異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

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第3章 少年期中編

第54話 魔槍使いの真髄

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 デスタイラントはその身体を燃やしながら未だ動きが鈍らない。
魔の眷属としてその身を変貌させたが故に自然治癒も高まり、魔法耐性も上がっていた。
本来、全開のタマリウスの一撃を受ければその炎で身を焼かれ瞬時に消し炭になるのかだが、自己再生に近い治癒と魔法耐性により身体を焼いて尚その身体を維持し続ける事が可能となっている。

 その鞭のようにしなる腕が嵐のように振るわれ、空を引き裂き、地を叩き割っていく。
その姿はまさに暴君。
しかし、その姿に知性はもはや感じられない。

「もともと頭悪そうだったけど、余計に頭悪そうに見えるニャ」

 呆れたように一声漏らし、立て続けに槍を振るい腕を弾き返していくタマリウス。
周囲に倒れ伏す者達や、背後のローラにその腕が当たらないよう、狙われないよう前へ前へと突き進む。

「どうやら、オイラが前にその身体を中途半端に焼いたせいで炎の耐性が高まってるかニャー?」

 不機嫌そうに尋ねるタマリウスは得物の槍に片手を添える。

 相手に答えなど求めてはいない。
すでにわかりきっている事なのだから、後は対応するまで。

 タマリウスの手が滑るように槍を撫でると黒紅の銀槍が変化し、漆黒の薙刀に変わる。

「“カタストロフ・スライサー”」

 静かな呟きを残し、タマリウスが地面を大きくて蹴りつけ疾走する。
襲い来る腕を避け、漆黒の刃が斬り刻みながら胴体まで煌めく黒刃が走り抜ける。
たった数刻にてデスタイラントの背後まで駆け抜けたタマリウスはヒュンと一振り漆黒の薙刀を回す。
直後、長い腕から巨体の身体中まで無数の切り傷が開き、鮮血が飛び散る。

 ガクリと膝を落とすデスタイラント。
それは裂傷によるダメージによってではなく、そこに付与された力が身体を蝕んだからに他ならない。
その漆黒の薙刀は闇魔法で構築された魔装具。
闇魔法の真髄は相手の弱体化にこそある。
つまり、刻まれた傷の分だけ全魔法耐性を下げ、更に身体を腐食させる特別な力を付与する刃へと切り替えたのだ。
それはまさに滅びへと誘う刃。
破滅の刻刃カタストロフ・スライサー”。

 デスタイラントの長い腕がボロボロと崩れゆく。
ガクガクと震えながら震える叫びを上げてタマリウスへとその顔を向けてくる。

 タマリウスはもう鋭く薙刀を振り抜くと黒紅の銀槍に再び戻る。

「塵に還れ、魔の亡者」

 振りかぶったタマリウスは黒紅の銀槍を投げ放ち、槍は黒炎を散らしてデスタイラントの頭を顎から貫いた。
その身体は先ほどとは比べ物にならない程激しい炎に包まれ、瞬時に消し炭へと変える。

 辺りに散らばる灰と煤が風に巻き上げられ、静寂に包まれる。
門の向こうからやってくるグールの姿はもう無い。

 ボロボロの服をパタパタとはたき、煤を落とすタマリウスはローラに向き直る。

「あっけニャさ過ぎたニャ。
オイラの勇姿を見せる間も無かったニャ……」

 そう言って肩を落とすタマリウス。
しかし、ローラからすれば苦戦すらしないその姿はまさに圧巻としか言いようが無かった。

 同じ魔法を扱う者として、あの少年が特別なのだと思っていた。
しかし、同じような高みにいる者がここにもいる。
本当に、世界は広い……。

 そんな事を思いながら、ローラはようやく立ち上がる。
そして倒れて動かないリゼットに近寄った。
グリフォンは腕が直撃して凄まじい勢いで落下したのにも関わらず、リゼットを守るように自分が下敷きになっていた。
それでもリゼットにまで衝撃が響き意識を飛ばすほどの威力。
それをあの猫は軽々と弾き続けたのだ。
呆れ返るほどの強さである。

 ローラが駆け寄っていくのを見たタマリウスも駆けつけてくる。
そして容体をタマリウスも診る。

「……どちらも息はあるニャ。
かなり強く身体を打ち付けてるみたいだけどニャ」

 そう言ってグリフォンとリゼットの身体に優しくて手を置くタマリウス。
その掌が光り出すと、傷ついた身体がみるみる回復していき傷が癒えていく。

「あなた、回復魔法も扱えるの?」

「当然だニャ。
オイラ迷宮の制覇者ニャんだぜ?
回復くらい自分で出来なきゃ生きていけないニャ」

 当たり前だ、と言わんばかりに答えてローランドやディノセイヴァー、ポックルも怪我を治していく。
全員大怪我こそしていたものの命を落としたものはいなかった。
その事が何よりローラを安堵させる。

 一通り回復を終えたタマリウスは再度門の付近を見つめて顔をしかめる。

「……門番は……あれはもうダメだニャ。
死人は生き返らせれニャい」

 そう言って遠くにある人の形をした氷像を見やるタマリウス。

「……いいえ、あなたのお陰で少なくとも私達は命を救われた」

 ローラは改めてタマリウスに頭を下げる。

「ニャハハー。
正義の味方タマリウスは当然の事をしたまでニャッ。
ハグとかしちゃって良いニャッ!」

 ニャフフーと大きな目を輝かせて笑うタマリウスにローラは若干引いた顔をして見つめる。
恩人ではあるが、やや人格に問題がある猫のようだ。
それでもローラは膝をついてハグするとタマリウスのヒゲが揺れる。

「た、助かったわ、ありがとう」

 小声で感謝を述べると、大いにはしゃぐタマリウス。

「いやー、やっぱり人の為に何かするって素晴らしいニャ」

 はしゃぐタマリウスだが、すぐに顔を引き締めてローラを見据える。

「お嬢さん。
すまニャいけれど、オイラはもう行くニャ。
取り逃がした魔族がいるんだニャ。
そいつをとっちめてグールどもを止めて、終わりにしてくるニャ」

 そう言って再度黒紅の銀槍を構築するタマリウス。

「それじゃ、行ってくるニャ」

「え、ええ……気をつけて」

 そうローラが言うと、タマリウスはジーッとローラを見つめてくる。

 え?なに?とローラは困惑する。

「お嬢さん、そこは名前だけでも教えて、的な質問がくるところニャんじゃ?」

「早く行った方が良くないですか?」

 面倒くさくなったローラが告げると肩を落とすタマリウス。

「あれー、おかしいニャァ……。
そういう感じじゃニャいのかニャァ……」

 ブツブツ呟きながら街の奥へと跳躍していくタマリウス。

 残されたローラは複雑な顔をする。
命の恩人はかなりの変人だった。
いや、変な猫だった。
とは言え、もしも今度出会う機会があれば魚でもご馳走しよう、と心に決めたローラであった。
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