若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

ルークの家へと向かう朝

目を覚まし、ベッドから起き上がり
カーテンをそっと開けると、眩しい日差しが差し込んできた。
天気は快晴、窓を開けば朝の爽やかな風が部屋に入り込み
私の頬を優しく撫でる。
私は、深呼吸をして朝の新鮮な空気を沢山吸い込んでから ぐっと体を伸ばして眠気を覚まさせた。
身支度を整えて食堂に向かうと、お兄様が先に席に着いていて 私を見ると、優しく微笑んでくれた。
「おはよう、ルカ」
「おはようございます、お兄様。お父様とお母様は？」
「今日は用事があると言って、朝早くから家を出たよ」
そう言って、お兄様は珈琲を口に運んだ。
私はそれを見て、なるほどと小さく呟いた。
「お嬢様、おはようございます」
「おはよう、私にも珈琲を頂ける？」
そう尋ねると、メイドは小さくはい。と答え準備を始めたので 私はお兄様の前の席に腰掛ける。
少しして、私の分の珈琲も用意されそれを口に含む。
口の中に広がる苦みがとても心地よくて、まだ寝惚けていた頭を覚ますには丁度よかった。
「今日は、ルーク君の所に行くんだっけ？」
「はい、色々と相談したい事がありまして」
「そっか、俺にも出来ることがあれば何でも言ってね？」
「ありがとうございます、お兄様」
そんなやり取りを交わし、朝食の時間は過ぎていった。
******
「荷物も……よし」
自室で、バッグに荷物を詰め込んで、忘れ物がないか何度もチェックし 私は満足げに頷き、部屋の扉を開いた。
するとそこにはお兄様の姿があった。
私の姿を見て、お兄様はにっこりと微笑み いってらっしゃい。と声を掛けてくれたので私もそれに答えた。
「行ってきます、夕方には帰れると思います」
「分かった、遅くなるようだったらちゃんと連絡を入れるんだよ？」
「お兄様……私、もう子供じゃ無いんですよ？」
「ん～？俺には何時までも可愛い妹だよ。気を付けて行ってらっしゃい」
そう言って、私の頭に手を伸ばし優しく撫でてくれるお兄様に 思わず頬が緩んでしまう。
私は頷き、行ってきます。と返事してルークの家へと向かった。
*****
「おや、ルカ様いらっしゃいませ」
「御機嫌よう、ルークはいるかしら？」
「はい、いつものお部屋でお待ちですよ」
門番の人に挨拶をして、私はルークの部屋へと向かった。
部屋の近くまで来ると、何やら騒がしい声が響いている事に気が付いた。
私はその声が収まるのを待って、部屋の扉をノックした。
「ルーク……今、大丈夫かしら？」
「ルカ！？あぁ、大丈夫入ってきていいよ」
ルークの返事に、私は頷き部屋の扉を開いた。
そして、部屋の中へと一歩足を踏み入れた瞬間……私の足はピタリと止まる。
部屋中には、本や紙が散らばっていて、それは床を埋めつくす勢いで広がっていた。
「これは……凄い惨状ですね……」
「ごめん、忙しくて片付けが出来て無くて……」
「いいえ、それよりさっきの声は？」
「あぁ、聞いていたんだ」
そう言って、ルークは少し恥ずかしそうな
表情を浮かべ まあ、座って。と言って、私を椅子に座るように促す。
私はそれに頷き、椅子に腰を掛けてルークを見つめた。