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第01章 最低な始まり
02 目指せ! 隣街
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記憶を取り戻した街(確か名前はドロッペインだったと思う)から出ることに決めたわけだが、問題は出る方法だ。
屋根の上に登ってあたりを見渡した時に見たけれど、どう見ても防壁に囲まれている。
それは仕方ない、この世界には魔物が普通に闊歩している。そんな世界で戦えないものが無防備にいるなんてありえない。
実際、俺の両親は魔物に殺されたみたいだしな。まぁ、今となってはそれも真実かどうか怪しいけどな。
「門を抜けたいところだけど、この年齢だし無理だろうな。というか夜だし、となると、あの防壁を越えるしかないか」
門のところには当然の如く門番がいる。
それは、この街に入った時に見た。
そんで、門番がいるということは、身分証の確認とか、通行料を払うとかあるだろうし、何よりこんな子供がおいそれと門の外に出してもらえるとは思えない。
そう考えた俺はとにかく防壁の傍まで向かうことにする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そうしてやって来た防壁の前。
「高いな」
さまざまな脅威から街を守るためか、防壁は高くそびえている。
それを越えるにはどうすればいいのか、とりあえず再び近くにある屋根に上ってみる。
「やっぱり、見えんな」
それはそうだろう、あたりは真っ暗闇、辛うじて月明りでうっすら見える程度だ。
「仕方ない、探知っと」
仕方なく探知魔法を使ってみる。
これは、いわゆるテンプレ魔法でレーダーのような魔法だ。
それを使い、防壁の上を見てみると、思っていた通り、両側に1人ずつ兵士がいるようだ。
「いるな」
俺が前世でやったゲームだと、防壁を上って、見張りの間を素早く抜けるとかできるんだが、あいにくとここは現実、そんなに甘くない。ていうか、あれはゲームだから難易度を下げているのは明白、なんといっても見張りなのに視野が狭すぎるからな。
っで、現実で考えると、普通に見つかるだろう、ということで陽動かな。
そんなわけで屋根に落ちている破片を2つ拾った。
「まずは、1つ」
俺は前世で左利きだった。今回はたぶん右、しかし、慣れというものがあるために左で投げることにする。そして、子供頃野球をやっていた。といっても、あまりまじめにはやってなかったし、最後までルールとかよくわからなかったけどな。というわけで1つを左側にいる兵士から少し離れた場所に投げる。
「んっ?」
それから、すぐにもう1つを右側兵士の傍に向けて投げる。
「なんだ?」
今がチャンス!!
それぞれが音のした方に確認しに向かったところで、素早く屋根を移動。
端まで行くと、身体強化魔法を使い、一気に跳ぶ。
よっと、ほっと。
続いて、防壁上部に降り立つと同時に今度は防壁の端まで走り抜け、今度は飛び降りる。
この際、肉体強化を忘れない。
これをしないとこの高さ、間違いなく骨を折る。
というわけで、無事に着陸したのち、素早く森の中に入っていく。
「……ここまでくれば大丈夫だろう」
防壁から距離をとったところでようやく止まり、一息つく。
「あとは、ちょっと夜が明けるまで待つか……とはいえ、今何時だ」
記憶が戻ったのは別に日付が変わった瞬間、ではなく俺が生まれた時間だ。
つまり、俺は夜中に生まれたわけだが、それが何時だったのかわからないから、今の時刻が分からない。
「まぁ、とりあえず寝ておくか」
というわけで、眠いということもあるので寝ておくことにする。
といっても、普通ならこの行動はありえない、なんといっても、この世界は先ほども言ったが魔物が闊歩している世界、もしこんなところで寝た場合、普通に魔物に襲われる。
だが、それについては問題ない。
「えっと、結界っと」
そう、俺の最強スキルであるメティスルの権能、あらゆる魔法を使いこなせる能力を使えば、難しい結界魔法も簡単に行使できる。
「そんじゃ、お休み……ZZZZZZ」
記憶が戻ったといっても、俺の肉体は12歳にしても小さく痩せている。そして何より、今日も、いや昨日か、それはわからないが、しこたま殴られている。
相当疲れていたのだろう、前世では寝つきが悪かったのに、横になった一瞬で寝てしまった。
ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZzzzzzzzzzzzzz
翌日、すっきりとはいかないが目を覚ました。
「一瞬だったな。ていうか、ほんと今何時だ。まぁ、朝なのはわかるが」
まぶしいぐらいの日光、寝起きにはきつい光だ。
「さてと、奴隷商からかっぱらった飯も食ったし、さっそく向かうとするか」
俺が行こうとしているのは、テッカラという街だ。
といっても、名前だけでどこにあるのかはわからない。
「まぁ、街道に出たら、何らかの看板が出てるだろ」
そう願い、防壁を背に歩き出す。
そうして、歩くことしばし、視界が開けてきた。
「おっ、街道だ」
ついに街道に出た。
「問題は、どっちに進むかだよな」
左か、右か、おそらく昨日防壁の上からちょろっと見た限りで見ると、左に行くとドロッペインの門にたどり着くと思う。
暗闇の中うっすらと見えた門の明かりを思い出していた。
「となると、右か」
門の近くに行くと、人がいて俺みたいなのが行くと下手すると保護される。
そうなると、人見知りの人嫌いである俺にとってはかなり面倒だ。
そこで、街道を歩き看板を探す方がいい。
そんなわけで、右にむかって歩き出す。
てくてくてくてくてくてくてくふぅてくてくてくてくてくてくふぅてくてくてくてく
歩くこと数十分、っていうか、すげぇ疲れた。
俺は息を切らしながら近くにあった岩の上に座り込む。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、やばいな、この体力、ていうか前世より圧倒的に低いよなぁ」
まぁ、これは当然だろう、俺の前世は40近くだったし、普通に生活はしていた。
それに対して、今の俺は12歳、12歳と40歳では基礎体力は当然違う。
まぁ、それでも、前世の12歳当時よりも低いけどな。
それも、当然だ。前世の俺はちゃんとした両親の元それなりに健康に生きていた。
だが、今回の俺は違う、幼いころからこき使われていた。これならもっと体力があってもいいと思うが、問題は食事だ。まともな食事なんてもらったことがない。
そのため、俺の体は圧倒的に小さい、それにやせている。
今の俺の姿を見たら、日本なら間違いなく児相に通報されて、保護され病院行きだろう。
まぁ、この世界にそんなものはないだろうけどな。
さてと、休憩もそろそろ切り上げて、歩くとするかな。
「よいしょっと」
前世の癖で、ついこういってしまった。
今後のためにも直さないとな。
さすがにこの見た目でおっさんはない。
そんなしょうもないことを考えながらてくてくと歩き出す。
てくてくてくてくてくふぅてくてくてくてくふぅてくてくてくてく
再び歩き出すこと少し、何やら俺の視線の先に木製の人工物が見えてきた。
「おっ、あれか?」
目を凝らしてみてみると、それは木でできた棒に板が張ってあった。
間違いない看板だ。
「いやぁ、よく見えるっていいなぁ」
遠くがはっきりと見えることに感動しながらも、俺は看板目指してゆっくりと歩き出す。
というのも、俺は前世で目が悪かった。
まぁ、これは現代日本では珍しくもなんともないことだが、小さいころから眼鏡が手放せなかった俺としては、こうして裸眼でもよく見える景色に感動していた。
「どれどれ、なんて書いてあるのかな」
ようやく看板のところまでやって来たところで、じっくりと看板を眺めてみる。
「えっと、おっ、よっしゃ」
運が向いてきたのか、看板の1つには”テッカラ”と書かれていた。
というのも、そもそも俺はテッカラがどこにあるのかも、ドロッペインからどの方角にあるのかも全く分からない。だから、看板を目指して歩いて来たはいいが、最悪看板にテッカラの名前がない場合があった。
その時は、引き返すしかないわけだけど、どうやらこっちであっていたらしい。
いやぁ、よかった、よかった。さすがに来た道を戻るのは今の俺にはきつすぎる。
ほっとしたところで、ちょっと休憩をすることにした。
「ふぅ、それにしても、ほんと疲れた。一体あとどのくらいでテッカラにつくんだか、普通なら馬車とか使うんだろうな。来た時も使ったしな」
とはいえ、今回馬車は使えない、というか道中で馬車がやって来たところで隠れないといけないだろうな。
それはそうだろう、俺の見た目はどう見ても幼い子供、いわゆる幼児にしか見えない。そんなものが魔物がうごめく街道をウロチョロしていたら、俺だって保護しようとする。
「さてっと、そろそろ行くとするかな」
