秘密結社盗賊団のお仕事

無一物

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14 満たされる心と身体(その2)

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 シリルの寝室へとなだれ込むように移動すると、豪奢な絹織物がかけてあるベッドへともつれこんだ。

 この前のことを思い出させないよう、むしゃぶりつきたいのをグッとがまんして、シリルと向かいあったまま膝の上に抱いて座り、ゆっくりとキスをした。
 チュッ…チュッと、甘ったるい音を室内に響かせながら、ロメオは想い人のシャツのボタンへと手をかける。

「綺麗だ……」

 陶磁器のような肌が露わになると、ロメオは思わず感嘆の声を上げる。

「そんなこと言ってないで、お前も脱げよ……」

 シリルもロメオのシャツを脱がせていく。
 意外にも積極的な行動に、驚かずにはいられない。ずっと一緒に住んでいたが、ただの同居人という関係では、普段ベッドの中でシリルがどう振る舞うかなど知らなかった。
 ロメオがあの忌まわしき地下室で見たものは、媚薬で強制的に発情させられたシリルの痴態でしかなかった。

「お前、意外と筋肉あるよな」

 ふだんは上半身裸で室内をウロウロしているだけでも注意された。全く自分の身体になど興味がないのだと思っていたので、ロメオは感動し、自然と視界が潤む。
 シリルも自分を求めているのだ。

「っあ……ちょっと待って……」

 興味本位で褐色の肌を触ってくる白い手に、普段は性感帯でもない場所が翻弄される。
 このままでは主導権を奪われてしまう。
 負けてはいけないとお返しに、シリルの弱点を攻めてやった。

「……ひゃっ…あっ…そこはやめろって……」

 脇腹を手のひらで撫でると、シリルはがまんできずに声を上げた。

「じゃあここ」

 朝起こすたびに目を奪われていた胸の飾りに触れ、親指で小さな粒をこすった。

「ぁっ……くっ……」

 今度はやめろとは言われないので、気をよくしたロメオは片方の乳首をペロリと舐めた。

「……あっ…」

 そのまま、ちゅうちゅうと音をたてて吸ってやると面白いほどに反応が返ってくる。

「んぁっ……ああっ…」

 ロメオは侵略の手をもっと下部へと進めていった。
 そっと股間に触れると、すでにちゃんと反応を示しているではないか。ロメオはそれがなによりも嬉しい。

「俺のも脱がせて」

 シリルのズボンに手をかけながらも、ロメオはお願いするのも忘れない。
 お互いを脱がせあいながら、反応を示しているそれぞれのものを手にとった。

「うぁっ……気持ち良い……もっと触って……っぁ……」

 シリルの白い手に自分の褐色の雄をこすりつけながら、ロメオもシリルのローズピンクの半身を優しく扱いてやる。

「ふっ……ああっ…あっ……あっ……」

 まるで自慰を覚えたてのころのようにお互いのモノを夢中になって扱きあう。

「あっ……もう俺ダメ……」

「……っ…私…も……」

「じゃあ……一緒にいこう」

 ロメオは自分とシリルの性器を一纏めに握り込み、シリルの手も添えて一緒に動かした。

「あっ…あっ…やっ……クルっ……ああぁぁっ」

「ぁぁっ……くっ……うっ…ぁぁ」

 二人同時に射精すると、まだ息も整わないまま貪るように口付けしあう。
 それは、今まで二人の間に足りなかったものを補うように性急だった。

「——シリル……最後まで抱いていい?」

 チュッと上唇に短い口付けを落としながら、ロメオは尋ねた。心臓が耳の中に移動してきたようにドクドクと鳴り響く。
 レーリオから手酷く犯さたことをまだ引きずっているはずなので、このまま断られるかもしれないと、ロメオは緊張しながら答えを待った。

 しばらく間をあけて……シリルがこくりと頷く。

(ああ、ついにシリルを……)

 ロメオは喜びに打ち震えた。
 一時は自分の過ちで全てを失いかけただけに、その喜びはひとしおだった。

「お前……男抱いたことあるのか?」

 おずおずとシリルが尋ねてくる。シリルの前の恋人は、経験豊富なあの男だ。
 抱かれる側としては気になるところだろう。

「——いや。シリル意外は興味ないもん」

 ロメオは正直に答える。
 他の男を抱こうと思ったことなんてこれっぽっちもない。

「……大丈夫なのか?」

「大丈夫。やり方はだいたいわかるから心配しないで。あれでしょ、潤滑油みたいなのがいるんでしょ? なんかある?」

 ずっとシリルをこうして抱きたかったのだ。知識だけはちゃんと仕入れてある。

「持ってない……でもこれは代用できるかも……」

 翻訳の職業柄、紙をよく触るシリルは、手荒れ防止のためのクリームを愛用していた。
 クリームの容器をわたされ、ロメオはそれを手にとった。

「シリル、横になって」

 言われるままに、シリルは膝をたてたまま仰向けになった。
 ロメオはすかさず、シリルの股の間に身体を入れ、内股にキスをする。

「っ……くすぐったいって……」

 そう言いながら、ビクリと身体を震わせて反応を示すシリルに、ニンマリと口元に笑みを浮かべる。

 奥まで夜光石の光が届くように大きく足を広げさせて、ずっと想像力だけで補ってきたシリルのバラ色をした窄まりを目の当たりにした。
 力なく横向きにうなだれた性器、双球、そして呼吸のたびにヒクヒクと蠢くそこは、まるで別の生き物のように見る者を誘う。先ほど出した精液に濡れ艶めくその姿は、想像の遥か上をいくほど卑猥だった。
 放ったばかりだというのに、ロメオの半身はギンギンにたぎっていた。
 クリームまみれにした指先を入り口へと近づけ、挨拶代わりに一撫ですると、入り口をトントンとノックする。

