早速、ドラゴンフィッシュに手を付ける。
どの料理にしようか悩んだが、俺は刺身を選んだ。
魚醤をちょこんと付けて、口に運ぶ。
「はぐぅぅぅぅぅぅうぅうぅうぅうぅう!」
うんめぇ!!
柔らかい。
全く筋張っていなかった。
歯で噛んだ瞬間、ふわっと身が消えて行くようだ。
同時に身の旨みが広がっていく。
磯の香りもして、風味と一緒に鼻へと突き抜けていった。
俺は夢中になって食べる。
それでも、身はなかなかなくならない。
ウォルナーさんも気に入ったらしい。
俺たちは競い合うように、口に入れる。
でも、一向に巨大な身が消えることはなかった。
それほど、大きいのだ。
ドラゴンフィッシュは……。
「こいつはうめぇ!」
叫んだのは、デレクーリさんだった。
焼きの方に手を付けている。
見てくれからもわかる通りの脂のノリ……。
俺は光源に群がる蛾のように近づいていった。
一口パクリ……。
「うっっっっっっっっっっっまぁ!!」
うまい。
焼き魚も絶品だ。
こっちは歯応えがいい。
皮がカリカリに焼けていて、口の中でいい音を鳴らす。
そこにぷりぷりの身が加わる。
お腹に優しい魚の脂が、歯の上で滑っていった。
程よく塩気があって、それが食欲をさらに増進させる。
いつの間にか、俺は刺身のことを忘れて、焼き魚に夢中になっていた。
「煮魚、おいしい」
「煮魚の味がわかるなんて、なかなか通だね、ルーナ」
今度は、ウォルナーさんとルーナの会話が聞こえる。
あっちは煮魚を食べているらしい。
どうやら魚醤で煮込んだもののようだ。
香ばしい匂いがする。
再び俺は移動を始めた。
まだまだ一杯ある。
慌てることはないのだが、どうしても味が気になってしまう。
「リックお兄ちゃんも、煮魚食べるの?」
「うん」
頷くと、ルーナは身を箸でほぐしてくれた。
うまく箸で摘まみ、俺の方に差し出す。
「お兄ちゃん、あーん」
「え? いいの?」
「リックお兄ちゃん、がんばったから。ごほうび」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
俺は身をかがめ、口を開ける。
ルーナはそっと俺の舌の上に煮魚の身を載せてくれた。
「ぬほぉぉおぉおぉおおぉおぉおぉ!!」
こっちもうまい。
身が柔らかく、口の中で味だけ残して消えて行く。
脂がのったぷりっとした食感はそのままで、これまで食べた刺身と焼き魚を足して2で割ったような感じだった。
何より染みこんだ魚醤が利いている。
ちょっとピリッとしているのは、恐らく生姜を使っているからだろう。
身の味を殺すことなく、とても上品なアクセントになっていた。
「おいしい、お兄ちゃん?」
「おいしいよ、ルーナ。ありがとう」
感謝を述べると、ルーナはちょっと誇らしげに笑った。
俺も思わず微笑みを返す。
たぶん、俺にとってこのルーナの笑みこそ最高のご馳走だった。
もちろん、ティレルの料理もおいしいけどね。
「ありがとう、ティレル」
「どういたしまして。ご満足いただけましたか?」
「もちろんだよ」
「奮発した甲斐がありましたわ」
「こりゃ絶品だぜ! お嬢ちゃん、いいお嫁さんになるな」
「…………!」
デレクーリさんが褒め讃える。
ティレルはピクピクと耳を動かした。
顔を真っ赤に染めながら、モジモジと身体を動かす。
すると、ちょっと俺の方を見た後、すぐに目をそらした。
「おや。オレ、何か不味いこといったか?」
「あれぐらいの年の頃はね。色々あるものさ。あたしにもあったよ。青春時代ってヤツだね」
「「なんか想像できねぇ」」
俺とデレクーリさんが声を揃えた。
「あっ」とお互い気付いた時には遅い。
すでにウォルナーさんは、背中に炎を燃やし、臨戦態勢を整えようとしていた。
「なんか言ったかい、お前たち?」
「いいいいい、いえ! 何も!?」
「そそそそうだよ。人間、誰しも青春時代があるもんさ」
がああああああああああ!!
ウォルナーさんは吠えた。
俺たちを猟犬のように追いかけ始める。
そこに何故か、ルーナが加わった。
獣人と亜人のコンビが、村から帰ってきたばかりでへとへとの冒険者たちを追いかけ回す。
その様子をティレルが、口元を隠し見ていた。
おいしい魚料理。
そして騒動と笑いが絶えない食卓。
その時、俺は生きていることを実感していた。
どの料理にしようか悩んだが、俺は刺身を選んだ。
魚醤をちょこんと付けて、口に運ぶ。
「はぐぅぅぅぅぅぅうぅうぅうぅうぅう!」
うんめぇ!!
