若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

閉じ込められたルカ

「どうして……どうして……」
魔女は、私の目の前に崩れ落ちるようにして座り込むと
うわごとの様にどうして……どうして……と繰り返した。
私はそんな魔女を見て、静かに目を伏せた。
やっぱり……私の思った通りだった……
彼女は聖女になれない、それは彼女が魔女として力を手にしていたから……
私は、ゆっくりと目を開けると魔女の方に目を向けた。
「もういいでしょう？私と一緒に帰りましょう？」
「まだよ……まだ私は諦めない……」
「ふふっ、マリー様はこれでも諦めが悪いんです」
そう言って、男はニヤニヤと笑いながら魔女に近付いた。
私はそんな二人の様子を黙って見つめていた。
すると魔女は立ち上がりニヤッと笑うと私の方を見た。
何をされるのか……そう思った瞬間、私の体がぐらっと傾いていった。
「っ……一体何を……」
「大丈夫、少し……眠ってもらうだけです」
そう言って、魔女は私に魔法をかけた。
その瞬間、私は意識を失いその場に倒れ込んでしまった。
*******
目が覚めると、私は牢屋のような場所に閉じ込められていて
すぐ隣にはボロボロになったムルの姿もあった。
私は、少しぼーっとしていたけれどすぐに状況を理解し体を起こすとムルに話しかけた。
しかし、いくら声をかけても返事をしてくれず眠っているようで……心配になり何度か声をかけていると後ろから声をかけられた。
振り返るとそこにはあのローブの男が立っていた。
「お目覚めの様だね、どうだい？気分は」
そう言いながら男は気味の悪い笑みを浮かべた。
そんな男に私は、警戒しつつ口を開いた。
「ここは何処ですか？出してくれるつもりが無いのなら私にも考えがあります……」
「それは無理な相談ですねぇ……」
「そうですか……なら」
そう言われた私は、ここから抜け出すために、魔法を使おうと
手をかざそうとした瞬間 私は、魔法が使えない事に気付いた。
そんな私を見て男はクスクスと笑いながら言った。
「ここにいる限り魔法は使えませんので大人しくしていてくださいね」
そう言って男は、私の方に近付いてくる。
私はそんな男を睨みつけ、威嚇をしたその瞬間
私の目の前に魔法陣が出現したかと思うと、私の体に痛みが走った。
「っぐ……ぅぅ……っぁ一体何を……」
「ふふっ、痛いでしょう？ここから抜け出そうとしたらその力が発動しますので……そのつもりで」
「っ……待ちなさい、魔女はどうしたの……」
「あぁ…………マリー様なら今はお休みになられてますので……起きましたらお伝えしておきます」
そう言って、男はニッコリと笑いお辞儀をしてこの場から離れていった。
*******
それから私は、ここから抜け出す為に色々な事を試して見たけれど全て失敗に終わった。
ムルは相変わらず起きる様子も無く、私はどうにかここから抜け出す方法を考えていたその時……ふと、あるものを思い出した。
「牢屋で見つけた魔法陣の紙……」
私は、この牢屋の中に何故かあったあの男の魔法陣が書かれた紙を取り出すと床に広げた。
「これが使えれば……」
そう言って私は、手をかざし魔力を流し込んだ。
けれど、私の魔法は全て弾かれてしまった、けれど私は諦めずに
それを何度も繰り返したけれどやっぱりダメで……
私は、大きく息を吐いてその場に座り込んだ。