異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

文字の大きさ
42 / 113
第3章 少年期中編

第37話 猫と狼

しおりを挟む
 二本足で立ち、服を着て、尚且つ言葉を話す三毛猫。
魔物かと思ったが、この存在はどちらかと言えば……。

「あなたは……魔物ではないようですね。
精霊ですか?」

「ご名答ニャ。
オイラは精霊ケット・シー。
名前はタマリウスだニャ」

 そう言ってつま先立ちで胸を張る三毛猫。

「そうですか。
この辺りには精霊がいるのですね。
縄張りに立ち入ってしまったのなら謝ります」

 そう言って私は頭を下げたが、タマリウスは違う違う、と手を振っている。

「オイラの故郷はここよりずっと遠くだニャン。
大精霊の加護を受け、自由の身となり遠路はるばる旅してきた訳ニャー。
これまでの道中は、それはそれは厳しい道のりで、聞くもニャみだ、語るもニャみだの——」

「それは大変でしたね。
では私はこれで……」

 私は早口にまくし立てる三毛猫を放っておいて歩き出す。

「ちょっ!待つニャーッ!
人の、うん?精霊の話は最後まで聞いてほしいニャァ……。
特に可愛い娘には語りたいんだニャー」

 そう猫なで声で言う三毛猫。
私は無視して歩き出す。
こういう輩には関わらないのが一番だ。

「無視されたニャ!
傷付くニャァー、オイラのガラスのハートにヒビが入るニャァ……。
ってホントに無視して走り出したニャッ!
ちょっと待つニャッ!」

 駆け足になり木々の間を走り抜ける私に付いてくる三毛猫。
鬱陶しい。
私は振り切るために速度を上げる。

「ニャニャッ!?
可愛い娘ちゃん速いニャ!
見かけによらず……いや、見た目は獣人だから見かけ通りかニャー。
ともかく、そんだけ速いのは大したもんだニャッ!」

 三毛猫は加速している私に悠々と話しながら付いてくる。
この猫、思ったより素早いようだ。
更に速度を上げ、太い木々を蹴ってジグザグに進む。
しかし、その動きにすら追従してくる。

「さっきオイラがほとんどやっつけたけど、近くに盗賊のアジトがあったニャ。
悪い男がワラワラといるから、可愛い娘が一人で出歩いていると危険だニャ」

「心配には及びません。
盗賊程度に遅れは取りませんので」

 この速度で、立体的な動きをしても付いてくる。
この猫、只者ではない。

「強がったりする所も可愛いニャー。
でもホントにこんなに素早く動けるとか凄いニャッ!
っと……前方注意ニャー」

 そう言って太い木の枝の上で急停止する猫。
私も魔物の匂いを感じ取り、立ち止まる。

「この気配は……オーガだニャ。
可愛い娘ちゃんは危ないから下がってるニャン」

 そう言って三毛猫は私の前に降り立った。
私はスンスンと魔物の匂いを確かめる。
あと少しで奴等はこちらにやって来るだろう。

「……オーガが四匹、どうにでもなります」

「ブブーッ、五匹だニャ。おしいニャー。
生体感知は鍛えておくと便利ニャ」


 得意げな顔をする三毛猫。

 張り倒したい、この猫。

 すると、前方から大鉈や大斧、大槍を手に持ったオーガが五匹現れた。
オーガ達はそれぞれ腰に獣の皮で出来た腰巻をして、額に数の違う鋭いツノを持つ巨漢であった。
それぞれこちらを睨みつけ、太く筋肉質の腕に得物を持ち、構えるオーガ達。

「真面目な話、下がってるニャ。
戦いはオイラの領分だからニャ」

 真顔でそう言って片手を真横に突き出す三毛猫。
突き出した手の平に魔素が集まりだし、漆黒の炎が棒状に伸びる。
それを掴むとブンブン振り回し、ピタリとオーガ達に先端を向けると、炎が搔き消える。
その両手に握られているのは黒と紅の模様が複雑に絡み合った一本の長い銀槍。
その刃先は十字の形をしており、刃渡りは人の手から腕程の長さがある。

「おっとー、後ろも注意ニャ、可愛い娘ちゃん」

「その呼び方をやめて下さい。
私はアネッサと言います」

 そう言って私は振り返り、後ろから現れた三匹のオーガに向き合う。
腕に力を入れると、指の先から鋭い爪が伸びる。

「離れニャいでニャ、アネッサたん」

「気持ち悪い呼び方をしないで下さい、三毛猫さん」

 そう言って私は地面を蹴りつけた。

 瞬動——。

 それはもはや瞬間移動と見紛うほどの速度を出すスキル。
一気にオーガとの距離を詰め、すれ違い様に爪を振るう。
二匹のオーガは反応すら出来ず、その首を掻き斬られ、首筋から大量の血潮を撒き散らす。
そして最後に残ったオーガの正面で立ち止まり、勢いそのままに掌底を胴体に叩き込む。
その打撃の衝撃と共に、爪から放たれる斬撃が同時に襲い、オーガの身体は切り裂かれる。





