異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

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第4章 少年期後編

第80話 謎の墓石

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 アネッサが目指したのは例の墓石である。
俺達は墓石の目の前まで近寄りそれをジッと観察する。
その墓石には文字が刻まれているが、何と書かれているのか読み取れない。
見た事も無い文字だったからだ。

「この墓石の付近に戻される、という事に何か意味があると思うのです」

「それはまぁ、そうだとは思うが、かと言って何をするんだ?」

「……例えば……こうしてみる、というのは」

 そう言って無表情で片手を振りかぶるアネッサ。
俺は目が点になってそれを見つめる。

 いや、待て、お前まさか——ッ!

 無表情で墓石に拳を叩きつけるアネッサ。
突然の鉄拳に思わず俺は固まってしまう。
たかが石の塊であるその墓石はアネッサの渾身の一撃に耐えられる訳もなく、粉々に砕け散る。
それを呆然と見つめる俺。

 ……多分、あれだな。
アネッサは壊れて動かない物を叩いて直すタイプだな。
でもそれ、大体状況が悪化するんだけどな。

 しかし、次の現象には俺も驚いた。
砕けた墓石の破片が細かな砂のように変わり、再び集まり出して墓石の形へと戻ったのだ。

「……か」

「実は一度あの不気味な騎士を吹っ飛ばした時にこの墓石に当たりまして、砕け散ったのです。
しかし、見ての通り。
あの騎士のように、この墓石も元に戻るのです」

 離れたらこの場所に戻されるだけでなく、この墓石も壊しても元に戻る……か……。

「シン様、不思議ではありませんか?
私は森で幾本も木々を切り倒してきましたが、このような現象は起こりませんでした。
けれど、あの騎士やこの墓石は元に戻る。
それには何か理由があり、そしてこの二つには関連性があると思うのです」

 俺は顎に手をやり一つ頷く。

 確かにその通りだ。
何かしら関係があるから戻る力が働くのだろう。
でも、それとこの結界の脱出との関係性はあるのか?

「シン様が先程説明してくれた幻想結界とやらの概要から言えば、この結界は誰かの深層風景が投影されている……。
そうですよね?」

「そうなるな。
俺は使った事が無いから詳しくはわからないが」

「それならば、元に戻るものに働く力にもが関与している可能性はありませんか?
つまり、それは壊れて欲しくない、という意思……或いは願いがある。
そう考えられませんか?」

 つまり、壊れて欲しくない。
死んで欲しくない。
だから何度でも蘇り、何度でも元に戻る。
そういう事か?

「逆に言えば、元に戻す事が出来なかった場合、この結界に亀裂が入るのでは?」

「元に戻せなくさせる、か。
そりゃあ提案としちゃ面白いけど、どうやるんだ?」

「……砕く事は出来るです。
ならば、させれば良い」

 再び拳を振り上げ、鉄拳を墓石に叩き込むアネッサ。
本日二度目のアネッサ鉄拳を目の当たりにして俺は冷や汗をかく。

 アネッサ、なんか溜まってんのかな。
殴られないように注意しよ……。
俺の場合、心が砕け散りそうだ。

 俺は心の中でそう決意する。

 アネッサは即座に振り抜いた腕を引き、片手を掲げると砕け散るその細かな破片を結晶で包み込んでいく。
駄目押しとばかりにもともと墓石のあった場所には巨大なクリスタルを作り上げる。

 デカイし綺麗だ。
……今、それは重要ではないけど……。

 結晶に包み込まれた破片は砂のように変質も出来ず、地面にボトリボトリと落下していく。
アネッサの思惑通り、戻る事が出来なくなったようだ。

「……絶魔の力が効いてるのか?」

「どうでしょう……。
あくまで試してみたかっただけなので、これで結界に影響が出るかは不明です」

 それから俺達はジッと巨大な結晶を眺め続ける。
しかし待てど暮らせど何かが起こる気配は無い。

 当てが外れたか?
流石にそんな簡単にはいかないか。

「……そういや、ここに刺さってるエストックはあの騎士が持ってた奴と見た目は一緒だよな。
色が違うけど」

 俺はそう言って墓石の前に突き刺さっている白銀のエストックを見やる。
すると、そのエストックは意思があるかのように地面から引き抜かれ、宙をクルクルと舞っていく。
自然とその動きを目で追うと、「パシッ」と乾いた音が響き、誰かがそのエストックを掴み取る。

