若い聖女が現れたから私はお役御免!?それならこっちから婚約破棄します! ~今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです~

桜乃

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アマミヤの過去

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「あの、一つ気になる事があるのですが、聞いてもいいでしょうか?」
「えぇ、私に答えられる事なら何でも」
アマミヤさんは私の言葉を聞くと、そう答えた。
ふぅ、と呼吸を落ち着かせてから私は口を開く。
「アマミヤさんもこっちの世界にやって来たと言ってましたが、どうしてここに残っているのでしょうか?その…………」
「魔力を感じない。でしょう?」
「はい……魔力の無いものはすぐに帰されたと聞いたので、
どうしてこちらに残る事を許可されたのか、不思議で」
私がそう言うと、アマミヤさんは少し悲しそうに笑った。
私はもしかしたら聞いてはいけない事を聞いてしまったのだろうか?と思い、慌てて謝った。
すると彼女は笑いながら首を横に振った。
「私にも、魔力はあったのです」
「あった……?」
「えぇ、この世界に呼ばれた時、微量ながら私には魔力がありました。それで、この国の人達は、魔力は少ないが無いよりはマシだと
私をこの世界に残したんです」
「でも、今のアマミヤさんの魔力は」
「ありません、成長する度に微量に残っていた魔力は無くなっていき……ここの学生と同じくらいの年齢の頃でしょうか……完全に魔力を無くしてしまいました」
そう言って彼女は悲しそうに笑う
そんな彼女に、私は何も言ってあげることが出来なかった。
「聖女様がそんな顔をしないでください、今の私はこんなにも元気なんですから」
「でも……魔力が無くなった、なんてあの人達が聞いたら」
「凄く怒ってましたよー使い物にならないとか、無能が!って」
アマミヤさんは笑いながらそう言っているが、私はその言葉に苛立ちを覚えた。
使い物にならない……と聞くと私はどうしてもあの人の事を思い出してしまうから。
「辛かったでしょう……?」
「その時は凄くショックでした、でもこの国に来たお陰で出会えた人達も沢山いるから……だから、今は
私をここに呼んでくれてありがとう。そう思っているんです」
そう言って笑う彼女の顔は、本当に幸せそうだった。
あの人達の行いは、許すことは出来ないが彼女にとってはよかった事だったのかもしれない。
それでも、彼女を蔑ろにした事実は変わらない……
「色々喋りすぎてしまいましたね、聖女様はここに本を読みに来たのでしょう?私はカウンターの方に
いますから、ゆっくりしていってください」
「えぇ、ありがとう。アマミヤさん」
私がお礼を言うと、アマミヤさんは嬉しそうに笑った後、カウンターの方へと戻って行った。
私はそれを見送ってから、本が並んだ本棚に目を向ける。
本棚には沢山の本があって目移りしてしまうが、私の目的の本は決まっていた。
「これね……」
私が手に取った本は、魔力をコントロールする方法が載っている初心者向けの本だった。
この本は私が使うのでは無く、沙羅に使おうと思っている。
沙羅の力は前よりも格段に上がっているし、こんな初心者向けの本なんて言われてしまうかもしれないけれど
だからこそ、基礎に戻って学んで欲しかった。
******
本を読み始めて、数時間経った頃だろうか
アマミヤさんが私に声を掛けてきた。
「聖女様、お客様がお待ちですよ」
「お客様……あ!ウィル先生、私がここに居るって良く分かりましたね?」
「まぁね、それより約束の放課後だよ」
そう言ってウィル先生は時計を指さした。確かに時計の針は約束していた放課後を指し示していて……私は慌てて本を片付けた。
「アマミヤさん、今日はありがとうございました」
「いいえ、またいらしてください」
「はい、では失礼します」
私はアマミヤさんにお礼を言ってからウィル先生と一緒に図書室を出た。
廊下に出たところで、先生が私の持っている本に目を向けた。
それは私が持ってきた初心者向けの魔力コントロールについて書かれた本だった。
「それは?」
「あぁ、沙羅の勉強に役に立つかと思いまして」
「そっか、それより急いで学園長室に行かないと……!皆待ってるから」
「は、はい!」
私はウィル先生の言葉に慌てて学園長室に向かった。
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