若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

帰り支度

三人の帰り支度を手伝いながら、私はどうにか心を落ち着かせようとしていた。
今まで、ルークが私の家に泊まりに来たことはあったけれど、今日は
その今までとどこか違くて、ドキドキと私の胸がうるさいくらいに音を立てていた。
「ルカ、顔真っ赤だよ？」
「えっ！？そ、それは……」
沙羅は、私の顔を見てクスクス笑いながらそう言った。私は慌てて手で頬を隠すと、フィリスが不思議そうに顔を傾げて私の事を見つめていた。
「ルークがお泊りするのって、これが初めてでは無いのでしょう？」
「フィリス？そこは乙女心ってやつだよ」
そう言って、エミリアはフィリスの肩をポンポンと軽く叩いた。
すると、フィリスも納得したような表情で頷いた。
「違います！ただ…………」
「ただ？」
「緊張して……」
「ほらやっぱり！まぁ～さっきまであんなやり取りしてたら緊張するのも分かるけれど」
エミリアは私をからかうように、ニヤニヤと笑いながらそう言ってきた。
そう、久しぶりに会ったルークは、何故距離が近くて、私に甘くて……
ルークとの距離感にまだ慣れていなくてドキドキと心臓がうるさい。
「よし！準備終わったよ～って三人ともどうしたの？」
「ん～ルカが可愛いなって話してたの、ね？」
「えぇ、やっぱり恋する乙女は可愛いなって話です」
そう、二人で私の事をからかう様にニヤニヤと笑いながら、沙羅は
頭にはてなを浮かべながら私と二人の事を交互に見ていた。
「ほら、二人も遊んでないで早く準備してください」
「「はーい」」
「全く……返事だけはいいんだから……」
*****
三人の帰り支度も終わり、三人を見送る為に
玄関まで一緒に行く、 また今度集まろうねとか、今度は私も泊まろうかな
とか、そんな話をしていたら玄関まではあっという間で沙羅達はまたね～と言いながら帰っていった。
そして、私はルークと二人きりになり少し気まずい空気が流れ
どうしよう、と悩んでいたら、ルークがいきなり私の手を握った。
突然の事で、私の体はびくっと跳ね上がる。
「あ、ごめん……」
「いえ！私が勝手に驚いただけですので、大丈夫です……」
少しの沈黙の後、ルークが先に口を開いた。
私は心臓を落ち着かせるように深呼吸をしてからルークの顔を見た。すると、ルークは優しく微笑み私の事を見つめていた。
「改めて、ただいま」
「……お帰りなさい、ルーク」
お互いに見つめ合って、笑い合う。
ルークは少し照れた様に微笑んでいたけれど、握ったままの私の手をぎゅっと握り直した。
私もそれに応える様に握り返すと、またお互いに微笑み合った。
少しして緊張が解けてきたのか、私達はいつもの調子に戻ってきた。
「さて、お部屋の方に戻りましょうか？」
「うん、そうだね。ルカにはまだまだ聞きたい事が沢山あるし」
にっこり笑ってそう言ったルークは、少し悪戯っぽく微笑んでいた。
私はそんなルークを見て、きっとまだまだ夜は長いのだろうと思った。
そして、私達は手を繋いだままお部屋に戻った。