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第2章 影太くん前世を知る
コロモちゃんの助言
しおりを挟む「影太君には私の気持ちがわかりますか? 可愛い我が子から初めてされたお願いが『えーたとオシリでエッチできるカラダにして♡』だった私の気持ちが」
「いえ……ホントすいません……」
「それを貴方、一度も試さずに元に戻してほしいとか、我が儘がすぎると思いませんか? 私を何だと思っているんですか?」
マレさんの寝室の前にいたミョウと話していた。ミョウは全身を縄でグルグルにされ、ミノムシみたいに逆さまの宙吊りにされている。背中には『変態』と書かれた紙が貼ってあった。寝室に侵入して追い出されたの? 変態だよ……
「見てはなりません主人。世も末でございます……」
手桶を持ったお風呂上りらしい浴衣姿のリンとルノが俺たちを避けて通り過ぎた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
スゥの状態があまりにも可哀想で、元に戻せないかとお願いしたけどダメでした。おそらくスゥがそれを望んでないからだと思う……
「エイタ、僕、教える! スゥの膣穴、制御!」
ミョウのそばで丸くなっていたコロモがぴょんぴょん手を上げてついてきた。
予備校の帰り道に俺を抱えて運んでくれたコロモは、あれからミョウのそばをぴったりと離れずにいた。嗅覚と本能で最も安全な場所と判断しているのかもしれない。コロモにとってミョウは運命共同体で主人のような存在だし。
ミョウはかなりの変人だけど、よくわからないことが多い中で一番頼りになっている……と思う。ひょうひょうとしているけどマレさんよりも上手に見えるし。《新世代》という人たちとの交渉の準備も前から進めていたみたいだし、その傍らでしなくてもいいスゥの改造までしてくれたのだから文句は言えない。何もできない俺が余計な仕事を増やすのはいけないよね……
《新世代》の件には無関係そうに見える俺も、マレさんに《魂》を弄られている存在なので迂闊に外へは出せないそうです。《転生》自体がアウトなら、分解処分されるのかもしれない。創造主サイドの次元の違う人たちに反抗するとか俺には無理だし、最悪の覚悟はしておかなきゃとは思う。分解って、痛いのかな……
そんなわけで俺は当分このお屋敷で過ごすことになった。通信手段が限られているので、家にはマレさんが連絡を入れてくれた。母親は俺がスゥに謝罪をしてるって思ってそう……。そうするとますますコロモとの関係が真実味を帯びてしまうけども仕方がない。誤解とはいえ母親の中で不誠実な息子になってしまってすいません。残り数日だった予備校の夏期講習は断念して、ここでスゥとおとなしくしていようと思います。でも、いつまで……?
この一件が終わるのにどのくらいの時間がかかるんだろう。夏休み中に終わるかな。このお屋敷から一生出れなかったりする? 数年後に外に出れて高校中退という可能性もあるよね。生き残る方向で人生プランを何通りか考えておかなきゃ……
腕を組んでうーんと悩んでいると、小さなイタチ姿のコロモがチョロチョロと体を登って肩の上に乗った。はわわ……♡ あまりの可愛さに頬擦りをする。いけないって思ってるのにやめられません。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「えーた……」
スゥの引きこもり部屋に戻っていた。布団の中から目だけを出してスゥが俺を睨んでいる。
「えーた、コロモとおなじオフトンでねたの……?」
え、何の話…………あ、さっきちょっと思い出していた母親の件ですね。部屋の外で考えていたけど、聞き耳を立てていたのかな。それともコロモが何か考えていたとか……? ともかく絨毯に正座をして頭を下げる。
「確かに……一緒に寝てしまったけど、その、不可抗力と言いますか、ほら俺って秒で寝るよね。コロモが乗ったまま寝ちゃってですね……」
肩の上がずっしりと重くなり、体に何かがまとわりつく。顔を上げると人型のコロモが俺にベッタリとくっついていた。気のせいか普段より艶めかしく密着されている。
「僕のお尻、エイタ触る。エイタ大興奮♡」
「ちが……違うよね……? ニュアンスがかなり違うというか……」
誤解されるような変な言い方はやめてください。コロモさん……?!
