若い聖女が現れたから私はお役御免!?それならこっちから婚約破棄します! ~今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです~

桜乃

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変な気配の正体

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『はぁ~~疲れた……』
「そうですね……少し休みましょうか」
『うん!』
人気がなさそうな部屋に入ると、そのままソファーの上に倒れ込んだ。
一応この部屋の周りには結界を張って、誰も来れないようにした。
だからしばらくはここに居られるだろう……
それにしても……疲れたな……魔力を使いすぎたのもあるけど、それ以上に体がだるい。
『ルカ……大丈夫?』
「えぇ……でも少し眠ってもいいかしら?」
そう言って私は目を閉じた。
目を閉じると、今まで感じなかった眠気が一気に襲ってきて、そのまま意識を手放した。
******
私が目を覚ますと、私の隣でムルはスヤスヤと眠っていた。
眠った事で、少し体力が回復したおかげか、体がもうだるいと感じる事はなかった。
私はムルを起こさないようにゆっくりと立ち上がって、この付近
を調べてみる。
部屋の外には、嫌な気配はしないし、この部屋には結界を張っているから 大丈夫だとは思うけれど……念には念を入れて、もう少しだけ辺りを調べてみよう。
「…………大丈夫そうね」
ふぅ……と息を吐きソファーの上に座る。
この城は本当に何なのだろうか……部屋はこの部屋を含め、数部屋しか無く
扉を開こうとして、その扉に触れれば、すぅ……と扉は消えてしまいただの壁
になった。
窓はあるけれど外は暗闇で、外に通じるであろう扉を開けてみれば、その先は暗闇が続く謎の空間で……
まるで、ハリボテの様なお城だった。
『んんぅ………ルカ……?』
「あら、起こしちゃった?まだ寝てていいのよ?」
『ん~そうはいかないよ……よいしょ』
ムルは何か言いたげに、私の膝の上に乗ってくる。
どうしたのだろう?と思い、ムルの頭を撫でながら聞いてみると……
ムルは口を開いた。
『変な気配が近づいてくるよ……』
「あら、私が抜け出した事バレちゃったかしら」
『ううん、その……魔女とかの気配じゃなくてね……うーん……』
ムルは何かを悩んでいる様子で、うーん……と首を左右に振りながら考えていた。
魔女では無い変な気配……?
一瞬、皆が助けに来たのかと思ったのだけれど、そうだとしたらムルはすぐに
皆の気配だと分る筈だ、それに私には感じられ無くてムルには分かる気配ってなんなのかしら……
そんな事を考えていると、扉の外から何者かがやってくる足音が私にも聞こえた。
『ルカ……どうしよう……』
「大丈夫……私の後ろに隠れてて……」
小さな声で、ムルにそう言うとムルを私の後ろに隠して、私は扉を見つめた。
すると、その扉がゆっくりと開きそこには見覚えのある姿があった。
「………………アルマ……様……」
「…………!ルカ!本当にルカなのか!?ははっ……やっぱりアイツが言っていた事は本当だったんだ……」
何でこんな所にアルマ様が?アイツって言うのはローブの男の事?
私が混乱していると、アルマ様が私の目の前にやってくると、私の手を掴んだ。
その瞬間、アルマ様から魔女と似た気配を私は感じた。
それと同時に、私の中の直感が彼に掴まれてはいけないと言っているのが分かった。
アルマ様に掴まれた方の腕を慌てて振り払うと、そのまま距離をとった。
それを見たアルマ様は驚いて私を見るがすぐに笑顔に戻ると言った。
それから彼はゆっくりと私に近づいてくると口を開いた。
「もう大丈夫だ……ルカ……俺と帰ろう?」
虚ろな瞳で私を見つめながら、彼はそう言うと私に向かって手を伸ばしてきた。
私がその手を避けて、距離をとると彼は不思議そうに首を傾げていた。
「ムル……これって……」
『うん、多分操られているんだろうね。変な気配だったのはコイツと魔女の力が混ざっていたからだと思う。』
「はぁ……ムル、とりあえずこの人を倒しますよ」
『うん!ムルも手伝う!』
うん、とムルは頷くと私の肩へと飛び乗った。
それを見たアルマ様は、慌てたように私に向かって叫ぶ その叫びに答えることなく、私は彼に向かって手をかざした。すると黒い霧が彼の体を覆っていく……
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