異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

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第4章 少年期後編

第65話 リアナ・クリスターナ①

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 立て続けに起こる地響きと、遠くから聞こえる轟音に驚き、私は家から飛び出した。
同じように何事か、と里のみんなも家から出て互いに顔を見やっている。

「一体何事だ?」

「まさか……。
また、奴等が来たんじゃ……」

 後ろから私に続いて出てきた父さんと母さんが不安気な表情をして、私の肩を抱く。
すると、広場に飛び降りてくる一つの人影。
この里の護人、ミーシャさんだ。

「えーっと!
皆、落ち着いてッ!
この馬鹿騒ぎを起こしてるのはあの迷惑な馬鹿親子だからッ!」

 声を張り上げて里の皆にそう告げるミーシャさん。

「なんで私があの親子の尻拭いしなきゃなんないのよ……もぅ……」

 続けて誰にも聞こえない程小さく呟く。
馬鹿親子、という言葉が指す相手が誰なのか。
この里の皆は誰もが知ってるだけに、周りの皆は騒めきだす。

「あの馬鹿親子……って」

「オルディールの?」

「シンが帰ってきたのか!?」

「うそ、あの子帰ってきてるの!?」

「あー、彼奴らならこの馬鹿騒ぎも納得だ」

 驚く者、笑い合う者、そして喜ぶ者。
皆それぞれだが、シンの帰郷を待ち望んでいたようだ。
そして、それは……私も同じ……。

「ミーシャさんッ!
本当に……本当に、シンは帰ってきたんですか!?」

 私はちゃんと確認したくて、ミーシャさんに駆け寄り問いかける。
ミーシャさんは私の頭に手を乗せて優しく微笑んだ。

「そうよ、あの馬鹿連絡もなしに急に帰ってくるんだからね。
後で一緒に文句言おうか?」

「ふふ、そうだねッ!」

 シンが帰ってきた。
次に会えるのはもっともっと先だと思っていた。
それでも、この二年余の時間はとても長く感じたものだ。
シンと過ごした十年より、長く感じた程……。

「お父さん、お母さん!
シンが帰ってきたって!」

「みたいね。
良かったわね、リアナ。
私も嬉しいわ」

 リリアはそう言ってリアナを抱きしめる。

「アイツは帰郷した途端に騒ぎを起こすのか。
少しは成長したかと思ったが、お騒がせ者は変わってないな」

 ルーカスはそう言って苦笑いする。

「とりあえず、私はこれからあの馬鹿親子を迎えに行ってくるわ!
そしてこの迷惑な騒ぎを起こした事を叱りつけてくるッ!」

 ミーシャさんは拳を握りしめてそう宣言し、里を飛び出していった。




 シンの帰郷という一報はすぐに里全体に行き渡り、夕暮れ時だというのに皆が広場に集まりだした。
シンがここを旅立った日もそうだったが、こうして皆が集まってくれるだけ彼は人気がある。
子供なのにも関わらず率先して様々な里の仕事を手伝ったり、何処から得た知識なのかわからない事を沢山教えてくれた事もあった。
それは大人ですら驚く事もあったくらいだ。

 そんなシンを私はいつも目で追っていた。
同じ年なのに、小さいうちから大人と肩を並べている姿に憧れすら抱いたものだ。
彼を見ていると、他の同年代の子供がより幼く見える。
そんなシンでも、たまに年相応の幼さが垣間見えるのがまた可愛いのだ。

 早く会いたい……。
私は門の前に立ち、両手を胸の前に握りしめて祈るように門を見つめていた。
しばらくすると、大きな木製の門が開き出す。
ゆっくりと門の奥の景色が広がり始め……。
そして、そこに彼はいた——。

 身長は少し高くなっていて、顔付きはまた一段と大人びた顔付きになっていた。
年は変わらないのに、過ごした環境の違いだろうか?
けれど、見間違うはずがない。
黒い髪は二年前より少しだけ伸び、後ろに細く束ねている。
少しだけ大人びた顔付きでも、昔と変わらず彼の目は優しい色をしていた。
里の中を見回しながら微笑むその顔も、二年前とそう変わらない。
間違いなく、シンである。

