上 下
36 / 70
後日談2

1.疑い

しおりを挟む
 2年生に無事進級してから、はや3ヶ月。
 俺は自室のベッドに正座しています。
 目の前には無表情のアクス。
 本当に無表情無言やめてほしいけど、そういう事を訴える空気じゃないんだよ。
 ああ心臓辛い。
「………」
 ローグレードな2年生の寮は相変わらず寝室のみのワンルームだけど、部屋に風呂がついたよ。まぁ、あくまで候爵家の子息な俺が入ってる部屋は、だけど。
 一番下な部屋で二人部屋。ただ、ちゃんと鍵のかかる寝室が二つあって、バストイレ玄関共用のルームシェアスタイル。プライベートの確保はちゃんとできるようになるって事だ。あ、ただ、バスっていったけど厳密には湯船の無いシャワールームね。大浴場も無くなるから、風呂に関してだけは、正直グレード上がったんだか下がったんだかって感じ。俺の部屋の風呂も、ビジホでよく見る洗い場の無いタイプのやつ。悪くはないんだけど、湯船の中で体とか洗うと足元つるっとするから、はやくミドルグレードに上がりたい所だよね。もういっそ1年寮の大浴場に通おうかな。
「ルイ」
 くっだらない事考えてたのがバレたかな。無表情っていうか眉が寄った。
「はい」
 弁解の余地がないくらい俺がうかつだったんだよ。ハサミあるかって、訊かれたからさ。机の一番上の引き出しに入ってるよって、答えて、ちょっと洗面台で手とか洗ってたのもまずかったな。
 うん。
 そう。俺机の一番上に入れてたんだよね、いつぞやニアさんにもらったルイの本来ストーリー。
 手洗い場から着替えとか取ってきて、ハイグレード寮なアクスの部屋で風呂借りるぜってはしゃいでた俺。紙束手に無表情で振り返られて思わずベッドで正座した。反射的に土下座するところかな、って思ったからなんだけど。考えてみれば気まずくはあるが、謝る要素はなかったので、正座で固まって、それを見下ろすアクスっていう、ね。
「これは………事実なのか?」
 まっさかぁ。
 ありえないっすよ。
 ていうか、入学以前はともかく入学後はしょっちゅうアクスんとこに入り浸ってたんだから事実じゃないのは解るだろうに。あ、いや、前からぱらっと見ただけなら使用人達とのとこしか見てないのかな。
「………」
 ん?
 あれ?
 何この沈黙。
 あ!
 俺、否定の言葉口に出せてない。
「違う違う。全然事実無根。ただの創作!」 
 首も手も横に振って、必死に否定した。
 けど、何か納得してくれてない感じするなぁ。
 まぁ、ちょっと、疑われてる気持ちは解る。
 例えばさぁ、ルイが使用人のあれそれを覗いちゃうとか、俺の日頃の行動考えたら納得しちゃうだろ。そこから使用人達とあれそれするかってのは置いといてさ。そういう、真実感のある内容が混じってると、やっぱ疑うと思う。
 あと、たぶん。俺に可愛気が無いのが、ね。
 だってさ、前世じゃ、24歳だったし。前立腺いじられたら気持ち良い事なんて解りきってるし、一応童貞じゃなかったし、知識だけならアホほどあったし、15歳の性経験に乏しい少年の反応とか解んないんだよ。AVとかでイイ年した大人が恥じらって可愛くイヤイヤするのとかよくあるけど、ああいうのは技術だからな、マジで。俺には無理。
 だから、正直、疑う気持ちは理解できてしまう。
 俺だって、15歳の処女童貞なはずの少年が妙に熟れてたら、まず処女か童貞の部分疑う。15歳の方を疑いはしない。常識的に考えて。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

僕は前世の知識を生かしのし上る……はず?

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:1,149

その腕で眠らせて

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:249pt お気に入り:1

足音

BL / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:12

私が消えたその後で(完結)

恋愛 / 完結 24h.ポイント:23,103pt お気に入り:2,389

僕達は恋人ですらなかった。

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:77

能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:11,006pt お気に入り:2,217

処理中です...