67 / 84
徐々にやっていきましょう
65.加速していく…
しおりを挟む
「お話を、お伺いします。まずは、貴方のお名前など聞かせてくださる?」
女性は、慌てて居住まいを正すと、
「私はメイラ・カリエナと申します。この子は、娘のシエラです。私と、イカス様の子です」
薄々、そうだろうとは思っていたので、ファランに衝撃は無い。
頭巾を取った今のシエラは、ハニーブロンドの髪にアイスブルーの瞳をもち、ぱっちりとした二重のキラキラした美幼女だった。どう見てもトレッツォ家の血を引いている。メイラが茶髪の緑眼なので、父親似なのも疑う余地がない。まぁ、本当に二人が母娘か、という部分は疑いの余地がある訳だが。
「私の記憶でも、貴方の名乗りでも、叔父が独身で有った事が解ります。内縁の関係だったのだろうと推察いたしますが、彼女が叔父の子供である事を証明できますか?」
「イカス様から、シエラが生まれた時に贈っていただいた蹄鉄があります!」
持っていますと彼女が出したものは、確かに貴族が依頼して作らせたのだと推察できる、金製の蹄鉄だった。宝石も使われている。イカスからシエラへ贈るという銘も入っていた。籍も入れていない相手に贈るには豪華なそれは、おそらく財産としての意味合いもあるだろう。
(入籍も認知もしていないけど、責任を取る気はあったという事?)
だからなんだ、という白けた思いではあるのだが。ファランは、おそらく叔父と母の間にも軋轢はあったのだろうな、と感じる。
「なるほど。つまり、シエラに叔父の嘆願を書かせるから、それを私に司法局へ提出して欲しい、という事かしら?」
「…は、はい! 然様でございます!」
僅かに体を捻って、クライフに声をかける。
「クライフさん。私には、この子が叔父に似ていると思えます。この蹄鉄も他人に贈る品には見えません。この二点で彼女と叔父が親子だと認定される事はありえますか?」
「司法局に申請を出し、双方から聞き取りを行い、面談をする根拠にはなると思います。どういった判断が出るかについては断定しかねますが」
「その判断は、叔父の判決に間に合いますか?」
「申請を出した時点で、嘆願が発生する事を考慮されますから、停止状態になるので、間に合います」
「ではすぐに申請を出しましょう」
クライフは、少し確認するようにファランを見つめ返したが、少し間を置いて頷いた。
「…お手伝いします。メイラ・カリエナさんでしたね?」
「はい!」
「シエラさんは貴方の籍に入っていますか?」
「はい、もちろんです!」
「では未成人後見としての書類をまず作りましょう。親子関係の認知を求める申請書も減刑嘆願書も、本人に書いてもらうのは難しいでしょうから」
大人達の小難しい話し合いなど一切関知せず、シエラはお菓子で口をいっぱいにして喜色満面だった。
「今から、司法局へ向かえますか?」
「はい! 行きます! どこでも!」
「やぁっ!」
メイラが勢いこんでクライフに答え、シエラの手を取ったのだが。
お菓子にすっかり魅了されていたシエラは、引かれた手と反対の手で菓子器を掴んでぶんぶんと音がしそうなほど首を横に振った。
「わがまま言わないで、ほら、行くわよ!」
「やぁ…」
お菓子ならいくらでも持って行って良いですよ、と言いかけて、ファランはクライフの方を向く。
「書類の申請にはシエラさんも居た方が良いのですか?」
「いえ、メイラさんとの親子関係は戸籍で証明できますから、本人が不在でも問題ありませんが」
「では、しばらくこちらでお預かりしましょう」
「え?!」
「司法局のようなところは幼い子には退屈でしょうし。こちらは構いませんので」
「ですが、そのようなご迷惑は!」
「迷惑などと、私とシエラさんは従姉妹になるのですから」
きょとんと自分を見上げるシエラに笑顔を返す。
(リアル天使可愛過ぎ!)
