若い聖女が現れたから私はお役御免!?それならこっちから婚約破棄します! ~今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです~

桜乃

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昔ばなし

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あっという間に時間は過ぎて行き、時間はもうすぐお昼になろうとしていた。
結局、今日一日あまり集中する事は出来なくて、テストの
点数はあまり期待できないだろうなぁ……と、内心ため息を吐いた。
「フィリス!そろそろ時間だし行こう?」
「そうですね、いつもの裏庭で大丈夫ですか?」
「うん!あ~お腹すいた~」
裏庭に向かいながら、テストどうだった?とか、今日のご飯何?とか
他愛のない話をしているうちに、裏庭にに到着した。
いつものようにベンチに腰掛けると、フィリスが口を開いた。
「それで、お話しと言うのは何でしょうか?」
「そうだった!あのね、今度ルカと会う事になったんだけれどね、その時にフィリスの事を少し話してもいいかな?」
「私の事ですか?それは一体……」
「少しでも犯人の手掛かりを見つけたくて……あ!もちろん全部は話さないし、ぼかして話すつもりだから安心して!私の事って事にして話すつもりだし、私の事って言えばきっと協力してくれると思うし……」
「それなら……分かりました」
「うん!それとね……」
私は真剣な表情をしてフィリスを見つめた。
フィリスもそんな私を見て、どうかしましたか?と首を傾げた。
すぅ……と深呼吸をして、フィリスの目を見ながら ゆっくりと言葉を紡いだ。
「私の事知って欲しいの。ここに来てからの事、来る前の事……フィリスには私の全部を知って欲しいから」
「沙羅………無理してませんか?」
「してないよ……それに、フィリスの話ばかり聞いて、私の事を何も話さないなんてフェアじゃないでしょ?」
私が、そう言って笑うとフィリスは、悲しそうに笑みを浮かべると
そう……と言って俯いてしまった。
私はそんなフィリスの手を取り笑顔で言った。
「そんな顔しないで?私はフィリスだから話したいと思ったんだよ?フィリスの事が好きだから……だから、私の全部を知って欲しいと思った」
「私に沙羅の事を知る資格なんて……無いです」
「なんでそんな事言うの!?」
「っ!さ、沙羅………?」
「私達友達でしょ?フィリスは私が迷惑?嫌い?私はフィリスともっと仲良くなりたいのに……」
気が付くと、頬に涙が伝っていた。
自分でも驚いて、慌てて袖で拭っていると、フィリスが私を抱きしめてくれた。
そして、ごめんなさい……と呟いた。
「………私に、沙羅の事を教えて下さい」
「うん……うん……!」
フィリスが私から離れ、お互いに見つめ合うと
フィリスが、 ふっと優しく微笑んでくれた。
それにつられて私も笑い、二人で並んで座った。
そこから、フィリスに今まであった出来事を話した。
「知ってると思うけれど、私は違う世界から来たの。その世界で私は今みたいに学生として生活していた」
そう切り出すと、フィリスは静かに話を聞いてくれていた。
時々相槌を打ちながら、真剣に耳を傾けてくれているフィリスに感謝しながら、私は話を続けた。
「あの世界で私は、両親と兄の四人家族で過ごしてたの……家族の仲は正直良いとは言えなかった、私より出来の良い兄を可愛がる両親と、邪魔ものにされる私……」
そこまで話して、私は言葉が詰まってしまった。
私は、ぎゅっと服を握りしめながら何とか声を振り絞った。
「私には居場所が無かった、それは家でも学校でも同じで……
でも、私は諦めたくなくて、ずっと頑張ってきた……いつか皆が認めてくれるんじゃないかって思って」
「沙羅………大丈夫、落ち着いて」
フィリスがそっと手を握ってくれると、不思議と気持ちが落ち着いた。
私は小さくありがとうと言うと、話を再開した。
「そしてあの日……いつものように眠って起きたらこの世界にいた。あっちの世界の私はまだ生きているのか、それとも死んでいるのか……それは分からないけど、でも……」
「でも?」
「私はもう二度とあの世界には帰りたく無いな、だってここには皆がいてくれるから……」
そう言ってフィリスを見ると、フィリスが涙を流していて ぎょっとしてしまった。
えぇ!?そんな泣くような事だった? そう思いながらも、フィリスの涙を指で掬うと、フィリスはハッとした様子で すみません……と謝ってきた。
「ごめん、フィリスに話すにはちょっと重かったかも……」
そう言って苦笑すると、フィリスは首を横に振ってくれた。
それからしばらく無言の時間が続いたけれど、それが嫌だとは思わなかった。
「いいえ、続きを聞かせてもらえますか?」
フィリスにそう言われ、私はそれに答えるようにして
話しを続けた。
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