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周りは先にアップを終えていたようです
55.失墜してはいないのですけどね
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「ええっ!」
「じゃあ、グローリア侯爵様を誕生会に?」
「本当に?!」
久しぶりに会った学園の友人達に、おめでとうを言われるよりも先に、一昨日の誕生パーティでの事を披露したカメリアは、重々しく頷いた。
「ええ、そうなの。本当なら全然ファラン様をお呼びできるような会ではなかったのだけど。夫が勝手に…」
「待って!」
それはないという空気を纏った二人の令嬢を遮るように、カメリアと同じように既に結婚している伯爵夫人が手を上げ遮った。
「今、ファラン様って、仰言いませんでした?」
そう言えば、と気付いた二人と合わせ、三人に視線を向けられたカメリアは少し得意気な笑顔を浮かべた。
「ええ、実は、そうお呼びしても良いって、お許しを頂いたの」
「まぁ…」
「どうして?」
「そんな羨ましい事に?!」
「それなのよ!」
カメリアは手を叩いて、一昨日の自分がいかにファランの優しさに触れたかをうっとりと語る。
「ファラン様はとても寛容でいらっしゃったわ。私との取るに足らないような約束も覚えていてくださって。笑顔でおめでとうとお言葉をくださったのよ! 怒って帰ってしまってもおかしくない事態だったのに」
「貴方のグローリア侯爵様への傾倒は行き過ぎだと思っていましたけど…本当にお優しい方でしたのね」
令嬢の言葉に、カメリアを含む残り三人がきっと表情をキツくする。
「だからいつも言っているでしょう」
「あのニールベス嬢にさえお気遣いなさる方ですのよ?」
「わたくしもあの方のように寛容になりたいものだわ」
本人が聞いてたら、四人の中で唯一冷静な反応をしていた令嬢に同意を示しただろうが、ここにはかなり強めのファラン好きが集まっている。そのため、ちょっとした集まりというお喋り大会も半ばを過ぎる頃には、その令嬢もファラン好きに傾いていった。
久しぶりに見たファランは、噂になっている通り、とても美しくなっている。
先々代のグローリア侯爵が一目惚れしたというトーリシア出身の祖母にきっと似たのだろう。
人品骨柄はもとより家格来歴どれをとってもあんなに素晴らしい令嬢はいない。
その上、お身内だからと不正に目を瞑ることのない公明正大さを持ちながらも、慈悲と寛恕の心をも持つ立派な領主である。
等々。
本人が聞いたら、
「もしかして、この世界には私以外にもファラン・マーヴェラスって名前の人がいるの?」
と、言い出しそうな褒め言葉の雨霰であった。
勿論、彼女達はあくまで親ファラン、とでも言おうか、ものすごく好意的にファランの行動を受け止めてくれている集団ではあるので、これが全貴族女性の総意ではない。
ただ、この親ファランな彼女達の恐ろしいところは、ファラン本人よりよほど彼女の周りに詳しい事である。まぁ、本人のコミュニティが貴族としては狭過ぎるせいでもあるが。
「そういえば、わたくし妙な話を耳にしたのですけど…グローリア侯爵様に第二后妃様からお詫びが申し入れられたとかって」
「あら? 私は、第二后妃様から、お詫びの場を儲けたいという、打診があったと聞きましたけど」
「どちらにせよ、既に王籍を離れられた方が随分とずうずうしいのではありません?」
そして、親ファランの多くが反テスティア、かつ、反アイラックだ。
「全くですわ。后妃様から申し入れられればグローリア侯爵様でも断り辛いと解ってやっているのでしょう? そんなもの本当に誠意ある謝罪ではありませんわ」
「そもそも、どうして濡れ衣を着せようとしていたあの方がただ王籍剥奪だけで済んでいるのか、全く理解できないのですけど…」
「本当に」
そこからは、同じ意見の者しかいない気安さと既に王族でなくなっているアイラックに遠慮は無用、と、際限のないこき下ろしが始まった。
永遠に続くかと思わるほど止めどないやりとりだったが、元々悪口だけで時間が潰せる性格もしていない彼女達のやりとりは、唐突に終わる。
「あ、いけないわ。訊き忘れるところでした。ねぇ、カメリアさん。グローリア侯爵様の補佐人の方がパーティに一緒にいらしたのよね?」
「いらっしゃったけど…どうして?」
「わたくしの義兄が山野局勤めなのだけど。その方が有能で、同僚が近付く隙が無いってぼやいていたって、仰るの。でもそんな有能な補佐人の方なのに、お名前も聞いた事がなかったものだから、どういった方なのかしらって」
「あらそんなに有能な方なの?」
「さすがグローリア侯爵様がお選びになるだけはある、って少なくとも義兄は感心してましたわ」
「パーティにいらした印象では補佐人として有能でいらっしゃるかは解らなかったけど…確かに、ファラン様にとって近しい方なのだろうなとは思ったわ」
そんな方が一緒に居たならどうしてその話をもっとしないの、という非難の高まりに、カメリアは慌てて言葉を紡ぐ。
「だって、私の勝手な印象なのよ? ファラン様はただ補佐人の方ってご紹介くださっただけだし」
「その印象を詳しく話しなさいな!」
「どのような方なの?」
「さあほら」
「その、何というか、ファラン様の笑顔が多かったのよ。私達だってそうだけれど、外向きの顔ってあるじゃない? そういうのよりも柔らかな笑顔を何度も浮かべていらっしゃって。学園にいらっしゃる時は、そもそもあまりお笑いになる事もなくていらしたから、ああこの方はファラン様にとって身内に当たる方なのかしらってそう、感じたのよ」
カメリアの言葉に、彼女達は一気に色めき立った。
「お名前は? どこの方ですの!」
「ご容姿は?」
「次の予定は取りやめますわ! ですからもっと詳しく話してくださいな!」
三人寄れば姦しい、などと言われる女性だが、四人いればもはや止めようもない。彼女達によるクライフの人物像妄想とファランとの関係妄想は、常識的に考えてもうアウトという時間まで延々と続いた。
「じゃあ、グローリア侯爵様を誕生会に?」
「本当に?!」
久しぶりに会った学園の友人達に、おめでとうを言われるよりも先に、一昨日の誕生パーティでの事を披露したカメリアは、重々しく頷いた。
「ええ、そうなの。本当なら全然ファラン様をお呼びできるような会ではなかったのだけど。夫が勝手に…」
「待って!」
それはないという空気を纏った二人の令嬢を遮るように、カメリアと同じように既に結婚している伯爵夫人が手を上げ遮った。
「今、ファラン様って、仰言いませんでした?」
そう言えば、と気付いた二人と合わせ、三人に視線を向けられたカメリアは少し得意気な笑顔を浮かべた。
「ええ、実は、そうお呼びしても良いって、お許しを頂いたの」
「まぁ…」
「どうして?」
「そんな羨ましい事に?!」
「それなのよ!」
カメリアは手を叩いて、一昨日の自分がいかにファランの優しさに触れたかをうっとりと語る。
「ファラン様はとても寛容でいらっしゃったわ。私との取るに足らないような約束も覚えていてくださって。笑顔でおめでとうとお言葉をくださったのよ! 怒って帰ってしまってもおかしくない事態だったのに」
「貴方のグローリア侯爵様への傾倒は行き過ぎだと思っていましたけど…本当にお優しい方でしたのね」
令嬢の言葉に、カメリアを含む残り三人がきっと表情をキツくする。
「だからいつも言っているでしょう」
「あのニールベス嬢にさえお気遣いなさる方ですのよ?」
「わたくしもあの方のように寛容になりたいものだわ」
本人が聞いてたら、四人の中で唯一冷静な反応をしていた令嬢に同意を示しただろうが、ここにはかなり強めのファラン好きが集まっている。そのため、ちょっとした集まりというお喋り大会も半ばを過ぎる頃には、その令嬢もファラン好きに傾いていった。
久しぶりに見たファランは、噂になっている通り、とても美しくなっている。
