204 / 321
昔の記憶
しおりを挟む
「ほらほら、早くしないとお昼の時間無くなっちゃいますよ?」
僕がそう急かすと、二人はそうだった!と言って慌てて教室から出て行った。
二人の背中を見送り、ふーっ、と息を吐き、近くにあった椅子に腰を掛け
もう冷め切ったコーヒーを、ぐいっと一飲み干す。
「…………はぁ、もう普通の先生でいたかったんだけどなぁ、はは」
乾いた笑いが口から漏れる、僕は頭を掻いて立ち上がった。
そして机の上にあった手紙を手に取り、ふぅっと溜息を吐いた。
「えっと……『沙羅がお世話になると思いますがよろしくお願いします』…………ねぇ、結局あの子の言う通りになっちゃって、何だかなぁ」
僕は手紙を机に放り投げ、窓の外を眺めながら昔の事を思い返した。
********
――あれは、数年前……僕がまだこの学校に来たばかりの頃。
新入生として、聖女様がこの学校に入学してきた。
正直、あの頃の僕は、聖女なんて……すこーし魔法が使えるだけで
ちやほやされて馬鹿みたい、僕には敵わないくせに、なんて思っていた。
「あの頃の僕も馬鹿だよなぁ、聖女様に対してあんなこと思ってたなんて
学校にバレたらクビ所か、この国にいられなかったろうなぁ」
思わずあの頃の自分を嘲笑してしまう。
そんな僕に聖女様が話しかけてきたんだ、先生の力を貸してくださいって。
勿論最初は断ったよ?だって面倒くさいし、関わりたくないし。
でも、何度も何度も僕を訪ねてくる聖女様に、結局根負けしたんだ………
話を聞けば、聖女様はまだこの学園に馴染めなくて、一緒に入学した
友達としか話せてないと、だから先生が話し相手になってくれて嬉しいとも言っていた。
「まぁ………学園の先生たちって聖女様として扱ってたから、僕みたいな態度の
先生は新鮮だったのかも知れないね」
聖女様は、僕に色んな話をしてくれた。
自分の事、友達の事………そして、魔法の事。
彼女はまだ、自分の力に何か足りない、だから裏の森に行きたい、その為の
協力を僕に求めてきた。
「聖女様という人達はみんな人使いが荒いんですかね?」
そう言って僕は笑った。
高木さんも彼女も僕を頼ってくれた、それに悪い気はしなかったけれど
その願いを叶えると言う事は、僕の平穏な学園生活が終わる事を示していた。
「はぁ、頼られちゃったら仕方ないですよね……準備、しましょうか」
そう呟き窓から離れ、机の上に置いてあった書類を何枚か手に取って
学園長室へと向かった。
******
「ウィル先生……ちゃんとお願い聞いてくれるかな……」
「大丈夫ですよ、あの先生は信用できますから」
「どうしてそう思うの?」
私がそう尋ねると、フィリスは困った様な表情を浮かべた。
すると突然後ろから声が掛けられた。
振り返るとウィル先生が私達の後ろに立っていた。
それに驚いた私は思わず声が出てしまった。
そんな私の反応を見て、ウィル先生はクスクスと笑う。
「そんなに驚いて僕の悪口かい?」
「い、いえ!!そうじゃ無くて!!」
「はは、冗談だよ。安心して、これから学園長に君達の事を相談しに行くところだから」
そう言ってウィル先生は学園長室に向かっていった。
僕がそう急かすと、二人はそうだった!と言って慌てて教室から出て行った。
二人の背中を見送り、ふーっ、と息を吐き、近くにあった椅子に腰を掛け
もう冷め切ったコーヒーを、ぐいっと一飲み干す。
「…………はぁ、もう普通の先生でいたかったんだけどなぁ、はは」
乾いた笑いが口から漏れる、僕は頭を掻いて立ち上がった。
そして机の上にあった手紙を手に取り、ふぅっと溜息を吐いた。
「えっと……『沙羅がお世話になると思いますがよろしくお願いします』…………ねぇ、結局あの子の言う通りになっちゃって、何だかなぁ」
僕は手紙を机に放り投げ、窓の外を眺めながら昔の事を思い返した。
********
――あれは、数年前……僕がまだこの学校に来たばかりの頃。
新入生として、聖女様がこの学校に入学してきた。
正直、あの頃の僕は、聖女なんて……すこーし魔法が使えるだけで
ちやほやされて馬鹿みたい、僕には敵わないくせに、なんて思っていた。
「あの頃の僕も馬鹿だよなぁ、聖女様に対してあんなこと思ってたなんて
学校にバレたらクビ所か、この国にいられなかったろうなぁ」
思わずあの頃の自分を嘲笑してしまう。
そんな僕に聖女様が話しかけてきたんだ、先生の力を貸してくださいって。
勿論最初は断ったよ?だって面倒くさいし、関わりたくないし。
でも、何度も何度も僕を訪ねてくる聖女様に、結局根負けしたんだ………
話を聞けば、聖女様はまだこの学園に馴染めなくて、一緒に入学した
友達としか話せてないと、だから先生が話し相手になってくれて嬉しいとも言っていた。
「まぁ………学園の先生たちって聖女様として扱ってたから、僕みたいな態度の
先生は新鮮だったのかも知れないね」
聖女様は、僕に色んな話をしてくれた。
自分の事、友達の事………そして、魔法の事。
彼女はまだ、自分の力に何か足りない、だから裏の森に行きたい、その為の
協力を僕に求めてきた。
「聖女様という人達はみんな人使いが荒いんですかね?」
そう言って僕は笑った。
高木さんも彼女も僕を頼ってくれた、それに悪い気はしなかったけれど
その願いを叶えると言う事は、僕の平穏な学園生活が終わる事を示していた。
「はぁ、頼られちゃったら仕方ないですよね……準備、しましょうか」
そう呟き窓から離れ、机の上に置いてあった書類を何枚か手に取って
学園長室へと向かった。
******
「ウィル先生……ちゃんとお願い聞いてくれるかな……」
「大丈夫ですよ、あの先生は信用できますから」
「どうしてそう思うの?」
私がそう尋ねると、フィリスは困った様な表情を浮かべた。
すると突然後ろから声が掛けられた。
振り返るとウィル先生が私達の後ろに立っていた。
それに驚いた私は思わず声が出てしまった。
そんな私の反応を見て、ウィル先生はクスクスと笑う。
「そんなに驚いて僕の悪口かい?」
「い、いえ!!そうじゃ無くて!!」
「はは、冗談だよ。安心して、これから学園長に君達の事を相談しに行くところだから」
そう言ってウィル先生は学園長室に向かっていった。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました
夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。
全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。
持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……?
これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
【完結】王子は聖女と結婚するらしい。私が聖女であることは一生知らないままで
雪野原よる
恋愛
「聖女と結婚するんだ」──私の婚約者だった王子は、そう言って私を追い払った。でも、その「聖女」、私のことなのだけど。
※王国は滅びます。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?
榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」
“偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。
地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。
終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。
そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。
けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。
「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」
全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。
すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく――
これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる