31 / 53
私の家族は、この人だけなんです。さん。※
しおりを挟む
※流血表現あり。
____________________
「おにいちゃん…、ねぇ、ねぇ、」
止まることのない血が、
「ねぇ、帰ろう…?」
血溜まりの面積を広げていく。
「もう、終わったんだよ?ねぇ、」
激しく降る雨が、
「ほら、帰ろう…?」
2人の体温を奪っていき、
「帰ったら、行きたいところ、いっぱい、いっぱい、あるんだよ…?」
冷たくなっていく。
「ねぇ……。」
お兄ちゃんがいなくなったら、
誰が私とご飯を食べてくれるの…?
ねぇ、これからは、好き嫌いなんて言わないから。
まだ、魔術でのケンカも勝ててないの。
ねぇ、私が勝つまで付き合ってくれるんでしょう…?
それに、次の休みに一緒にお出かけしようって、約束したじゃん。
ねぇ。
ねぇ、お兄ちゃん。
私、泣いてるよ……?
抱きしめてくれるんでしょう…?
ねぇ、お兄ちゃん。
私、今、この17年で1番困ってるの。
____助けてよ。
ねぇ、
ねぇ、
ねぇってば……。
「お兄ちゃん……っ!」
そっと、白銀の髪に手を伸ばせば、
「誰よりも、笑顔にしてくれるって、言ったじゃんか…っ!」
とても綺麗な顔が見えた。
「勝手にぃ、…ガハッ、殺さないで、よぉ。」
「おにい、ちゃん……?」
「セシリアっ!無事で…ッ⁉︎ノア団長!!」
「…アリア……副団、長…。」
「セシリア、後は任せなさい。」
「…おに、ちゃんが……!」
「セシリア!」
「ゲホッ、セシリー、ッ!…大丈夫。お兄ちゃん、は、ガハッ、大丈夫、だよ、セシリー、信じ、て。」
「ぃ、ちゃん…っ!」
「ね、セシリー。僕の可愛い妹。お兄ちゃんは、ゴホッ、大丈夫。…ね。」
___そこから先は、ただただ、見守ることしか出来なかった。
アリア副団長が他の治癒特化の魔術師にポーションを持ってこさせ、自分は魔術を酷使する。
背中の傷が徐々に狭まっていくのを見ながら、自分の無能さに絶望した。
ただ、座って見ているだけの私を、後から来たアレクサンダー団長が立たせてくれる。
戻るか、と聞かれたが、首を横に振った。
脇腹から流れる血に気付いた仲間が、治療にあたってくれる。
私より魔力の低い彼女には、私の傷を表面だけしか塞ぐことができない。
私が助けた少年は、誰かが連れていったくれたのか、いなくなっていた。
アリア副団長が、何本目かの魔力回復のポーションを飲むのを眺める。
傍らには、空になった容器が数え切れないほど落ちていた。
私は、それを眺める。
倒れないように支えてれるアレクサンダー団長も、魔術を酷使して兄を助けてくれてるアリア副団長も、周りでアリア副団長の補助をする皆も、そんな何もできない私に、何も言わなかった。
____________________
「おにいちゃん…、ねぇ、ねぇ、」
止まることのない血が、
「ねぇ、帰ろう…?」
血溜まりの面積を広げていく。
「もう、終わったんだよ?ねぇ、」
激しく降る雨が、
「ほら、帰ろう…?」
2人の体温を奪っていき、
「帰ったら、行きたいところ、いっぱい、いっぱい、あるんだよ…?」
冷たくなっていく。
「ねぇ……。」
お兄ちゃんがいなくなったら、
誰が私とご飯を食べてくれるの…?
ねぇ、これからは、好き嫌いなんて言わないから。
まだ、魔術でのケンカも勝ててないの。
ねぇ、私が勝つまで付き合ってくれるんでしょう…?
それに、次の休みに一緒にお出かけしようって、約束したじゃん。
ねぇ。
ねぇ、お兄ちゃん。
私、泣いてるよ……?
抱きしめてくれるんでしょう…?
ねぇ、お兄ちゃん。
私、今、この17年で1番困ってるの。
____助けてよ。
ねぇ、
ねぇ、
ねぇってば……。
「お兄ちゃん……っ!」
そっと、白銀の髪に手を伸ばせば、
「誰よりも、笑顔にしてくれるって、言ったじゃんか…っ!」
とても綺麗な顔が見えた。
「勝手にぃ、…ガハッ、殺さないで、よぉ。」
「おにい、ちゃん……?」
「セシリアっ!無事で…ッ⁉︎ノア団長!!」
「…アリア……副団、長…。」
「セシリア、後は任せなさい。」
「…おに、ちゃんが……!」
「セシリア!」
「ゲホッ、セシリー、ッ!…大丈夫。お兄ちゃん、は、ガハッ、大丈夫、だよ、セシリー、信じ、て。」
「ぃ、ちゃん…っ!」
「ね、セシリー。僕の可愛い妹。お兄ちゃんは、ゴホッ、大丈夫。…ね。」
___そこから先は、ただただ、見守ることしか出来なかった。
アリア副団長が他の治癒特化の魔術師にポーションを持ってこさせ、自分は魔術を酷使する。
背中の傷が徐々に狭まっていくのを見ながら、自分の無能さに絶望した。
ただ、座って見ているだけの私を、後から来たアレクサンダー団長が立たせてくれる。
戻るか、と聞かれたが、首を横に振った。
脇腹から流れる血に気付いた仲間が、治療にあたってくれる。
私より魔力の低い彼女には、私の傷を表面だけしか塞ぐことができない。
私が助けた少年は、誰かが連れていったくれたのか、いなくなっていた。
アリア副団長が、何本目かの魔力回復のポーションを飲むのを眺める。
傍らには、空になった容器が数え切れないほど落ちていた。
私は、それを眺める。
倒れないように支えてれるアレクサンダー団長も、魔術を酷使して兄を助けてくれてるアリア副団長も、周りでアリア副団長の補助をする皆も、そんな何もできない私に、何も言わなかった。
0
あなたにおすすめの小説
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!
木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。
胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。
けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。
勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに……
『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。
子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。
逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。
時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。
これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~
千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる