若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

元婚約者がやってきた

あれから、数日……
特に変わったことがないと言えば嘘になるけれど、比較的平和に暮らしていた。
婚約破棄を家族に知らせたときは驚かれたが、私が選んだことなら……と言ってくれた。
お兄様は、アルマ様に対してあのバカ王子とか言っていたけど私は聞こえない振りをした。
そして、婚約破棄と同時にルークにプロポーズされたことを伝えると、家族みんな喜んでくれて
何で、そんなに喜んでいるのかと聞くと、昔からルークは私の事を大事にしていて、可愛がってくれているのを知っていたし
あの子には力があって、きっと私の事を理解して助けてくれると思っていたかららしい。
あっちの家から婚約の話がなければ、ルークと結婚して欲しかったとも言っていたっけ。
なんて、考えていたら扉をコンコンとノックする音が聞こえ私がどうぞ、と答えると困ったような顔をした
メイドさんが私の部屋に入ってきた。
「なにかあったのですか……？」
「はい……お嬢様にお客様が……」
「お客様？一体どなたかしら？」
「その…………アルマ様が」
「アルマ様が……！？分かりました、着替えたら向かいます」
何で今更私の家に？
とりあえず私は急いで支度をして、応接間に向かった。
そこには、前に見たときよりも少しやつれているアルマ様がいた。
「アルマ様……？」
「おぉ！聖女様！ご機嫌いかがでしょうか？」
「何をしに来たのですか？」
「そんな冷たい態度とらなくてもいいじゃないですか、私は聖女様の婚約者なのですから」
にっこりと胡散臭い笑顔を浮かべるアルマ様、それにしてもこの人はどうしてここまで平気でいられるのだろうか。
自分がしたことを忘れてしまったの？
「私は、もう貴方の婚約者ではありません、お引き取りください」
「何を言いますか！私は聖女様を愛してる！」
「私にはもう、婚約者がいます。今更何の用事ですか」
「なっ……！？人が折角来てやったと言うのになんだその態度は！しかも婚約者！？
まさか……お前浮気していたのか！？噓つき聖女の上に浮気とは……！」
「なっ……！？」
私が何も言わず黙っていると、怒りに任せて怒鳴ってきた。
そして、私の腕を掴み無理やりソファーに押し倒してきた。
「離してっ！！」
「お前は俺のものなんだよ！！お前は俺がいないと何もできないくせに！！」
「やめてっ！！！」
必死に抵抗するも男の力に勝てるはずもなく、そのまま馬乗りになってきた。
怖い……
「ルカ！！大丈夫！？」
「っ……！ルーク……！」
騒ぎを聞きつけたルークが部屋に飛び込んできた。
ルークを見た瞬間安心したのか涙が溢れてきた。
そんな私を抱きしめながら、アルマ様の方へ鋭い視線を向けた。
私達の雰囲気に何かを感じたのか、焦った様子で私から離れていった。
「な……なんだお前は……」
「ルカの婚約者です」
「噓つき聖女の？はっ、じゃあお前があいつの浮気相手って事か」
「…………やめて……ください……」
「いい加減にしてください、貴方はルカに婚約破棄されたのでしょう？今日の事は上に報告します」
「は？ちょっ！」
「すみませんが、この方を追い出してもらえますか？」
「は、はい！」
さっきまでいたメイドさんを呼び、アルマ様を追い出すように頼んだ。
すると、アルマ様は悔しそうな表情をしながら帰って行った。
私は、アルマ様が見えなくなったのを確認してからルークに強く抱きついた。
震えていた私を優しく包み込むように抱きしめてくれた。
「もう大丈夫だよ……」
「はい……でもなんでここにルークが？」
「君の家のメイドから元婚約者が訪ねてきてるって教えてもらってね、急いで家を出たら
あの場面で……」
「そうだったのですね……ありがとうございます……」
「いいんだよ、君が無事でよかった……」
ぎゅっと強く私を抱き締めてくれるルーク 私は、その温もりを感じながら目を閉じた。