「他所様の墓石を破壊し、あまつ直す事すら阻もうとは……。
人間のやる事は相も変わらず野蛮ですね」

 長いプラチナブロンドを揺らし、エルフの美女がエストックを即座に弓につがえて引き絞る。
俺とアネッサは突然出てきたその存在に目を見開き、直ぐに身構える。
放たれたのは白銀のエストック。
閃光のように放たれたそれは先程の青黒い甲冑騎士のそれより遥かに速い。
俺は嵐丸にてそのエストックを弾き飛ばす。
が、こちらの嵐丸まで吹き飛ばされる。

「——ッ!さっきより重いッ」

 先程は難無く弾き飛ばせたそのエストック。
しかし、威力も速度も先程より一段、二段上になっている。

 その一撃を弾き飛ばした事にエルフの美女は目を細めて薄く笑う。

「今の一撃にも反応出来るのですね。
私の影をあれほど討ち倒せるくらいですから、只者ではないとは思いましたが……」

 感心したように声を漏らすエルフの美女。
細身の身体は見慣れない白地の服に包まれ、その髪の長さは何処かで見た事がある。
そして、その声も……どことなく、あの青黒い騎士と似ている。
しかし、その声はあの呪詛のような感情の無い声とは程遠い程優しい声色をしている。
エルフの美女は鋭い視線を俺達へと向け、剥き出しの敵意を露わにしている。
対する隣のアネッサもまた目つきを鋭くさせ、片手を持ち上げ絶魔の鉤爪を構築する。

「……アンタ、さっきの黒い騎士とは別人か?」

「……答える義理はありませんが……」

 エルフの美女はそう言って瞳を閉じて答えるが、再び目を開いて続ける。

「特別に教えて差し上げます。
あれは私の分身……とでも言いましょうか。
本来……私が出る幕では無いのですが、存外厄介な方々が訪れたようなので、この結界が破壊される前に手を打つ事にしたのです」

 そう言って片手を真横に伸ばすと白銀のエストックが手の中に作り出される。

「アンタは会話がまともに出来るようで何よりだよ。
アンタの分身は会話もろくに出来やしなかったからな。
何よりお喋りなのは気に入った」

 俺は挑戦的に言ってニヤリと笑い、目の前のエルフを鋭く睨む。
互いに手を出さずに睨み合っているが、どちらも直ぐに攻撃出来るよう身構えている。

「あれは……アーヴァインや私の負の感情の塊。
或いは失われた記憶の断片。
此処でしか存在できない、儚い影。
もっとも、私も似たようなものですが……」

 自嘲の笑みを浮かべて静かにそう告げるエルフ。

「アーヴァイン……?
ソイツは誰か知らんな。
アンタも、似たような存在って言ったな。
アンタは何者なんだ?」

 俺は答えてもらえるとは期待しないで尋ねてみたが、エルフは即答する。

「私はエルフの民のシャーロット。
あなた方はアーヴァインに仇なす敵。
あなた方のような者をここで足止めするのが私の役目。
この会話も、時間稼ぎですよ。
付き合ってもらって感謝します」

 ニコリと笑うエルフの美女。
しかし、その微笑みが一気に冷たい表情に変わる。

「何にせよ、あなた方を簡単に見逃す訳にはいかないのです」

 ……エルフの民。
コイツは里にいるエルフではないのは間違いないが、だとしたらエルフ王国から来たのか?

「さっきからアーヴァインって、名前が出てるけど、そりゃ誰だ?
さっきも言ったが俺達は知らないぞ」

「あぁ、そうでしたね……」

 エルフの美女は空を見上げて遠い目をして口を開く。

「……では確か——シュヴァイン、と……名乗っているそうですね」
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