若い聖女が現れたから私はお役御免!?それならこっちから婚約破棄します! ~今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです~

桜乃

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お父様に伝えたいこと

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「どうやら私は憎まれていたようです」
へらり、と力なく笑う。
すると、お父様は驚いたように目を見開いた後すぐに険しい表情を浮かべた。
そして私の事をじっと見つめながら口を開く。
その表情には怒りと困惑が入り交じっているように見えた。
しかしそれも仕方の無いことだ、自分の娘が憎まれていたなんて知ったら誰だって驚くだろう。
「…………詳しく聞かせて貰えるかな?」
「はい……」
私はそう返事を返すと、今日あった事や言われたことを
噓偽りなくすべて話した。
お父様は私の話を黙って聞いていたが、話が進むにつれてその表情は険しくなっていった。
全てを話し終えると、お父様は小さくため息を吐きながら口を開いた。
「まさか……この国にそんな考えの人間がいるだなんて……」
お父様は額に手を当てながら、小さな声でそう呟いた。
やはり、お父様も知らなかったようだ。
この国は一見平和で、どの国民達も平等に見えたが
私達の目の届かない場所は酷い有様の様だ。
少なくとも、この騒動を起こした人たちは皆同じ様な境遇なのかもしれない。
「……反聖女派の人間がいる事は私も知っていた、だがまさかルカにまで危害を加えようとするとは……」
お父様はそう言うと、何かを考える様に黙り込んでしまった。
そんなお父様を見て私は恐る恐る声を掛ける。
「あの人も被害者なのです……あの人達が行った事は決して許される事ではありません。ですが、あの人達にも救いが必要だと私は思うのです……」
「ルカ……ルークくんはどう思うかね?」
「はい、私もルカの考えに賛同します。あの人は今、参考人として城の地下に収容されています……この国を変えられるのは、ルカしかいないと思います」
ルークの言葉を聞いて、お父様は少し考える様な仕草を見せた後小さくため息を吐いた。
それから少しして、ゆっくりと口を開いた。
「私もその人に会わせて貰えないだろうか?」
「えっ?」
「なに、少しお話するだけだ。何かしてこようものなら、私が責任を持って対処しよう」
そう言って、お父様は優しく微笑む。
お父様はこう言っているけれど、正直不安だ。
あの人が何をするかも分からないし、聖女の父親だなんて人物が会いに来たら
逆上してお父様に危害を加えるかもしれない……
そんな沢山の不安が頭を過ぎったけれど、私は意を決して小さく頷いた。
「分かりました……でも、これだけは約束してください、あの人が何かしようとした時……その時は何も考えずに逃げてください」
「あぁ、分かった。だが大丈夫だ、あそこには看守も沢山いる。何かあったとしてもすぐに対処できるだろう」
お父様はそう言うと、私の頭を優しく撫でてくれた。
その手つきが優しくて、私は思わず泣きそうになってしまったがぐっと堪えるとゆっくりと立ち上がった。
「今日はお話を聞いてくださりありがとうございました、今日はこれで失礼します」
そう言って私はお父様に頭を下げると、ルークと一緒に部屋を出た。
それから私は部屋に戻り、ルークは自分の家へと帰って行った。
夕食も終わり、自室へ戻りベッドに横になった瞬間睡魔が襲ってきてあっという間に眠りに落ちてしまったのだった。
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