若い聖女が現れたから私はお役御免!?それならこっちから婚約破棄します! ~今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです~

桜乃

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檻から抜け出して

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ここに閉じ込められてから、一体どのくらいの時間が経ったのだろうか?
「はぁ……やっぱりダメね」
ここを抜け出すために色々と試すけれど、やっぱりダメみたいだ。
魔法を使うたびに、私の体がどんどんボロボロになっていくのが
目に見えて分かる。
それにしても、この結界はかなり強力みたいだ……私が魔法を使っても全然壊れる気配がない。
「もしかして魔法の使い方がダメなのかしら」
『魔法の使い方?』
「あ、ムル起こしちゃったかしら?」
『ううん、それで魔法の使い方って?』
「えぇ、見てて」
私はムルにそう言って、ふぅ……と深呼吸をして力を集中させた。
魔力の流れを意識して、それを私の中で組み替えるようにイメージして……
そして、一気に放つ! すると、私の中で何かが弾ける感覚と同時にパンッ!と音を立てて結界にヒビが入った。
「っ……!やっぱり、私の思った通り」
『ルカ!大丈夫!?』
「えぇ……でも、ちょっと力を使いすぎたわね……しばらく魔法は使えそうにないかも」
私はムルにそう言いながら、よろよろとその場に座り込む。
分かってはいたけれど、魔力の流れを組み替える為には、魔力もそうだけれど、精神力をものすごく使う。
『だったら、ムルの力をルカにあげる!』
「えっ?ムルの力を……?」
『うん!そうすればルカの力も復活するんじゃないかな!』
「でも……そんな事して大丈夫なの?」
『うん、こう見えてムルは凄い精霊だからね!任せて!』
えっへん!と言った感じでムルが腰に手を当てて胸を張った。
ムルがここまで言うのなら、お願いしてみよう。
「ムル、お願いできる?」
『うん!!任せて!』
そう言うとムルが私手の近くまでやってきた。
私は、そのムルの体を優しく包み込んで、目を閉じて集中する。
ムルの体が光り出し、それと同時に私の体に魔力が流れ込んでくるのが分かった。
その感覚は不思議と嫌な感じはしなかった、むしろ暖かくて優しい……そんな感じだった。
そして、その光が収まると私はゆっくりと目を開いた。すると今までは感じなかった体の奥底から湧いてくる力を感じることが出来た。
「これがムルの力……」
『そうだよ!これでもっと強い力が出せるはず!』
「えぇ……試してみるわ」
目を閉じふぅ……と深呼吸をして力を集中させた。
魔力の流れを意識して、それを私の中で組み替えるようにイメージして……
すごい……さっきと同じことをやっているのに、全く疲れが出ないどころか
むしろ、力が湧いてくるような感覚さえ感じる。
「ムル、少し離れていて」
『はーい!』
ムルが私から少し離れた事を確認してから、私は一気に魔法を放った。
すると、さっきまでとは違いかなりの威力が出た。
これなら……いける……
そう思った私は、更に力を込めて魔法を放つ。
すると、かなり大きな爆発を起こして結界が壊れたのが分かった。
これなら……ここから出れる……!! 私はボロボロになった体を無理矢理動かして、そのまま檻の外へと飛び出した。
『やった!やった!凄いよルカ!』
「えぇ……ムルのお陰よ。でもまだ檻から抜け出しただけ、早くこの場所から抜け出さないと……」
いつ、あの人たちが来て私の事を見つけるか分からない……
早く逃げ出さないと……私はそう思いながら、ふらふらと外へ続く扉を開いた。
ぎぃ……っと低い音を立てて、扉が開くとそこは、城の倉庫のような場所で
やっぱり檻を壊しただけじゃこの場所からは逃げられないか……
正直言うと、まだ歩くのも辛いけれど……このまま立ち止まっているわけにもいかないので、私はぐっと足に力を入れて一歩また一歩と歩き出す。
「そうだ、気休めかもしれないけれど……ムル、おいで」
『ん?は~い』
そう言ってムルを呼ぶと、私は力を集中させて魔法を放った。
その魔法は、ベールとなり私を包んでくれた。
このベールは、私の魔力が尽きるまで守ってくれるはずだから安心だ。
「これで大丈夫よ、これがあればしばらく魔女達も私達の事を見つけることも出来ないわ」
『ルカ……ありがとう!』
「ふふ、どういたしまして」
そんな会話をしながら、私達は歩みを進めた。
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