 あっという間に三匹のオーガは事切れた。
それを横目で見やるタマリウス。

「凄いニャ。
あの生意気なガキといい、世の中は広いニャァ」

 そう呟いて再度正面を向き直るタマリウス。

 四匹のオーガがそれぞれ散らばり、四方から攻めて来る。

「“魔槍使い”に死角はニャいニャ」

 迫り来るオーガに黒紅の銀槍が目にも留まらぬ速さで振り抜かれる。
その刃の通ったあとには黒炎が残像のように残る。
切り裂かれるオーガの身体は途端に燃え上がり、直ぐに消炭に変わる。
その槍の振るわれる範囲に立ち入ったオーガは尽く薙ぎ払われ、そして焼き払われる。
残った一匹のオーガは戦慄し、直ぐに背を向けると一目散に逃走した。

「逃がさニャいんだニャー、これが」

 そう言って黒紅の銀槍を振りかぶり、投げ放つ。
するとその槍はまるで意思を持ったかのように木々をジグザグに避け、逃げ惑うオーガの心臓を正確に貫いた。
そのままオーガの身体が燃え上がり、直ぐ様消炭に変わる。

「どう?どう?
格好良かったかニャー?」

 タマリウスが振り返ると、既にアネッサはいなくなっていた。

「ちょっ!置いてかれたニャッ!
待つニャーッ!」

 まだ生体感知を感じ取れる距離にいたので、慌ててタマリウスはアネッサを追いかけた。






 アネッサはしばらく駆け足で三毛猫から距離を取っていると、急に目が熱くなり立ち止まる。
片目だけが、燃えるように熱いっ!

「あぁ——ッ!
あァアッ!——ッ!」

 アネッサの天色をした瞳がみるみる金色に変わっていく。
そして黒い瞳孔が大きくなる。

 その直後、手足から銀色の毛が生え始める。
ライトブラウンの髪も輝く銀色に変色する。
肘から手先まで、そして膝から足先まで銀色の体毛に包まれ、爪が鋭く伸びる。
そして犬歯が鋭く伸びているのも感じた。

 アネッサは金色の瞳を走らせ、空を見上げる。
既に空は暗くなり始めている。
また、半幻獣化が始まったのだ、とアネッサは理解する。
すると、私の背後に何かが降り立った。

「あれっ!?
その身体どうしたニャッ!
なんだかオイラみたいに毛深くニャってるニャ!
あ、今の発言は女性に対して失礼だったかニャァ?」

 呑気に小首を傾げる三毛猫。

「あ、あなたは……どう、して、私を……追いかけ、て……」

 私は喉を震わせて途切れ途切れに言葉を発する。
それを痛々しく見てくる三毛猫。

「さっきまでと様子が全然違うニャ。
お医者に診てもらうかニャ?
村まで送って——」

「どっかに行ってッ!!」

 私は声を振り絞って叫んだ。
それに驚く三毛猫。
しばし黙って私を見守り、口を開く。

「放って置けニャいニャ。
アネッサたん、困ってるみたいだニャ。
力にニャるニャ」

 そう真剣な眼差しで言う三毛猫。
しかし、私は首を大きく横に降る。

「早く、ここから離れてッ!
私は……私の身体には、幻獣がいるのッ!」

 涙を流しながら私は叫ぶ。
すると、三毛猫は目を見開き、全てを理解したようだった。

「幻獣……。
アネッサたんは憑代なのかニャ……」

 そう言って空を見上げる三毛猫。

「ブラッドムーンは明日のはず。
もう今夜から変化するのかニャ!?」

「今は、まだ……理性が保ててるッ。
今夜はまだ半幻獣化で、済むからッ!
離れてッ、遠くに行ってッ!!」

 身体中から湧き上がる力の奔流。
それと共に、眠っていた何かが目覚め始める。
三毛猫は未だに動かない。

 どうして!?

 私の顔が悲痛に歪むと、三毛猫が私の頭にポムッと手を乗せた。

「オイラがその力、食い止めるニャ。
これもニャにかの縁。
だから朝まで付き合ってあげるニャ」

 そう言って笑ったのだった。
その言葉を耳にして、何かを答えようとしたが、意識が何かに塗りつぶされる。

 お願いだから、どうか、私から、離れて……。







 いきなり振るわれる爪を後ろに大きく跳躍してタマリウスは避ける。

「……アネッサたん?」

 そう尋ねたが、アネッサは俯き反応が無い。
そしてその肩を揺らし、笑い始める。
その声はアネッサの凛とした声と重なって、別の声がした。

「アッハッハッハッハ!
今夜から暴れられるとは気分が良い……。
猫、少しばかりこの“フェンリル”が遊んでやる。
かかって来い」

 そう悍ましい声でアネッサが言い放つ。
すると、アネッサの周囲がキラキラと煌き出し、その足元の地面には輝く結晶が出来始める。
そして金色の瞳でこちらを見据え、邪悪な笑みを浮かべてきた。

「“幻獣フェンリル”、ニャのか。
また厄介な幻獣だニャ……。
魔法使いの天敵じゃニャいか」

 そう言って溜息をつき、黒紅の銀槍を構築するタマリウス。

「仕方ニャいから、躾のなってないワンコロの散歩に付き合ってあげるニャ。
朝までコースで付き合うとか我ニャがら良い男だニャッ!」

 そう言って構えるタマリウス。

 ブラッドムーン前夜。
魔槍使いの精霊猫と伝説の半魔狼が激突する。
しおりを挟む
感想 111

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...