異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

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第3章 少年期中編

第56話 幕引きの決戦

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 デュラハンは片手を静かにシンへと向けると、勢いよくそのが飛び掛かってくる。
それを雷速にて躱してデュラハンの懐へと迫るシン。
即座に紅魔の籠手を構築し、鋭い一撃を叩き込み、大きな爆発を巻き起こす。
立て続けに二度三度と拳を振るい漆黒の鎧に強烈な爆撃と衝撃を与えるが、傷すらつく事がない。
お返しとばかりに漆黒のフランベルジュの一閃を飛び退いて避けると、距離を取って体勢を立て直す。

 どうやら思ったよりもこの鎧は頑丈らしい。
ギガントゴーレムすら破壊する紅魔の籠手の爆撃すら受け付けないその頑丈さ。
頑丈なだけでなく、魔法耐性も高いとみられる。

 転がる生首へとシンは視線を走らせ、手を掲げる。
口から炎を青い炎を吐き出しながら笑うその生首の真上に魔法陣が展開する。
シンが掲げた片手を振り下ろすと魔法陣から柱のような太い閃光が地面へと真っ直ぐ貫くき、その生首を消滅させる。
それは悪しき存在を消し去る聖なる光の魔法。
審判の聖光ジャッジメント・レイ

 鎧が無理なら無防備な頭を消せば……。
そう考えたが、頭を失ったデュラハンは止まる事もなく、飛び掛かってきた片腕を元に戻し、剣を構える。
そして地面を蹴りつけ再び襲い掛かってくるデュラハン。
結局、この鎧そのものを破壊しない限り止まらないらしい。

「今夜は魔法耐性の高い奴とよくやり合うな……」

 小さくボヤいたシンは嵐丸を即座に構築し、デュラハンの剣戟を迎え撃つ。
激しい刃音を広い庭中に響かせながら二人は剣と刀を打ち合わせる。
シンの剣豪としてのスキルは一級品なのだが、それにすらついてくるデュラハンの剣技。
魔の眷属と化したこの存在はやはり身体昇華以上の力をもたらすようだ。

 夜叉になれば圧倒できるのは事実。
しかし、昨日に引き続き夜叉を使い続け、ほんの数時間前に幻魔の術式と夜叉を同時に併用し、マナを切らしたばかり。
マナ切れは日に何度も起こすものではない、と教えを受けている。
それは自身の命を削っている事に他ならなず、マナ切れを引き起こし続ければ魔力の暴走により重度の障害や命を落とす事もある。

 故に、夜叉に頼るのは最終手段。
何より——。

「フェンリルに比べりゃ大した事ねぇよッ!」

 高らかに声を上げ、デュラハンの一振りを躱してシンの鋭い横薙ぎがその鎧の胴体を捉える。
響き渡る斬撃音と嵐丸から放たれる暴風によってデュラハンが吹き飛ばされる。

 シンは振り抜いた嵐丸を両手で持ち直し、吹き飛んで仰向けに倒れ込むデュラハンを睨み付ける。

 手応えはあったが、切断した感覚は——。

 何事もなかったかのように立ち上がるデュラハン。

 無かったもんな……。

 溜息をつくシン。
その直後、シンの足元に魔法陣が出来上がる。
慌てて飛び退くシンだが、既に術式は完成していた。
シンの先程立っていた場所に、黒い人影が立っている。
まるでシンの影が実体化したように。
それに向かって斬りかかるデュラハン。
その瞬間、何が狙いか理解する。

 雷速で距離を詰め、嵐丸でその一閃を受け流して軌道をズラすが作り上げられた影の左肩を大きく斬りつけられる。
その瞬間、本体であるシンに鋭い痛みが走り、影が斬られた箇所から止めどない血が流れ出す。
デュラハンが使ったのは闇暗魔導、鏡影の移り人形シャドウミラードール
相手の身体から影を引き抜き、影が受けた傷をそのまま本体へと映す厄介な魔法だ。

 シンの影人形を狙って再び迫り来る刃を嵐丸で受け流しながら、背後の影を守るシン。
するとデュラハンが大きく飛び退き、着地と同時にフランベルジュを地面に突き刺した。
その直後、地面に巨大な魔法陣が出来上がる。
そこから浮かび上がってきたのはデュラハンと瓜二つの影達。

「コイツ……厄介な魔法ばかり使いやがる」

 それは全て実体のある影。
幻影分身シャドウゲンガー
三十の影を構築し、一斉にシンへと飛びかかる。

 シンは目を閉じ、一呼吸置く。
急速に接近してくる気配がある。
アネッサだな。
それならば……ッ!

「無茶した後は任せられそうだ——ッ」

 シンの見開いた両眼が赤く染まる。
激しい紫雷がシンの身体中から迸り、髪の毛が真っ白に変わる。
そして雷が両手を渡るように棒状になると、その先端に巨大な鈍角の両刃が出来上がる。
それは長い柄の大斧、裂雷サクイカズチ
バチバチと雷撃を放つ巨大な斧を構え、シンの姿が掻き消える。
直後、影達の中心にシンが斧を地面に振り下ろすと辺り一面に稲妻が走り抜け、影達を次々に破壊していく。

 一瞬にして本体のデュラハンだけになり、それを見据えるシン。
直後に掻き消えたシンがデュラハンの頭上に現れ、雷鳴と共に斧が振り下ろされる。
漆黒の鎧を両断し、強大な落雷が続くと巨大なクレーターだけを残し、デュラハンを一瞬で塵にかえる。

 頑丈な鎧とて、飛躍的に引き上げられた力での渾身の一撃に加え、夜叉の力で魔力が増幅した雷撃をまともに喰らえばひとたまりもなかったようだ。

 シンは斧を消し去り、夜叉から元に戻ると盗賊の残党をギロリと睨む。
相手は子供でも、その恐ろしいまでの気配と先程の圧倒的な力を見せつけられ、盗賊達は皆尻込みする。
そして一人が逃げ出すと、すぐ様それを他の皆も追いかける。

 しかし、逃走した先には——。

「皆さま、急いで何処へ行かれるのですか?」

 氷のように冷たい声が響き、斬撃音と悲鳴がが立て続けに起こると逃げ出した盗賊達が血を流して次々と倒れていく。

「アネッサ。
そいつらからは情報を聞き出したかったんだけど、生きてるよな?」

 困った顔をして尋ねるシンに、悠然と近付いてくるアネッサはしっかりと頷く。

「勿論です。
しかし、有益な情報が得られるともあまり思えませんが」

「それでも、無いよりはマシさ」

 シンはそう答えると身体から力が抜けて片膝をつく。

「シン様ッ!」

 それを見たアネッサ慌てて近寄る。

「度々無様な姿見せて悪いな……。
またマナを使い過ぎたたけだから。
少し休めば、問題ないよ」

 その言葉にアネッサは溜息をついて心配そうな顔をしてソッと肩を貸してくれた。

「本当に、無茶ばかりするのですね……。
家で休んでいても良かったのですよ?」

「世話になってる街の危機だ。
身体が動くのなら、役に立たなきゃな」

 そう答えて肩を借りたままゆっくり立ち上がる。

「ここ以外にも大きな気配を二つ感じたが、一つはアネッサがやり合ってたんだろ?
そっちはなんとかなったか?」

「ええ、こちらは問題なく。
猫さんも大きな気配のモノと対峙したようですが、そちらも対処出来たようです。
この所業を振り撒いた根源である魔族は私が仕留めました。
グール達はもはや街にはいないでしょう」

 淀みなく答えるアネッサ。
それを聞いて安堵する。
そんな俺達にフレデリックさんが近付いてきた。
喉に片手を当て、癒しの魔法をかけているようだった。

「シン君、助かった。
“運び屋”の二つ名はやはり伊達では無いな。
傭兵団を率いる団長として、恥じ入るばかりだよ」

 そう頭を下げるフレデリックさんだが、俺は首を横に振る。

「恥じる事は何もありせんよ。
僕がここに着くまで持ち堪えたのはフレデリックさんだからこそ出来たんです。
この街の長であるリンデント公爵にもしもの事があれば、街の大混乱を収めるのも難しくなっていたでしょう」

 俺は素直にそう告げて、屋敷を見やる。

「ともかく、この街の長である公爵に状況を伝えましょう。
一刻も早く事態の収束をしなくては」

 そう俺が言うとアネッサとフレデリックさんは頷き、屋敷へと向かった。
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