若干重くなった腰を上げて、よいしょっと立ち上がる。
そうして、再び看板を確認してからテッカラに向かって街道を南下していく。
屋根の上に登ってあたりを見渡した時に見たけれど、どう見ても防壁に囲まれている。
それは仕方ない、この世界には魔物が普通に闊歩している。そんな世界で戦えないものが無防備にいるなんてありえない。
実際、俺の両親は魔物に殺されたみたいだしな。まぁ、今となってはそれも真実かどうか怪しいけどな。
「門を抜けたいところだけど、この年齢だし無理だろうな。というか夜だし、となると、あの防壁を越えるしかないか」
門のところには当然の如く門番がいる。
それは、この街に入った時に見た。
そんで、門番がいるということは、身分証の確認とか、通行料を払うとかあるだろうし、何よりこんな子供がおいそれと門の外に出してもらえるとは思えない。
そう考えた俺はとにかく防壁の傍まで向かうことにする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そうしてやって来た防壁の前。
「高いな」
さまざまな脅威から街を守るためか、防壁は高くそびえている。
それを越えるにはどうすればいいのか、とりあえず再び近くにある屋根に上ってみる。
「やっぱり、見えんな」
それはそうだろう、あたりは真っ暗闇、辛うじて月明りでうっすら見える程度だ。
「仕方ない、探知っと」
仕方なく探知魔法を使ってみる。
これは、いわゆるテンプレ魔法でレーダーのような魔法だ。
それを使い、防壁の上を見てみると、思っていた通り、両側に1人ずつ兵士がいるようだ。
「いるな」
俺が前世でやったゲームだと、防壁を上って、見張りの間を素早く抜けるとかできるんだが、あいにくとここは現実、そんなに甘くない。ていうか、あれはゲームだから難易度を下げているのは明白、なんといっても見張りなのに視野が狭すぎるからな。
っで、現実で考えると、普通に見つかるだろう、ということで陽動かな。
そんなわけで屋根に落ちている破片を2つ拾った。
「まずは、1つ」
俺は前世で左利きだった。今回はたぶん右、しかし、慣れというものがあるために左で投げることにする。そして、子供頃野球をやっていた。といっても、あまりまじめにはやってなかったし、最後までルールとかよくわからなかったけどな。というわけで1つを左側にいる兵士から少し離れた場所に投げる。
「んっ?」
それから、すぐにもう1つを右側兵士の傍に向けて投げる。
「なんだ?」
今がチャンス!!
それぞれが音のした方に確認しに向かったところで、素早く屋根を移動。
端まで行くと、身体強化魔法を使い、一気に跳ぶ。
よっと、ほっと。
続いて、防壁上部に降り立つと同時に今度は防壁の端まで走り抜け、今度は飛び降りる。
この際、肉体強化を忘れない。
これをしないとこの高さ、間違いなく骨を折る。
というわけで、無事に着陸したのち、素早く森の中に入っていく。
「……ここまでくれば大丈夫だろう」
防壁から距離をとったところでようやく止まり、一息つく。
「あとは、ちょっと夜が明けるまで待つか……とはいえ、今何時だ」
記憶が戻ったのは別に日付が変わった瞬間、ではなく俺が生まれた時間だ。
つまり、俺は夜中に生まれたわけだが、それが何時だったのかわからないから、今の時刻が分からない。
「まぁ、とりあえず寝ておくか」
というわけで、眠いということもあるので寝ておくことにする。
といっても、普通ならこの行動はありえない、なんといっても、この世界は先ほども言ったが魔物が闊歩している世界、もしこんなところで寝た場合、普通に魔物に襲われる。
だが、それについては問題ない。
「えっと、結界っと」
そう、俺の最強スキルであるメティスルの権能、あらゆる魔法を使いこなせる能力を使えば、難しい結界魔法も簡単に行使できる。
「そんじゃ、お休み……ZZZZZZ」
記憶が戻ったといっても、俺の肉体は12歳にしても小さく痩せている。そして何より、今日も、いや昨日か、それはわからないが、しこたま殴られている。
相当疲れていたのだろう、前世では寝つきが悪かったのに、横になった一瞬で寝てしまった。
ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZzzzzzzzzzzzzz
翌日、すっきりとはいかないが目を覚ました。
「一瞬だったな。ていうか、ほんと今何時だ。まぁ、朝なのはわかるが」
