異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

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第3章 少年期中編

第47話 呪われた盗賊達

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 時は幻獣との決着からしばらく遡る——。



 視界が歪み、地に足をつけていたのに突然襲う浮遊感。
一瞬天と地が逆さまになったような感覚に陥り、すぐに感覚が元に戻る。
タマリウスが辺りを見回すと、眼に映るのは薄暗い一室。
壁や天井はボロボロになっており、散乱した棚や椅子、机には埃が被っている。
長い間放置されていたのが見て伺える。

 ここは何処なのか?

 その疑問がまずタマリウスには浮かぶ。
次いで生体感知にて辺りの生物の有無を確認すると、実に百を超えるほどの生体を感知したのだった。
それらは部屋を出て一つ階を降りた位置に集まっているようだ。

 タマリウスは気配を極限まで落とし、部屋の扉を開くと広間を見渡せる廊下に出た。
一階のホールにはかなりの数の男達が集まって、中央にある大きな階段の踊り場を見あげている。
その踊り場に立つのは大柄な男。
上半身はほぼ裸で、右腕にだけ肘まで包まれた鉄と銀で出来たガントレットを付け、下半身には黒革のズボンと鉄の脚具を履いている。
特徴的なのは顔を覆うように付けている鉄仮面。
そこからくぐもった声を上げてホールの男達に呼びかける。

「ついに、明日だ!
全ての準備は整ったッ」

 そう言って片手に持つ斧を持ち上げ、言葉を続ける。

「馬鹿なジーナスの傭兵どもはそれぞれのアジトに突撃し、大打撃を受けた。
厄介な魔導騎士には偽情報を与えてやって今はジーナスから離れている。
残ったのは雑魚の傭兵団と自衛団だけ。
腕の立つ奴等はごく僅か。
巨大な街と言えども今のあの街に攻め入るのは容易いッ!」

 鉄仮面の男がもう片手に斧を持ち上げ、斧同士を打ち合わせる。

「明日の晩、真紅の月が空を真っ赤に染めるなら、俺達は街を赤く染め上げるぞッ。
そして奪い、殺し、犯す。
今までも、そしてこれからもだッ!!」

 その高らかな宣言に階下の男達が沸き立つ。
そんな様子を見ていたタマリウスは眉をひそめる。

 あの馬鹿げた演説をしている奴、大盗賊とも言われた“双斧のジギスムント”って奴じゃ?
指名手配書で見かけた事もあるが、噂では最近ギルバートって奴に殺されて盗賊達の頭が変わったとか……。
だが、今の話ぶりじゃあ頭目が変わったようには思えない。
どういう事だ?

「恐れる事は無い。俺達は不死身だッ。
与えられた力を使い、大いに暴れろッ!!」

 おおおオォオォッ!と沸き立つ男達。
異様な光景は連中もまた鉄仮面を被っているという事。
もはや盗賊の集団ってより、何かの信仰宗教の集団に見える。
しかもとはまた大きく出たものだ。

 タマリウスは黒紅の銀槍を構築し、手すりから飛び出し頭目と思われる大男の胸を宙を舞って突き刺した。
途端に燃え上がる大男。
それを見て歓声を上げていた男達が途端に静かになる。

 確かな手応え。
間違いなく心臓を一突きした。
槍を引き抜き、振り返って踊り場から男達を見下げてタマリウスは言い放つ。

「この世に悪は栄えニャい。
てめぇら下衆ども、まとめてかかって来いニャ」

「……不意打ちとはやってくれるじゃねぇか」

 その声はタマリウスの真下から聞こえた。
野生の勘で危険を察知し、慌てて身を躱すと風切り音が自分の首元のスレスレから聞こえた。
振るわれたのバトルアックス。
それを手に持つのは燃え上がったままの大男。
その光景にタマリウスは目を見開く。

 あり得ない……。
心臓を確かに貫いたはず。

 タマリウスは大きく跳躍し、再び二階の渡り廊下へと移る。
それをゆっくりと立ち上がって見上げる大男。

「ここに紛れ込んだって事は、スクロールでも奪ってきたか?
馬鹿な奴だ。
一人で地獄の釜の底に来るだなんてな」

 そう言って鉄仮面を揺らして笑う大男。
タマリウスは目を細め、大男を鑑定する。



名称:ジギスムント・グレイナー
性別:男
種族:人族

身体能力

レベル:41

体力:3680
マナ:130
魔力:260
筋力:1680
耐久:1050
俊敏:850

特性
・不死の刻印 ・殺戮者 ・呪印を受けし者

スキル
・斧術lv.7 ・格闘術lv.9 ・致命の一撃 ・呪印解放 ・痛覚無効 ・対話術


【特性:不死の刻印】
 アンデッドの特性をその身に受けた証。

【特性:呪印を受けし者】
 呪術をその身に受け、呪いの力を秘めた証。

【スキル:呪印解放】
 その身に秘めた呪術の力を解放する。




 すると、対角の扉が開き真っ黒いローブを纏った男が出て来る。
そいつは深々とフードを被り、顔を確認できない。
その男が声を上げる。

「下らん演説が終わったのなら行けッ!
その猫は私が相手をする。
お前達はあの街をとっとと目指せッ」

 そう鋭く言い放ってフードをゆっくり外す。
タマリウスの目に映ったのは長い白髪で褐色肌の頬のこけた男の姿。
その目は白く濁っており、眼が見えていないようだった。

「魔族かニャ……」

 忌々しげに呟くタマリウス。

「クラウリーの旦那。
任せちまって良いのかよッ?」

 未だ燃え上がりながら声を出すジギスムント。

「早く行け!
あまり時間がかかっては街で起こる騒乱に合わせられん」

 そう面倒臭そうに言い放つ魔族。

「いいや、てめぇら全員ここから逃がしゃしニャい」

 タマリウスはそう言って槍を振りかぶり、投げ放つ。
電光石火で走り抜けた槍は魔族の心臓へと真っ直ぐ向かう。
それを魔族は片手を掲げ、魔法陣を即座に展開して氷塊の盾を作り上げて防ぐ。
盾と槍はどちらも粉砕し、再度睨み合う二人。

「聞いたな、てめぇら。
俺達は俺達の仕事をこなすとしようぜ」

 そう言って踊り場から大きく跳躍し、大きな玄関扉の前に降り立ち扉を蹴破るジギスムント。
その身体はようやく収まりつつある炎が腕や足を焼いていた。
肌は焼けただれ、見るも無残な姿になっている。

「一人も逃がしゃニャいニャッ!」

 タマリウスは即座に魔法を展開し、玄関に炎の壁を作り上げ塞ぎ込むが、どいつもコイツも足を止めずにその炎壁を突っ切っていく。
近付くことすら出来ないほどの熱があるはずなのに、誰一人躊躇なく突き進む。
その光景に舌打ちするタマリウスだが、魔力の動きを感じ取り、魔族から放たれた氷の槍を即座に避ける。
壁に当たって砕けた氷の槍は欠片を散らし、辺りを瞬時に凍らせていく。
身軽に凍り付いた壁や床から距離を置くタマリウス。

 タマリウスは盗賊どもから視線を外し、まず魔族から仕留める事に集中する。
極大魔法でも使えればこの場の全員を一網打尽に出来るが、マナが切れかけてる現状ではそうそう使う事は出来ない。

 少ないマナを絞り出し、黒紅の銀槍を再構築し、瞬時に地を蹴り宙を蹴って魔族の目前に急速に迫る。
勢いそのままに振るわれる槍の横薙ぎは空を切り、代わりに床から突き上げてくる氷の槍がタマリウスの頬を掠める。
頬の傷から凍傷が広がるが、高速治癒と魔力放出で氷を飛ばし傷を治す。
銀槍をまるで荒れ狂う竜巻の如く振り回し、狭い渡り廊下を切り裂いていく。
堪らず後退し、氷の槍を連続で放つ魔族。
それを槍を振るい氷の槍を尽く弾き溶しながら追撃する。

「一人……いや、一匹で飛び込んできただけはある。
手練れだな。
とは言え、私もお前にばかり構ってはいられん」

 そう言って渡り廊下から飛び出した魔族は宙を駆け抜け、広間へと降り立つ。
着地と同時に魔族は床に片手を付ける。
その直後、巨大な魔方陣が展開する。

 瞬時にそれが極大魔法であると理解し、黒紅の銀槍だけ投げ放ってその場を離脱するタマリウス。
二階の一室に飛び込むと、後ろから冷気が吹き抜けてくる。
その冷気が通った場所から部屋が凍り付いていく。
タマリウスは炎の防壁をその身に纏わせ、冷気から身を守る。

 魔族が放ったのは氷結の大嵐ブリザードストーム
周辺一帯を凍りつかせる極大魔法の一つ。

 ギリッと歯軋りして炎を纏ったまま広間に戻るが、既にもぬけの殻。
外に飛び出し空へと舞い上がると、宙を駆けていく魔族が遠くに見えた。
その方角へと向かうように、地面には倒れ込んだ焼け焦げた焼死体が落し物のようにいくつも転がっていた。
とうやら炎の壁を突き抜けた男達の幾人かは炎に焼かれ続けて身体が保たなかったのだろう。
その転がっている焼け焦げた人影に近づけば、まだ腕を伸ばして僅かに動いていた。

 コイツ等も呪術が施されているのか……。

 タマリウスは忌々しげにその脳天に槍で突き刺すと、ようやく動きを止めた。

 アネッサたんの時といい、今度は幾人も敵を取り逃がすとは不甲斐ない限り……。
しかし連中が向かう先も、コイツらが施された呪術の特性も理解はした。
こいつらは食屍鬼グールの特性を持っている。
弱点は心臓ではなく頭。
そこを破壊すれば動きが止まる。

 ふと周りを見渡し、自分が今いるのはボロボロの古城だと理解する。
ジーナス周辺の古城と言えば、ディフの古城くらいなものだ。
さっきの魔族が向かった先が南西であった。
ジーナスから北東にディフの古城はあたる事からもまず間違いない。
そらなら距離的には空を飛べば半日程で着くはず。
もっとも、今は飛び続けれるマナは残っていないが……。

 なわにせよ、急がねばならない。
ジーナスで万が一グールが暴れれば、生ける屍が増え続ける死都に変貌してしまう。
そうなればただの傭兵や自衛団だけで防げるものではなく、街の多くの人が犠牲となってしまう。
よって、増える前に全て駆逐する事。
それがもっとも重要だ。

 タマリウスは地を駆け抜けながら、転がっているグール化した盗賊の頭を槍で突き刺していく。
無駄に時間がかかるが、ここでコイツらを放っておく訳にもいかない。

 駆け抜けながらタマリウスはようやく今回の盗賊達の動きの狙いを理解する。
盗賊達がジーナスを襲った所で魔導騎士達に駆逐されて終わりになる。
だからあれほど大きな街を盗賊が狙うメリットなど無いのだ。
だが、魔族が絡めば話は別だ。
奴等は盗賊を利用し、従える魔物を増やそうとしているのだ。
そして力ある悪しき心を持つ人間を“魔の眷属”として変異させ、従えるつもりなのだ。
改めて、魔族を取り逃がした事を悔やむタマリウス。
半幻獣との一戦が無ければ、とも思うが、今更それを考えても仕方ない。
今は一刻も早くジーナスに辿り着く事だ。

 長い夜も終わり、日が昇り出した頃、タマリウスはジーナスへと足早に向かうのだった。
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