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侯爵閣下はそろそろアップを始めるようです
50.意外と確実です
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(来週のパーティも付き合ってくれるって話だし…補佐人の職分をオーバーさせ過ぎてると思うけど『人脈を作るのに良い機会』っていってお手当はいらないって言われちゃったのよね。アルフレッドに相談しても、若い人にとっては場を与える事そのものが褒美になりますから必要ありませんよ、とか言われちゃったし)
一応、せめてものお返しとして、名前入りのペンだとか、ハンカチだとかを用意しようとは思っているのだが。これにもいくつか難点があった。
よく観察してみると、クライフの手持ちの品は、シンプルだが質の良い物が多く、もしかしたら誰かからの贈り物である可能性があった。そうなると、主人の自分が同じような物を渡した場合、使わざるを得ないという状況が発生しかねない。今愛用しているものを、贈るのは躊躇われた。
じゃあ、見えていない範囲の物を贈れば良いか、というと、それもまずい。あくまで雇用関係の間柄なのに、私的な家で使うような贈り物をされて嬉しいか、という話だ。少なくともファランは、雇い主から食器など貰いたくはない。使っている所を見に行くぞ、という裏の圧を感じてしまうから。
無難に食べ物をという選択も一つの手ではあるが、食の好みを把握し、それなりの値段の物を贈るとするなら、これも中々難関が多い。
(アルフレッドは手料理でも振舞われてはいかがですかとか、よく解らない事言うし。確かに主人が手料理を振舞うっていうのは最大限の感謝を示すって聞くけど、それは収穫祭とか感謝祭の時の話でしょうに。しかも、大前提美味しい手料理を作れないと駄目だし。私別に料理は上手くないし…いや、普通に食べれるものを作るくらいはできるけど…人に食べてもらう美味しい料理ってなると話が別っていうか、料理は気持ちだとかいう理論は最低限のラインはクリアしているっていう暗黙の前提があっての事っていうか)
クライフがちゃんと手を引いてくれるので、つい下らない事を考えてしまっているファランは、陽を大きく取り込むつくりの室内に入った。
(綺麗なホール)
ライナヘル主催の昼食会場は、王都でも指折りのレストランのホールで行われる。最大収容人数は二百人を超えるホールだ。ただし、今回に限って言えば、着席形式のため、総勢五十人ほどが、五、六人毎にテーブルを囲んでいる。
ファランが案内された席には、到着時点で二人が着席していた。
(何故かしら…着席している人に既視感を覚えるのは…)
細かく言うと、女性には全く見覚えは無いのだが、残りの壮年の男性が、既視感のある赤髪をしていた。緑の目ではなく琥珀色の目だったが。
着席する前に、女性が席を立ち、挨拶をしてくれる。
「お初にお目にかかります。ライナヘルの妻で、ケニス・イジェスティと申します」
「お招きありがとうございます。ファラン・マーヴェラスと申します」
主催者で無ければディオ=グローリアも付けて名乗っても良かったのだが、あまりくどく身分を言うのは嫌なので、名前だけを返した。
「こちら、私の補佐人で」
「クライフ・ヴォルフェンと申します。初めまして」
「まぁ…然様でございますか。どうぞ、お二人とも、ごゆっくり、お寛ぎくださいませ」
「ありがとうございます」
着席すると、直ぐにもう一人の男性もケニスによって紹介される。
ライナヘル・イジェスティの兄と紹介された彼は、
「シルフィオン・アヴァロンだ」
と、言った。
思わず、ファランは目を丸くしてしまう。
(え? は? アヴァロン大公? 大公閣下? 何で? え、ライナヘル・イジェスティさんは弟って、え? イジェスティ家は子爵位じゃなかった?)