「シンッ!」

 私は思わず飛び出して、シンの胸に飛び込んだ。

「お、リアナか。
少し身長伸びたな」

 私を受け止めるシン。
あぁ、なんだか懐かしい香りがする……。

「シンも背が伸びたね。
今はもう同じくらいになってる?」

「抜いたかと思ったけど、やっぱりエルフは身長は高くなるんだろうなぁ」

 そう言って私の頭にポン、と手を置くシン。

「久しぶりね、シン。
元気そうで何よりだわ」

 後ろから母さんが近づいて声をかけてきた。

「お久しぶりです。
リリアさんも変わらずお元気そうで」

「結局、先ほどの振動と衝撃は何だったのだ?
帰って早々元気が有り余りすぎだろう」

 父さんも隣に並び、困ったような顔でそう言った。

「すみません、ルーカスさん。
驚かせちゃいましたかね」

 そう言って恥ずかしそうに頭を掻くシン。

「人気者ね、シン。
リアナもシンを見た途端に飛びついちゃって」

 シンの横からニヤニヤしながらミーシャさんが声をかけてきた。
私は顔を赤くして一度シンから離れ、父さん達に並ぶ。

「えっと、改めましてシン・オルディール。
ただいま戻りましたッ!
さっきは馬鹿騒ぎしてすみませんでしたッ!
しばらくこっちで世話になるので、皆さんまたよろしくお願いします」

 シンがそう言って頭を下げる。

「おかえりー、シンくーん」

「こっちにはどのくらいいるんだ?」

「またうちにも顔出してね」

「こっちにいるなら木こりの仕事も手伝ってくれよ、シン」

「こんなに大きくなって……グスッ……」

 様々な反応を見せる里の人たち。
シンは愛されているなぁ、と実感する。

「シン、その後ろの美人さんは誰だい?」

 ふと誰かがシンに尋ねる。
そこで私もようやく気付く。
シンの後ろに控えて立っているその女性。
銀髪の髪は輝き、ウェーブがかったショートヘアが風に揺れている。
顔立ちはエルフに負けずとも劣らない程整っており、少し緊張した面持ちだった。
何より、特徴的なのはその銀髪から生えた二つの狼耳。
そして後ろからはフサフサと太く長い尻尾が生えていた。

「あー、紹介するよ。
今、ジーナスで俺と一緒に生活してる狼人族のアネッサだ。
こっちでも俺と一緒に世話になるから、皆仲良くしてやってほしい」

 シンは笑顔でそう告げた。

 ん……今シンは何と言ったのだろう?
一緒に住んでる?

 その言葉に石像のように固まった私とは別に、皆は騒めき出す。
シンのように、昔からここにいる存在ならばいざ知らず、多種族はエルフの里に立ち寄る事はほとんどない。
とは言え、シンが言うなら間違い無いだろ、と最終的に皆頷き始める。

「狼人族のアネッサ・エルフィンです。
いつもシン様にお世話になっております。
手伝える事は何でもしますので、気軽に声をかけてくださいませ」

 ペコリと頭を下げるその人。
私は目が点になりつつ、シンにおずおずと近寄り尋ねる。

「し、シン?
この人と、その……一緒に住んでるの?
二人、で?」

 私が尋ねると、シンは頷く。

「あぁ、そうなんだ。
アネッサには家事とかしてもらって助かって……る……って、リアナ?
おい、大丈夫か?」

 小刻みに震えだす私を見て、動揺するシン。

「お、おい、大丈夫か?」

 思わずポロリと涙が溢れてしまった。
心配そうに私の顔を覗くシンの顔も涙で歪んでいく。
私は服の袖で涙を拭ってシンに背を向け走り出した。

「リアナッ!」

 後ろからシンの声が聞こえてきたが私は構わず走り続けた。
ベシャッと途中で勢いよく転んだが、またすぐ立ち上がって走り出す。

 どうして涙が出るのか。
自分でもよくわからなかった。
何かが悔しくて、何かが悲しくて、辛かった。
うまく言葉にできないから、この涙を止める術も持ち合わせてはいなかった。




 当てもなく走り出し、いつの間にか里にある泉のほとりにやってきていた。
月明かりに照らされた泉はキラキラと輝いている。
その泉の真ん中には聖樹ユルダの大木があった。
青白いその幹はまるで結晶のように艶やかで、葉の無いその大木は天に向かって幾本も長い枝を伸ばしている。
ふと湖を覗き込めば涙でグシャグシャの顔が映り込む。

 シンとあの人はどんな関係なのだろう?
私よりずっと年上の人だった。
シンは年上の人が好きなのだろうか?
私みたいな子供には興味が無いのかもしれない。
私は毎日のようにシンの事を考えていたが、シンはきっと……そうじゃないかもしれない……。

 溜息をついてしゃがみ込む。

 もっとシンと同じように魔導の勉強をしておくべきだった。
シンがいなくなってから、ジノさんに教えてもらったけれど、学べば学ぶ程にシンには遠く及んでいない事を痛感したものだ。
思い返せばシンは暇があれば魔導について学んでいた。
私はもっと構って欲しくて、無理やり遊びに付き合わせていたけれど……。
そんな事せずに、シンと一緒に魔導を学ぶべきだった。
シンの隣に立てるくらいになって、シンと一緒にこの里を出ていたら、違った未来があったのだろうか?

 色んな想いが混ざり合い、心が落ち着かない。
未だに止まらぬ涙はより溢れ出し、私は声を上げて泣いていた。
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