異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

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第2章 少年期前編

第20話 ヴェルド峡谷

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「ひでぇ目にあったぜ」

 大きなタンコブを作ったザドは朝食代わりのスープを啜る。

「僕はむしろあの状況で寝ていられた神経が理解できませんよ」

 俺は軽く言い返して同じくスープを啜る。

「仕方ねぇだろ。
眠かったんだからよ」

「ここは街の外なんですから、警戒を怠ったら死にますよ?」

 呆れたように言う俺にザドはニヤッと笑って答える。

「大丈夫だって。
その為のシン坊だろ?」

「子供をアテにし過ぎる大人って、傍から見れば相当情けないですよ」

 ジト目で俺はザドを見る。
いっぺん痛い目を見ればいいのだ。
ザドはそれを気にせず辺りを見回す。

「しっかしよぉ。
戦争でも起こったのか?
何かが爆発したような所は焼け焦げてるし、地面が切り裂かれてる所もあるし、あそこなんか大きく抉れてんぞ」

 ザドは半笑いでそう言った。

「えぇ、少し面倒な敵がいましたので、少しばかり自分も気合入れました。
ザドさんが眠ってる間に」

 それを聞いて、そうか、と目を閉じて頷くザド。

「どうやら、頑張ったみたいだな、シン坊」

「いや、そんな良い顔で言ってるけどアンタ寝てただけじゃん」

「だから悪かったって!」

 まったく、なんでこんな人と契約しちまったかな。
俺は胡座をかいたまま頬杖をついて、大きく溜息をつく。




 朝、荷物をまとめるとまた俺達は進み始める。
度々少数のゴブリンやオークに襲われる事もあったが、リゼット達が蹴散らしていく。
あの一戦以来、リゼットとその護衛団からは一目置かれる存在になった。
ザドはあの時呑気に眠っていた為、俺を見る目は変わらなかったが。

 そして辿り着いたのはヴェルド峡谷。
両岸は高く急な崖になっており、俺達が進む谷底は川瀬があった。
その横に申し訳程度の道があり、その幅は馬車がギリギリ通れるほどしかない。
崖を見れば岩肌がゴツゴツと迫り出し、草木は殆ど存在しない。

「ここではゴーレムの目撃証言が多発している。
付近の村からも討伐依頼が出ている程だ。
気を引き締めな」

 リゼットが険しい顔つきでそう言った。
護衛団の皆も真剣な顔つきで頷く。
俺も同じく頷いた。
ザドは欠伸をしていた。
俺はその顎を真下から強力な水鉄砲で撃ち抜いた。

 ゴーレム自体は大した事ないが、この狭い道で戦うとなると、少し面倒か?
というか、崖の上からゴーレムが降ってきたらまんま落石になるんだが……。
とは言え、生体感知があるから近くにいりゃその存在には気づけるか。

 俺がそんな事を考えていると、前を行くリゼット達が足を止めた。
リゼットの大きな荷馬車が邪魔で前が見えない。
俺はザドを顔を見合わせ、一度飛び立ち、リゼットの下に向かう。
が、その前に何故足を止めたのかは明白になる。

 飛び上がって俺達の進行方向の前には、多くの荷馬車だってだあろう残骸が散らばっていたのだ。
そして、複数の人の死体も。
その死体は潰されたかのようにグチャグチャになっていて、腕や足が散らばってもいた。
ここでゴーレムと戦ったのか?
それにしては……何か腑に落ちない。
なぜか砕けた石が多いような……。

 道は完全に積み重なった岩で塞がれている。
俺はリゼットの下に降り立った。

「ここで戦闘があったのでしょうか?」

 俺が尋ねるが、リゼットはポポロに乗ったまま前方の光景を睨み付ける。

「どうだかね……。
しかし、ゴーレムの姿が見えない。
岩や石ばかりだし、潜んでいるかもしれないが、奴等はそこまで知恵はないはず……」

 そう、下位のゴーレムは基本的には単調な動きしかしない。
とても硬く、力も強いが、動きは遅い。
危なければ逃げれば良いのだ。
つまり、ここでやられた連中は……逃げれなかった理由がある?

 ふと塞がれた道より上を見ると、空から何かがこちらに向かってくるのを見た。
それはどんどん大きくなる。
……まさかっ!?

 俺は即座に魔法を展開し、ファイアボム・キャノンで応射する。
飛んできたのは巨大な岩石。
それを俺の放った砲弾で吹き飛ばす。
リゼットもその出来事に目を見開く。
直後、後ろから叫び声が響く。

「シン坊っ!!
後ろからゴーレムの大群がやってきやがるぞ!助けてくれええ!」

 挟み撃ちか。
続けて前からは四つの岩石が飛んでくる。
即座に魔法陣を展開。

「リゼットさん!
申し訳ありませんが、後ろを頼めますか!?
僕は前にいる“何か”をどうにかしますっ!」

 俺が鋭くそう言うと、リゼットは力強く頷いた。

「ポポロっ、お前はここにいな!
前から他にゴーレムがいたら蹴散らしておくれっ!
お前達、癪だがザドの野郎を助けるよっ!後でたっぷり金をふんだくってやる!」

 がめついッスねー、リゼットさん。
ともかく、後ろはリゼットさん達に任せよう。
彼等ならゴーレムくらいに遅れはとらないはず。
俺はこの巨石を飛ばしてくる何かをぶっ倒す!

