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じゅうはち。※

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※流血表現あり。
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「21年と言う人生の中で、こんなに集中力を使ったことがなさすぎてバカになりそう……。」

「大丈夫だよ。もう手遅れだから。」

「メリル様⁉︎」

基本属性である、5つの属性のどの属性なのか、魔法を言われるがまま使ってはみたのだが…。

結果は、……何も使えなかった。

水風船どころか、米粒ほどの魔法も出せなかった。

「…なんか期待外れ。」

「—っ!私、破門ですか⁉︎」

嫌だ!頑張りますから見捨てないで!、と言う私に、メリル様は、破門?意味わかんないけど見捨てないよ。と無表情に言った。

なんて心優しきお方!さすがです!メリル様!

そうしてメリル様を拝んでいると、難しい顔をするメリル様が目に入った。

「誰だ⁉︎メリル様を悩ましている存在は…っ⁉︎」

「君だよ。」

「な……ん、だと⁉︎」

私だった。



それから数分、考え込むメリル様を眺めていれば、終わったの?とセシル王子の声がした。

振り向けば、先ほどまで遠くにいた4人…と、いつの間に来たのか、アーロンさんもいた。

私を見て、黙り込むアーロンさんに、こんにちは。と挨拶をすれば、近付いてくる。

無言のまま目の前に立つアーロンさんに、首を傾げた私は、彼の手が髪に触れようと動いたのが分かった。

パシッ

「触るな。」

後もう少し、と言うところで、アーロンさんの手はゼノさんに払われる。

それに目を見開くのは、アーロンさんと、私。

アーロンさんは私に、すまない。と言って元いた場所に戻る。

いえ。と言って下を向いた私は、目の奥が熱くなるのが分かった。


____気持ち悪い。

____こいつに触ったら、病気が移るぞー!

____うわっ!来んな!お化けみたいな顔のくせに!



小さい頃の記憶が、頭の片隅から引っ張り出されてくる。

奥の奥にしまい込んでいたはずの記憶が、

もう大丈夫だと思っていた事が、

まだ、こんなにも、私を苦しめる。

「リウ。」

泣かないよう必死に自分を落ち着かせていると、メリル様に呼ばれた。

「…はい。」

声は震えていなかったかと心配になる。が、その悩みは一瞬でなくなった。

メリル様が、自分の腕に刃物で傷をつけていたのである。

「ギャァァァァァァア!メリル様⁉︎え?メリル様⁉︎何してるんですか!」

あぁ!綺麗な肌に、なんて事だ!

そしてその刃物はどこから出した⁉︎

みんなもびっくりしているのか、おい、メリル。と言う声が聞こえた。

メリル様の白い腕に一筋の赤い線が引かれ、そこから血液が浮かび流れる。

その腕を私に差し出し、彼は言った。

「ねぇ、リウ。治してみて。」

「は⁉︎ちょ!え⁉︎救急箱?救急箱を早く!」

いきなりそう言われた私は、パニックだ。

そうじゃなくても目の前で自身に傷をつける瞬間を見たのだ。

落ち着いていられるわけがない。

「救急箱なんてないから。魔法だよ、魔法。さっき練習したでしょ?」

「は⁉︎」

このお方は何を言っているのか。

先程、私が魔法を使えないと言うことは、時間をかけて調べたじゃないか!

困惑する私は、あわあわと手を動かすだけで、何もできない。

そんな私にセシル王子やゼノさんが、メリル。と嗜めるが、メリル様は2人を一瞥するだけに終わった。

「リウ。光魔法、って知ってる?」

「え⁉︎こんな時に何……光魔法?」

「そう。人々に幸福・癒し・奇跡を与える存在、聖女様の魔法だよ。」

…聖女……?

なぜ今その話をするのかとメリル様を見ると、その綺麗な口が動く。

「聖女様は異界の者だと決まっているでしょう?…だから、君にもその力があるのか調べようかとね。」

基本属性がないんだ。もしかしたらって……気になるだろう?と口の端をあげるメリル様は素敵でカッコいい。

ヒエッ!と奇声を発する私に、メリル様は、さっきとやり方は変わらないよ。と未だ血が流れる腕を差し出してくる。

その傷を見て、あまりの痛々しさに背筋に寒気が走った。

「手を傷にかざしてごらん。」

「は、い。」

震える手で、言われるがまま手をかざせば、メリル様の傷がない方の手が、私のかざしていない方の手を握った。

「そう。そしたら魔力をそこに集めて。………うん、流れは良いね。」

魔力の流れを見るためだったのかと納得していると、メリル様が話を続ける。

「そのまま、イメージして。傷が治っていく様子を。」

「はい…。」

血が止まり、傷が塞がり、治る。

メリル様の綺麗な腕。

それをイメージしていく。

私に使えるか分からないが、この状況で何もしないわけにはいかなかった。



それから、10分程経過した頃。

「……もういいよ。リウ。」

「あっ……。」

メリル様に、終わりだよ。と言われ目を開ければ、メリル様の紫の瞳と視線が合う。

視線を外し、私の手がかざされていたメリル様の腕を見ると、傷は、少しも治っていなかった。
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