若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

この国を守るために

「私はこの国の人々を見捨てる事はできません……それは貴方も同じです」
「な……私に同情しているつもりか？」
私がそう言うと、男は私の肩を掴みながら声を荒らげる。
そんな男の行動を見てルークは小さく舌打ちをすると、私の腕を引き私の事を
ルークの傍に引き寄せた。
そして、腰に差していた剣に手を掛けると、そのまま男に向かって剣を抜き放つ。
「貴様……それ以上ルカに何かしようものなら容赦はしない」
そう言ってルークは剣を構えながら、鋭い視線で男を睨みつける。
そんなルークの姿を見た男は、うろたえるどころか面白そうに笑っていた。
その姿を見たルークは怒りが収まらないのか、今にも襲い掛かりそうな勢いである。
そんなルークを止めるために私は彼の腕を掴んだ。
「ルーク、私は大丈夫だから……落ち着いて？」
「だが……こいつはルカに危害を加えようとしたんだぞ？」
「そうだ……やろうと思えば私だってお前を殺せるんだ……」
「…………嘘でしょう？そんな事言ってる貴方の体……凄く震えてる」
そう私が言うと、男は驚いた様に目を見開いた後すぐに私から視線を逸らした。
その行動を見て私は確信した。この人は本当は優しい人なのだと……
けれど、その優しさを歪めてしまったのは、この国なのだ。
だから、私はこの人を放って置くわけにはいかない……たとえ彼が私を殺すと言ったとしてもだ。
この人も被害者なのだから。
「大丈夫……私がすべて救ってみせます、だからどうか……私達を信じてください」
私はそう言って、目の前にいる男に微笑みかけた。
男は何も言わずにただ私を見つめているだけだったが、その目は少し落ち着いたように見えた。
それから数分後、男が落ち着きを取り戻した頃を見計らいルークは口を開いた。
「貴方には参考人として付いて来てもらいます、ですが逃げようとしたら更に罪が重くなることを覚悟しておいてください」
ルークがそう言うと、男は小さく頷き大人しくなった。
そんな二人の様子に私はほっと胸を撫で下ろすと、ムルに声を掛ける。
するとすぐにムルは私の頭の上に飛び乗って来た。
それを確認した後、私達は屋敷を後にしたのだった。
あの人は、ルークが呼んだ役人達に引き渡された後、私達はそのまま馬車に乗り込み私の家へと戻った。
家に戻ると、お兄様とお母様……そして、お父様が私達の事を出迎えてくれた。
「その様子だと、上手くいったようだな」
「はい……あの、お父様に話したい事があるのです」
「あぁ、構わないよ。私の部屋においで」
「ありがとうございます、その……ルークも一緒で良いですか？」
私がそう問いかけると、お父様は少し考えた後小さく頷いた。
それを見て私はルークの方を振り返ると、彼も静かに頷いてくれたので私達はそのままお父様の部屋へと向かった。
部屋に着くと、私とルークはお父様に促されるまま椅子に腰掛けた。
「さて、私に話したい事とは何かな？」
お父様がそう問いかけると、私はゆっくりと口を開いた。