 俺は飛翔し、その飛んでくる巨石の発射元を探る。
そして、しばらく巨石を破壊しながら前進すると、ソイツが見えてきた。

 高い崖の上に居座るソイツ。
それは青紫のクリスタルが黒い岩石の身体からいくつも飛び出した人型の巨人。
ギガントゴーレムである。
その脇には岩と土で出来上がったアースゴーレムがせっせと岩石をギガントゴーレムに渡している。
基本的に知恵などないゴーレムだが、高位のゴーレムは違う。
しかし、ギガントゴーレムは魔境に生息するゴーレムのはずだ。
そんなのがこんな所で、道を遮るかのように存在している。
それは偶然なんかじゃない。
昨日のシザースナイトもそうだが、明らかにこの一帯の魔物は何かに指揮されている。
つまり、魔族がいるのだ。
だが、今の俺ではその存在を感知出来ない。
ならば、目の前の敵に集中しよう。

 ギガントゴーレムは岩石を振りかぶる。

「まったく、こんな距離から馬車を狙うとか。
無駄に良い腕してんのな、お前」

 俺はそうボヤいて、身体昇華によって身体能力を引き上げる。
投げられる岩石。
それは真っすぐ俺へと向かってきた。
どうやら狙いを俺に変えたようだ。
しかし、それは好都合。
片手を掲げて魔法を構築。

「以前は運動苦手だったんだけどな。
この身体だったら、結構いい線いくと思うぜ?」

 俺はそう言って、迫ってくるその巨大な岩石を片手で止める。
即座に変質。
巨大な鉄球が出来上がる。

「返すよ。受け取れ」

 暴風を一点に集中させ、巨大な鉄球が放たれる。
続けて俺も一気に加速し鉄球と並走する。

 ギガントゴーレムは高い魔素で出来ている為、魔法耐性が高い。
物理防御も高いが、倒すなら物理攻撃の方が有効。
よって、俺は両腕、両足に魔素を纏わせる。
魔法のスキルを限界値まで引き上げ、魔導のスキルへと進化させた時に手に入れた力。
魔装具構築。
風刃の刀、嵐丸のように、高い密度の魔素を集める事で武具を構築出来るようになった。
両腕と両足が燃え上がり、その揺らめく炎が形を留める。
両腕は紅く燃え盛る炎を体現させたガントレット、紅魔の篭手。
両足には蒼く燃える炎を体現させたグリーブ、蒼魔の脚具。
武具を構築し、横を飛ぶ鉄球を更に蹴りつけ加速させる。
その鉄球は加速しただけじゃなく、蒼い炎にも焼かれ、燃え盛る鉄球になる。

 ギガントゴーレムは両手を突き出しその鉄球を止めようとするが、鉄球を受けた瞬間に腕からヒビが入り、そのヒビから蒼い炎が噴き出し始める。
この蒼い炎の特性、それは連鎖する炎にある。
その炎に触れたモノにも炎を纏わせ、その身を焼き尽くす。
それが蒼魔の脚具の力。
ヒビ割れた腕の力で衝撃を受け止めきれず、そのまま鉄球に吹き飛ばされ仰け反るギガントゴーレム。
俺は宙に浮いたまま、紅魔の篭手をつけた拳が叩き込む。
その一撃を食わせた瞬間、大きな爆発が起きる。
紅魔の篭手の力、それは燃やすのではなく爆破による対象の破壊。
打撃と爆発によってより威力は強まり、相手を破壊する。
高速連打で打ち込まれる俺の拳。
当たる度にギガントゴーレムの身体は爆発し、砕けていく。
そして、身体の中心にあるコアがようやく見えた。
深く腰を落として、スマッシュパンチをするように振り抜いた拳がコアを直撃し、粉々に砕く。
一際大きな爆発が起こり、脇にいるアースゴーレムも巻き込んだ。
当然俺も巻きもまれたが、身体金剛を使って身体を守る。

 残ったのは俺一人。
ギガントゴーレムもアースゴーレムも粉々に砕け散ったようだ。




「……魔族、か……」

 俺は遠くを見て呟く。
思い出すのはマリーダ村での戦い。
後から聞いた話だが、マリーダ村でもジノは魔族と戦っていたらしい。
あのジノなら苦戦しなかっただろうが、はたして俺は魔族に太刀打ちできるだろうか?
まだ見ぬその敵に警戒しつつ、俺はリゼットさん達の下へと戻った。


 俺が戻ると複数いるアースゴーレムとリゼットさん達がやりあっていた。
すでにコアを破壊されたであろうゴーレムが十数体いるが、それでもまだ八体ほど残っていた。
それでも決して遅れをとらないリゼットさん達は流石と言える。
戻った俺はすぐにリゼットさん達の下に舞い降りる。
ただそれだけで、士気が一気に上がるのを感じた。

「前は片付いたかい!?」

「問題なく」

 俺とリゼットさんは短く言葉を交わし、残党を片付けた。



 その後、道を塞いでいた岩石を俺がぶっ飛ばし、通り道を作る。
荷馬車にそれぞれ戻る時、リゼットさんが俺に声をかけてきた。

「坊や、この行商が終わってから、今度は私の護衛を頼みたいね。
護衛団に入らなくても構わないさ。
危ない道中がありそうな時は頼みたいが、どうだい?」

 リゼットさんは腕を組んで誘ってくる。

「ええ、構いませんよ」

 俺は笑顔で答える。

「おいおい!シン坊は俺専属じゃないのか!?」

 ザドが慌てふためく。

「誰もそんな事言ってないですよ。
でもまぁ、契約を一度した仲ですから、ザドさんからも依頼は受けますよ。
その前に、宿屋の人にはちゃんとお金払っておいてくださいね。
話はそれからです」

 俺はフンッと鼻息を荒くして言い放つ。
ザドは肩を落として「わかったよ」と呟き、トボトボと馬車へと向かった。
この人、払う気なかったんだな、と俺は確信したのだった。


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