何故この国の王家の血縁はあちこちに潜んでいるのか。やらないが頭を抱えたい思いで、ファランはなんとか平静を装って笑って挨拶を返した。
この後、兄と同じ赤髪に琥珀の目をしたライナヘルが加わり、のんびりとした雰囲気で昼食会は終わる。
何事も無く終わりはした。
ファランの精神的疲労は酷かったが。
(嘘でしょ…結婚相手との縁故を探す余裕なんか欠片もなかったんだけど)
まさか次も赤髪が現れはしないだろうな、そんな不安を抱えたファランだったが、マインス家のパーティに、そんな心臓への攻撃は潜んでいなかった。
ただ、驚きと言えば驚きではあったが。
「誠に申し訳ございません!」
そう、見覚えのある女性に頭を下げられたので。
マインス家のパーティは、簡単に言うと、夫妻の両家親族が出席した、カメリアの誕生日パーティだった。まぁ、つまり身内の集まりで、明らかにファランだけが浮いている。ファランに連れて来られたためクライフも浮いているが、そこはもうセットだ。
(この方…確か学園の同級生。そうだ! ファランを唯一パーティに誘ってくれた子!)
顔を見て思い出したのは、とてもいい子という感想であり、今頭を下げて謝っている姿も、慰めたいと思いこそすれ怒る気にはならない。
「私がグローリア侯爵様の事をよく話すものですから、夫が、勘違いをして、ご迷惑をおかけしてしまって!」
要するに、パーティに誘う約束をしている事を学園での良い思いでとして話していたカメリアには内緒で、夫が勝手にファランを誘ったという事だった。
(わかるー。本人は善意百パーで喜ばせようと思っただけでも、完全に迷惑を振りまく結果になるタイプのサプライズ。わかるー。カメリアさんの今の気持ちとてもわかるー)
自分がされた訳ではないが、友人がサプライズプロポーズで幻滅して断った、という話は聞いた事がある。そして激しく同意したものだ。どうせやるなら金をかけてきっちり仕込めば良いのに、周りの無関係な人にがっつり迷惑をかける行為をして、何故結婚を承諾すると思うのか。それならいっそ、やらないでくれ、という感想にしかならない。
「あの、どうぞ、そんな風にお気になさらないでください。お誘いに応じたのは私の方ですし。お会いできて、皆様とご一緒にお祝い出来て、嬉しく思います」
「グローリア侯爵様」
この場合は自分が笑っていれば丸く収まるのだからそうしよう、と声をかけたファランを、カメリアがなんてお優しい、と書かれた表情でうっとりと見つめた。
(いや、そんなキラキラした目で見られると気まずいなぁ。普通の対応だと思うけど…やっぱ学園時代の悪印象でブチ切れると思われてたんだろうな)
その敬愛の気持ちは、全くファランには伝わっていなかったが。
一応、せめてものお返しとして、名前入りのペンだとか、ハンカチだとかを用意しようとは思っているのだが。これにもいくつか難点があった。
よく観察してみると、クライフの手持ちの品は、シンプルだが質の良い物が多く、もしかしたら誰かからの贈り物である可能性があった。そうなると、主人の自分が同じような物を渡した場合、使わざるを得ないという状況が発生しかねない。今愛用しているものを、贈るのは躊躇われた。
じゃあ、見えていない範囲の物を贈れば良いか、というと、それもまずい。あくまで雇用関係の間柄なのに、私的な家で使うような贈り物をされて嬉しいか、という話だ。少なくともファランは、雇い主から食器など貰いたくはない。使っている所を見に行くぞ、という裏の圧を感じてしまうから。
無難に食べ物をという選択も一つの手ではあるが、食の好みを把握し、それなりの値段の物を贈るとするなら、これも中々難関が多い。
(アルフレッドは手料理でも振舞われてはいかがですかとか、よく解らない事言うし。確かに主人が手料理を振舞うっていうのは最大限の感謝を示すって聞くけど、それは収穫祭とか感謝祭の時の話でしょうに。しかも、大前提美味しい手料理を作れないと駄目だし。私別に料理は上手くないし…いや、普通に食べれるものを作るくらいはできるけど…人に食べてもらう美味しい料理ってなると話が別っていうか、料理は気持ちだとかいう理論は最低限のラインはクリアしているっていう暗黙の前提があっての事っていうか)
クライフがちゃんと手を引いてくれるので、つい下らない事を考えてしまっているファランは、陽を大きく取り込むつくりの室内に入った。
(綺麗なホール)
