若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

現れた魔女

「ふふっ、お久しぶりですね、聖女様？」
「魔女……」
「うふふ、そんな怖い顔をしないで？それと、私の事は”マリー”って呼んで下さいね」
魔女は、楽しそうな声でそう言うと、口元に手を当て微笑んでいた。
私は、エミリアとルークの前に出るとキッと睨みつける。
すると、私の視線に気付いたのか魔女は首を傾げた。
「どうしてそんな顔をするのですか？」
「それは、貴女が一番分かっているのでは？」
「うーん……心当たりがありませんね」
魔女はそう言いながら、わざとらしく考える仕草をする。
私は、それを見ても表情を崩さずに魔女を見続けた。
すると、魔女は諦めたのかため息をつき、ぱちんっと指を鳴らした。
その音が響いた瞬間、辺りは暗闇に包まれた。
「な、なに！？」
「二人とも大丈夫ですか！？」
「あぁ……だが真っ暗で何も見えない」
「私も……でも、魔女の魔力は感じる……」
私は、暗闇の中で必死に魔女の魔力を探る。
それは、ほんの少しだけど感じ取ることが出来た。
でも、この闇のせいで上手く見つけられない。
そんな事を思っていると、突然、魔女の声が耳元で聞こえてきた。
「そんなに怖がらなくても大丈夫よ、もうすぐ終わるから」
「終わる……って何が……」
私がそう呟いた瞬間、目の前がぱっと明るくなり、眩しさに
目を細める。
少しずつ目が慣れてきて、周りが見えるようになってきた。
そこで、私は目の前に広がる光景を見て唖然とした。
だってそこは、私達がさっきまで居たところではなく、大広間の様な場所だったから。
「ここは……？」
「さっきの所じゃ落ち着かないかなって思ったからさ」
「何をするつもりですか」
「まぁまぁ、私は貴女とお話がしたいだけ」
「そんな言葉で私が納得するとでも……？」
「まぁ！私ったら信用がないのね」
「当たり前だろう、信用出来る訳ないだろう」
「そうだよ！話したいならさっきの所でもいいじゃん！」
私とルークの言葉に続けてエミリアも叫ぶ様に問いかける。
しかし、魔女は余裕があるようで、くすりと笑うだけだった。
そして、ゆっくりと歩き出しながら話し出した。
「貴女は自分たちの国で起きた事件を解決する為にここまでやってきた、違う？」
「やっぱり何か知っているのですね……」
「知ってるとも言えるし、知らないとも言えますね」
そう言って、意味ありげに笑みを浮かべている。
やっぱり、あの黒いローブの男の人の事をこの魔女は知っている。
そう思うけれど、その事を聞いた所でこの魔女が素直に答えてくれるとも
思わない……
「ふふっ、随分悩んでいますわね……いいですよ。ヒントを差し上げましょうか？」
そう言うと、魔女はまた指をパチンッと鳴らす。
すると、今度は突然目の前にあの男が現れた。
男はフードを被っており顔はよく見えなかったが、体からは禍々しい オーラが漂っていた。
「こいつは……！！」
「この子は私の可愛い子分なの、何でもね運命の人を見つけたとか言って旅に出ちゃったの」
「子分ですか……？この人が……？」
「えぇ、可愛いでしょう？こんなのでも、私よりもすごい力を持っているのよ」
魔女は、自慢気に胸を張っている。
魔女よりも凄い力……それはやっぱり闇魔法の事なんだろうか……
「さて、改めて私とお話してくれるかしら？聖女様」
魔女はにっこりと笑って、こちらに向かって歩いてくる。
上手くいけば色々な情報を掴めるかもしれない。
私達は魔女の話を聞くために、警戒しながらも前に出た。
「分かりました、お話しましょうか」