まぶしいぐらいの日光、寝起きにはきつい光だ。
「さてと、奴隷商からかっぱらった飯も食ったし、さっそく向かうとするか」
俺が行こうとしているのは、テッカラという街だ。
といっても、名前だけでどこにあるのかはわからない。
「まぁ、街道に出たら、何らかの看板が出てるだろ」
そう願い、防壁を背に歩き出す。
そうして、歩くことしばし、視界が開けてきた。
「おっ、街道だ」
ついに街道に出た。
「問題は、どっちに進むかだよな」
左か、右か、おそらく昨日防壁の上からちょろっと見た限りで見ると、左に行くとドロッペインの門にたどり着くと思う。
暗闇の中うっすらと見えた門の明かりを思い出していた。
「となると、右か」
門の近くに行くと、人がいて俺みたいなのが行くと下手すると保護される。
そうなると、人見知りの人嫌いである俺にとってはかなり面倒だ。
そこで、街道を歩き看板を探す方がいい。
そんなわけで、右にむかって歩き出す。
てくてくてくてくてくてくてくふぅてくてくてくてくてくてくふぅてくてくてくてく
歩くこと数十分、っていうか、すげぇ疲れた。
俺は息を切らしながら近くにあった岩の上に座り込む。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、やばいな、この体力、ていうか前世より圧倒的に低いよなぁ」
まぁ、これは当然だろう、俺の前世は40近くだったし、普通に生活はしていた。
それに対して、今の俺は12歳、12歳と40歳では基礎体力は当然違う。
まぁ、それでも、前世の12歳当時よりも低いけどな。
それも、当然だ。前世の俺はちゃんとした両親の元それなりに健康に生きていた。
だが、今回の俺は違う、幼いころからこき使われていた。これならもっと体力があってもいいと思うが、問題は食事だ。まともな食事なんてもらったことがない。
そのため、俺の体は圧倒的に小さい、それにやせている。
今の俺の姿を見たら、日本なら間違いなく児相に通報されて、保護され病院行きだろう。
まぁ、この世界にそんなものはないだろうけどな。
さてと、休憩もそろそろ切り上げて、歩くとするかな。
「よいしょっと」
前世の癖で、ついこういってしまった。
今後のためにも直さないとな。
さすがにこの見た目でおっさんはない。
そんなしょうもないことを考えながらてくてくと歩き出す。
てくてくてくてくてくふぅてくてくてくてくふぅてくてくてくてく
再び歩き出すこと少し、何やら俺の視線の先に木製の人工物が見えてきた。
「おっ、あれか?」
目を凝らしてみてみると、それは木でできた棒に板が張ってあった。
間違いない看板だ。
「いやぁ、よく見えるっていいなぁ」
遠くがはっきりと見えることに感動しながらも、俺は看板目指してゆっくりと歩き出す。
というのも、俺は前世で目が悪かった。
まぁ、これは現代日本では珍しくもなんともないことだが、小さいころから眼鏡が手放せなかった俺としては、こうして裸眼でもよく見える景色に感動していた。
「どれどれ、なんて書いてあるのかな」
ようやく看板のところまでやって来たところで、じっくりと看板を眺めてみる。
「えっと、おっ、よっしゃ」
運が向いてきたのか、看板の1つには”テッカラ”と書かれていた。
というのも、そもそも俺はテッカラがどこにあるのかも、ドロッペインからどの方角にあるのかも全く分からない。だから、看板を目指して歩いて来たはいいが、最悪看板にテッカラの名前がない場合があった。
その時は、引き返すしかないわけだけど、どうやらこっちであっていたらしい。
いやぁ、よかった、よかった。さすがに来た道を戻るのは今の俺にはきつすぎる。
ほっとしたところで、ちょっと休憩をすることにした。
「ふぅ、それにしても、ほんと疲れた。一体あとどのくらいでテッカラにつくんだか、普通なら馬車とか使うんだろうな。来た時も使ったしな」
とはいえ、今回馬車は使えない、というか道中で馬車がやって来たところで隠れないといけないだろうな。
それはそうだろう、俺の見た目はどう見ても幼い子供、いわゆる幼児にしか見えない。そんなものが魔物がうごめく街道をウロチョロしていたら、俺だって保護しようとする。
「さてっと、そろそろ行くとするかな」
若干重くなった腰を上げて、よいしょっと立ち上がる。
そうして、再び看板を確認してからテッカラに向かって街道を南下していく。
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