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第3章 少年期中編
第34話 冒険者タマリウス
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「魔槍使いの……タマ?」
小首を傾げて俺は聞き返す。
「タマリウスだっ!勝手に略すなっ、チビ助!」
俺が聞き返すとタマリウスは憤慨する。
「来てくれたのか!タマリウス君っ!」
ジャンカルロも立ち上がって顔を輝かせる。
するとタマリウスは得意げな顔をする。
「勿論だニャ。
栄えあるリンデント公爵からの依頼ニャらお断りはしニャいニャッ!」
ニャフフン、と鼻を鳴らしてドヤ顔のタマリウス。
随分と自信満々な奴だな。
「えと、タマは戦えるの?」
「タマって言うニャッ!
お前、オイラの事知らねぇのか?
ここらじゃあオイラほど有名ニャ冒険者はいニャいんだぜ?
リンデント公爵、オイラはこんなチビ助ニャんかよりよっぽど役に立ちます。
盗賊退治、ニャんでしょう?
そんニャもんオイラ一人で一掃したりますニャ!」
胸をドンと叩くタマリウス。
猫のくせに言ってくれるじゃねぇか。
「タマは強いの?」
「タマリウスっつってんだろ!
オイラが強いか、って?
そりゃあ強いさ。
上位の魔物だろうが魔族だろうがニャぎ払ってやんよ」
へぇ、そりゃ大した自信だな。
俺は疑わしげにタマリウスを見つめる。
しかし、リンデント公爵もその言葉に頷く。
「タマリウス君はレバル迷宮の制覇者だ。
しかも、たった一人で成し遂げたとも聞く。
君がジーナスに立ち寄ってくれていて助かったよ!」
そう言ってタマリウスと握手するジャンカルロ。
ほー、リンデント公爵の反応ぶりじゃあ大言壮語って訳じゃないのか?
「いやいやぁ、それほどでもあるんだけどニャ!
ただ、公爵にはお願いがあるんだニャー。
盗賊共を一掃したら、是非とも推薦状を一筆書いて欲しいんだニャッ」
「推薦状?」
ジャンカルロは疑問顔になるが、あぁ、とすぐに納得顔になる。
「ひょっとして、魔導騎士学院への推薦状かい?」
何?魔導騎士だと?
「その通りだニャッ!
公爵の推薦状があればとても心強いニャァ」
ニャンニャンと髭を揺らすタマリウス。
「タマは魔導騎士を目指してるの?
僕と同じじゃないか」
「おめー、わざと言ってんだろ、チビ助。
しかも“お前も”魔導騎士を目指してるだと?
笑わせてくれるニャ。
チビ助のくせにでかい口を……」
タマリウスは嘲笑い、鑑定の魔力が俺に流れ込むのを感じた。
コイツ人に断りも無く勝手に鑑定しやがって、ぶっ飛ばすぞ。
「……お前……。
ニャかニャかやるニャ……」
真顔になり、俺をマジマジと見てくるタマリウス。
とは言え、俺のステータスを見ても驚かない奴は珍しい。
「勝手に盗み見したんだ。
そっちも見せてもらうよ?」
俺はそう言ってステータス鑑定を行う。
名称:タマリウス
性別:男
種族:精霊族
身体能力
レベル:63
体力:12700
マナ:25680
魔力:19500
筋力:9630
耐久:3640
俊敏:9470
特性
・魔導特化 ・スキル開花 ・スキル統合、進化 ・槍術特化 ・大精霊の加護 ・聴覚、嗅覚精良
スキル
・鑑定眼lv.9 ・魔導の極技lv.3 ・生体感知lv.MAX ・魔力感知lv.MAX ・気配遮断lv.MAX ・炎獄闇銀の魔巧lv.5 ・水魔法lv.8 風魔法lv.9 土魔法lv.5 蘇生魔導lv.6 ・剣術lv.7 ・拳剛lv.4 投擲lv.8 ・槍舞lv.7 状態異常耐性lv.MAX
・本能覚醒 ・瞬動 ・虚空瞬間動 ・暗視 ・遠視 ・広域視野 ・多重補足 ・マナ変換 ・身体昇華 ・身体金剛 ・無詠唱 ・魔装具構築 ・致命の一撃 ・思考速度最速化 ・自然マナ回復 ・高速自然治癒 ・対話術
コイツ……。
口だけじゃなく本当に強い。
「本当に強いんだね、タマ」
「おめー馬鹿にしてんだろ?
