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第二章:スタートきったら必要なもの? 解ります。体力ですね。
3.脱箱入り娘
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フランセスカはミネルヴァを箱入り娘と評したが、多くの箱入り娘がそうであるように、箱入り娘は自分がそうなりたくて箱に入っている訳ではない。気付いたら箱の中に居たのである。
ミネルヴァの場合は、国王妃による囲い込みが箱であった。
社交シーズンであれば、男女共に参加する夜会も勿論有るが、多くの貴族男性が仕事をしている社交シーズン意外でも交流は必要である。そうした場合に交流を担うのは大概その家の女性である。そのため、貴族女性の大半は多くの友人知人を持ち、更にその友人知人を介して交流できる人材も掌握している。そうする事が役割であるからだ。
ところが、産まれた時から王家に嫁す事が決まっており、更には国王妃のお気に入りであったミネルヴァは、この役割から微妙に遠ざけられていた。
普通の貴族の子供であれば、少年少女の内から、親に連れられて昼会やお茶会へ参加する。
だが、ミネルヴァはこの普通の交流にほとんど参加していない。王家に呼ばれてしまうためだ。仮に、事前に予定が入っていても、王家から誘いが来れば優先しなくてはならない。
事前予定が有るのだからそこに合わせて予定を組めば良いと考えるかもしれないが、王家というのは意外と予定通りにいかないものなのだ。予定していたお茶会が潰れ、急遽翌日に、ということはままある。結果、予定調節や急な不参加等の問題が多かったため、次第にミネルヴァは王家主催以外の昼会やお茶会に参加しなくなったし、今までは特にそれが問題にもならなかったのだ。
(そう、そうなの。私、友達少なかったのよねぇ………いや、まぁ個人的には、こんなに濃い親密な友人がいれば他なんて別に良いじゃないって思うけど。そうじゃないのよね…)
晴れて、王太子婚約者ミネルヴァ・アイネ・グリッツ改め、次期グリッツ公爵ミネルヴァ・アイネ・グリッツとなった彼女の前には、分厚い壁が立ちはだかっている。
壁の名前は、交友関係の構築。
楽しい日々が始まり、色恋にうつつをぬかし、その内ミネルヴァが心から恋しいと思える相手と、等と夢想していたのは、ほんの数日前の事だったと思うのだが。
(うぅ…しかも、もう成人してしまってからのお付き合いだから、色々ハードル高いっていうか………現に王家主催の夜会の後身内開催の夜会まで何処にも出席してないし…)
そもそも、フランセスカからもたらされた尾ひれの大きな噂も、どこかでミネルヴァが夜会に出席していれば、おかしくなる前に噂を聞き、訂正できる機会があったはずなのだ。
(不名誉な噂を消して名誉な噂を広げるのも女性へ求められる手腕の一つだというのに………高いわ、ハードル。そもそも呼んでもらえないからな、えへへ)
交友関係を頑張って広めようにも、今までに繋がりが無かったため、悲しい事に社交シーズンが始まっても彼女にはほとんど招待状が届かなかったのだ。
指摘してから、沈黙し俯くミネルヴァの注意を引くため、フランセスカは口で咳払いの真似をする。
「おっほん。そんなミーナにこちら」
「?」
フランセスカは手に封筒を持って示している。立てて持っているため、まるで線を持っているようにしか見えないが。ミネルヴァの視線がしっかり見ているのを確認してから、すっと封筒の表面を見せた。
「明日のミッテナー伯夫人主催のお茶会への招待状ですわ」
「セス、それは、もしかして」
「お誘いしたい方が居らしたらぜひどうぞ、と頂いたものなの。だから、ミーナにさしあげますわ」
「ありがとう!」
「構わなくてよ。ただ、ミッテナー伯夫人のお茶会ってもう馴染みみたいな方々が集まるから、そんなに交友は広がらないと思うのですけど」
「お茶会初心者にはむしろ有難いわ。出席の実績が出来れば、他からお誘いを頂ける事も出てくるだろうし」
少なくとも主催者であるミッテナー伯夫人とは挨拶を交わす事ができるだろう。更には、身内以外のお茶会にも出席するという実績を積み上げる事ができる。運が良ければその場で誰かと言葉を交わす事もできるかも知れないし、できなかったとしても、元々交友を広げる事に重きを置いていないお茶会ならば非友好的という印象を持たれないだろう。
ミネルヴァにとっては良い事尽くめなお茶会といえた。フランセスカにそれを伝えてはしゃいでいると、眉をひそめた何とも言えない顔で唸り出す。
「どうしたの?」
あまり見た事がない様子に小首を傾げれば、つーんとそっぽを向かれる。
「何でもありませんわ」
フランセスカは初め、彼女の友人が数多く出席するお茶会への誘いを考えていた。だが、急に知り合いを沢山紹介されてもミネルヴァが困るだろう、とセフィルニムに指摘され、助言を受けてミッテナー伯夫人のお茶会にしたのだ。指摘や助言を受けた内容のままにミネルヴァが喜んでいる事が少し気に入らなかった。
「まぁ、貴方の事が一番ですわね」
「ん?」
何はともあれ、ミネルヴァが喜んでいるのならそれで良い。そう結論して笑った。
「特にお約束事はないから、好きな服装で大丈夫ですわ」
「解ったわ。ちなみに、フランセスカはどんな?」
「白と薄紅で、バラがモチーフですわね」
