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第01章 最低な始まり

03 まだ、道半ば……

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 看板に書いてある目的地”テッカラ”いったい、あとどのくらい歩けば着けるのか。
 わからないのが、かなりきつい、今日この頃だ。

 さて、のんびりと歩きながらではあるが、ここで1つ疑問について答えよう。
 なぜ、俺は異世界であるこの世界の文字が読めるのか、についてである。
 ちなみに、話し言葉に関しては、この世界で12年生きてきたことで、今の俺にとっては母国語だ。
 むしろ日本語の方が外国語である。
 だから、今もこうして頭の中で考えている言葉も、ついつい出す言葉もすべてこの世界のこの国の言語である。
 っで、文字の読み書きについてだが、これは当然俺のこの12年を考えればわかると思うが、学んでいるわけがない。
 じゃあ、なぜ読めるのか、その答えこそ、神からもらった最強スキル”叡智ある者メティスル”の力だ。
 ここで、メティスルについて説明しておこう。
 歩くだけだけで、暇だしな。
 まず、メティスルは、またの名を叡智えいちある者とあるように、あらゆる知識と優れた知恵のことだ。
 ちなみに、確かギリシャ神話の神にメーティスという知恵の女神がいると思ったが、それとの関係性は俺にはわからない。
 とまぁ、そんなスキルの権能には、基幹として”森羅万象しんらばんしょう”というものがある。
 これは、読んで字のごとくこの世のあらゆるすべてを網羅するというもので、知識がデーターベースのように詰まっている。
 といっても、今の俺ではあらゆるとはいかない、これは俺が知りうるすべてとなるために、俺が知らないことはデータが存在しない。
 まぁ、それでも、基本的なことはすでにインプットされている。

 例えば、魔法に関すること、これに関しては基本変化がない、そのため魔法に関することはすべてインプットされているといってもいいだろう。
 それがあるからこそ、俺は記憶を取り戻してから散々魔法を行使することができているというわけだ。
 ちなみに、魔法に関してだが、権能の中に魔法創造というものがあり、この世界で俺だけが新たな魔法を作り出すことができる上に、それを誰かに教えることも可能だ。
 まぁ、尤もそいつにそれが扱えればの話だけどな。
 あとは、地形に関する物だろう。
 これは、どのあたりに山があるとか、海岸線がどんなものかなどだが、これを利用した権能が”マップ”となる。
 といっても、これは俺の頭の中に地図が表示されているわけだけど。問題は今現在は白地図だということだろう。地形データしかないから、植生とか人の営みとかはわからない。つまり、森、街や村といったことはわからないままとなっている。まぁ、俺がこうして歩くことで、ゲームのように徐々に詳細地図がアップされているんだけどな。
 おかげで、現座マップには俺がこれまで歩いて来たドロッペインから街道周辺の詳細がはっきりと表示されている。
 ちなみに、これのおかげでドロッペインからテッカラが南下すればたどり着けるという方角が分かったわけだ。

 あとはそうだな、”鑑定”ってところか、これは説明の必要はないだろう。調べたいことに使うとその詳細がわかるという便利権能。しかも森羅万象と結びついていることでほかのやつらがたまに持っている鑑定スキルとは比べ物にならないほど詳細に出るらしい。

 そんで、ああ、魔法の時説明しておけばよかったな。”詠唱破棄”というものがある。
 この世界の魔法には詠唱がつきものだ、どんな魔法使いも必ず詠唱を使う。
 詠唱破棄とはまさにそんな中二病みたいな詠唱をしなくても問題なく魔法を使うことができるありがたい権能だ。
 ちなみにだが、この詠唱破棄に関しては”賢者”とか”大賢者”というスキルにも備わっている権能である。

 まぁ、だいたいこんなものか、あああ、肝心な説明を忘れていたな。
 最初に言った俺がこの国の文字が読めるということの答えだけど、これこそ”森羅万象”の力だ。
 話に関しては俺自身が最初から使えていたから問題なく”森羅万象”にインプットされた。
 実は、俺が今前世のように言葉を扱えているのも、この”森羅万象”のおかげでもある。
 俺が使っているこの国の言葉を”森羅万象”が読み取り、俺が知らない言葉すら予測して補ってくれている。
 また、文字は奴隷商のところを出るときに寄り道をした際、たまたまある本をさらっとめくったところでそこから”森羅万象”が習得してくれたというわけだ。
 ほんと、ありがたいスキルだよ。


 さてっと、そんなことを考えていると、おっと、遠くに人の気配がある。
 それを感じてすぐに物陰に隠れる。


ゴトゴトゴトゴトガタン、ゴトゴトパカラパカラパカ、ゴトゴトガタンゴト


 ヒヒーンと馬が馬車を牽いて進んでくるのが見えた。
 馬車、商人とかかな、っで、周囲にいるのが護衛か。

 そんなことを思いながらも俺は”霧散”という魔法を発動。

「んっ?」
「どうした?」
「いや、気のせいか、小動物だろう」
「そうか」

 護衛の1人がそういった、どうやら瞬間漏れ出た俺の気配に気が付いたのだろう。
 俺が使った”霧散”という魔法は、様々な属性魔法を合わせた複合魔法というもので、かなり高度な魔法となる。
 まぁ、メティスルを持つ俺にはあくびをするより簡単だけどな。
 それでも、多少は発動時などに気配が漏れてしまうために一瞬気が付かれた。
 それで、その効果は、簡単に言えば気配を散らすという魔法となる。
 実は、別にもっと簡単な”遮断”という、気配を消す魔法があるが、これはちょっと問題がある。
 どういうことかというと、人間はもちろんすべての動植物にはどうしても存在しているだけで気配を発している。
 そんな中で遮断により気配を消してしまうと、そこだけができてしまう。
 そうなると、ある程度の連中だと気が付かれてしまう可能性が高い、実際、あの護衛は気が付いたと思う。
 てなわけで、今回俺が使ったのは霧散というわけだ。

 って、そんなことを考えている間にどうやら、ガタゴトと馬車は去っていった。

「よし、もういいだろ、そんじゃ、行くかな」

 馬車が見えなくなったところで、俺は再び街道に出て歩き出した。
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