喧嘩売ってんニャら買ってやるぜ?」
おぉん?とヤンキーばりに額を近付けガンを飛ばしてくるタマリウス。
ヒゲが当たってこそばゆい。
「っていうか、タマは精霊なの?
精霊って確か妖精的なもんだと思ったけど」
「とことん無視する気ニャのニャ……。
世間知らずのチビ助に教えてやるニャ。
オイラは精霊ケット・シー。
大精霊の加護を受けたオイラは特定の場所を離れ、自由に世界を飛び回れるようにニャった訳ニャ」
精霊ケット・シー。
あー、なんか図鑑で見た事あるかも。
二本足で歩く猫だっけか?
見た目はこんなじゃなかった気がするが。
「そんニャオイラは暇つぶしに迷宮潜って魔物共をギタンギタンにしてたら、いつの間にか制覇しちゃってたニャ。
次の目標として、王国の最強と言われる魔導騎士を目指す事にしたって訳。
そんで女の子達にモテモテのウハウハにニャっちゃうって訳ニャー」
ニャフフフー、と口を押さえて笑うタマリウス。
めっちゃ低俗な理由で目指してんのな。
でも、実力は本物。
やり合えば間違いなく俺と互角に渡り合うだろう。
「目指せ最強の魔導騎士学院のアイドルニャッ!
そんでー、貴族でもニャんでもニャいオイラには名声がいる訳ニャんだニャー」
チラッチラッとリンデント公爵を見るタマリウス。
「推薦状の件は前向きに検討しよう。
まずは盗賊達の討伐だ。
受けてもらえるのだね?」
「もちのろんだニャ。
迷宮の魔物に比べれば盗賊なんてゴミカスみたいニャもんニャァ」
そう言って腕を組むタマリウス。
「では、僕が西の砦を。
タマは南西の砦を頼むよ」
「なんでおめーに指図されニャきゃニャんねぇんだよ、チビ助」
ギロリと睨むタマリウス。
「私からも頼む、タマリウス君。
君達二人が頼りなんだ」
そう言って頭を下げるリンデント公爵。
「公爵の頼みニャら断れニャいニャー。
そのニャん西の砦、オイラが軽くぶっ潰してくるニャ。
このチビ助より先に」
そう言って親指をこちらに突きつけてくるタマリウス。
「こっちのが遠いですけど、砦の盗賊共を捻り潰してきます。
タマより先に」
おぉん?
あぁん?
と睨み合い、火花を散らす俺達。
リンデント公爵は顔をひきつらせるが、それでも力強く頷く。
かくして、俺達は盗賊退治を受ける事になったのだった。
屋敷の外に出ると、タマリウスが声を掛けてきた。
「おめー、これが終わったら一勝負しろや、チビ助。
オイラの事をタマタマ連呼しやがって。
そのひん曲がった根性を叩きニャおしてやるニャ」
凶悪な顔でそう言って中指を立てるタマリウス。
見た目は可愛い猫なのに性格はヤンキーだな、コイツ。
「受けて立つよ。
もしも僕が勝ったらチビ助じゃなく、ご主人様って呼んでもらうから」
「ニャめんてんニャー。
こいつ、マジでニャめてるわ。
そんじゃあオレが勝ったらタマリウス様って呼んでもらうからよ。
そんでタマって呼んだ事を土下座して謝ってもらうニャ」
仰け反って怒りにプルプル震えてそう言った後、俺に背を向ける。
「とっとと終わらせて、てめーと白黒つけてやるニャ」
そう言い残してタマリウスは大きく跳躍し、去っていった。
が、このジーナス、空からの攻撃に備えて防壁の結界が張られている。
そいつに勢いよく顔面からぶち当たり、落ちてくるタマリウス。
痛そうだな。
そして格好悪い……。
「タマ、大丈夫かー?」
「っるせー、チビ助ッ!
覚えてろよっ!」
いや、俺のせいじゃないし。
タマリウスは捨て台詞を吐いた後、トボトボ門から出て行った。
残された俺も、一度家に戻ってアネッサに報告する事にする。
「あ、おかえりなさいませ、シン様」
家に着くとアネッサが迎えてくれる。
甲斐甲斐しく俺に一礼するアネッサ。
「ただいま。
さっそくだけど、話があるんだ」
俺はそう言ってテーブルに着いた。
アネッサも座るように促す。
「リンデント公爵から盗賊退治の依頼を受けることにした。
奴等が暴れて村を襲った原因の一端は僕にもある。
力になれる事は僕もしてあげたいから、申し訳ないけど今夜は家をあけるよ」
「家の留守は構いませんが、原因の一端がシン様にある、というのは?」
「僕はここ半年間、商人を護衛し続けていた。
ほぼ毎日のようにね。
最初のうちは盗賊に襲われる事もあったけど、接近すら許さず僕が殲滅してたから、彼等もぼくを恐れたんだと思う。
今度は襲いやすい村に狙いを付け、略奪を始めたんだ」
アネッサの顔付きも険しくなる。
「……それは、シン様の責任ではないのでは?」
「だとしても、だよ。
放ってはおけない。
だから、僕は行かなくちゃいけない。
でも、明後日の晩はブラッドムーンの夜だろう?
その時はアネッサの傍にいるつもりだから、明日には戻るよ」
それを聞いて立ち上がって驚くアネッサ。
「シン様っ!
その晩はどうか私をどこか遠い場所に一人で置いておいて下さいっ!
傍にいるなどとんでもありませんっ!」
それは必死の形相だった。
しかし、俺は首を横に振る。
「そうはいかない。
君の事は僕が任されている。
そして僕が君の主人だ。
もしも君が危険な存在になり得るのなら、尚更傍にいなくちゃ。
僕の目の届かないところで、他の人に迷惑かけたらマズイだろ?」
俺は優しく微笑んでそう諭したが、アネッサは強く首を振る。
「シン様はわかっていない……っ。
幻獣の存在がどれほど恐ろしいものなのか。
どうか、その晩だけは私を一人にして下さい……お願いします……」
アネッサは縋り付くように懇願してきた。
そこまで必死になる程、か。
しかし……。
「……それでも、君を一人にはさせられない。
どうか、わかってほしい」
俺がそう言うと、しばし沈黙し、アネッサは静かに「わかりました」と呟いた。
「僕はこれから盗賊の討伐に向かう。
一緒に来て欲しいけれど、急ぐ為に僕は空を飛んで行かなくちゃいけない。
飛べるのは僕だけだから、アネッサには留守を頼みたい。
また明日には戻るから、その間だけ頼めるね?」
俺がそう尋ねると、アネッサは黙って頷いた。
「来たばかりなのに家を空けてごめんね。
食材は自由に使って構わないから。
出来るだけ、早く帰るようにするよ」
俺はアネッサの表情が暗いのが不安ではあったが、そう言って家を飛び出した。
シン様はそう言って家を飛び出していった。
ブラッドムーンの夜は明後日の晩。
明日には、ジーナスを出て可能な限り遠くにいかなくては……。
ブラッドムーンの晩はシン様が傍にいてはいけない。
もう、誰も傷つけたくない。
誰も、私のために犠牲になって欲しくはない。
一人残されたアネッサの頬を一筋の涙が零れ落ち、唇を強く噛み締めるのだった。
小首を傾げて俺は聞き返す。
「タマリウスだっ!勝手に略すなっ、チビ助!」
俺が聞き返すとタマリウスは憤慨する。
「来てくれたのか!タマリウス君っ!」
ジャンカルロも立ち上がって顔を輝かせる。
するとタマリウスは得意げな顔をする。
「勿論だニャ。
栄えあるリンデント公爵からの依頼ニャらお断りはしニャいニャッ!」
ニャフフン、と鼻を鳴らしてドヤ顔のタマリウス。
随分と自信満々な奴だな。
「えと、タマは戦えるの?」
「タマって言うニャッ!
お前、オイラの事知らねぇのか?
ここらじゃあオイラほど有名ニャ冒険者はいニャいんだぜ?
リンデント公爵、オイラはこんなチビ助ニャんかよりよっぽど役に立ちます。
盗賊退治、ニャんでしょう?
そんニャもんオイラ一人で一掃したりますニャ!」
胸をドンと叩くタマリウス。
猫のくせに言ってくれるじゃねぇか。
「タマは強いの?」
「タマリウスっつってんだろ!
オイラが強いか、って?
そりゃあ強いさ。
上位の魔物だろうが魔族だろうがニャぎ払ってやんよ」
へぇ、そりゃ大した自信だな。
俺は疑わしげにタマリウスを見つめる。
しかし、リンデント公爵もその言葉に頷く。
「タマリウス君はレバル迷宮の制覇者だ。
しかも、たった一人で成し遂げたとも聞く。
君がジーナスに立ち寄ってくれていて助かったよ!」
そう言ってタマリウスと握手するジャンカルロ。
ほー、リンデント公爵の反応ぶりじゃあ大言壮語って訳じゃないのか?
「いやいやぁ、それほどでもあるんだけどニャ!
ただ、公爵にはお願いがあるんだニャー。
盗賊共を一掃したら、是非とも推薦状を一筆書いて欲しいんだニャッ」
「推薦状?」
ジャンカルロは疑問顔になるが、あぁ、とすぐに納得顔になる。
「ひょっとして、魔導騎士学院への推薦状かい?」
何?魔導騎士だと?
「その通りだニャッ!
公爵の推薦状があればとても心強いニャァ」
ニャンニャンと髭を揺らすタマリウス。
「タマは魔導騎士を目指してるの?
僕と同じじゃないか」
「おめー、わざと言ってんだろ、チビ助。
しかも“お前も”魔導騎士を目指してるだと?
笑わせてくれるニャ。
チビ助のくせにでかい口を……」
タマリウスは嘲笑い、鑑定の魔力が俺に流れ込むのを感じた。
コイツ人に断りも無く勝手に鑑定しやがって、ぶっ飛ばすぞ。
「……お前……。
ニャかニャかやるニャ……」
真顔になり、俺をマジマジと見てくるタマリウス。
とは言え、俺のステータスを見ても驚かない奴は珍しい。
「勝手に盗み見したんだ。
そっちも見せてもらうよ?」
俺はそう言ってステータス鑑定を行う。
名称:タマリウス
性別:男
種族:精霊族
身体能力
レベル:63
体力:12700
マナ:25680
魔力:19500
筋力:9630
耐久:3640
俊敏:9470
特性
・魔導特化 ・スキル開花 ・スキル統合、進化 ・槍術特化 ・大精霊の加護 ・聴覚、嗅覚精良
スキル
・鑑定眼lv.9 ・魔導の極技lv.3 ・生体感知lv.MAX ・魔力感知lv.MAX ・気配遮断lv.MAX ・炎獄闇銀の魔巧lv.5 ・水魔法lv.8 風魔法lv.9 土魔法lv.5 蘇生魔導lv.6 ・剣術lv.7 ・拳剛lv.4 投擲lv.8 ・槍舞lv.7 状態異常耐性lv.MAX
・本能覚醒 ・瞬動 ・虚空瞬間動 ・暗視 ・遠視 ・広域視野 ・多重補足 ・マナ変換 ・身体昇華 ・身体金剛 ・無詠唱 ・魔装具構築 ・致命の一撃 ・思考速度最速化 ・自然マナ回復 ・高速自然治癒 ・対話術
コイツ……。
口だけじゃなく本当に強い。
「本当に強いんだね、タマ」
「おめー馬鹿にしてんだろ?
喧嘩売ってんニャら買ってやるぜ?」
おぉん?とヤンキーばりに額を近付けガンを飛ばしてくるタマリウス。
ヒゲが当たってこそばゆい。
「っていうか、タマは精霊なの?
精霊って確か妖精的なもんだと思ったけど」
「とことん無視する気ニャのニャ……。
世間知らずのチビ助に教えてやるニャ。
オイラは精霊ケット・シー。
大精霊の加護を受けたオイラは特定の場所を離れ、自由に世界を飛び回れるようにニャった訳ニャ」
精霊ケット・シー。
あー、なんか図鑑で見た事あるかも。
二本足で歩く猫だっけか?
見た目はこんなじゃなかった気がするが。
「そんニャオイラは暇つぶしに迷宮潜って魔物共をギタンギタンにしてたら、いつの間にか制覇しちゃってたニャ。
次の目標として、王国の最強と言われる魔導騎士を目指す事にしたって訳。
そんで女の子達にモテモテのウハウハにニャっちゃうって訳ニャー」
ニャフフフー、と口を押さえて笑うタマリウス。
めっちゃ低俗な理由で目指してんのな。
でも、実力は本物。
やり合えば間違いなく俺と互角に渡り合うだろう。
「目指せ最強の魔導騎士学院のアイドルニャッ!
そんでー、貴族でもニャんでもニャいオイラには名声がいる訳ニャんだニャー」
チラッチラッとリンデント公爵を見るタマリウス。
「推薦状の件は前向きに検討しよう。
まずは盗賊達の討伐だ。
受けてもらえるのだね?」
「もちのろんだニャ。
迷宮の魔物に比べれば盗賊なんてゴミカスみたいニャもんニャァ」
そう言って腕を組むタマリウス。
「では、僕が西の砦を。
タマは南西の砦を頼むよ」
「なんでおめーに指図されニャきゃニャんねぇんだよ、チビ助」
ギロリと睨むタマリウス。
「私からも頼む、タマリウス君。
君達二人が頼りなんだ」
そう言って頭を下げるリンデント公爵。
「公爵の頼みニャら断れニャいニャー。
そのニャん西の砦、オイラが軽くぶっ潰してくるニャ。
このチビ助より先に」
そう言って親指をこちらに突きつけてくるタマリウス。
「こっちのが遠いですけど、砦の盗賊共を捻り潰してきます。
タマより先に」
おぉん?
あぁん?
と睨み合い、火花を散らす俺達。
リンデント公爵は顔をひきつらせるが、それでも力強く頷く。
かくして、俺達は盗賊退治を受ける事になったのだった。
屋敷の外に出ると、タマリウスが声を掛けてきた。
「おめー、これが終わったら一勝負しろや、チビ助。
オイラの事をタマタマ連呼しやがって。
そのひん曲がった根性を叩きニャおしてやるニャ」
凶悪な顔でそう言って中指を立てるタマリウス。
見た目は可愛い猫なのに性格はヤンキーだな、コイツ。
「受けて立つよ。
もしも僕が勝ったらチビ助じゃなく、ご主人様って呼んでもらうから」
「ニャめんてんニャー。
こいつ、マジでニャめてるわ。
そんじゃあオレが勝ったらタマリウス様って呼んでもらうからよ。
そんでタマって呼んだ事を土下座して謝ってもらうニャ」
仰け反って怒りにプルプル震えてそう言った後、俺に背を向ける。
「とっとと終わらせて、てめーと白黒つけてやるニャ」
そう言い残してタマリウスは大きく跳躍し、去っていった。
が、このジーナス、空からの攻撃に備えて防壁の結界が張られている。
そいつに勢いよく顔面からぶち当たり、落ちてくるタマリウス。
痛そうだな。
そして格好悪い……。
「タマ、大丈夫かー?」
「っるせー、チビ助ッ!
覚えてろよっ!」
いや、俺のせいじゃないし。
タマリウスは捨て台詞を吐いた後、トボトボ門から出て行った。
残された俺も、一度家に戻ってアネッサに報告する事にする。
「あ、おかえりなさいませ、シン様」
家に着くとアネッサが迎えてくれる。
甲斐甲斐しく俺に一礼するアネッサ。
「ただいま。
さっそくだけど、話があるんだ」
俺はそう言ってテーブルに着いた。
アネッサも座るように促す。
「リンデント公爵から盗賊退治の依頼を受けることにした。
奴等が暴れて村を襲った原因の一端は僕にもある。
力になれる事は僕もしてあげたいから、申し訳ないけど今夜は家をあけるよ」
「家の留守は構いませんが、原因の一端がシン様にある、というのは?」
「僕はここ半年間、商人を護衛し続けていた。
ほぼ毎日のようにね。
最初のうちは盗賊に襲われる事もあったけど、接近すら許さず僕が殲滅してたから、彼等もぼくを恐れたんだと思う。
今度は襲いやすい村に狙いを付け、略奪を始めたんだ」
アネッサの顔付きも険しくなる。
「……それは、シン様の責任ではないのでは?」
「だとしても、だよ。
放ってはおけない。
だから、僕は行かなくちゃいけない。
でも、明後日の晩はブラッドムーンの夜だろう?
その時はアネッサの傍にいるつもりだから、明日には戻るよ」
それを聞いて立ち上がって驚くアネッサ。
「シン様っ!
その晩はどうか私をどこか遠い場所に一人で置いておいて下さいっ!
傍にいるなどとんでもありませんっ!」
それは必死の形相だった。
しかし、俺は首を横に振る。
「そうはいかない。
君の事は僕が任されている。
そして僕が君の主人だ。
もしも君が危険な存在になり得るのなら、尚更傍にいなくちゃ。
僕の目の届かないところで、他の人に迷惑かけたらマズイだろ?」
俺は優しく微笑んでそう諭したが、アネッサは強く首を振る。
「シン様はわかっていない……っ。
幻獣の存在がどれほど恐ろしいものなのか。
どうか、その晩だけは私を一人にして下さい……お願いします……」
アネッサは縋り付くように懇願してきた。
そこまで必死になる程、か。
しかし……。
「……それでも、君を一人にはさせられない。
どうか、わかってほしい」
俺がそう言うと、しばし沈黙し、アネッサは静かに「わかりました」と呟いた。
「僕はこれから盗賊の討伐に向かう。
一緒に来て欲しいけれど、急ぐ為に僕は空を飛んで行かなくちゃいけない。
飛べるのは僕だけだから、アネッサには留守を頼みたい。
また明日には戻るから、その間だけ頼めるね?」
俺がそう尋ねると、アネッサは黙って頷いた。
「来たばかりなのに家を空けてごめんね。
食材は自由に使って構わないから。
出来るだけ、早く帰るようにするよ」
俺はアネッサの表情が暗いのが不安ではあったが、そう言って家を飛び出した。
シン様はそう言って家を飛び出していった。
ブラッドムーンの夜は明後日の晩。
明日には、ジーナスを出て可能な限り遠くにいかなくては……。
ブラッドムーンの晩はシン様が傍にいてはいけない。
もう、誰も傷つけたくない。
誰も、私のために犠牲になって欲しくはない。
一人残されたアネッサの頬を一筋の涙が零れ落ち、唇を強く噛み締めるのだった。
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完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
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