若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

魔女の執念

「はぁ……はぁ……やっぱりダメね……」
魔法を使うたびに私の体に痛みが走り、その度に力を吸われているような
そんな様な感覚に襲われた。
けれど、ここで諦める訳にはいかなくて……私はまた魔法陣に手をかざし魔力を流した。
けれどやはり何も変わらずにただ私の体力が消耗していくだけだった。
もう何度繰り返しただろうか……そんな事を考えていると 遠くから足音が聞こえて来て、その音はどんどん近付いてきたかと思うと牢屋の前で止まった。
「こんにちは、ご機嫌いかがですか？聖女様」
「マリー……」
「おや？そんな怖い顔をしないでください、貴女の力を抑える為にはこうするしか無かったのです」
そう言って彼女はニコリと笑った。
そんな笑みに私は嫌悪感を覚え眉をひそめる。
人を閉じ込めて、こんな仕打ちをして……彼女は何故こんなにも楽しそうな
顔が出来るのだろうか？
そんな私を見て、マリーはクスクスと笑い口を開いた。
「どう？魔法が使えないって惨めでしょう？情けないでしょう？」
「こんな事しても何にもならない……！！」
私がそう言うと、マリーはニコリと笑みを深めた。
そして私の目の前にしゃがみ込むと口を開いた。
すると、私の顔を掴み無理やり上を向かせるとじっと見つめてきた。
「私は選ばれた人間なの、本当なら私が聖女になるはずだった……でも、それをお前に盗まれたんだ！！お前のせいで！！」
マリーはそう言って私の顔を離すと立ち上がり、私を見下ろして言った。
私はそんな彼女をどんな目で見つめて良いのか分からなくてずっと下を俯いたままでいた。
「ねぇ？聞いてるの？！なんとか言いなさいよ！！」
そう言ってマリーは私の胸ぐらを掴むと、私を持ち上げた。
私はそんな彼女の手を振り払うことも出来ずにただ目を瞑る事しか出来なかった。
彼女は何か勘違いしている……聖女の力は盗むだなんて事は出来ない……
私はそんな事を思いながらも口を閉ざしたままでいた。
すると、マリーは私の髪を引っ張り顔を上げ、冷たい声で呟いた。
「…………私は貴女を聖女だなんて認めない、貴女の力を絶対私の物にしてみせる」
そう呟き、私の髪を離した。
私はその場に倒れ込んだまま起き上がる事が出来なかった。
そんな私を見てマリーは鼻で笑い、牢屋から出ていった。
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『ルカ……大丈夫……？』
「ムル……！！起きていたのね、体の方は大丈夫なの？」
『うん！アイツ、ムルの体に変な魔法掛けたり、薬とか飲ませたり色々したくせにこんな所に捨ててさー』
「まぁまぁ……それよりここから出る方法を一緒に考えましょう」
プンプンと怒りだすムルを宥め、私はこの牢屋から出る方法を考える。
私一人なら無理かもしれないけれど、ムルと一緒ならもしかしたら
ここから出る方法も見つかるかもしれない。
『う～～ん……少しだけ話を聞いていたけれど、ここから出るのは難しそうだよね』
「そうね……私が魔法を使おうとしてもちゃんと魔法も使えない状況ですし……」
そう呟いて、私は自分の手を見つめた。
ムルが起きたのは安心したけれど、状況は変わっているような気がしない……
はぁ、早くここから出て皆さんのいる所に帰りたい。