先々代のグローリア侯爵が一目惚れしたというトーリシア出身の祖母にきっと似たのだろう。
人品骨柄はもとより家格来歴どれをとってもあんなに素晴らしい令嬢はいない。
その上、お身内だからと不正に目を瞑ることのない公明正大さを持ちながらも、慈悲と寛恕の心をも持つ立派な領主である。
等々。
本人が聞いたら、
「もしかして、この世界には私以外にもファラン・マーヴェラスって名前の人がいるの?」
と、言い出しそうな褒め言葉の雨霰であった。
勿論、彼女達はあくまで親ファラン、とでも言おうか、ものすごく好意的にファランの行動を受け止めてくれている集団ではあるので、これが全貴族女性の総意ではない。
ただ、この親ファランな彼女達の恐ろしいところは、ファラン本人よりよほど彼女の周りに詳しい事である。まぁ、本人のコミュニティが貴族としては狭過ぎるせいでもあるが。
「そういえば、わたくし妙な話を耳にしたのですけど…グローリア侯爵様に第二后妃様からお詫びが申し入れられたとかって」
「あら? 私は、第二后妃様から、お詫びの場を儲けたいという、打診があったと聞きましたけど」
「どちらにせよ、既に王籍を離れられた方が随分とずうずうしいのではありません?」
そして、親ファランの多くが反テスティア、かつ、反アイラックだ。
「全くですわ。后妃様から申し入れられればグローリア侯爵様でも断り辛いと解ってやっているのでしょう? そんなもの本当に誠意ある謝罪ではありませんわ」
「そもそも、どうして濡れ衣を着せようとしていたあの方がただ王籍剥奪だけで済んでいるのか、全く理解できないのですけど…」
「本当に」
そこからは、同じ意見の者しかいない気安さと既に王族でなくなっているアイラックに遠慮は無用、と、際限のないこき下ろしが始まった。
永遠に続くかと思わるほど止めどないやりとりだったが、元々悪口だけで時間が潰せる性格もしていない彼女達のやりとりは、唐突に終わる。
「あ、いけないわ。訊き忘れるところでした。ねぇ、カメリアさん。グローリア侯爵様の補佐人の方がパーティに一緒にいらしたのよね?」
「いらっしゃったけど…どうして?」
「わたくしの義兄が山野局勤めなのだけど。その方が有能で、同僚が近付く隙が無いってぼやいていたって、仰るの。でもそんな有能な補佐人の方なのに、お名前も聞いた事がなかったものだから、どういった方なのかしらって」
「あらそんなに有能な方なの?」
「さすがグローリア侯爵様がお選びになるだけはある、って少なくとも義兄は感心してましたわ」
「パーティにいらした印象では補佐人として有能でいらっしゃるかは解らなかったけど…確かに、ファラン様にとって近しい方なのだろうなとは思ったわ」
そんな方が一緒に居たならどうしてその話をもっとしないの、という非難の高まりに、カメリアは慌てて言葉を紡ぐ。
「だって、私の勝手な印象なのよ? ファラン様はただ補佐人の方ってご紹介くださっただけだし」
「その印象を詳しく話しなさいな!」
「どのような方なの?」
「さあほら」
「その、何というか、ファラン様の笑顔が多かったのよ。私達だってそうだけれど、外向きの顔ってあるじゃない? そういうのよりも柔らかな笑顔を何度も浮かべていらっしゃって。学園にいらっしゃる時は、そもそもあまりお笑いになる事もなくていらしたから、ああこの方はファラン様にとって身内に当たる方なのかしらってそう、感じたのよ」
カメリアの言葉に、彼女達は一気に色めき立った。
「お名前は? どこの方ですの!」
「ご容姿は?」
「次の予定は取りやめますわ! ですからもっと詳しく話してくださいな!」
三人寄れば姦しい、などと言われる女性だが、四人いればもはや止めようもない。彼女達によるクライフの人物像妄想とファランとの関係妄想は、常識的に考えてもうアウトという時間まで延々と続いた。
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