申し出の中には、幾ばくかのこんな可愛い幼女ならもう少し見ていたい、という欲望も混じっていたが。概ねは、本気の気遣いだ。ほぼ叔父との関係は真実だろうと信じられるし、それを抜きにしても幼女一人預かるくらいの親切さは持っていると振舞いたかった。
ファラン、ひいてはマーヴェラス家の印象を上向ける行動は、何を置いたとしても、積極的に取っていきたい。
「グローリア侯の仰る通り、司法居では少し時間がかかるでしょうから。お言葉に甘えられてはいかがですか?」
クライフからも重ねられた説得に、メイラは、頷くとシエラに良い子にするよう言い聞かせ、ファランへは何度も頭を下げ娘の身柄を頼んだ。
突然の事態で混乱したが、天使のように愛らしい幼女への着せ替えに夢中になるファラン。
ファランの幼い頃の服を着せられて、お菓子をもらっては満面の笑顔を浮かべるシエラに夢中になるカトレアを筆頭とした侍女達。
すっかり盛り上がった彼女達は、クライフとメイラが戻り、シエラが帰っていくのを名残惜しそうに見送った。
手続きについてクライフから報告を受けたファランは、去り際に言われた言葉で、ようやく思い出す。
「今日は練習になりませんでしたね」
「………然様ですね」
ろくに復習も出来なかった、どころか、結局シエラに夢中になっていた訳だが諸々やり直すと言ってた準備がどうなったのか、という事も解らない。
「では、また明日参ります」
「お願いします」
とはいえ、徹夜で特訓したいのですが、などという訳にもいかない。睡眠不足は美容の大敵だ。
(もっと、余裕を持って生きていきたいのに…)
ファランは、明日一日で、私は踊れると自信を持って言えるようにならねばいけなくなった。
女性は、慌てて居住まいを正すと、
「私はメイラ・カリエナと申します。この子は、娘のシエラです。私と、イカス様の子です」
薄々、そうだろうとは思っていたので、ファランに衝撃は無い。
頭巾を取った今のシエラは、ハニーブロンドの髪にアイスブルーの瞳をもち、ぱっちりとした二重のキラキラした美幼女だった。どう見てもトレッツォ家の血を引いている。メイラが茶髪の緑眼なので、父親似なのも疑う余地がない。まぁ、本当に二人が母娘か、という部分は疑いの余地がある訳だが。
「私の記憶でも、貴方の名乗りでも、叔父が独身で有った事が解ります。内縁の関係だったのだろうと推察いたしますが、彼女が叔父の子供である事を証明できますか?」
「イカス様から、シエラが生まれた時に贈っていただいた蹄鉄があります!」
持っていますと彼女が出したものは、確かに貴族が依頼して作らせたのだと推察できる、金製の蹄鉄だった。宝石も使われている。イカスからシエラへ贈るという銘も入っていた。籍も入れていない相手に贈るには豪華なそれは、おそらく財産としての意味合いもあるだろう。
(入籍も認知もしていないけど、責任を取る気はあったという事?)
だからなんだ、という白けた思いではあるのだが。ファランは、おそらく叔父と母の間にも軋轢はあったのだろうな、と感じる。
「なるほど。つまり、シエラに叔父の嘆願を書かせるから、それを私に司法局へ提出して欲しい、という事かしら?」
「…は、はい! 然様でございます!」
僅かに体を捻って、クライフに声をかける。
「クライフさん。私には、この子が叔父に似ていると思えます。この蹄鉄も他人に贈る品には見えません。この二点で彼女と叔父が親子だと認定される事はありえますか?」
「司法局に申請を出し、双方から聞き取りを行い、面談をする根拠にはなると思います。どういった判断が出るかについては断定しかねますが」
「その判断は、叔父の判決に間に合いますか?」
「申請を出した時点で、嘆願が発生する事を考慮されますから、停止状態になるので、間に合います」
「ではすぐに申請を出しましょう」
クライフは、少し確認するようにファランを見つめ返したが、少し間を置いて頷いた。
「…お手伝いします。メイラ・カリエナさんでしたね?」
「はい!」
「シエラさんは貴方の籍に入っていますか?」
「はい、もちろんです!」
「では未成人後見としての書類をまず作りましょう。親子関係の認知を求める申請書も減刑嘆願書も、本人に書いてもらうのは難しいでしょうから」
大人達の小難しい話し合いなど一切関知せず、シエラはお菓子で口をいっぱいにして喜色満面だった。
「今から、司法局へ向かえますか?」
「はい! 行きます! どこでも!」
「やぁっ!」
メイラが勢いこんでクライフに答え、シエラの手を取ったのだが。
お菓子にすっかり魅了されていたシエラは、引かれた手と反対の手で菓子器を掴んでぶんぶんと音がしそうなほど首を横に振った。
「わがまま言わないで、ほら、行くわよ!」
「やぁ…」
お菓子ならいくらでも持って行って良いですよ、と言いかけて、ファランはクライフの方を向く。
「書類の申請にはシエラさんも居た方が良いのですか?」
「いえ、メイラさんとの親子関係は戸籍で証明できますから、本人が不在でも問題ありませんが」
「では、しばらくこちらでお預かりしましょう」
「え?!」
「司法局のようなところは幼い子には退屈でしょうし。こちらは構いませんので」
「ですが、そのようなご迷惑は!」
「迷惑などと、私とシエラさんは従姉妹になるのですから」
きょとんと自分を見上げるシエラに笑顔を返す。
(リアル天使可愛過ぎ!)
申し出の中には、幾ばくかのこんな可愛い幼女ならもう少し見ていたい、という欲望も混じっていたが。概ねは、本気の気遣いだ。ほぼ叔父との関係は真実だろうと信じられるし、それを抜きにしても幼女一人預かるくらいの親切さは持っていると振舞いたかった。
ファラン、ひいてはマーヴェラス家の印象を上向ける行動は、何を置いたとしても、積極的に取っていきたい。
「グローリア侯の仰る通り、司法居では少し時間がかかるでしょうから。お言葉に甘えられてはいかがですか?」
クライフからも重ねられた説得に、メイラは、頷くとシエラに良い子にするよう言い聞かせ、ファランへは何度も頭を下げ娘の身柄を頼んだ。
突然の事態で混乱したが、天使のように愛らしい幼女への着せ替えに夢中になるファラン。
ファランの幼い頃の服を着せられて、お菓子をもらっては満面の笑顔を浮かべるシエラに夢中になるカトレアを筆頭とした侍女達。
すっかり盛り上がった彼女達は、クライフとメイラが戻り、シエラが帰っていくのを名残惜しそうに見送った。
手続きについてクライフから報告を受けたファランは、去り際に言われた言葉で、ようやく思い出す。
「今日は練習になりませんでしたね」
「………然様ですね」
ろくに復習も出来なかった、どころか、結局シエラに夢中になっていた訳だが諸々やり直すと言ってた準備がどうなったのか、という事も解らない。
「では、また明日参ります」
「お願いします」
とはいえ、徹夜で特訓したいのですが、などという訳にもいかない。睡眠不足は美容の大敵だ。
(もっと、余裕を持って生きていきたいのに…)
ファランは、明日一日で、私は踊れると自信を持って言えるようにならねばいけなくなった。
50
あなたにおすすめの小説
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった
木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。
今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。
せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。
床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。
その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。
他サイトでもアップしています。
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?
幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい
ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26)
鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。
狭い個室にはメイド服がかかっている。
とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。
「この顔……どこか見覚えが……」
幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。
名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー)
没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。
原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。
「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」
幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。
病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。
エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18)
全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。
タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる