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私は、貴方の優しさに甘え過ぎていたのでしょう。
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そう言えばぁ、さっきぃ、屋外訓練場でぇ、シャロンを見たよー。
ノア団長のその言葉を聞き、急いで研究所から駆けつければ、アレクサンダー団長と一対一の訓練をしているシャロン様を見つけた。
約1ヶ月ぶりのその姿に、目の前が霞むのがわかった。
「シャロン様…っ!」
思わず、近くまで駆け寄れば、私に気付いた2人の剣が止まった。
「シャロン様!」
「…今は訓練中だ。見て分からないのか。」
「ぁ……ごめん、なさい…。」
鋭い紫色の瞳に睨まれ、遠征前の日の出来事が頭をよぎった。
それにびくりと竦めば、シャロン様の舌打ちが聞こえた。
「まぁまぁ、ちょうど休憩にしようかと思っていた頃だ。セシリア、シャロンに用事があるんだろう?」
「あ、はい…。」
「俺は無い。」
「おい!シャロン!」
私の声に被せるようにシャロン様が言えば、アレクサンダー団長がシャロン様をたしなめた。
「……はぁ。分かりました。」
しばらく時間を置いて、剣を鞘に収めたシャロン様は、ため息一つし、足を動かした。
その背を見て、どうしたものかと思っていると、アレクサンダー団長に行って来いと背中を押された。
「で?何?」
いつになく冷たい問い掛けに緊張で手を握りしめる。
「あ、の…シャロン様…私……、」
正直、何を言ったら良いのか分からない。
ここ何日も考えていた事なのに、いざその時になると頭の中が真っ白になって、言葉が出てこない。
「あの…私……、」
そんな私に痺れを切らしたのか、はぁー、と長いため息が聞こえた。
「あのさ、用事がないならもう行くけど。」
「あります!あるんです!わ、私、また、シャロン様と、前みたいに仲良くしたくて…!」
慌てて思っている事を言って、シャロン様を見上げれば、
「—ッ!」
今までにない、冷たい瞳が私を見下ろしていた。
その瞳に、一歩後ずされば、ハッ、とシャロン様が嗤った。
その、初めて見るシャロン様の姿に、私は戸惑い、視線を泳がす。
「シャ、ロ、」
「仲良くってさ、」
私が口を開くのと同時。
ここ数回同じようなやりとりがあるな、とどこか冷静な頭がそれを言う。
「それ、思っていたの、セシリアだけだろ。」
「…え……?」
言っている意味が分からず、シャロン様を見つめれば、苛立ちを孕んだ瞳と視線が合った。
「前から思ってたけど、いい加減、やめて欲しいと思ってた。シャロン様って呼ぶのも、馴れ馴れしくされるのも。俺、お前の上司なの。それにさ、好きって言われるのも、正直、迷惑。」
「—ッ!」
「……俺からの話は終わり。」
もう良いだろう?
そう言って立ち去るシャロン様を、私は追う事も、呼び止める事も出来なかった。
ただ、言われた言葉が、意味が、私の頭では処理しきれなくて。
だから気付かなかった。
シャロン様が、怒っている理由を。
シャロン様が、悲しんでいる理由を。
___先に裏切ったのは、お前だろ、セシリア。
シャロン様が、去り際に言っていた、その言葉を。
「よしっ!みんな揃ったな!…あぁ!やはりこれだけ人気者が集まっているはずなのに、俺の美貌が一番だな!おっ、セシリア、どうした?俺のこの美しさに目が眩んだか?」
…この人はこのテンションでこれからの旅を続けるのだろうか。
あの日から3日後。
今日は南の海岸に護衛として一緒に行く日である。
人数はそれ程多くないとのことだが、第1騎士団からはレオン団長とルシヨン副団長含む10名、第4騎士団からはアレクサンダー団長、ノア団長、イリヤ副団長、私を含む8名。
その8名の中には、出来れば今は会いたくない、シャロン様もいた。
「そうですね。美しいですから早く行きましょう、レオン団長。」
「はっはっは!そうだろう、そうだろう!ようやく俺の素晴らしさが分かったようだな!」
記念に、俺の隣で走る事を許そう!と言うレオン団長に丁寧にお断りを入れる。
道中ずっと隣にいるだなんてありえない、と軍馬の手綱をひき後ろに下がれば、ルシヨン副団長がいた。
「レオン団長の方には俺が行くから、セシリアはあまり無理しないで。」
「すみません、ルシヨン副団長。ありがとうございます。」
「ふふっ、気にしないで。じゃあ、また後で。」
そう言って前に進むルシヨン副団長の背を見つめていれば、シャロン様の後ろ姿も目に入った。
その背から視線を外し、自分の位置に着く。
しばらくして、先頭が動き出す。それに倣って私達も手綱を引いた。
ニコル王子の乗っている馬車を囲むように配置されている私達は、これから3日程かけて進む予定だ。
「セシリア。」
「ニコル王子?」
私の位置は、馬車の右隣。入り口とは反対側だ。
馬車の窓から顔を覗かせるニコル王子は、今日も綺麗な笑顔を浮かべて、今回はよろしくね。と言ってきた。
中には第1騎士団の者が一緒にいるのだろう。
ニコル王子、あまり顔を出さぬように。との声がかすかに聞こえた。