ベッドでの事故を思い出してしまった。目が泳ぐ。確かに俺はコロモのルームパンツを剥いてお尻を見てしまった。つるんとした丸い双丘を……でもあれ? お尻に直に触ってはいないよね……
「えーた……コロモのおしりにコーフンしたの……?」
「え……いや……あれはその、朝の生理現象で……」
赤面する俺にコロモは嬉しそうに頬をすり寄せて耳にキスをする。ヒィ!! ちょ……一体どうしたの? こんな状態のスゥにケンカを売らないでよ。小さなイタチ姿のコロモに、スキンシップしすぎちゃったのかな……
「ん~♡ エイタ、僕に興奮。陰茎勃起、僕の口、挿入。射精大量♡ エイタの種、美味♡」
ベッドの上のスゥは歯ぎしりをしながら起き上がった。
「コロモにおちんちん……しゃぶらせたの?!」
「ちがっ……違いますッ! スゥのお尻にしたことを思い出して……コロモの歯が当たって……それで……」
それで……確かに出ちゃってました。その下着のままお説教を食らっていました。出ちゃったけど、『大量』じゃないです……
真っ赤になって顔を覆った。こんなの泣く。でも謝ったら負けだ。俺は浮気なんてしてない! だってスゥにした変態プレイの記憶が強烈で、コロモのお尻を目の前にスゥのお尻にしたえっちなことを思い出して、朝勃ちしてたソコが一瞬本気になってしまったんです。そこに寝ぼけたコロモから強い刺激を受けて一気に果ててしまった。あんなの事故だと叫びたい。寝起きでパニック状態の自分にはどうすることもできなかった。これが浮気と言うなら理不尽だ……
踞って肩を震わせて涙する俺にコロモがよしよしする。もぉ何なの……
「スゥ憤慨、膣穴閉じる。感情の制御、大事。スゥ理解?」
「あ……」
コロモの言葉にスゥが間の抜けた声を出す。
「スゥ、興奮遮断。愛する、興奮、別! エイタ好き、エイタに興奮、別! 理解?」
顔を上げるとスゥが自分の股間を見て驚いていた。お漏らし状態が止まったらしい。コロモが頭を覗けと自分の額を人差し指で叩いている。スゥはムッとしながらコロモの瞳を眺めた。そして何を見たのか難しい顔で唸る。
コロモには《擬似膣口》はないけど、肛門からエキゾチックな香りの体液が出ていたのを思うと似たような体の構造をしているのかもしれない。それで『膣穴の制御を教える』的なことを言ってついて来たのか……
ならこれは茶番だったの? 泣きたい。泣いてるし……
涙を袖で拭うとコロモが顔を覗き込んできた。
「エイタ、スゥに沢山触れる。順応、早い。頑張る!」
「わ……わかったよ。ありがとうコロモ……」
コロモはにっこり微笑んで俺の唇に唇を重ねた。軽いキスだったけど思わず仰け反って引っくり返る。それを見て楽しそうに笑ったコロモは、ぴょんぴょん飛ぶように部屋を出て行った。なに今の……。耳と頬が熱くなる。
「えーた……」
はい、すいません。
◇◆◇◆◇◆◇◆
スゥとベッドの上に並んで座っている。天からの施しでシーツとマットレスが一新されていた。下半身丸出しのスゥに俺はポケットからそれを出して手渡す。
「えーた……なんでボクのぱんつもってるの?」
先日ミョウが俺の《直感》を試しがてらにくれた物だった。ピンク色のローライズボクサーです。スゥが消えてちょっとしたパニックだったし、何か重要なアイテムの可能性があったので肌身離さず持っていました。
「これ、おふろのまえにぬいだやつだよ?」
「え……?」
目を丸くしているスゥに真っ赤になった。両手で顔を覆う。洗ってないヤツだったの……?!
ミョウの考えていることが俺にはよくわからない。あの人潔癖症じゃないの? 設定忘れてませんか? 俺が使用済みの下着が好きとか思ってるの……?
「ウフ♡ これでおなにーした?」
「しないよ! そんな変態なことしないよ! ……え、して欲しかったの?」
「だってスケベなえーた、かわいんだもん♡」
スゥの感覚もよくわからない。俺がスゥの使用済みぱんつでオナニーしてたら嬉しいの? 俺がスゥに変態行為をすることが可愛いの? 萌えポイントがわからない……
「おしりをムチューでなめてるえーた、すっごくカワイかった♡ ……アッ♡」
やめて。その黒歴史はやめて。
スゥはいろいろ思い出したのか身悶えている。せっかく正常になりつつあったのにシーツに再び染みが広がった。俺が真っ赤になる。
コロモの指摘からして、どうもスゥは《好き》と《性的興奮》を同じだと思っている節がある。性器に関しては魔改造品だし、性的興奮はアチェから学んだものだよね。その辺の認識を誤解してる気がする。膣液が出っ放しだったのは、普段から常に俺のことを考えて性的興奮状態にあるからだというし。顔を見ただけで、名前を呼んだだけで高ぶって射精するとか、絶対におかしい。そのタイミングで沸き起こるものといえば、俺なら《好き》や《かわいい》という気持ちかなって……
スゥの行動理念みたいな『エッチで愛を伝える』っていうのは、この辺のズレが生んでる考えだったりしない……?
「ねぇスゥ……《愛すること》と、《エッチ》とは別じゃないの?」
スゥは不思議な顔で俺を見ていた。
応援ありがとうございます!
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