柔らかい。
全く筋張っていなかった。
歯で噛んだ瞬間、ふわっと身が消えて行くようだ。
同時に身の旨みが広がっていく。
磯の香りもして、風味と一緒に鼻へと突き抜けていった。
俺は夢中になって食べる。
それでも、身はなかなかなくならない。
ウォルナーさんも気に入ったらしい。
俺たちは競い合うように、口に入れる。
でも、一向に巨大な身が消えることはなかった。
それほど、大きいのだ。
ドラゴンフィッシュは……。
「こいつはうめぇ!」
叫んだのは、デレクーリさんだった。
焼きの方に手を付けている。
見てくれからもわかる通りの脂のノリ……。
俺は光源に群がる蛾のように近づいていった。
一口パクリ……。
「うっっっっっっっっっっっまぁ!!」
うまい。
焼き魚も絶品だ。
こっちは歯応えがいい。
皮がカリカリに焼けていて、口の中でいい音を鳴らす。
そこにぷりぷりの身が加わる。
お腹に優しい魚の脂が、歯の上で滑っていった。
程よく塩気があって、それが食欲をさらに増進させる。
いつの間にか、俺は刺身のことを忘れて、焼き魚に夢中になっていた。
「煮魚、おいしい」
「煮魚の味がわかるなんて、なかなか通だね、ルーナ」
今度は、ウォルナーさんとルーナの会話が聞こえる。
あっちは煮魚を食べているらしい。
どうやら魚醤で煮込んだもののようだ。
香ばしい匂いがする。
再び俺は移動を始めた。
まだまだ一杯ある。
慌てることはないのだが、どうしても味が気になってしまう。
「リックお兄ちゃんも、煮魚食べるの?」
「うん」
頷くと、ルーナは身を箸でほぐしてくれた。
うまく箸で摘まみ、俺の方に差し出す。
「お兄ちゃん、あーん」
「え? いいの?」
「リックお兄ちゃん、がんばったから。ごほうび」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
俺は身をかがめ、口を開ける。
ルーナはそっと俺の舌の上に煮魚の身を載せてくれた。
「ぬほぉぉおぉおぉおおぉおぉおぉ!!」
こっちもうまい。
身が柔らかく、口の中で味だけ残して消えて行く。
脂がのったぷりっとした食感はそのままで、これまで食べた刺身と焼き魚を足して2で割ったような感じだった。
何より染みこんだ魚醤が利いている。
ちょっとピリッとしているのは、恐らく生姜を使っているからだろう。
身の味を殺すことなく、とても上品なアクセントになっていた。
「おいしい、お兄ちゃん?」
「おいしいよ、ルーナ。ありがとう」
感謝を述べると、ルーナはちょっと誇らしげに笑った。
俺も思わず微笑みを返す。
たぶん、俺にとってこのルーナの笑みこそ最高のご馳走だった。
もちろん、ティレルの料理もおいしいけどね。
「ありがとう、ティレル」
「どういたしまして。ご満足いただけましたか?」
「もちろんだよ」
「奮発した甲斐がありましたわ」
「こりゃ絶品だぜ! お嬢ちゃん、いいお嫁さんになるな」
「…………!」
デレクーリさんが褒め讃える。
ティレルはピクピクと耳を動かした。
顔を真っ赤に染めながら、モジモジと身体を動かす。
すると、ちょっと俺の方を見た後、すぐに目をそらした。
「おや。オレ、何か不味いこといったか?」
「あれぐらいの年の頃はね。色々あるものさ。あたしにもあったよ。青春時代ってヤツだね」
「「なんか想像できねぇ」」
俺とデレクーリさんが声を揃えた。
「あっ」とお互い気付いた時には遅い。
すでにウォルナーさんは、背中に炎を燃やし、臨戦態勢を整えようとしていた。
「なんか言ったかい、お前たち?」
「いいいいい、いえ! 何も!?」
「そそそそうだよ。人間、誰しも青春時代があるもんさ」
がああああああああああ!!
ウォルナーさんは吠えた。
俺たちを猟犬のように追いかけ始める。
そこに何故か、ルーナが加わった。
獣人と亜人のコンビが、村から帰ってきたばかりでへとへとの冒険者たちを追いかけ回す。
その様子をティレルが、口元を隠し見ていた。
おいしい魚料理。
そして騒動と笑いが絶えない食卓。
その時、俺は生きていることを実感していた。
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