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第3章 少年期中編
第41話 それぞれの道
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ジーナスの門を抜けて、外に飛び出した俺はすぐに上空へと舞い上がる。
目指すはシャーウッドの樹海。
速度を上げて飛んでいけば三時間程。
すでに昼をとうに過ぎ、あと二時間程で日が落ち始める。
夜になる前に辿り着きたかったが、着く頃には夜になっているだろう。
それでも、少しでも早く到着する為に速度を上げていく。
二時間ほど飛び続けていると少し速度が落ちてきた。
速度を上げるのはマナと体力の消耗が激しくなる。
マナ切れにはならないだろうが、昨日からまともに食事もとらず、少しの仮眠だけしか休んでいないこの身体は想像以上に消耗していた。
マナ変換で誤魔化しながらやってきたが、流石に疲れも出始めてきているようだ。
しかし、今はちんたら休んでる暇もない。
速度を少しだけ落とし、ローブのポケットからマナポーションを取り出して一気に飲み干す。
マナ回復の為というより、もはや栄養ドリンク代わりである。
急がないと、な……。
既に陽が傾きはじめてきている。
アネッサの事もどうにかしなければいけないし、タマにも盗賊の事を頼まなければ。
どちらもどうやって説得するかが決め兼ねているが、ゆっくり考える暇もない。
それに、会わないことには始まらない。
だからまずは一秒でも早く到着する事だ。
シャーウッドの樹海が見えて来る頃には既に陽が暮れていた。
辺りは闇に包まれているが、もう満月にほぼ近い赤く光った月が暗闇を妖しく照らし出している。
俺はゆっくり降り立ち、森へと歩き出す。
すると、近付く樹海からは何匹も何種類も魔物が飛び出してきた。
ゴブリンやオーク、ダークハウンドといった下位の魔物から、ポイズンサーペント、ブラッドウルフ、ハイオークといった中位の魔物も飛び出してくる。
何匹かはこちらに混乱しながらこちらに襲いかかってきたので礫の弾丸で頭を撃ち抜いたのだが、ほとんどの魔物は俺を無視して駆け出していく。
まるで、森の中のなにかから逃げるように。
森の中に入って突き進むと上位種でもあるオーガとも遭遇する。
コイツらは森から逃げ出すというより、何かに警戒し、殺気を放ち続けていた。
そんなオーガの視界に俺が入ると、瞬時に四匹襲いかかってきた。
地を駆け、風を切ってこちらに向かってきた四匹のオーガが一斉にそれぞれの得物を振り抜いてくる。
シンはソッと首からぶら下がる狼のペンダントを握り締める。
その直後、迫り来る四匹のオーガの胴体が前触れもなく切り裂かれた。
まるで、爪で引き裂かれたような傷跡を残して。
その傷は致命傷では無いのだが、いきなりの出来事に動揺するオーガ達。
その首を風を纏って駆け抜け、嵐丸の一閃が走ってその首を飛ばす。
たまに使うだけでは銀狼の矛のスキルレベルが上がっておらず、威力はまだ低く致命傷とはならない。
それでも上位の魔物を切り裂く力があるので、牽制や奇襲には十分有効である。
それからも森の奥へと進むにつれ、吹き荒れる魔力と凄まじい存在感を肌で感じ始める。
しかも、それが二つも存在するのだ。
二つの猛威がぶつかり合い、森全体を震わせている。
それは間違いなくタマとアネッサである。
二人は今、戦っている。
しかし、急に猛威と感じたその二つの存在が小さくなってしまった。
まさか……どちらかが倒れたのか!?
胸騒ぎがして俺は森を駆け抜ける。
すると、前方から近づいてくる気配を感じた。
この気配は……。
そして、俺は血まみれになったタマリウスに出会した。
「——ッ!!
なんで、てめぇがこんニャ所にいるニャッ!
こっちの盗賊はもう片付け終えたニャ」
忌々しげに言うタマリウス。
「別にお前の盗賊退治を加勢する為に来た訳じゃない。
アネッサ……狼人族の女の子と、さっきまでやり合っていたのはタマだろ?」
「相変わらず、ふざけた呼び方しやがって……。
……おめー、アネッサたんと知り合いかよ?」
アネッサたん?
お前もアネッサに対してふざけた呼び名を付けやがって。
ぶっ飛ばしたかったが、今はそれどころじゃない。
「アネッサと会ったんだな?
あいつは何処にいる?」
俺が問い詰めようと一歩踏み出すと、タマリウスは鋭い銀槍を構築して俺に向ける。
「……何の真似だ?」
俺がタマリウスをギロリと睨む。
しかしタマリウスもまたこちらを睨みつけて来る。
「あの娘に今、近付かせる訳ニャいかねぇよ。
今のアネッサたんの状態を分かってねぇのか?」
今のアネッサの状態だと?
「どういう事だ?
今日はまだブラッドムーンの夜じゃないだろ?」
その返答にタマリウスは溜息をついて答える。
「もうアネッサたんは半幻獣化しちまってるニャ。
だからこっから離れニャれるべきニャんだって事。
じゃねぇと死ぬぞ」
未だに槍を下ろさないタマリウス。
一歩でも踏み進もうとすれば、その切っ先が飛んできそうだ。
「……お前のその怪我は、アネッサにやられたのか?」
その問いかけにタマリウスは顔を歪める。
「……そうニャ。
そりゃあもうこっぴどくやられたニャ。
ともかく、ここでくっちゃべってる暇はニャい。
すぐに森から離れるニャ。
アネッサたんは誰も傷つけたくないみたいだニャ。
だから、離れるのがあの娘の為でもあるのニャ」
そう言って槍を下ろし、タマリウスは歩き出す。
しかし、すれ違いざまに俺は口を開く。
「悪いが断る。
俺はアネッサに会いに行く」
そう言った俺の首先に再度銀槍の刃が突きつけられる。
「チビ助、俺の話を聞いてたのかニャ?
おめーが行った所でどうにかニャるもんじゃねぇって言ってんだ」
俺はゆっくり振り返り、その銀槍の切っ先を掴む。
手が焼けるように熱くなり、直後燃え上がる。
しかし俺は手を放さない。
その行動にタマリウスが驚く。
「——ッ!
……チビ助……お前……っ」
俺は槍を燃え上がる手で掴んだまま、真っ直ぐにタマリウスを見つめる。
「アネッサは俺が必ず助け出す。
あの幻獣の苦しみから、抱えている恐怖から必ず解放させる。
それが、俺の今やるべき事だ」
睨み合う俺達。
すると、タマリウスの銀槍はゆっくりと下ろされ、消えていく。
同時に炎も消えたが、その火傷は消えはしなかった。
俺のスキルの自然治癒が急速にその怪我を治していく。
「……頑固者だニャ。
そして馬鹿だニャ。
おまけに命知らずたニャ」
タマリウスはそう言って背を向ける。
「オイラはもう行くニャ。
残るなら一人で残ればいいニャ」
そう吐き捨てるように言うタマリウス。
そんなタマリウスを俺は真剣な顔で見つめる。
「タマ、俺が会いに来たのはアネッサだけじゃなく、お前にも用があって会いに来たんだ」
「……いやいや、お前に会いに来られても全然嬉しくないニャ……」
うるせぇよ。
俺だってお前に頼らなくてはいけない状態になってるのは不本意だっつうの。
俺は黙ってスクロールを懐から取り出す。
それを見つめるタマリウス。
「……スクロール?
ニャんでそんニャもんをお前が持ってるだニャ」
「俺の攻め込んだ砦で、一人テレポートのスクロールを使われて取り逃がした奴がいる。
このスクロールは他の砦を攻めた人達が手に入れたものだ。
同じテレポートの力を持ってることから、行き先が同じ可能性が高い」
そこまで俺が言うと、何が言いたいのかはタマリウスも察する。
「……それをオイラに託したい、って話かニャ?」
睨んでくるタマリウス。
俺は迷い無く答える。
「そうだ。
明日の晩、盗賊達はジーナスを襲ってくる計画があるそうだ。
盗賊の計画を止める手立てがこの先にあるかもしれない。
お前の力を見込んで頼みたい。
タマリウス、力を貸してくれ」
俺は頭を下げる。
その姿を驚くように見つめるタマリウス。
しばらく静寂が二人を包み込むが、その沈黙をタマリウスの溜息が破る。
「……どこでいろんな情報を仕入れたのかは知らニャいけどニャァ……。
死にかけでボロボロの奴を捕まえて、また戦地に送り込もうとするとか、お前は鬼だニャ。
いや、悪魔だニャッ!」
そう言い放ってくるタマリウス。
思わず俺が頭を上げると、タマリウスはやれやれと首を振っていた。
そして真顔になって、俺の差し出したスクロールに手を伸ばす。
「アネッサたんが言ってたニャ。
もう、誰も殺したくニャい、ってニャ。
だからチビ助。
ここに残るんニャら、絶対死ぬニャ
それだけは約束しろ。
たとえ無様でも、死ぬくらいニャら逃げ出せ。
それが、あの娘の為でもある」
強い口調でタマリウスはそう言った。
「約束する」
俺もまた強い
「勝算はあんのかニャ?」
「無い訳じゃ無い。
だが、アネッサを殺す訳にもいかねぇ。
かと言って手加減出来る相手でも無さそうだ。
だから出たとこ勝負、だろうな」
俺の返答に眉をひそめるタマリウス。
「……全然説得力がニャいニャ」
率直な言葉が飛んでくるが、俺は変わらず強い眼差しでタマリウスを見て口を開く。
「……俺はどうやら不器用みたいで、色んなもんは救えないらしい。
だが、絶対に手放したく無いモノだってある。
必ず救いたい存在がある。
それがアネッサだなのだ」
その言葉にタマリウスは黙り込み、一つ頷いてスクロールを開き始めた。
「……おめーがどうにか出来るとは到底思えニャい。
ステータス見た限りじゃ、オイラとさほど違いは無ぇからな。
でも、その覚悟だけは認めてやるニャ。
やれるもんならやってみニャ。
シン・オルディール」
そう言い残し、タマリウスは消えていった。
残ったのは紫色の炎に燃えるスクロール。
……そっちは頼んだぞ、タマ。
そして俺はゆっくりと振り返る。
近づいて来るその存在を感じたからだ。
そして、その姿が闇夜の中から露わになる。
俺の知ってるアネッサの風貌とは少し変わっていた。
髪の色も銀髪になっており、目の色も両目が金色になっている。
手足の膝や肘から先は銀色の体毛が艶やかになびいている。
そして、鋭い牙を煌めかせてこちらに言い放つ。
「猫の気配が消えたな。
面白い奴だったのに。
次はお前が相手か?
器の主人の小僧」
そう言って嘲笑うアネッサ……いや、半幻獣。
どうやらアネッサの意識は潜んでいるようだ。
「あぁ、俺が相手だ。
勝手に家出した元凶のお前に、主人の俺が躾をしてやるよ。
そして、その身体をアネッサに返してもらう」
俺は睨みつけてそう言い放つ。
すると、半幻獣は笑い出す。
「アッハッハッハッハッ!
返してもらうだと?
この器はもう私のモノだっ!!」
叫ぶように言い放ち、次いで遠吠えする半幻獣。
その直後、半幻獣の周囲に煌めく結晶が広がっていく。
「いいや、違うね。
その身体は、はじめからアネッサのもんだ。
そして、今は俺のものだっ!!」
俺の身体昇華と身体金剛が解き放たれる。
互いの闘気と魔力が吹き荒れ、ぶつかり合い、再び森が震え上がる。
目指すはシャーウッドの樹海。
速度を上げて飛んでいけば三時間程。
すでに昼をとうに過ぎ、あと二時間程で日が落ち始める。
夜になる前に辿り着きたかったが、着く頃には夜になっているだろう。
それでも、少しでも早く到着する為に速度を上げていく。
二時間ほど飛び続けていると少し速度が落ちてきた。
速度を上げるのはマナと体力の消耗が激しくなる。
マナ切れにはならないだろうが、昨日からまともに食事もとらず、少しの仮眠だけしか休んでいないこの身体は想像以上に消耗していた。
マナ変換で誤魔化しながらやってきたが、流石に疲れも出始めてきているようだ。
しかし、今はちんたら休んでる暇もない。
速度を少しだけ落とし、ローブのポケットからマナポーションを取り出して一気に飲み干す。
マナ回復の為というより、もはや栄養ドリンク代わりである。
急がないと、な……。
既に陽が傾きはじめてきている。
アネッサの事もどうにかしなければいけないし、タマにも盗賊の事を頼まなければ。
どちらもどうやって説得するかが決め兼ねているが、ゆっくり考える暇もない。
それに、会わないことには始まらない。
だからまずは一秒でも早く到着する事だ。
シャーウッドの樹海が見えて来る頃には既に陽が暮れていた。
辺りは闇に包まれているが、もう満月にほぼ近い赤く光った月が暗闇を妖しく照らし出している。
俺はゆっくり降り立ち、森へと歩き出す。
すると、近付く樹海からは何匹も何種類も魔物が飛び出してきた。
ゴブリンやオーク、ダークハウンドといった下位の魔物から、ポイズンサーペント、ブラッドウルフ、ハイオークといった中位の魔物も飛び出してくる。
何匹かはこちらに混乱しながらこちらに襲いかかってきたので礫の弾丸で頭を撃ち抜いたのだが、ほとんどの魔物は俺を無視して駆け出していく。
まるで、森の中のなにかから逃げるように。
森の中に入って突き進むと上位種でもあるオーガとも遭遇する。
コイツらは森から逃げ出すというより、何かに警戒し、殺気を放ち続けていた。
そんなオーガの視界に俺が入ると、瞬時に四匹襲いかかってきた。
地を駆け、風を切ってこちらに向かってきた四匹のオーガが一斉にそれぞれの得物を振り抜いてくる。
シンはソッと首からぶら下がる狼のペンダントを握り締める。
その直後、迫り来る四匹のオーガの胴体が前触れもなく切り裂かれた。
まるで、爪で引き裂かれたような傷跡を残して。
その傷は致命傷では無いのだが、いきなりの出来事に動揺するオーガ達。
その首を風を纏って駆け抜け、嵐丸の一閃が走ってその首を飛ばす。
たまに使うだけでは銀狼の矛のスキルレベルが上がっておらず、威力はまだ低く致命傷とはならない。
それでも上位の魔物を切り裂く力があるので、牽制や奇襲には十分有効である。
それからも森の奥へと進むにつれ、吹き荒れる魔力と凄まじい存在感を肌で感じ始める。
しかも、それが二つも存在するのだ。
二つの猛威がぶつかり合い、森全体を震わせている。
それは間違いなくタマとアネッサである。
二人は今、戦っている。
しかし、急に猛威と感じたその二つの存在が小さくなってしまった。
まさか……どちらかが倒れたのか!?
胸騒ぎがして俺は森を駆け抜ける。
すると、前方から近づいてくる気配を感じた。
この気配は……。
そして、俺は血まみれになったタマリウスに出会した。
「——ッ!!
なんで、てめぇがこんニャ所にいるニャッ!
こっちの盗賊はもう片付け終えたニャ」
忌々しげに言うタマリウス。
「別にお前の盗賊退治を加勢する為に来た訳じゃない。
アネッサ……狼人族の女の子と、さっきまでやり合っていたのはタマだろ?」
「相変わらず、ふざけた呼び方しやがって……。
……おめー、アネッサたんと知り合いかよ?」
アネッサたん?
お前もアネッサに対してふざけた呼び名を付けやがって。
ぶっ飛ばしたかったが、今はそれどころじゃない。
「アネッサと会ったんだな?
あいつは何処にいる?」
俺が問い詰めようと一歩踏み出すと、タマリウスは鋭い銀槍を構築して俺に向ける。
「……何の真似だ?」
俺がタマリウスをギロリと睨む。
しかしタマリウスもまたこちらを睨みつけて来る。
「あの娘に今、近付かせる訳ニャいかねぇよ。
今のアネッサたんの状態を分かってねぇのか?」
今のアネッサの状態だと?
「どういう事だ?
今日はまだブラッドムーンの夜じゃないだろ?」
その返答にタマリウスは溜息をついて答える。
「もうアネッサたんは半幻獣化しちまってるニャ。
だからこっから離れニャれるべきニャんだって事。
じゃねぇと死ぬぞ」
未だに槍を下ろさないタマリウス。
一歩でも踏み進もうとすれば、その切っ先が飛んできそうだ。
「……お前のその怪我は、アネッサにやられたのか?」
その問いかけにタマリウスは顔を歪める。
「……そうニャ。
そりゃあもうこっぴどくやられたニャ。
ともかく、ここでくっちゃべってる暇はニャい。
すぐに森から離れるニャ。
アネッサたんは誰も傷つけたくないみたいだニャ。
だから、離れるのがあの娘の為でもあるのニャ」
そう言って槍を下ろし、タマリウスは歩き出す。
しかし、すれ違いざまに俺は口を開く。
「悪いが断る。
俺はアネッサに会いに行く」
そう言った俺の首先に再度銀槍の刃が突きつけられる。
「チビ助、俺の話を聞いてたのかニャ?
おめーが行った所でどうにかニャるもんじゃねぇって言ってんだ」
俺はゆっくり振り返り、その銀槍の切っ先を掴む。
手が焼けるように熱くなり、直後燃え上がる。
しかし俺は手を放さない。
その行動にタマリウスが驚く。
「——ッ!
……チビ助……お前……っ」
俺は槍を燃え上がる手で掴んだまま、真っ直ぐにタマリウスを見つめる。
「アネッサは俺が必ず助け出す。
あの幻獣の苦しみから、抱えている恐怖から必ず解放させる。
それが、俺の今やるべき事だ」
睨み合う俺達。
すると、タマリウスの銀槍はゆっくりと下ろされ、消えていく。
同時に炎も消えたが、その火傷は消えはしなかった。
俺のスキルの自然治癒が急速にその怪我を治していく。
「……頑固者だニャ。
そして馬鹿だニャ。
おまけに命知らずたニャ」
タマリウスはそう言って背を向ける。
「オイラはもう行くニャ。
残るなら一人で残ればいいニャ」
そう吐き捨てるように言うタマリウス。
そんなタマリウスを俺は真剣な顔で見つめる。
「タマ、俺が会いに来たのはアネッサだけじゃなく、お前にも用があって会いに来たんだ」
「……いやいや、お前に会いに来られても全然嬉しくないニャ……」
うるせぇよ。
俺だってお前に頼らなくてはいけない状態になってるのは不本意だっつうの。
俺は黙ってスクロールを懐から取り出す。
それを見つめるタマリウス。
「……スクロール?
ニャんでそんニャもんをお前が持ってるだニャ」
「俺の攻め込んだ砦で、一人テレポートのスクロールを使われて取り逃がした奴がいる。
このスクロールは他の砦を攻めた人達が手に入れたものだ。
同じテレポートの力を持ってることから、行き先が同じ可能性が高い」
そこまで俺が言うと、何が言いたいのかはタマリウスも察する。
「……それをオイラに託したい、って話かニャ?」
睨んでくるタマリウス。
俺は迷い無く答える。
「そうだ。
明日の晩、盗賊達はジーナスを襲ってくる計画があるそうだ。
盗賊の計画を止める手立てがこの先にあるかもしれない。
お前の力を見込んで頼みたい。
タマリウス、力を貸してくれ」
俺は頭を下げる。
その姿を驚くように見つめるタマリウス。
しばらく静寂が二人を包み込むが、その沈黙をタマリウスの溜息が破る。
「……どこでいろんな情報を仕入れたのかは知らニャいけどニャァ……。
死にかけでボロボロの奴を捕まえて、また戦地に送り込もうとするとか、お前は鬼だニャ。
いや、悪魔だニャッ!」
そう言い放ってくるタマリウス。
思わず俺が頭を上げると、タマリウスはやれやれと首を振っていた。
そして真顔になって、俺の差し出したスクロールに手を伸ばす。
「アネッサたんが言ってたニャ。
もう、誰も殺したくニャい、ってニャ。
だからチビ助。
ここに残るんニャら、絶対死ぬニャ
それだけは約束しろ。
たとえ無様でも、死ぬくらいニャら逃げ出せ。
それが、あの娘の為でもある」
強い口調でタマリウスはそう言った。
「約束する」
俺もまた強い
「勝算はあんのかニャ?」
「無い訳じゃ無い。
だが、アネッサを殺す訳にもいかねぇ。
かと言って手加減出来る相手でも無さそうだ。
だから出たとこ勝負、だろうな」
俺の返答に眉をひそめるタマリウス。
「……全然説得力がニャいニャ」
率直な言葉が飛んでくるが、俺は変わらず強い眼差しでタマリウスを見て口を開く。
「……俺はどうやら不器用みたいで、色んなもんは救えないらしい。
だが、絶対に手放したく無いモノだってある。
必ず救いたい存在がある。
それがアネッサだなのだ」
その言葉にタマリウスは黙り込み、一つ頷いてスクロールを開き始めた。
「……おめーがどうにか出来るとは到底思えニャい。
ステータス見た限りじゃ、オイラとさほど違いは無ぇからな。
でも、その覚悟だけは認めてやるニャ。
やれるもんならやってみニャ。
シン・オルディール」
そう言い残し、タマリウスは消えていった。
残ったのは紫色の炎に燃えるスクロール。
……そっちは頼んだぞ、タマ。
そして俺はゆっくりと振り返る。
近づいて来るその存在を感じたからだ。
そして、その姿が闇夜の中から露わになる。
俺の知ってるアネッサの風貌とは少し変わっていた。
髪の色も銀髪になっており、目の色も両目が金色になっている。
手足の膝や肘から先は銀色の体毛が艶やかになびいている。
そして、鋭い牙を煌めかせてこちらに言い放つ。
「猫の気配が消えたな。
面白い奴だったのに。
次はお前が相手か?
器の主人の小僧」
そう言って嘲笑うアネッサ……いや、半幻獣。
どうやらアネッサの意識は潜んでいるようだ。
「あぁ、俺が相手だ。
勝手に家出した元凶のお前に、主人の俺が躾をしてやるよ。
そして、その身体をアネッサに返してもらう」
俺は睨みつけてそう言い放つ。
すると、半幻獣は笑い出す。
「アッハッハッハッハッ!
返してもらうだと?
この器はもう私のモノだっ!!」
叫ぶように言い放ち、次いで遠吠えする半幻獣。
その直後、半幻獣の周囲に煌めく結晶が広がっていく。
「いいや、違うね。
その身体は、はじめからアネッサのもんだ。
そして、今は俺のものだっ!!」
俺の身体昇華と身体金剛が解き放たれる。
互いの闘気と魔力が吹き荒れ、ぶつかり合い、再び森が震え上がる。
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