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「まず、ムルの事なんだが……」
そう言ってルークは、色々な話をしてくれた。
ルークが予知夢を見た事、その夢はルークだけでは無く、エミリアも見たと
言う事。確かに、二人共力は強いはずだけれど……予知夢を見るほどの力は
無かったはず……
「予知夢……やっぱりムルの力なのでしょうか……」
「おそらくね、それで、その夢の中でムルは俺達に助けを求めていた」
その言葉を聞いた瞬間、全身の血の気が引いていくのを感じた。
もし本当にそうならば、早く助けに行かないと……! しかしそんな私の考えを察したのか、ルークは 焦らないで、と私を引き止めた。
そしてそのまま言葉を続ける。
「ムルの近くには恐らく……闇魔法を使うやつがいる。それはあの黒ローブの男だ……」
「そんな……!ありえません!だって闇魔法は……!!」
「そう、使用者の体を蝕んでいく魔法……だが、アイツその魔法を平気で使っているんだ……そしてその力で聖女の能力を奪おうとしている」
「ありえません……!そんな人がこの国にいるはずが……!!!」
私は、ルークの言葉に驚きながらも、まだ信じられず否定しようとした。
そんな人がこの国にだなんて……闇魔法を魔法を使って来た人を何人か見たけれど、みんな苦しそうにして、最後には死んでしまった……
それなのに、どうしてそんな魔法を使えるのだろう?
「ルカの気持ちも分かる……俺も最初は信じたくは無かったが……」
「いいえ、信じます。けれど、あの人が闇の魔法を使うと言う事はアルマ様は……そんな人と契約したと言う事なんでしょうか?精霊を誘拐して聖女の力を無理やり手に入れようとする人と……」
そう言うと、ルークは静かに首を横に振ってから アイツは分かってないんだ
と呟いた……
「アイツは……アルマはあの人間が闇魔法の使い手だと多分理解していない。アイツは元から魔法を信じていなかったからな……」
「そんな……いいえ、あの人ならありえますね……でも、そんな事をしたらこの国に居られなくなる事をあの人は理解しているのかしら……?」
「していないだろうね、けれど好都合だと思わない?アイツには元々俺達の元から去って貰う予定だったからさ」
「でも……」
「大丈夫、悪いようにはしない」
ルークはそう言って私の頭を撫でてくれた。
その笑顔はどこか悲しそうに見えたけれど、きっと私の見間違いだ。
それに、ルークが大丈夫というなら大丈夫。
私は小さく微笑みながら、分かりました、と返事をした。
「それで、まだ私に隠し事してますよね?ルーク」
「あはは、ルカには何でもお見通しなんだね……」
「当たり前です、私はこれでもルークの婚約者なのですから」
「うん、そうだね。実はね、俺とエミリアで北の国に行こうと思っているんだ」
「えっ……」
ルークが言った言葉を聞いて、私は固まった。
だって……北の国と言うのは、酷い寒さと雪で人はおろか動物さえも住んでいないと言われているような場所なのだ。
それだけならいい……けれど、あの国にはもう一つの顔がある。
それは……闇魔法を使う人間が住んでいると言う事。
この事は、聖女である人と国の上の人間しか知らない事実。
御伽噺では、あの国には魔女が住んでいて……だなんて言われているけれど
それは、普通の人達があの国に近づくのを止める為の作り話。
「いけません……!!あの国には……あの国だけは近づいてはいけません……!!」
「どうして?ルカは何か知っているの?」
「それは……」
「俺達に隠し事は無し、でしょ……?」
「……そうですね。今日聞いたことは絶対誰にも言わないでください」
「分かった、約束する」
「ありがとうございます……では」
そう前置きをして、私はルークに全てを話し始めた。
あの国がどういう所なのか、どうして誰も近づこうとしないのか。
そう言ってルークは、色々な話をしてくれた。
ルークが予知夢を見た事、その夢はルークだけでは無く、エミリアも見たと
言う事。確かに、二人共力は強いはずだけれど……予知夢を見るほどの力は
無かったはず……
「予知夢……やっぱりムルの力なのでしょうか……」
「おそらくね、それで、その夢の中でムルは俺達に助けを求めていた」
その言葉を聞いた瞬間、全身の血の気が引いていくのを感じた。
もし本当にそうならば、早く助けに行かないと……! しかしそんな私の考えを察したのか、ルークは 焦らないで、と私を引き止めた。
そしてそのまま言葉を続ける。
「ムルの近くには恐らく……闇魔法を使うやつがいる。それはあの黒ローブの男だ……」
「そんな……!ありえません!だって闇魔法は……!!」
「そう、使用者の体を蝕んでいく魔法……だが、アイツその魔法を平気で使っているんだ……そしてその力で聖女の能力を奪おうとしている」
「ありえません……!そんな人がこの国にいるはずが……!!!」
私は、ルークの言葉に驚きながらも、まだ信じられず否定しようとした。
そんな人がこの国にだなんて……闇魔法を魔法を使って来た人を何人か見たけれど、みんな苦しそうにして、最後には死んでしまった……
それなのに、どうしてそんな魔法を使えるのだろう?
「ルカの気持ちも分かる……俺も最初は信じたくは無かったが……」
「いいえ、信じます。けれど、あの人が闇の魔法を使うと言う事はアルマ様は……そんな人と契約したと言う事なんでしょうか?精霊を誘拐して聖女の力を無理やり手に入れようとする人と……」
そう言うと、ルークは静かに首を横に振ってから アイツは分かってないんだ
と呟いた……
「アイツは……アルマはあの人間が闇魔法の使い手だと多分理解していない。アイツは元から魔法を信じていなかったからな……」
「そんな……いいえ、あの人ならありえますね……でも、そんな事をしたらこの国に居られなくなる事をあの人は理解しているのかしら……?」
「していないだろうね、けれど好都合だと思わない?アイツには元々俺達の元から去って貰う予定だったからさ」
「でも……」
「大丈夫、悪いようにはしない」
ルークはそう言って私の頭を撫でてくれた。
その笑顔はどこか悲しそうに見えたけれど、きっと私の見間違いだ。
それに、ルークが大丈夫というなら大丈夫。
私は小さく微笑みながら、分かりました、と返事をした。
「それで、まだ私に隠し事してますよね?ルーク」
「あはは、ルカには何でもお見通しなんだね……」
「当たり前です、私はこれでもルークの婚約者なのですから」
「うん、そうだね。実はね、俺とエミリアで北の国に行こうと思っているんだ」
「えっ……」
ルークが言った言葉を聞いて、私は固まった。
だって……北の国と言うのは、酷い寒さと雪で人はおろか動物さえも住んでいないと言われているような場所なのだ。
それだけならいい……けれど、あの国にはもう一つの顔がある。
それは……闇魔法を使う人間が住んでいると言う事。
この事は、聖女である人と国の上の人間しか知らない事実。
御伽噺では、あの国には魔女が住んでいて……だなんて言われているけれど
それは、普通の人達があの国に近づくのを止める為の作り話。
「いけません……!!あの国には……あの国だけは近づいてはいけません……!!」
「どうして?ルカは何か知っているの?」
「それは……」
「俺達に隠し事は無し、でしょ……?」
「……そうですね。今日聞いたことは絶対誰にも言わないでください」
「分かった、約束する」
「ありがとうございます……では」
そう前置きをして、私はルークに全てを話し始めた。
あの国がどういう所なのか、どうして誰も近づこうとしないのか。
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