6 / 32
#6.輩たちのゲーム
しおりを挟む程なくして――
貴水会長からの言付け物を預かっている、と大学の同級生・有吉英司が訪ねて来た。
こんな夜更けに、しかも何故、彼が?
本来なら不審に思うべきであったが、父からの言付けが気になった彰は躊躇なくエントランスを開いた。
有吉英司は大学入学当初から、頼みもしないのに何かと彰の便宜を図るなどして執事のように付き従い、キャンパス内での世話係を自称している男だった。傍から揶揄されても意に介さず、むしろそれが自分のステータスだと吹聴していた。
彰はそのような扱いをされるのが鬱陶しく、ただの友人として接して欲しいと伝えたが、それは聞き入れられなかった。元より、彼は友人でさえなかった。その慇懃無礼な態度と過度な阿諛追従は彰を悩ませた。さらに、貴水家に取り入ろうとする見え透いた魂胆にはほとほと嫌気がさしていた。
そんな有吉が実家のパーティに紛れ込んでいたのを彰は見かけた。おそらく、長男の学友という身分で通されたのだろう。しかし、関わりを避けたかった彰は敢えて無視を決め込んだ。
その有吉が、否、その有吉だからこそ、父の言付けを預かって来たとしても、あながち有り得ないことではないと思ったのだった。
『彰、メリークリスマス! 極上のワインだ』
ドアを開けた彰の目の前に、ボトルが差し出された。
『父からの言付けというのは?』
『ひゃはははっ、まんまと引っ掛かってやんの。そんなのウソに決まってんじゃん。そうでも言わなきゃ開けてくんねぇだろう。あ、ちなみに、この酒、おまえん家から勝手にいただいて来たやつな。一応返しとくぜ。空だけど』
悪びれる様子もなく、有吉は空のボトルを放り投げ、自身の背後に向かって指で『カモン』と合図した。
『かなり酔っているようだな。用がないなら帰れ』
アルコールが入ると性質が一変するタイプの人間だったのか、もしくは、下劣な品性が飲酒によって露呈したのか、明らかに普段の有吉英司ではなかった。目が座り、獣じみていた。何より、喋り方からして違っていた。これまでに彰は彼から下の名前で呼ばれたことは一度もなかった。いつもは『貴水さま』などと、半ば冗談めかして様付けで呼んでさえいるのだ。
『つれないなぁ。おまえのことだ。女の一人や二人、連れ込んでんじゃないかって期待して来てやったんだぜ。おこぼれに与りたくてさ。そんでもって、ダチも連れて来たよ~ん』
有吉と四人の男たちが、ずかずかと部屋に入り込んで来た。
その四人は彰の知らない者たちだった。どう見ても大学生ではなかった。有吉とどういう繋がりなのかは定かではないにしろ、汚らしくチャラついた風体からして、繁華街に屯する不良の類であることが窺い知れた。
『ピューッ♪』
少年を見つけるなり、有吉は口笛を吹いた。
『へぇ~』
有吉と輩たちは好奇の目で少年を見た。
『彰、女に飽きたか?』
『どういう意味だ』
『こんな綺麗なやつ初めて見た。ハーフだな。高級男娼ってやつか。それにしても、ずいぶんと人間離れしてる美貌だ。いや、人間じゃないな。まるで……そう、天使だ! さすが貴水家の御曹司。金の力で天使だって手に入れられるってわけだ』
『何をつまらないことを言っている。彼はそういう子じゃない』
『じゃあ、どういう子なのかな? こんなそそるような格好でおまえと夜を過ごしている彼は。この状況を見れば一目瞭然じゃないか。ローブの下は何も着けてないんだろ? 彰、どうだった? 天使の味は。いい声で啼いたか?』
『いい加減にしろ! 彼に失礼だろう』
『硬いこと言うなって。彰よォ、いつも自分ばっかいい思いしてんじゃねぇぞ。――そうだなぁ、せっかくだから、ゲームでも始めるとするか』
淫猥さと嗜虐性を帯びた目を肉食獣のように光らせながら、有吉は邪な視線を少年の全身に浴びせた。
『くだらないことは考えるな、有吉!』
『考えないよ。実行あるのみ。さあ、ゲームの始まりだ。輪姦っこしようぜ!』
『やめろっ……!』
少年を守ろうとした彰は不意を突かれ、背後からワインの瓶を振り下ろされた。
『――――‼』
後頭部に衝撃が走った。
ブラックアウトの間際、彰は少年が自分を呼ぶ声を聴いた。
『貴水さんっ!』
つづく
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
仮面の王子と優雅な従者
emanon
BL
国土は小さいながらも豊かな国、ライデン王国。
平和なこの国の第一王子は、人前に出る時は必ず仮面を付けている。
おまけに病弱で無能、醜男と専らの噂だ。
しかしそれは世を忍ぶ仮の姿だった──。
これは仮面の王子とその従者が暗躍する物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる