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第3章 少年期中編
第45話 シンVSフェンリル
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「シン、お前は戦いの勝敗は何で決まると思っている?」
武術の特訓中、手合わせをしているジノが突然そんな事を尋ねてくる。
「なんだよ、その質問。
あれか、なぞなぞ的な?」
「なぞなぞ?よくわからんが、そうではない。
単純な質問だ。
深読みせずに答えれば良い。
勝敗を分けるのは何だとお前は思う?」
俺は考えながら拳を放つ。
軽々とそれを躱すジノ。
「単純ってんなら、ステータスが高い方が強いだろ」
俺はそう答えて脚撃を放つが、ジノは軽々躱し、ふむ、と小さく声を出す。
「しかし、その理屈では以前のお前はハイオークには勝てなかったはずだ」
「でもそれは“身体強化”で差を埋めたから……」
そこまで言って、俺は気付き、手を止める。
「……スキルの差が勝敗を決める?」
「その通りだ」
直後、ジノが目の前から消えたかと思ったら視界が一回転する。
何をされたのかすらわからなかったが、気付いたら俺は天を仰いでいた。
「中には、魔法を無効化するスキルを持つ存在すらいる。
そういった存在に、お前はどう相対する?」
俺を見下ろしながらジノが尋ねてくる。
俺は足で反動をつけ、飛び上がり体を起こして答える。
「レベルを上げて、物理で殴る」
「馬鹿者」
キメ顔で俺が言うと、ジノが額にチョップしてくる。
「その方法が通じるのはあくまでも格下相手だ。
格上の者にはそんなゴリ押しは通じない。
我々は魔法を使って活路を見出す魔導士ではないのか?」
「だって、魔法通じないんだろ?」
「ならば、通じるようにすればいい」
んー?
何を言ってるのかサッパリわからんぞ。
俺が納得しかねる顔をしてジノを見ていると、ジノが淡々と語り始める。
「シン。
これからお前に教えるスキルは私が十年かかって会得したものだ。
それは一つの魔導の到達点とも言えるスキルだな。
お前ほどの才能と素質があれば、会得できる筈だ」
おぉ、何だそれは。
興味深げにジノを見つめる俺。
「お前が十年って……。
俺ならどのくらいで会得出来るんだ?」
「さて、それはわからん。
三年か、五年か、あるいはもっとか……」
「気の長い話だなっ!」
俺は思わず突っ込む。
しかし、ジノは真顔で俺に言う。
「言った筈だ。
このスキルは魔導における一つの到達点だと。
会得すれば間違いなくお前の切り札になる」
切り札……。
凄く良い響きだ。
「切り札欲しい。
是非とも会得したいもんだ」
その言葉にジノは頷く。
「そのスキルの名は“幻魔の術式”。
世の理とも言えるスキルに干渉する事が可能になる唯一無二の力だ」
幻想魔導術式。
通称“幻魔の術式”は他のスキルとは異なり、習得すると加護もつく特別なスキルだ。
それはその身体で幻魔の術式を行使し得る身体であるという証でもある。
そしてスキルレベルが上がる度に一つの魔法を授かる事ができる。
今はたった三つ。
つまり第三門までしか解放出来ていない。
しかし、その一つ一つは絶大な力を持ち、一つ解放されるだけでも驚くべき真価を発揮する。
俺の第一門の幻想魔導の術式で展開された魔法、それは“進化之技巧”。
それはスキルを最上位の形態まで進化させる究極魔法。
進化出来るのは今は三つ。
その一つ。
「“森羅万象の慧眼”」
呟くような詠唱により、一つめのトリガーが引かれる。
その瞬間視界がクリアになり、夜なのに眼に映る全てがハッキリと見渡せる。
否、視界に入らないものさえ認識出来るようになる。
木々の葉の動きや雲の動き、そしてフェンリルの鼓動やその魔力の動きも手に取るようにわかる。
百を超える結晶槍の動きも、まるでスローモーションのように感じ取れるようになる。
しかし、このままでは身体が付いてこない。
ならば、この身体の限界を超えるまで。
「“超越せし無双の身躯”」
二つ目のトリガーを引いた瞬間、身体能力が跳ね上がる。
迫り来る結晶槍を一つとして当たる事無く躱し続け、地面を蹴って空へと舞い上がる。
そこにフェンリルが迫り、追従してくる二本の大剣が振り抜かれる。
回避は容易。
しかし、躱してばかりではジリ貧だ。
俺は拳を握りしめ、一つ深呼吸をして構える。
「“闘神冥王拳”ッ!!」
最後のトリガーを引き、武術の極技をその身に宿す。
振り抜かれる拳は大剣に触れる前に衝撃波のみで大剣を破壊する。
四方八方から迫る結晶槍も同じく、もはや距離など関係無く振るわれる拳撃と脚撃が打ち砕いていく。
そこに神速で迫り来るフェンリル。
捉えきれないような速度すら、今のシンでは容易にその姿を捕捉する。
鋭い結晶が煌めくフェンリルの爪撃を掻い潜り、シンは正拳突きを放ちながら叫ぶように詠唱する。
「“幻想魔導術式、第二門解放”ッ!!」
第二門の魔法は“破壊之技巧”。
“森羅万象の叡眼”によってスキルを解析し、スキルそのものへと干渉する力。
即ち、自身の攻撃に相手のスキルを破壊する効力を付与するという二つ目の究極魔法。
壊せるスキルはこちらも幻魔の術式のスキルレベルに合わせて三つだけ。
振り抜かれた拳がフェンリルの顔面を捉え、取り巻く結晶結界が消し飛ぶ。
それだけでなく、打撃の衝撃波はフェンリルもろとも周囲の大木すら吹き飛ばし、天も地も割れる。
吹き飛ばされるフェンリルを即座に追いかけ、落雷のような鋭いかかと落としを放つ。
正拳突きの衝撃がまだ消えぬフェンリルは回避行動が遅れ、そのかかと落としが直撃する。
その瞬間、フェンリルの身体からもう一つ“何か”が消し飛ぶ。
隕石のように墜落し、地面に叩きつけられるフェンリル。
凄まじい衝撃音と共に大地震が起こり、地面が崩壊する。
シンは上空から見下ろしていると、立ち籠める砂煙の中から立ち上がる影が見えた。
そして砂煙を吹き飛ばすかのように、フェンリルが咆哮を上げる。
するとフェンリルを中心に衝撃波が広がり、辺り一面を凍らせるように結晶が包み込んでいく。
結晶はみるみる広がり、半壊した樹海は結晶の森へと変貌していた。
それはまるで凍り付いた森のようで、真紅の満月が妖しく結晶を照し出す。
これが“幻獣の咆哮”の力か?
恐らくあの結晶が纏わりつくだけで夜叉の力も失われるだろう。
改めてその規格外の力に目を見張るが、驚いている場合ではない。
未だ、絶え間なく襲ってくる結晶の槍。
取り囲むように飛んでくる結晶槍をシンは回し蹴りで一蹴する。
そして、片手を掲げ、二重の魔法陣を展開する。
フェンリルは即座に地を蹴りつけ、一気に距離を詰めてくる。
壊れた結晶結界を再構築しようと試みながら。
しかし、再度創り出すことが出来ない事にフェンリルは動揺する。
既にフェンリルのスキル、“結晶結界”は破壊されている。
その隙をシンは見逃さない。
放つ魔法は風雷竜の咆哮。
稲妻を帯びた暴風が渦巻きながらシンの手から放たれ、フェンリルを飲み込む。
本来ならばフェンリルにダメージはない……はずたった。
その烈風はフェンリルを切り裂き、雷撃も容赦なくフェンリルの身体を焦がしていく。
「バカなッ!?
魔法が私に通用するはずが——ッ!!」
フェンリルが思わず声を上げ、ようやく気付く。
先ほどの攻撃に、スキル破壊の力が纏っていた事に。
そして顔を上げればまたあの少年の姿が消えている。
千載一遇のチャンス。
俺は一瞬で両手に短剣をそれぞれ構築した。
空を駆け抜け、僅かに怯んだフェンリルの背中目掛けて短剣を振りかぶる。
「“幻想魔導術式、第三門解放”ッ!!!」
今扱える最後の究極魔法。
それが解き放たれ、短剣にある力が宿る。
フェンリルの反応より早く、シンがその身体に短剣を突き立てる。
「ウグッ!!小賢しいッ!!」
一瞬呻いたフェンリルは身体を大きく振るい、俺の身体が吹き飛ばされる。
それを神速で追従するフェンリルの鋭い爪による一閃が走る。
迫り来るフェンリルの動きを敏感に察知したシンは吹き飛びながら体勢を立て直し、身構える。
それは闘神冥王拳による“無形の陣”。
迫り来る爪撃の一閃を触れる事なく受け流す。
受け流した斬撃によって、遠くに並ぶ大木は軒並み両断されていく。
続け様に連撃の爪と牙による斬撃が飛んで来るが、全て受け流していくシン。
そしてほんの僅かな隙に魔法術式を展開し、フェンリルの真下に巨大な魔方陣が出来上がる。
「かっ飛べ。
“レイジングノヴァ”ッ!!」
シンが鋭く言い放つと魔方陣から無数の炎の激流が吹き出し、フェンリルの飲み込んで打ち上げる。
手応えを感じたシンはすぐに天に片手を掲げ、更に詠唱を重ねる。
「“ジャッジメントレイ”!!」
天空に展開する巨大な魔方陣から光の鉄槌が落ち、打ち上げられたフェンリルを飲み込んでまた地面へと叩き落とす。
立て続けの極大魔法。
たった一つでもまともに喰らえば塵すら残らない威力のそれなのに、地面に倒れ伏したフェンリルはゆっくりと立ち上がる。
なんつう、頑丈な……。
もはや攻撃魔法無効化のスキルは破壊してある。
何の耐性も持たず、あれだけの魔法を喰らっても未だ立ち上がるその姿には流石に驚く。
「……クク……クハハ……ッ。
見事だ、小僧……ッ!」
未だ闘気の衰えない目力でこちらを睨んでくるフェンリル。
俺はそんなフェンリルを真っ直ぐ見据える。
「だが、お前のその力は長くは持つまい?
かと言って、全開の力も出せないのだろう?
何故なら、私もろとも器も死んでしまうからなッ」
そう言って大きく地面をふみ鳴らし、身構えるフェンリル。
「全力でやり合えば、お前にも勝機はあったろうに。
残念だな、小僧」
愉快そうにそう言うフェンリル。
しかし、俺は表情を変えずに言い放つ。
片手に残った短剣を手の中でクルリと回しながら。
「それがどうした。
もう、俺は手を打ってある。
お前の負けだよ、フェンリル」
悠然と言う俺は、その勝利を確信している。
しかし、幻想魔導術式の残された時間は残り数十分にも満たない。
あとは俺が倒れるか、フェンリルが先か。
勝負の行方は、お互い瀬戸際に立っていた。
武術の特訓中、手合わせをしているジノが突然そんな事を尋ねてくる。
「なんだよ、その質問。
あれか、なぞなぞ的な?」
「なぞなぞ?よくわからんが、そうではない。
単純な質問だ。
深読みせずに答えれば良い。
勝敗を分けるのは何だとお前は思う?」
俺は考えながら拳を放つ。
軽々とそれを躱すジノ。
「単純ってんなら、ステータスが高い方が強いだろ」
俺はそう答えて脚撃を放つが、ジノは軽々躱し、ふむ、と小さく声を出す。
「しかし、その理屈では以前のお前はハイオークには勝てなかったはずだ」
「でもそれは“身体強化”で差を埋めたから……」
そこまで言って、俺は気付き、手を止める。
「……スキルの差が勝敗を決める?」
「その通りだ」
直後、ジノが目の前から消えたかと思ったら視界が一回転する。
何をされたのかすらわからなかったが、気付いたら俺は天を仰いでいた。
「中には、魔法を無効化するスキルを持つ存在すらいる。
そういった存在に、お前はどう相対する?」
俺を見下ろしながらジノが尋ねてくる。
俺は足で反動をつけ、飛び上がり体を起こして答える。
「レベルを上げて、物理で殴る」
「馬鹿者」
キメ顔で俺が言うと、ジノが額にチョップしてくる。
「その方法が通じるのはあくまでも格下相手だ。
格上の者にはそんなゴリ押しは通じない。
我々は魔法を使って活路を見出す魔導士ではないのか?」
「だって、魔法通じないんだろ?」
「ならば、通じるようにすればいい」
んー?
何を言ってるのかサッパリわからんぞ。
俺が納得しかねる顔をしてジノを見ていると、ジノが淡々と語り始める。
「シン。
これからお前に教えるスキルは私が十年かかって会得したものだ。
それは一つの魔導の到達点とも言えるスキルだな。
お前ほどの才能と素質があれば、会得できる筈だ」
おぉ、何だそれは。
興味深げにジノを見つめる俺。
「お前が十年って……。
俺ならどのくらいで会得出来るんだ?」
「さて、それはわからん。
三年か、五年か、あるいはもっとか……」
「気の長い話だなっ!」
俺は思わず突っ込む。
しかし、ジノは真顔で俺に言う。
「言った筈だ。
このスキルは魔導における一つの到達点だと。
会得すれば間違いなくお前の切り札になる」
切り札……。
凄く良い響きだ。
「切り札欲しい。
是非とも会得したいもんだ」
その言葉にジノは頷く。
「そのスキルの名は“幻魔の術式”。
世の理とも言えるスキルに干渉する事が可能になる唯一無二の力だ」
幻想魔導術式。
通称“幻魔の術式”は他のスキルとは異なり、習得すると加護もつく特別なスキルだ。
それはその身体で幻魔の術式を行使し得る身体であるという証でもある。
そしてスキルレベルが上がる度に一つの魔法を授かる事ができる。
今はたった三つ。
つまり第三門までしか解放出来ていない。
しかし、その一つ一つは絶大な力を持ち、一つ解放されるだけでも驚くべき真価を発揮する。
俺の第一門の幻想魔導の術式で展開された魔法、それは“進化之技巧”。
それはスキルを最上位の形態まで進化させる究極魔法。
進化出来るのは今は三つ。
その一つ。
「“森羅万象の慧眼”」
呟くような詠唱により、一つめのトリガーが引かれる。
その瞬間視界がクリアになり、夜なのに眼に映る全てがハッキリと見渡せる。
否、視界に入らないものさえ認識出来るようになる。
木々の葉の動きや雲の動き、そしてフェンリルの鼓動やその魔力の動きも手に取るようにわかる。
百を超える結晶槍の動きも、まるでスローモーションのように感じ取れるようになる。
しかし、このままでは身体が付いてこない。
ならば、この身体の限界を超えるまで。
「“超越せし無双の身躯”」
二つ目のトリガーを引いた瞬間、身体能力が跳ね上がる。
迫り来る結晶槍を一つとして当たる事無く躱し続け、地面を蹴って空へと舞い上がる。
そこにフェンリルが迫り、追従してくる二本の大剣が振り抜かれる。
回避は容易。
しかし、躱してばかりではジリ貧だ。
俺は拳を握りしめ、一つ深呼吸をして構える。
「“闘神冥王拳”ッ!!」
最後のトリガーを引き、武術の極技をその身に宿す。
振り抜かれる拳は大剣に触れる前に衝撃波のみで大剣を破壊する。
四方八方から迫る結晶槍も同じく、もはや距離など関係無く振るわれる拳撃と脚撃が打ち砕いていく。
そこに神速で迫り来るフェンリル。
捉えきれないような速度すら、今のシンでは容易にその姿を捕捉する。
鋭い結晶が煌めくフェンリルの爪撃を掻い潜り、シンは正拳突きを放ちながら叫ぶように詠唱する。
「“幻想魔導術式、第二門解放”ッ!!」
第二門の魔法は“破壊之技巧”。
“森羅万象の叡眼”によってスキルを解析し、スキルそのものへと干渉する力。
即ち、自身の攻撃に相手のスキルを破壊する効力を付与するという二つ目の究極魔法。
壊せるスキルはこちらも幻魔の術式のスキルレベルに合わせて三つだけ。
振り抜かれた拳がフェンリルの顔面を捉え、取り巻く結晶結界が消し飛ぶ。
それだけでなく、打撃の衝撃波はフェンリルもろとも周囲の大木すら吹き飛ばし、天も地も割れる。
吹き飛ばされるフェンリルを即座に追いかけ、落雷のような鋭いかかと落としを放つ。
正拳突きの衝撃がまだ消えぬフェンリルは回避行動が遅れ、そのかかと落としが直撃する。
その瞬間、フェンリルの身体からもう一つ“何か”が消し飛ぶ。
隕石のように墜落し、地面に叩きつけられるフェンリル。
凄まじい衝撃音と共に大地震が起こり、地面が崩壊する。
シンは上空から見下ろしていると、立ち籠める砂煙の中から立ち上がる影が見えた。
そして砂煙を吹き飛ばすかのように、フェンリルが咆哮を上げる。
するとフェンリルを中心に衝撃波が広がり、辺り一面を凍らせるように結晶が包み込んでいく。
結晶はみるみる広がり、半壊した樹海は結晶の森へと変貌していた。
それはまるで凍り付いた森のようで、真紅の満月が妖しく結晶を照し出す。
これが“幻獣の咆哮”の力か?
恐らくあの結晶が纏わりつくだけで夜叉の力も失われるだろう。
改めてその規格外の力に目を見張るが、驚いている場合ではない。
未だ、絶え間なく襲ってくる結晶の槍。
取り囲むように飛んでくる結晶槍をシンは回し蹴りで一蹴する。
そして、片手を掲げ、二重の魔法陣を展開する。
フェンリルは即座に地を蹴りつけ、一気に距離を詰めてくる。
壊れた結晶結界を再構築しようと試みながら。
しかし、再度創り出すことが出来ない事にフェンリルは動揺する。
既にフェンリルのスキル、“結晶結界”は破壊されている。
その隙をシンは見逃さない。
放つ魔法は風雷竜の咆哮。
稲妻を帯びた暴風が渦巻きながらシンの手から放たれ、フェンリルを飲み込む。
本来ならばフェンリルにダメージはない……はずたった。
その烈風はフェンリルを切り裂き、雷撃も容赦なくフェンリルの身体を焦がしていく。
「バカなッ!?
魔法が私に通用するはずが——ッ!!」
フェンリルが思わず声を上げ、ようやく気付く。
先ほどの攻撃に、スキル破壊の力が纏っていた事に。
そして顔を上げればまたあの少年の姿が消えている。
千載一遇のチャンス。
俺は一瞬で両手に短剣をそれぞれ構築した。
空を駆け抜け、僅かに怯んだフェンリルの背中目掛けて短剣を振りかぶる。
「“幻想魔導術式、第三門解放”ッ!!!」
今扱える最後の究極魔法。
それが解き放たれ、短剣にある力が宿る。
フェンリルの反応より早く、シンがその身体に短剣を突き立てる。
「ウグッ!!小賢しいッ!!」
一瞬呻いたフェンリルは身体を大きく振るい、俺の身体が吹き飛ばされる。
それを神速で追従するフェンリルの鋭い爪による一閃が走る。
迫り来るフェンリルの動きを敏感に察知したシンは吹き飛びながら体勢を立て直し、身構える。
それは闘神冥王拳による“無形の陣”。
迫り来る爪撃の一閃を触れる事なく受け流す。
受け流した斬撃によって、遠くに並ぶ大木は軒並み両断されていく。
続け様に連撃の爪と牙による斬撃が飛んで来るが、全て受け流していくシン。
そしてほんの僅かな隙に魔法術式を展開し、フェンリルの真下に巨大な魔方陣が出来上がる。
「かっ飛べ。
“レイジングノヴァ”ッ!!」
シンが鋭く言い放つと魔方陣から無数の炎の激流が吹き出し、フェンリルの飲み込んで打ち上げる。
手応えを感じたシンはすぐに天に片手を掲げ、更に詠唱を重ねる。
「“ジャッジメントレイ”!!」
天空に展開する巨大な魔方陣から光の鉄槌が落ち、打ち上げられたフェンリルを飲み込んでまた地面へと叩き落とす。
立て続けの極大魔法。
たった一つでもまともに喰らえば塵すら残らない威力のそれなのに、地面に倒れ伏したフェンリルはゆっくりと立ち上がる。
なんつう、頑丈な……。
もはや攻撃魔法無効化のスキルは破壊してある。
何の耐性も持たず、あれだけの魔法を喰らっても未だ立ち上がるその姿には流石に驚く。
「……クク……クハハ……ッ。
見事だ、小僧……ッ!」
未だ闘気の衰えない目力でこちらを睨んでくるフェンリル。
俺はそんなフェンリルを真っ直ぐ見据える。
「だが、お前のその力は長くは持つまい?
かと言って、全開の力も出せないのだろう?
何故なら、私もろとも器も死んでしまうからなッ」
そう言って大きく地面をふみ鳴らし、身構えるフェンリル。
「全力でやり合えば、お前にも勝機はあったろうに。
残念だな、小僧」
愉快そうにそう言うフェンリル。
しかし、俺は表情を変えずに言い放つ。
片手に残った短剣を手の中でクルリと回しながら。
「それがどうした。
もう、俺は手を打ってある。
お前の負けだよ、フェンリル」
悠然と言う俺は、その勝利を確信している。
しかし、幻想魔導術式の残された時間は残り数十分にも満たない。
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