若い聖女が現れたから私はお役御免!?それならこっちから婚約破棄します! ~今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです~

桜乃

文字の大きさ
23 / 321

ルカの家で

しおりを挟む
私は今、ルカの住むお家にやってきてます。
ルカに大切な話があるから来て欲しい、と呼ばれたので
一体なんの話なんだろうと不安になりながらもやって来ました。
「ルカの話って一体なんだろう?」
そんな事を考えていたら、ルカのお家が見えてきた。
私がルカの家の前に着くと、家の中からルカの家の執事さんが現れて、こちらへと案内してくれた。
そして、応接室に通されると、そこにはルカとルークが難しそうな顔をして座っていて、私が部屋に入ると二人は顔を上げて私を見た。
私は二人の向かい側の席に座り、何を言われるんだろうとドキドキしていた。
「いきなり呼び出してしまってすみません」
「ううん!でも、私に用事があるって何なのかなって……」
私がそう言うと、ルカは真剣な表情をして私を見つめてくる。
それにつられて、私も緊張してしまい体が強張ってしまう。
「沙羅は魔物という物を知っていますか?」
「魔物……?そんな物がこの世界にはいるの?」
「………はぁ、良かった」
私の答えを聞いたルカは、ホッとした表情をしていて 私はどういう事か分からず困惑している。
すると、今度はルークが口を開く。
先程までの真面目な表情とは一変して、いつも通りの優しい表情になっていて 私も安心する。
「心配させちゃったよね、ごめんね。少し確認したい事があってね……」
そう言ってルークは、西の町に現れた魔物の事を話し始めた。
最初は魔物なんて居るなんて信じられなかったけど、実際に騎士の人達が何人も怪我をしたと聞いて、魔物の存在を信じざるを得なくなった。
だけど、それよりも驚いたのが私が現れた日に魔物が現れた事。
「ルカは私が何か関係あるのかもと思って呼んだの?」
「…………ごめんね。沙羅が関係あるとは思ってなかったのですが、やっぱり本人に聞かなくてはと思いまして……」
そう言った後、ルカは申し訳なさそうに俯いて黙り込んでしまった。
ルークの方を見ると、困ったように笑っている。
ルカにこんな顔をさせるつもりは無かったのに……。
私のせいで二人が困ってる! だから私は、自分の気持ちを伝える事にした。
「私は全然気にしてないよ……!そういう事があったら誰だって確認したくなるもん、だから大丈夫だよ」
私が笑顔で言うと、二人はホッとしたような表情で私の事を見ていた。
私は二人を元気づけようと、なるべく明るい声を出して話を続けた。
「でも、どうして魔物が急に現れたのかなぁ……誰かが召喚したとか?」
「沙羅もそう思いますか?」
「じゃあ……ルカもそ?」
「はい、力のある魔術師の仕業だと私は睨んでます」
「でも、どうしてこんな事を」
「聖女の力を悪用しようとか考えてるんじゃない?」
ルークはそう言って苦笑いしていた。
確かに、聖女の力があればなんでもできると思う。
でも……それだったらなんで魔物を……?
「沙羅、そんな顔しないで?沙羅の事は私が守るから」
「ありがとう……でも、大丈夫だよ!自分を守る術はあるんだから!」
私はそう言って笑ってみせたけれど、本当は怖くて仕方がなかった。
もし魔物に襲われたりしたらどうしよう? その時、私はどうしたらいいの? 
「大丈夫そうには見えないけど?」
「そ、そんな事ないよ……!」
私は焦って否定してしまったけれど、それでもまだ怖い。
魔物に会った事はないけれど、きっと恐ろしい姿をしているに違いない。
そんな魔物に襲われてしまったら……
考えただけで震えてしまう。
そんな私を見て、ルカはため息をつく。
そして、ゆっくりと私に近づいてきて、優しく抱きしめてくれた。
その温もりを感じているうちに、段々と落ち着いてくる。
そして、暫くそのままの状態でいた後に、ルカは私の耳元で囁く。
それはとても甘くて、まるで砂糖菓子のように溶けてしまいそうな感覚だった。
「本当の事を教えて?」
「……ほんとは、すごく怖い……でも、ルカには迷惑かけたくないから……」
「そう、でも大丈夫。私は沙羅の事迷惑だと思ったことは一度も無いわ」
そう言われて、今までの事を思い出す。
ルカはいつも優しかった。
でも、それは聖女として接してくれているだけなんだと思っていた。
けれど、それは違うと今なら分かる。
「私もルカを守りたい……ルカを守れるくらい強くなりたい……」
「だったら、学園で沢山学ばないとね」
「うん……!私沢山勉強する!」
私がそう言うと、ルカは微笑んでくれた。
それが嬉しくて、私も自然と笑顔になる。
私も頑張って強くならなくちゃね。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました

夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。 全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。 持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……? これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

【完結】王子は聖女と結婚するらしい。私が聖女であることは一生知らないままで

雪野原よる
恋愛
「聖女と結婚するんだ」──私の婚約者だった王子は、そう言って私を追い払った。でも、その「聖女」、私のことなのだけど。  ※王国は滅びます。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?

榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」 “偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。 地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。 終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。 そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。 けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。 「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」 全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。 すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく―― これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

処理中です...