若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

ムルとの思い出

家路に着き、自分の部屋へと戻り服を着替える。
今日は、色々な話しをしたから少しだけ疲れてはいるけれど、これからの事に少しワクワクしている自分がいた。
沙羅の言う、あにめやげーむの事は結局良く分からなかったけれど、沙羅があんなにキラキラした顔でやりたい！と言うのだから
その願いを叶えてあげたいと思うのが、私の素直な気持ちだった。
『ルカ疲れた？』
「えぇ、少しだけ……でも、もしかしたらムルの力を戻す為だもの、頑張るわ」
『ルカ……ムルの為にありがとう、でも無理だけはダメだからね？』
「分かってるわ、ふふ、ここ最近色々な人から無理しちゃダメだって言われるわね……皆して心配性なんだから」
そう言いながらクスクス笑うと、それは皆ルカが大切だからだよと答えてくれた。
それがなんだか嬉しくて、私はありがとうと言ってムルの頭を優しく撫でながら微笑んだ。
『ふふ、くすぐったいよ～』
「あ、ごめんなさい！」
私が慌てて手を引っ込めると、ムルは笑いながらルカに撫でられるの好きだからもっと撫でてと言ってくれた。
だから私は、またゆっくりとムルの頭を撫で始める。
するとムルは嬉しそうにすりすりと私の手のひらに頬擦りをしてきた。
そんなムルの姿が可愛くて、私も自然と笑顔になる。
しばらくそうしていると、ふとムルと出会った時の事を思い出した。
「ムルと出会ったのは……確かあの森の湖だった……」
『ルカ思い出したの！？』
「断片的ですが……私があの湖を訪れた時ムルが現れて……」
私がそう言えば、ムルは嬉しそうに笑ってくれた。
それから私は、ムルと出会った時のことをゆっくりと思い出す様に話し始めた。
「湖で出会った後、私の家まで一緒に帰って……」
『うん……うん……！！それでそれで？』
「ごめんなさい……もう、思い出せないわ……」
『それだけ思い出せたなら十分だよ！えへへ……嬉しいな……』
そう言ってムルは、私の周りを嬉しそうにふわふわと飛び回り始めた。
何故ムルとの思い出が思い出せたのか分からないけれど、ムルの嬉しそうな姿を見て 私も嬉しくなった。
「そうだ、資料を確認しないといけないんだったわ……」
『資料……？』
「そう、資料。ルークのお陰であの人達に会う事が出来るから……それまでに、色々な情報を頭に入れておかないと」
そう言えばムルは不思議そうに首を傾げながらふーん……と興味無さそうな返事をして、ソファの上に寝転んだ。
私は、そんなムルの姿を横目で見ながら机に向かい、机の上に置いてある資料に手を伸ばし、そして、私は資料に目を通すとゆっくりとページを捲り始めた。
前に目を通した資料なので、新しい情報などは無いけれど、それでも色々と確認はしておく必要がある。
しばらく資料に目を通していたけれど、読み進めるうちに段々と頭がぼーっとしてくるのを感じて、私は頭を左右に振って小さくため息を付いた。
少し疲れているのかしら……そう思いながらも再度資料に手を伸ばそうとした時だった。