それに返事をするニコル王子は、じゃあまたね。と窓を閉めた。
姿の見えなくなったニコル王子を確認し、前を向く。
道のりは長い。
私はフードを深く被り、この旅に参加したことに、浅く、ため息をついた。
ノア団長のその言葉を聞き、急いで研究所から駆けつければ、アレクサンダー団長と一対一の訓練をしているシャロン様を見つけた。
約1ヶ月ぶりのその姿に、目の前が霞むのがわかった。
「シャロン様…っ!」
思わず、近くまで駆け寄れば、私に気付いた2人の剣が止まった。
「シャロン様!」
「…今は訓練中だ。見て分からないのか。」
「ぁ……ごめん、なさい…。」
鋭い紫色の瞳に睨まれ、遠征前の日の出来事が頭をよぎった。
それにびくりと竦めば、シャロン様の舌打ちが聞こえた。
「まぁまぁ、ちょうど休憩にしようかと思っていた頃だ。セシリア、シャロンに用事があるんだろう?」
「あ、はい…。」
「俺は無い。」
「おい!シャロン!」
私の声に被せるようにシャロン様が言えば、アレクサンダー団長がシャロン様をたしなめた。
「……はぁ。分かりました。」
しばらく時間を置いて、剣を鞘に収めたシャロン様は、ため息一つし、足を動かした。
その背を見て、どうしたものかと思っていると、アレクサンダー団長に行って来いと背中を押された。
「で?何?」
いつになく冷たい問い掛けに緊張で手を握りしめる。
「あ、の…シャロン様…私……、」
正直、何を言ったら良いのか分からない。
ここ何日も考えていた事なのに、いざその時になると頭の中が真っ白になって、言葉が出てこない。
「あの…私……、」
そんな私に痺れを切らしたのか、はぁー、と長いため息が聞こえた。
「あのさ、用事がないならもう行くけど。」
「あります!あるんです!わ、私、また、シャロン様と、前みたいに仲良くしたくて…!」
慌てて思っている事を言って、シャロン様を見上げれば、
「—ッ!」
今までにない、冷たい瞳が私を見下ろしていた。
その瞳に、一歩後ずされば、ハッ、とシャロン様が嗤った。
その、初めて見るシャロン様の姿に、私は戸惑い、視線を泳がす。
「シャ、ロ、」
「仲良くってさ、」
私が口を開くのと同時。
ここ数回同じようなやりとりがあるな、とどこか冷静な頭がそれを言う。
「それ、思っていたの、セシリアだけだろ。」
「…え……?」
言っている意味が分からず、シャロン様を見つめれば、苛立ちを孕んだ瞳と視線が合った。
「前から思ってたけど、いい加減、やめて欲しいと思ってた。シャロン様って呼ぶのも、馴れ馴れしくされるのも。俺、お前の上司なの。それにさ、好きって言われるのも、正直、迷惑。」
「—ッ!」
「……俺からの話は終わり。」
もう良いだろう?
そう言って立ち去るシャロン様を、私は追う事も、呼び止める事も出来なかった。
ただ、言われた言葉が、意味が、私の頭では処理しきれなくて。
だから気付かなかった。
シャロン様が、怒っている理由を。
シャロン様が、悲しんでいる理由を。
___先に裏切ったのは、お前だろ、セシリア。
シャロン様が、去り際に言っていた、その言葉を。
「よしっ!みんな揃ったな!…あぁ!やはりこれだけ人気者が集まっているはずなのに、俺の美貌が一番だな!おっ、セシリア、どうした?俺のこの美しさに目が眩んだか?」
…この人はこのテンションでこれからの旅を続けるのだろうか。
あの日から3日後。
今日は南の海岸に護衛として一緒に行く日である。
人数はそれ程多くないとのことだが、第1騎士団からはレオン団長とルシヨン副団長含む10名、第4騎士団からはアレクサンダー団長、ノア団長、イリヤ副団長、私を含む8名。
その8名の中には、出来れば今は会いたくない、シャロン様もいた。
「そうですね。美しいですから早く行きましょう、レオン団長。」
「はっはっは!そうだろう、そうだろう!ようやく俺の素晴らしさが分かったようだな!」
記念に、俺の隣で走る事を許そう!と言うレオン団長に丁寧にお断りを入れる。
道中ずっと隣にいるだなんてありえない、と軍馬の手綱をひき後ろに下がれば、ルシヨン副団長がいた。
「レオン団長の方には俺が行くから、セシリアはあまり無理しないで。」
「すみません、ルシヨン副団長。ありがとうございます。」
「ふふっ、気にしないで。じゃあ、また後で。」
そう言って前に進むルシヨン副団長の背を見つめていれば、シャロン様の後ろ姿も目に入った。
その背から視線を外し、自分の位置に着く。
しばらくして、先頭が動き出す。それに倣って私達も手綱を引いた。
ニコル王子の乗っている馬車を囲むように配置されている私達は、これから3日程かけて進む予定だ。
「セシリア。」
「ニコル王子?」
私の位置は、馬車の右隣。入り口とは反対側だ。
馬車の窓から顔を覗かせるニコル王子は、今日も綺麗な笑顔を浮かべて、今回はよろしくね。と言ってきた。
中には第1騎士団の者が一緒にいるのだろう。
ニコル王子、あまり顔を出さぬように。との声がかすかに聞こえた。
それに返事をするニコル王子は、じゃあまたね。と窓を閉めた。
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