「じゃあ、白と薄藍で蔦のモチーフにしようかしら」
「あら、蔦なんて地味だわ。百合とか椿にしたら?」
その後は、一緒に参加するのだから服装を合わせようと話し合い、気が付けば帰りの時間となっていた。
ミネルヴァの場合は、国王妃による囲い込みが箱であった。
社交シーズンであれば、男女共に参加する夜会も勿論有るが、多くの貴族男性が仕事をしている社交シーズン意外でも交流は必要である。そうした場合に交流を担うのは大概その家の女性である。そのため、貴族女性の大半は多くの友人知人を持ち、更にその友人知人を介して交流できる人材も掌握している。そうする事が役割であるからだ。
ところが、産まれた時から王家に嫁す事が決まっており、更には国王妃のお気に入りであったミネルヴァは、この役割から微妙に遠ざけられていた。
普通の貴族の子供であれば、少年少女の内から、親に連れられて昼会やお茶会へ参加する。
だが、ミネルヴァはこの普通の交流にほとんど参加していない。王家に呼ばれてしまうためだ。仮に、事前に予定が入っていても、王家から誘いが来れば優先しなくてはならない。
事前予定が有るのだからそこに合わせて予定を組めば良いと考えるかもしれないが、王家というのは意外と予定通りにいかないものなのだ。予定していたお茶会が潰れ、急遽翌日に、ということはままある。結果、予定調節や急な不参加等の問題が多かったため、次第にミネルヴァは王家主催以外の昼会やお茶会に参加しなくなったし、今までは特にそれが問題にもならなかったのだ。
(そう、そうなの。私、友達少なかったのよねぇ………いや、まぁ個人的には、こんなに濃い親密な友人がいれば他なんて別に良いじゃないって思うけど。そうじゃないのよね…)
晴れて、王太子婚約者ミネルヴァ・アイネ・グリッツ改め、次期グリッツ公爵ミネルヴァ・アイネ・グリッツとなった彼女の前には、分厚い壁が立ちはだかっている。
壁の名前は、交友関係の構築。
楽しい日々が始まり、色恋にうつつをぬかし、その内ミネルヴァが心から恋しいと思える相手と、等と夢想していたのは、ほんの数日前の事だったと思うのだが。
(うぅ…しかも、もう成人してしまってからのお付き合いだから、色々ハードル高いっていうか………現に王家主催の夜会の後身内開催の夜会まで何処にも出席してないし…)
そもそも、フランセスカからもたらされた尾ひれの大きな噂も、どこかでミネルヴァが夜会に出席していれば、おかしくなる前に噂を聞き、訂正できる機会があったはずなのだ。
(不名誉な噂を消して名誉な噂を広げるのも女性へ求められる手腕の一つだというのに………高いわ、ハードル。そもそも呼んでもらえないからな、えへへ)
交友関係を頑張って広めようにも、今までに繋がりが無かったため、悲しい事に社交シーズンが始まっても彼女にはほとんど招待状が届かなかったのだ。
指摘してから、沈黙し俯くミネルヴァの注意を引くため、フランセスカは口で咳払いの真似をする。
「おっほん。そんなミーナにこちら」
「?」
フランセスカは手に封筒を持って示している。立てて持っているため、まるで線を持っているようにしか見えないが。ミネルヴァの視線がしっかり見ているのを確認してから、すっと封筒の表面を見せた。
「明日のミッテナー伯夫人主催のお茶会への招待状ですわ」
「セス、それは、もしかして」
「お誘いしたい方が居らしたらぜひどうぞ、と頂いたものなの。だから、ミーナにさしあげますわ」
「ありがとう!」
「構わなくてよ。ただ、ミッテナー伯夫人のお茶会ってもう馴染みみたいな方々が集まるから、そんなに交友は広がらないと思うのですけど」
「お茶会初心者にはむしろ有難いわ。出席の実績が出来れば、他からお誘いを頂ける事も出てくるだろうし」
少なくとも主催者であるミッテナー伯夫人とは挨拶を交わす事ができるだろう。更には、身内以外のお茶会にも出席するという実績を積み上げる事ができる。運が良ければその場で誰かと言葉を交わす事もできるかも知れないし、できなかったとしても、元々交友を広げる事に重きを置いていないお茶会ならば非友好的という印象を持たれないだろう。
ミネルヴァにとっては良い事尽くめなお茶会といえた。フランセスカにそれを伝えてはしゃいでいると、眉をひそめた何とも言えない顔で唸り出す。
「どうしたの?」
あまり見た事がない様子に小首を傾げれば、つーんとそっぽを向かれる。
「何でもありませんわ」
フランセスカは初め、彼女の友人が数多く出席するお茶会への誘いを考えていた。だが、急に知り合いを沢山紹介されてもミネルヴァが困るだろう、とセフィルニムに指摘され、助言を受けてミッテナー伯夫人のお茶会にしたのだ。指摘や助言を受けた内容のままにミネルヴァが喜んでいる事が少し気に入らなかった。
「まぁ、貴方の事が一番ですわね」
「ん?」
何はともあれ、ミネルヴァが喜んでいるのならそれで良い。そう結論して笑った。
「特にお約束事はないから、好きな服装で大丈夫ですわ」
「解ったわ。ちなみに、フランセスカはどんな?」
「白と薄紅で、バラがモチーフですわね」
「じゃあ、白と薄藍で蔦のモチーフにしようかしら」
「あら、蔦なんて地味だわ。百合とか椿にしたら?」
その後は、一緒に参加するのだから服装を合わせようと話し合い、気が付けば帰りの時間となっていた。
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