「指入れるよ」

「……んっ……」

 思っていたよりも中は熱く狭かった。入り口の締めつけも凄いが、その通りみち全体が狭くて圧迫感がある。
 ロメオは中を傷つけないように慎重に指を進めていった。
 ちょうど双球の裏側当たりを丹念に探っていると、なにかにあたるのを感じ取る。

「……あっ…ちょっと待って…あっ…ダメッ…ダメだって……」

 角度を変えて何度もそこを確かめていると、頭上から制止の声がかかる。

「シリルの気持ち良いとこってココなんだ」

「……いちいち言うなっ……」

 これは正解で間違いない。
 徹底的に指で虐めてやりたい気持ちもあるが、今はシリルと一つになることが先決だ。

 指の数を増やしながら狭い中を広げる作業を進める。シリルの下の口が、三本目の指を飲み込みグチュグチュと音をたててしゃぶりだしたころを見計らい、指を抜いて少し綻んだ入り口に、褐色の性器をあてがった。


「もう俺のを入れるよ」

「……んっ…きてっ……」

 まるで誘うように、ロメオのそこだけピンク色の先端に、シリルの入り口が吸い付いてくる。
 あの男が言っていた『イソギンチャク』という言葉が頭の中をよぎった。

「うぁっ……シリルっ……ヤバいっ……」

 入り口をこじ開けるように中へと侵入すると、襲ってきた圧迫感にロメオは一気に持っていかれそうになるが、グッと腹筋に力を込めてなんとかやり過ごす。

「……うぁ…はっ……」

 苦しげな声がシリルの口から漏れている。
 これだけこちらも圧迫感があるのだ、きっとシリルも辛いだろう。
 暫くじっとやり過ごして、お互いの呼吸が落ち着くまで抱きあっていた。

「動くよ」

「……んっ」

 小さな振動から、だんだん可動範囲を広げていく。
 ヌチッヌチッといやらしい音が響きはじめるころには、腕の中のシリルも乱れてきた。

「ぁっ…ぁっ…っうぁ……」

 腹に挟まれながらも存在を主張してきたシリルの分身に手を添えて、腰の動きにあわせて扱いてやる。

「ああっ…はっ…はぁ……」

 喘ぎ声と共にシリルの中が動きだす。特に抜くときは搾乳でもするように締めつけが激しくなってきた。

 お返しに先ほど確認したイイところを狙い撃ちにしてやる。

「……あっ…そこっ…だめっ…ああっ……ああああぁぁっっ……もっ…くるっ……」

 シリルの身体が痙攣し、中の壁が今までにないほどロメオを締めつけた。
 余裕のない声が、耳からではなく身体を繋げた箇所から振動として伝播して翻弄する。

「ああっ……俺も、もうだめっ……うううっ…ああっ……」

 シリルが果てると、がまんできずにロメオも中に欲望を吐き出した。

 想像以上の快感と、凄まじい多幸感が全身を襲う。
 ぽやんぽやんと目の前に膜がはり、他のことがなにも考えられなくなる。
 その幸せはロメオの許容範囲を超えていて、その溢れた喜びが、目から涙となって流れ出した。

(——もうこのまま死んでもいい……)


「ロメオ……愛してる……」

 それと同時に、ギュッと強い力で抱きしめられる。

「……シリル……」

 言おうとしていた言葉を先にとられてしまった。
 それも、シリルのほうから愛の言葉を発するなんて……馬鹿みたいに涙がボロボロと零れてくる。

 大切な人だと思っていたのに、なんでシリルの言葉を信じずに、怒りに身を任せ行動を起こしてしまったのだろう……。ロメオのために、自分の身を犠牲にしてまで守ってくれていたのに、取り返しのつかない過ちを起こしてしまった。
 震えながら泣いていたシリルの姿を思い出すと、今でも胸が痛い。

 一時は身を引くことも考えたが、その先にまさかこんな未来が待っているとは想像もできなかった。
 シリルの愛情は、自分のちんけな恋心などよりももっと大きく、計りしれないものだった。
 いくら背伸びして大人びて見せても、やはりシリルには敵わない。

(——この人を、守っていける強い男になりたい)

 ロメオは、温かな愛情で自分を優しく包んでくれる愛しい人を、精一杯の情熱を込めて抱き返す。

「シリルっ……俺も愛してる——ありがとう」

 繋がったまま口付けを交わし、夜が更けるまで二人は何度も愛し合った。


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