ライナヘル主催の昼食会場は、王都でも指折りのレストランのホールで行われる。最大収容人数は二百人を超えるホールだ。ただし、今回に限って言えば、着席形式のため、総勢五十人ほどが、五、六人毎にテーブルを囲んでいる。
ファランが案内された席には、到着時点で二人が着席していた。
(何故かしら…着席している人に既視感を覚えるのは…)
細かく言うと、女性には全く見覚えは無いのだが、残りの壮年の男性が、既視感のある赤髪をしていた。緑の目ではなく琥珀色の目だったが。
着席する前に、女性が席を立ち、挨拶をしてくれる。
「お初にお目にかかります。ライナヘルの妻で、ケニス・イジェスティと申します」
「お招きありがとうございます。ファラン・マーヴェラスと申します」
主催者で無ければディオ=グローリアも付けて名乗っても良かったのだが、あまりくどく身分を言うのは嫌なので、名前だけを返した。
「こちら、私の補佐人で」
「クライフ・ヴォルフェンと申します。初めまして」
「まぁ…然様でございますか。どうぞ、お二人とも、ごゆっくり、お寛ぎくださいませ」
「ありがとうございます」
着席すると、直ぐにもう一人の男性もケニスによって紹介される。
ライナヘル・イジェスティの兄と紹介された彼は、
「シルフィオン・アヴァロンだ」
と、言った。
思わず、ファランは目を丸くしてしまう。
(え? は? アヴァロン大公? 大公閣下? 何で? え、ライナヘル・イジェスティさんは弟って、え? イジェスティ家は子爵位じゃなかった?)
何故この国の王家の血縁はあちこちに潜んでいるのか。やらないが頭を抱えたい思いで、ファランはなんとか平静を装って笑って挨拶を返した。
この後、兄と同じ赤髪に琥珀の目をしたライナヘルが加わり、のんびりとした雰囲気で昼食会は終わる。
何事も無く終わりはした。
ファランの精神的疲労は酷かったが。
(嘘でしょ…結婚相手との縁故を探す余裕なんか欠片もなかったんだけど)
まさか次も赤髪が現れはしないだろうな、そんな不安を抱えたファランだったが、マインス家のパーティに、そんな心臓への攻撃は潜んでいなかった。
ただ、驚きと言えば驚きではあったが。
「誠に申し訳ございません!」
そう、見覚えのある女性に頭を下げられたので。
マインス家のパーティは、簡単に言うと、夫妻の両家親族が出席した、カメリアの誕生日パーティだった。まぁ、つまり身内の集まりで、明らかにファランだけが浮いている。ファランに連れて来られたためクライフも浮いているが、そこはもうセットだ。
(この方…確か学園の同級生。そうだ! ファランを唯一パーティに誘ってくれた子!)
顔を見て思い出したのは、とてもいい子という感想であり、今頭を下げて謝っている姿も、慰めたいと思いこそすれ怒る気にはならない。
「私がグローリア侯爵様の事をよく話すものですから、夫が、勘違いをして、ご迷惑をおかけしてしまって!」
要するに、パーティに誘う約束をしている事を学園での良い思いでとして話していたカメリアには内緒で、夫が勝手にファランを誘ったという事だった。
(わかるー。本人は善意百パーで喜ばせようと思っただけでも、完全に迷惑を振りまく結果になるタイプのサプライズ。わかるー。カメリアさんの今の気持ちとてもわかるー)
自分がされた訳ではないが、友人がサプライズプロポーズで幻滅して断った、という話は聞いた事がある。そして激しく同意したものだ。どうせやるなら金をかけてきっちり仕込めば良いのに、周りの無関係な人にがっつり迷惑をかける行為をして、何故結婚を承諾すると思うのか。それならいっそ、やらないでくれ、という感想にしかならない。
「あの、どうぞ、そんな風にお気になさらないでください。お誘いに応じたのは私の方ですし。お会いできて、皆様とご一緒にお祝い出来て、嬉しく思います」
「グローリア侯爵様」
この場合は自分が笑っていれば丸く収まるのだからそうしよう、と声をかけたファランを、カメリアがなんてお優しい、と書かれた表情でうっとりと見つめた。
(いや、そんなキラキラした目で見られると気まずいなぁ。普通の対応だと思うけど…やっぱ学園時代の悪印象でブチ切れると思われてたんだろうな)
その敬愛の気持ちは、全くファランには伝わっていなかったが。
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